2015-12-30

窒素族元素は生物にとっては必須だった

「なぜ毒性の強いリンやヒ素がDNAの接着剤として機能したのか?」

こ の問題はずいぶん前から私の脳回路をショートさせ、永らく悩みの種になってきた。しかし、最近のるいネットの冨田彰男さんの投稿がひとつ の展望をもたらしてくれた。今日はその延長戦上+αの視点からのある考察を展開してみたいと思う。また、同族元素という点ではリンよりもヒ素の方が参考 になるので、2年ほど前のNASAの発表に関するリンクも貼り付けておきたい。リンク

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List    投稿者 seibutusi | 2015-12-30 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 
2015-12-29

なぜ病気があるのか?~「進化医学」の視点から考える

「医学」が、病気とは何か?どのように病気になるか?という「what」「how」を追求する学問とすると、なぜ病気にかかるのか?なぜ病気というものがあるのか?という「why」を、生物の歴史の中から解き明かすことで、その病気そのものの進化学的意味を問い直すのが「進化医学」と呼ばれる新しい学問です。

今回は、この「進化医学」の視点から、38億年の生命進化、5億年の脊椎動物の進化の中でヒトの病気とはどういう意味を持つのか?考えてみます。取り上げるのは、もっとも一般的な病気のひとつ「風邪」、その風邪に伴う症状「発熱」です。

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■風邪の症状は身体の防御反応
風邪はライノウイルスなどの「風邪ウイルス」が喉や鼻の細胞に侵入(感染)・増殖することによって起こります。風邪を起こすウィルスは多く存在しますが、身体の中で起こっていることは基本的に同じです。

実は、風邪というのは固有の病名ではなく、呼吸に関係する喉や鼻を中心に起こるさまざまな症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、喉の痛み、疾、発熱、倦怠感、頭痛、下痢、嘔吐、食欲不振など)を示す「風邪症候群」といわれる状態をまとめた呼び方です。

こうした症状は、それらのほとんどが、ウイルスに対して引き起こされる身体の防御反応が「症状」となって現れたもので、ウイルスが持つ化学的毒性によって身体が異変を起こしているわけではありません。

■発熱と倦怠感
風邪の全身症状の典型が「発熱」です。それに伴って「倦怠感」を感じたり、食欲不振に陥ったりします。

ヒトの身体には設定体温を保つしくみを持っていて、平常時は36~37度で保たれています。風邪をひいて発熱したときには寒気を感じ、たとえ37度の体温があっても身体は寒いときと同じ反応を示します。これは、風邪ウイルスに感染した結果、設定体温が(例えば)39度に変更になるためで、身体は体温が37度では寒いと感じ、設定体温の39度に達してはじめて寒気を感じない状態になります。

身体の中でも比較的温度が低い(33~34度)喉や鼻に風邪ウィルスは感染します。逆に高い温度に弱いウィルスはそれ以上高温になっている身体の奥深くには入っていけません。したがって、風邪の時に体温が上がるのは、結果的に喉や鼻の温度も高くなり、ウィルスの増殖を抑えることになります。つまり、風邪をひくと身体が設定体温を上げるのは、進化の過程で獲得した、ウィルスと戦うための生存に有利な性質なのです。

ただし、体温が上がってもウィルスの増殖が低下するだけで、ウィルスが体内から消失するわけではありません。最終的には、リンパ球などの免疫細胞の働きにより、ウィルスを処理しますが、実は、さまざまな免疫細胞の働きも、体温が高いほうが速やかに進むことがわかってきています。

また、発熱などと同時に見られる風邪の典型的な症状のひとつの「倦怠感」も、ヒトに安静を強いることでそのエネルギーを発熱や防御反応に振り向けることができることから、生存に「有利」な性質だと考えられます。

こにように「発熱」や「倦怠感」は、ヒトにとって必要な症状なのです。

■不快感は身体のシグナル
医学や薬が登場するはるか以前から、脊椎動物はウィルスと共存してきました。様々なウィルスや細菌の感染を受けながらも絶滅せずに今日に至っているのは、ウィルスや細菌感染に対抗するしくみを進化させてきたからに他なりません。逆にいうと、繰り返し起こった世界的な感染症の流行を乗り越えて生き残ってきたヒトの子孫である私たちは、感染症に対する強い抵抗性を持っていると考えられます。つまり、病原生物との戦いに生き残る性質を持つことで進化してきたのが、今生きている私たちなのです。

実際、ヒトは、ウィルスや細菌の感染に対抗するためのかなり良くできたしくみ(免疫システム)を進化させてきました。これまでみてきた通り、「発熱」は体内にウィルスや細菌が侵入しているという警報であるとともに、ウィルスの増殖を抑制し、免疫系の細胞を活性化する働きを持ちます。また、発熱による「倦怠感」は、休息をとりなさいという身体からの指令の現れでヒトにとって必要な症状です。

もちろん、「発熱」や「倦怠感」などの症状を、不快と感じる人が多くいることも確かです。しかし、こらの「不快感」は、身体がウィルスや細菌に正常に反応して、身体を元の状態に戻そうとしていることの現れであり、この不快感に身を任せることが病気からの自然治癒を促すことになるのです。そう考えると、この不快感は必ずしも嫌悪すべきもの、排除すべきものではない事に気づきます。

同時に、これまでのように「薬」に頼ってそれを解消しようとすることが、どれだけ不自然なことにも気づきます。まず、自然な身体の反応に身を任せてみる。その経過を見て必要があれば薬を併用する。そう考えておいた方が良さそうです。

(参考及び一部抜粋・編集)栃内新著『進化から見た病気 「ダーウィン医学」のすすめ』

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List    投稿者 seibutusi | 2015-12-29 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2015-11-08

変異促進機能という概念で生物史を読み解く

生物は同類他者を作り出すことにより外圧に適応してきた。その、代表的な機能が前回取り上げた「雌雄分化」である。

雌雄に分化した系統の生物は著しい進化を遂げて節足動物や脊椎動物を生み出し、更に両生類や哺乳類を生み出した。しかし、それ以前の、雌雄に分化しなかった系統の生物は、今も無数に存在しているが、その多くは未だにバクテリアの段階に留まっている。これは、雌雄に分化した方がDNAの変異がより多様化するので、環境の変化に対する適応可能性が大きくなり、それ故に急速な進化が可能だったからである。このように、雌雄分化の本質は、『変異促進機能』の獲得にある。

この『変異促進機能』という概念で生物史をみていくと、雌雄分化以前からその機能は実現されていることが分かる。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-11-08 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2015-10-25

雌雄分化は、DNA変異を利用した「同類他者」を生み出す機能

生物の進化の源泉はDNAの多様性にある。つまり、同一の自己を複製するのではなく、出来る限り多様な同類他者(非自己)を作り出すことこそ、全ての進化の源泉であり、それこそが適応の基幹戦略である。

それを実現する代表的な機能の一つが雌雄分化だ。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-10-25 | Posted in ⑧科学ニュースより1 Comment » 
2015-09-27

990以上の村を調査して分かった『寿命の「長寿/短命」を決める食生活』とは?

 

『寿命の「長寿/命村」を決める食生活』とは何だろうか?

この疑問について、書籍「日本の長寿村・短命村―緑黄野菜・海藻・大豆の食習慣が決める」(近藤正二、サンロード出版)の豊富な事例を参照しつつ、考えてみたい。

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この本は、東北大学公衆衛生学教室の近藤教授が、昭和10年頃から満36年の長い間、日本全国くまなく990ヵ所の長寿村・短命村を、自らの足で歩き続け、『寿命の「長寿/命村」を決める食生活』を明らかにした貴重な記録だ。

昭和初期の日本は、ヨーロッパの文明国と比較して、平均寿命が短いことは分かってたが、満70歳以上の人の比率までも低いことを知り、「乳幼児の死亡が多いのももちろん問題だが、成人して70歳にならないうちに、どんどん死ぬのはまことに残念だ」と感じ、筆者は調査を始めたそうだ。

「物事は机上で考えて、結論を出してはなりません。実地に、実例を集めて見なければ結論を出してはいけない。」という気持ちで、全国の長生き村と短命村を回り、実地に捉えて出てきた結論が、『一番の決めてになる要因は、若いころから、長い間、何十年というあいだ毎日続けてきた食生活にある』ことだった。

それまでは「ドブロクの飲酒量」「長時間の重労働」など、食事以外の要素が「長寿/短命」を決める要因だと、一般的には考えられていたが、著者は多くの実例を通じて、それらの要因と寿命との関連は特に見られず、『寿命の「長寿/短命」を決めるのは、食生活がもっとも大きな要因』だと結論を出している。

では、この貴重で膨大な調査結果を通じて著者が明らかにした『寿命の「長寿/命村」を決める食生活』とは何か?

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List    投稿者 seibutusi | 2015-09-27 | Posted in ⑧科学ニュースより5 Comments » 
2015-09-13

免疫とは『仲間を認識し、共生関係を構築するしくみ』

■免疫に関する考え方は時代とともに変化してきた

昔は、免疫は「病気(疫)から免(まぬが)れるためのしくみ」と考えらえた。牛の乳搾りなどで牛と接することによって自然に牛痘にかかった人は、その後天然痘にかからないという農民の言い伝えがあった。ジェンナーはこれを天然痘の予防に使えないかと、研究を続け、ついに天然痘ワクチンが開発され、「免疫=予防接種」という考え方が一般的になる。そしてその後、免疫は「自己と異なる非自己(異物)を認識し排除する」ためと考えられるようになる。

しかし、「食物」や「腸内細菌」などは人にとって異物でありながら排除されない。むしろ、異物でありながら積極的に体内に取り込む必要がある。そのために備わっているのが、「経口免疫寛容」と呼ばれる、異物に対して寛容(=反応が起こらず異物の存在を許す)するしくみだ。

つまり、免疫の認識機能は、次の2段階構成になっていると考えられている。
1.まず、自己と非自己(異物)を認識。
2.次に、非自己(異物)のうち、身体に必要な物に対しては寛容し、一方不用なものを排除する。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-09-13 | Posted in ⑧科学ニュースより1 Comment » 
2015-09-06

西洋医学が有効な範囲は限られている~「細菌説」というドグマを断ち切る

 

現代は、毎年40兆円以上の医療費が費やされているにもかかわらず、国民の健康が改善している気配はなく、年間数百万人が受ける人間ドックで、まったく「異常なし」の人は7%しかいないという実に“異常”な状況だ。

その理由は何んだろうか?

その理由は、もともと近代医療(=西洋医学)では解決出来ない領域にまで手を出し、無理やり西洋医学的なアプローチで解決をしていることにあると考えている。では“近代医療では解決出来ない領域”とは何か? それは、年々患者数が増加しているアレルギーや自己免疫疾患、ガンなど、もともと身体に備わっている機能の「バランスの崩壊」「機能不全」に関わる病気がそれにあたる。それらの病気には特定の病原菌は存在しない。

もともと西洋医学が有効なのは、例えば感染症のように、ある病原菌が原因となリ発病する病気という限定された範囲でしか無い。なぜなら、『病気の原因はすべて病原菌にあり、その病原菌を殺せば病気が治る』という基本的な思考に基づき、発展してきたものが「西洋医学」だからだ。

その始まりは1880年代初頭、ルイ・パストゥールやロベルト・コッホらが唱え、西洋医学の基本的な考え方のひとつとして定着していった。その考え方は「細菌説」呼ばれる。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-09-06 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2015-08-21

予防接種の誇大広告に要注意~“集団免疫”は予防接種に係らず発生する“自然現象”の一つ

予防接種の意義・目的として、次の二点があげられる事が多い。

 (1)個人の感染予防・重症化の防止
 (2)多くの人が接種を受けることにより、感染症のまん延を
   防止する(集団免疫)という社会的な意義

例えば、リンクリンクなど、多くの医療期間や行政のサイトで、表現は異なるが概ね同じ内容で説明がなされている。

ところが、この説明には問題がある。(1)はまだしも、問題は(2)集団免疫。素直に読めば「大勢が一気に予防接種をした結果として集団免疫の効果が得られる。だから予防接種は必要だ。」と読み取れる。しかし、この説明には違和感を禁じ得ない。なぜなら、“集団免疫”とは、予防接種に係らず、一定規模以上の集団であれば発生する、一般的な“自然現象”だからである。

そこで今回は、感染症流行における“集団免疫”効果とは何か?“予防接種”の効果とは何か?について整理をしてみたい。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-08-21 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2015-08-15

光合成は太陽光の届かない海底で始まった

熱水噴出口
画像はこちらからお借りしました。

地球上で最初に行われた光合成は、光合成細菌が光エネルギーを利用して硫化水素を分解し、水素を(の還元力)を取り込んで硫黄を生成する酸素非発生型の反応でした。

このときに利用された光エネルギーは太陽光で、光合成が行われたのも海中の太陽光が届く範囲というのが旧来の説でした。

しかし、近年の調査・研究により、太陽光が全く届かない海底の熱水噴出口に光合成細菌が存在することが確認されています。
また、熱水噴出口から放射される遠赤外線領域(750 -1,050 nm)の光や、微弱ながらも可視光線領域の光(650 -750 nm)が実測された例があり、光合成が不可能な環境ではないことが分かっています。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-08-15 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2015-08-11

免疫:3つの未解明の迷宮~2.経口免疫寛容

『免疫:3つの未解明の迷宮』

  1. 免疫記憶
  2. 経口免疫寛容
  3. 腸内細菌と免疫の関係

前回の『免疫記憶』に引き続き、今回は『経口免疫寛容』を取り上げる。

免疫とは自己/非自己を判断し、非自己である異物を排除する仕組みだといわれる。しかし、単純に非自己を排除するばかりでは、外界から入ってくる自己の生存にとって有益な食品を利用することが出来ない。そこで、消化管は非自己で本来は排除すべきものでも、自己にとって有益なものであれば、これを選別し、受け入れる働きがある。それが「経口免疫寛容」という現象だ。

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List    投稿者 seibutusi | 2015-08-11 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments »