2020-11-13

マスク社会の危険性「それは表情を学ぶ機会を失った赤ちゃんたちによる『人の感情を理解しない人々の社会』の出現」

先の実現塾(リンク)にて、 コロナ禍による重大な影響の一つ「人の最重要なコミュニケ―ション方法は、相手の表情を読み取り、理解し合うことであり、マスクはそれを阻害する。」との話があった。

世界支配を考えている人間は、「本能(右脳)を封鎖し、従順な人を創る(人類奴隷化計画)≒生物の多様性原理に反する」事を目指しているのか?

同様な問題指摘をしている記事がありますので以下に転載します。

リンク

_____________________________________

マスク社会の本当の危険性がわかってしまった

(要約しました)

>生まれたばかりの赤ちゃんたちは表情を理解していないことがわかった.

>最初、人間は、「人の感情と表情というものに関しての見識がない状態で生まれる」のです。

しかし、どんどん赤ちゃんたちは人の表情を理解し始める。

論文などを見ますと、 1歳までに赤ちゃんが人の顔を見ることがいかに重要か」ということを突きつけられます。

このような事実がある中で、

「人類史上初めてとなる、数カ月あるいは数年にわたる顔の見えない社会」

が、今、展開されています。

【感情がわからない人間集団による社会。】

(エピソードー1)

私の仕事上のお客さんに、今年の2月に赤ちゃんが生まれたご夫婦がいます。2月といえばコロナが騒がれ始めた頃で、その頃から人々のマスク率がだんだん上がりました。そのご夫婦もいつもマスク姿です。そして、半年以上が過ぎたのですが、その赤ちゃんは何となく表情が乏しいのです。ふつう赤ちゃんは話しかけたり笑いかけると、こちらを見て、ほや~と微笑むと思うのですが、その赤ちゃんはあまり目を合わせないし、微笑みが少ないような気がします。考えてみれば、当然かもしれません。だって、そのご夫婦は家の中ではマスクは外すでしょうが、外に出ると、その赤ちゃんから見ればお父さんもお母さんも、周りの人々もほとんどマスクしているのですから。

そして、ソーシャルディスタンスのせいで、人と人が距離を取るようになり、本来なら色々な人が赤ちゃんのそばに来て、笑顔で話しかけたり、頭を撫でたり、ほっぺたをさわったりするはずなのに、周りの人も遠慮してあまり赤ちゃんに近寄らないのではないでしょうか。コロナ騒動はすべての年代の人々に影響を与えていると思いますが、生まれたばかりの赤ちゃんに与える影響は計り知れないような気がします。

赤ちゃんはいつ表情を理解する?

研究によれば、人間は比較的小さな段階で、「幸せ、悲しみ、怒り」の表情を区別することを学ぶようだが、「驚き、恐怖、嫌悪感」などの、より微妙な表情を習得するのはもう少し成長してからになることがわかってきている。

新生児は「周囲の顔」で感じている

赤ちゃんたちは、生まれた瞬間から、周囲の人々の顔を探している。児童発達研究協会(50か国以上の研究者による非営利の学際団体)の調査によると、生後 1ヵ月未満の赤ちゃんでさえ、スクランブル加工した(画像を撹乱した)顔の画像ではなく、鮮明な顔の画像を見る方を好むことが示されている。

また、1989年の研究では、生まれたばかりの乳幼児は、母親の顔と見知らぬ女性たちの顔を見せると、数時間後には、母親の画像を他の画像よりも長く見つめ、母親の顔と見知らぬ女性たちの顔を区別できることが研究で示されている。

しかし、顔の「表情」を認識することについての議論は、1800年代後半から続けられており、現代の科学者たちも議論を続けている。

2007年に発表された「新生児の表情の知覚」という論文では、生まれて 24時間以内の 17人の健康な新生児たちに、表情の知覚についてのテストを行ったが、新生児たちは、怖い顔と中立の顔を区別することもできず、好みを示すこともまったくできないことがわかった。

つまり、生まれたばかりの時には、赤ちゃんたちは表情を理解していないことがわかったのだ。しかし彼らは、生まれてから、わずか数日のうちに、表情に対しての認識をつけていく。

その後、赤ちゃんたちの感情的知性は急激に上昇する。科学誌サイエンスに掲載された 1982年の大規模な研究(論文「新生児の表情の差別と模倣」)では、生後5ヵ月目の子どもたちは、「悲しい顔」に対して「悲しい声」で合わせることができ、2008年に行われた研究では、 1歳の子どもが人の表情から社会的な手がかりを掴んでいることがわかった。

たとえば、登ると危険かもしれない斜面と遭遇する。その時、母親を見て「母親が笑っているなら、そこを登る」という判断をおこなっていた。

人の顔の表情への反応は、赤ちゃんの年齢が高くなるにつれて、さらに上昇する。また、別の研究では、赤ちゃんたちは、新しいオモチャがあっても、母親が元気づけて微笑まない限り、そのオモチャに近づくことを避けることがわかった。

十代までに、驚き、恐れ、嫌悪感を学ぶ

2015年に研究者たちは英国の 478人の子どもたちと青年を調査し、表情の理解が年代とともにどのように進展するかを追跡する最初の強力な研究を発表した。

研究では、子どもたちに、「幸せ、悲しい、怒っている、恐怖、嫌悪感、驚いている」の 6つの感情の顔の 60枚の写真を見せた。

子どもたちは顔を見るたびに、その表情が、「幸せ、悲しい、怒っている、恐怖、嫌悪感、驚いている」のどれに相当するかを答えた。

子どもたちのすべての年齢で、「幸せ、悲しい、怒っている」は認識された。

しかし、8歳以下の子どもたちの中で「驚き」の顔を正確に検知した子どもはほとんどいなかった。また、14歳以下では「嫌悪感」の表情を検出できず、16歳以下は「恐怖」の感情を検出できなかった。

喜びや悲しみのような「根源的」な感情の表現よりも、驚き、嫌悪感、恐怖などの感情を子どもたちが識別することに、なぜ多くの時間がかかるのかは今のところわかっていない。

__________________

以上です

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List    投稿者 seibutusi | 2020-11-13 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-11-12

縄文人が感染していた古代ウイルスから、縄文人の生活実態を探る

縄文体質とは何か?」6つのキーワードで見てきました。
“自然”・“職人気質”・“仲間意識”・“はたらく”・“性”・“信仰”リンク
縄文体質を濃厚に持っている日本人。縄文人とはどんな人々だったのか?様々な追求がされています。

また、>我々は陸地だけでなく海水も含めて、膨大な数のウイルスに囲まれて生きているリンク
ウイルスについても、その実態が明らかにされてきています。

今回は、縄文人の歯髄から得られたDNAに含まれるウイルスのゲノム配列を解析して、縄文人の生活様式やウイルスの進化過程を探ろうという研究 を紹介します。

縄文人の時代においても、人類はウイルスと共に生きていたことが分かります。

 

国立遺伝学研究所プレスリリース(2020年9月28日) より。

縄文人が感染していた古代ウイルスのゲノム配列を特定
~縄文人ウイルスから解き明かすウイルス進化過程~

概要

過去に日本列島で生活していた縄文人(1)のゲノム配列(2)を調べることにより、縄文人のルーツや目の色、お酒に強いかなど、さまざまなことがわかってきました。一方で、縄文人がどのようなウイルスに感染していたのかをはじめとしてわからないことも種々残されています。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の西村瑠佳さん (総研大遺伝学専攻大学院生) と井ノ上逸朗教授らの研究グループは、縄文人の歯髄から得られた DNA を用い、そこに含まれるウイルスのゲノム配列を決定し、解析を行いました。その結果、11 種類のウイルスのゲノム配列が見つかりました。

中でも Siphovirus contig89 (CT89) (3)と呼ばれるヒトの口腔内に生息するウイルスについては完全長のゲノム配列データを得ることができました。さらに現代の CT89 ウイルスとゲノム配列を比較した結果、本研究で見つかった CT89 のゲノム配列は、CT89 の祖先型ゲノム配列を反映していることが示唆されました。

今後は、CT89 ウイルスがどれくらいの速さで進化してきたのか、どのような進化過程を辿ったのかなどを詳細に解析するとともに、糞石をはじめとする縄文人化石の他の部位にも注目し、縄文人に感染していたと思われる古代ウイルスを多く見つけていく予定です。

縄文

 図 1:古代 DNA からわかるさまざまなことの今と未來

 古代人骨の化石に残存する DNA を抽出し、そのゲノム配列を調べることで、どの生物由来の DNA か推定できる。多くの DNA は古代人に由来し、それらの情報によって古代人のルーツや表現型などの解析が盛んに行われてきた。
一方で、古代人骨から DNA を採取すると、古代人に感染していた細菌やウイルスに由来する DNA も含まれていることがわかってきた。細菌やウイルスのゲノム情報に注目することで、古代人の生活様式や病気、ウイルス進化について推定できる

 研究の背景

古代人骨の化石には DNA が残存しています。この DNA を採取すると、古代人由来の DNA だけではなく、古代人に感染していたと考えられる細菌やウイルスの DNA も一緒に採取されてくることがわかっています。

このウイルス DNA に注目し、古代から現代にかけて起こった塩基配列の変化を調べることによって、ウイルスがどのような進化を遂げたのかを考察することができます。すなわち、このように古代人骨の化石から採取したウイルスの塩基配列を現代のウイルスの塩基配列と比較することで、現代のウイルスの塩基配列のみに注目した際に生じる時間的なバイアスを排除した進化過程の推定が可能になるのです。

しかしながら、日本列島で過去に生活していた縄文人に感染していたウイルスをはじめとする微生物の研究は進んでいませんでした。そこで、本研究チームは、縄文人にどのようなウイルスが感染していて、そのウイルスはどのように進化してきたのかを解き明かすことに挑戦しました。

本研究の成果

縄文人骨の歯髄に含まれる全ての DNA の塩基配列を次世代シークエンサー(4)で決定しました。その中で現代のウイルスと類似の塩基配列を持つゲノム配列を探索したところ、11 種類のウイルスのゲノム配列を見つけることができました。中でも約 3800 年前の北海道船泊遺跡の縄文人骨から見つかった  Siphovirus contig89

(CT89) というウイルスはほぼ完全なゲノム配列が復元できました。この CT89 はヒト口腔内の細菌に感染するファージ(5)であることがわかっています。3800 年前の人骨から完全長のファージ配列を再構成した例は世界で初めてです。さらに、現生の CT89 のゲノムは部分配列しかデータベース上に登録されていませんでしたが、今回の解析により、未知の領域の配列も明らかにすることができたのです(図 2)。

図2

 図 2:縄文時代の CT89 とデータベース上の CT89 のゲノム構造

 上段に縄文時代の CT89 のゲノム構造を、下段にデータベース上の CT89 のゲノム構造を示した。矢印はそれぞれのゲノム上に存在する遺伝子を示している。中でも機能を持つと推定されたものは色をつけて示してあり、遺伝子名が記されている。どの遺伝子もウイルスに特徴的な遺伝子であることがわかっている。灰色の矢印は推定タンパク質である。また、左上の領域はデータベース上には登録のない、新たに同定された領域である。

~以下略~

用語解説

(1). 縄文人
約 2900~16000 年前に日本列島で生活していたとされる古代人。古代人化石の年代は年代測定技術を用いることで推定が可能である。

(2). ゲノム配列
ある生物の持つ全てのDNA 塩基配列を指す。

(3). Siphovirus contig89 (CT89)
健康な現代人の口腔内から見つかったウイルスの一種。

(4). 次世代シーケンサー
数億に及ぶDNA の断片を高速に配列決定できる装置の総称であり、この装置を用いることによって大量のゲノム配列を決定することが可能となる。

(5). ファージ
ウイルスの中でも細菌を宿主とするウイルス。]

(以上)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2020-11-12 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-11-06

日本人の特質「最もネオテニー化した民族≒自然との循環共生社会創出」

ユーラシア大陸の東端の島国日本と西端の島国イギリスは地勢的に似通った海洋国と言われていたが、国民性は大きく異なっている。

日本は、協調性(母系集団)、イギリスは武力と観念(父系集団)による統一国家。

両国とも、古代の原住民は多神教でアニミズムで原始共同体を維持していたが、

大きな相違点は、日本は大陸の侵攻による戦闘が殆どなく、「自然との循環共生社会≒周りは味方」で、一方のイギリスは大陸からの異民族の侵攻で王朝(支配する民族)が度々変わり、「武力と近代観念≒自民族以外は敵」で統合されている。

現在でもイギリスはユナイテッドキングダムと言われ4つの民族の集合体であり、反目しあっている。(イングランド⇔ウェールズ⇔スコットランド⇔アイルランド)

改めて次世代のモデルとなる日本人「最もネオテニー化(子どもの状態を保ったまま大人になる)した民族」の特質を記載します。

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ネオテニー進化論

19世紀までの世界は白人優越の人種差別の時代であった。有色人種は人間とみなされず白人の奴隷とされていた。

この世界観を打ち破ったのは日露戦争に勝利した黄色人種の日本であった。日露戦争の意義は「白人優越という世界史の流れを変えた」ことである。さらに敗れたとはいえ大東亜戦争により白人優越の人種差別の息の根を止めたのも日本なのである。これを可能にしたのはなんであったか?そこにはあまり知られていない必然性がある。その必然性の一つにネオテニーがある。

(中略)

人間にはネグロイド(黒人)、コーカソイド(白人)、モンゴロイド(黄色人種)の三つの人種がある。ネオテニーに関してこの三種族を見ていくと興味深いことが分ってくる。ネオテニーの期間の長さはモンゴロイドが最も長く、次いでコーカソイド、最も短いのがネグロイドである。

幼児化は大人社会に極めて高い社交性を要求する。幼児化しないチンパンジーはオス間の競争が激しく、相互協力の集団は小さくて一時的になる。アフリカで乾燥した新しい住環境を生き延びたのは、固く結束した大集団で生活していける人類の祖先だったわけだ。

黒人や西洋人に比べてモンゴロイドの幼児化レベルが高いのは、モンゴロイドが寒さの厳しい環境で生き残るためだった。幼児を保護(幼児化維持)するためには大人たちが社交性や協調性を高め大きな集団を作ることが必要条件であった。そのため東洋人(黄色人種)は平等主義で社会主義的であり、西洋人は競争的で自由市場経済を志向する傾向にあるというわけだ。

(中略)

国際優生学会も初めは白人優位を研究するものだったが、研究すればするほど動物に近いのは黄色人種より白人であることが分ってきてしまった。ヒトはサルから進化して動物的な特徴を失ってきたと優生学でいうが、日本人に比べ白人は体毛が濃く、汗腺なども動物に近く体臭が強く、白人優位説には都合の悪い研究結果が出てきて学会も尻つぼみとなってしまった。

西洋文明の悪しき影響をあまり受けなかった明治の初めころ、来日した西欧人が等しく感心したのは「日本は子供の国だ、子供がとても大事にされている」ということだった。当時、西欧では子供は労働力として小さい頃から酷使されるのが普通で、西欧人にとって日本は子供の天国に見えたのであろう。これこそまさに日本がネオテニーだったことを証明しているのではないか。この日本の優れた環境(特に子供にとって)は急速に破壊され今日に至っている。

子供を育てる環境で大事なことは男女の役割分担である。男と女はそれぞれに得手不得手があり、自然にそれに従うのが子供にとって一番良いことなのである。浅薄で野蛮な西欧文明ではこの真理が分らず男女平等などと子供にとって最悪の環境を良しとしている。それを真に受ける西欧かぶれの学者や知識人が嘘を発表する。男女平等で子供は社会が育てる、女性はどんどん社会進出すべし、政治家も半分は女でなければならない等々。マスコミもこれを垂れ流し一般の人はそれを真に受ける悪しき構図となっている。

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なぜ日本人は幼児的なのか~日本文化のネオテニー的性格~

https://nogatera.hatenablog.com/entry/2020/09/06/001634

「どの文化でも、家族という集団は、利益追求のための機能的集団(ゲゼルシャフト)ではなくて、愛の共同体(ゲマインシャフト)である。ただ、多くの文化では、子供たちは、ゲマインシャフトから追い出されて、ゲゼルシャフトの中で大人として成熟していくのに対して、日本人は、いつまでもゲマインシャフトの温情主義的なぬくもりの中に留まろうとする。戦前の日本政府は、国“家”を、天皇を家長とする家族に喩えた。戦後、国家のイデオロギーが崩壊すると、日本人は、会社に家庭的なゲマインシャフトを求めた。そして、人見知りする幼児のように、日本人は、共同体内部では親密な人間関係を築きながら、よそ者に対しては、引っ込み思案な態度を示す。」

「周りが色白のお嬢さんばかりなら、一人だけガングロ・ヤマンバでいることは恥ずかしいことだし、周りが不良少女ばかりならば、一人だけ良い子ぶりっ子でいることは恥ずかしい。このように、恥は、鏡像的な他者との相対的な関係で決まる、浮き上がることを恐れる感情に過ぎない。」

「これに対して、罪は、超越的で普遍的な規範に違反したときの意識である。罪の文化の人は、もし自分が正しいことをしていると確信しているならば、周囲から笑われても、恥ずかしいとは思わずに、むしろ周囲が無知なのだと考える。日本人には、唯一神から与えられた、超越的で普遍的な規範はない。だから、しばしば主義主張に節操がない。かつて鬼畜米英を叫んでいた日本人が、一転して親米的になったのを見て、マッカーサーは、日本人の精神年齢が12歳だと言ったが、このように、罪の文化から見れば、恥の文化は幼児的に見える。アリストテレスも、『ニコマコス倫理学』の中で、恥は『若年者にふさわしい感情』だと書いている。」

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List    投稿者 seibutusi | 2020-11-06 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-11-05

ストレス耐性は親から子へ継承される ~腸-生殖腺の組織間コミュニケーション~

しかもこのメチル化やアセチル化のパターンは次世代にも継承されることがある。獲得形質の遺伝である。リンク

親の獲得した形質はいかにして子世代に継承されるのか? その仕組みに関する研究が進められています。

今回は、個体のストレス耐性の上昇が子世代へ継承される ことを明らかにした研究を見ていきます。

 

理化学研究所プレスリリース(2020年3月11日)  より。

ストレス耐性は親から子へ継承される
 -腸-生殖腺で起こるエピジェネティック情報の組織間伝達-

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター老化分子生物学研究チームの農野将功リサーチアソシエイト、宇野雅晴研究員、西田栄介チームリーダーらの共同研究チームは、親世代が獲得したストレス耐性能力が、エピジェネティック情報[1]の組織間伝達を介して次世代に継承されることを発見しました。

本研究成果は、さまざまな環境に適応する能力を速やかに子孫にのこす生物の生存戦略の一つ として、重要な知見となることが期待できます。

今回、共同研究チームは、モデル生物である線虫[2]を用いて、個体のストレス耐性制御において、各組織・臓器がどのように連携するのかについて解析しました。その結果、腸組織でのエピジェネティック変化が生殖腺におけるエピジェネティック変化を誘導し、この組織間コミュニケーションによって、個体のストレス耐性が上昇する ことを見いだしました。さらに、この腸-生殖腺の組織間コミュニケーションを介して、ストレス耐性の上昇が子世代へ継承されることを明らかにしました。

本研究は、科学雑誌『Cell Reports』(3月10日付:日本時間3月11日)にオンライン掲載されます。

20200311_1_fig
ストレス耐性上昇を子世代に継承させる腸-生殖腺の組織間コミュニケーション

背景

生物は、生体防御機構であるストレス応答[3]を活性化させることで、外界からのさまざまなストレスに適応している と考えられています。近年の研究によって、エピジェネティクス[1]の制御機構が個体のストレス応答において重要な役割を担う ことが明らかになりつつあります。エピジェネティクスとは、DNAやヒストン[4]への後天的な化学修飾を通して、塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現が制御される仕組みのことです。個体は環境刺激に対してエピジェネティック修飾を変化させ、遺伝子発現を調節することで、恒常性を維持していると考えられています。

ストレス応答とエピジェネティクス制御については、二つの興味深い現象が知られています。一つは、ある臓器で生じたストレス応答が、個体全身の統合的なストレス応答を誘導すること、もう一つは、環境刺激によって生じたエピジェネティック修飾が世代を超えて伝わる ことです。これらは、エピジェネティック修飾による個体のストレス耐性制御に、組織・臓器間コミュニケーションと世代間継承の仕組みが備わっていることを示唆しています。

しかし、どの組織・臓器で生じるエピジェネティック修飾がきっかけとなって、個体のストレス耐性を制御するのか、また、そうして獲得されたストレス耐性がどのように次世代に受け継がれるのか という点については、まだ多くのことが明らかになっていません。そこで共同研究グループは、エピジェネティック修飾因子による個体のストレス耐性を制御する組織間コミュニケーションと、世代を超えたストレス耐性の制御メカニズムの解明に迫りました。

研究手法と成果

本研究では、モデル生物である線虫を実験対象に用いました。線虫では、酸化ストレス[3]などのストレス応答に関わるエピジェネティック修飾として、ヒストンのメチル化[5]が知られています。

共同研究チームはまず、このヒストンメチル化を触媒するエピジェネティック修飾因子の中で、酸化ストレス耐性に関わるものを探索しました。その結果、ヒストンH3リジン4トリメチル化(H3K4me3)修飾因子のASH-2タンパク質[5]をコードするash-2遺伝子を全身でノックダウン[6]すると、個体のストレス耐性が大きく上昇することを見いだしました。これは、ヒストンのメチル化が減少すると、ストレス耐性が上昇することを示しています。事実、ヒストンの脱メチル化を触媒する酵素のRBR-2タンパク質[5]をコードするrbr-2遺伝子をノックダウンしてヒストンメチル化の減少を抑制すると、ash-2遺伝子のノックダウンによるストレス耐性上昇の効果は見られなくなりました(図1)。

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図1 ストレス耐性に関わる因子ASH-2とRBR-2

酸化ストレスである過酸化水素にさらした線虫の生存率を調べた。ash-2遺伝子をノックダウンした個体(赤丸)では、実験開始5時間目からの生存率が、コントロール個体(黒丸)よりも上昇した。この上昇効果は、rbr-2遺伝子を同時にノックダウン(赤三角)するとなくなった。

次に、ash-2遺伝子の欠損によるストレス応答に関わる組織を特定するため、組織ごとにash-2遺伝子をノックダウンする実験を行いました。その結果、腸組織あるいは生殖腺のどちらかでash-2遺伝子をノックダウンすると、個体のストレス耐性が上昇すること、そしてこの効果にはそれぞれの組織でのRBR-2タンパク質の機能(脱メチル化)が必要であることが分かりました。

そこで、腸組織と生殖腺の関係性について明らかにするため、これらの組織が個体のストレス応答に独立に関与するのか、それとも連携して機能を発揮するのかを、腸組織で特異的にash-2遺伝子を欠損させた変異体を用いて解析しました。その結果、腸組織でash-2遺伝子を欠損したときのストレス耐性の上昇に、腸組織だけではなく生殖腺のRBR-2タンパク質も必要であることを見いだしました。また、腸組織で特異的にash-2遺伝子を欠損した線虫は、生殖腺におけるASH-2タンパク質の機能(メチル化)が正常であるにもかかわらず、生殖腺でのヒストンメチル化レベルが減少することを明らかにしました。

これらの結果から、腸組織におけるヒストンメチル化の減少が、生殖腺のヒストンメチル化の減少を誘導するというエピジェネティック情報の伝達機構が存在し、この組織間コミュニケーションによって個体のストレス耐性が上昇する ことが分かりました。(図2)

20200311_1_fig2
図2 エピジェネティック情報を伝達する腸-生殖腺間コミュニケーションのモデル図

ゲノム編集の手法を用いて腸組織特異的にash-2遺伝子を欠損させると、ASH-2タンパク質の機能欠損によるヒストンメチル化減少の情報が、腸組織から生殖腺へと伝達され、生殖腺において脱メチル化酵素RBR-2の働きによりヒストンH3K4me3の脱メチル化が生じることで、個体のストレス耐性が上昇する。

~中略~

以上の結果より、腸-生殖腺間におけるエピジェネティック情報の伝達を介して、生存力の向上が子孫へと継承される ことが示されました。

今後の期待

本研究成果は、腸組織のエピジェネティック変化が生殖腺のエピジェネティック変化を誘導することで、酸化ストレスに耐性を持つという生存優位性が次世代へと継承されることを初めて明らかにしました。消化器官は、外界から摂取したさまざま物質が集積する場所であり、このような環境変化に晒される腸組織から生殖腺へと情報が伝達されることで、親と子の生存力を向上させるという、生物の生存戦略の一部として機能する可能性が考えられます。

また近年、環境ストレスにより獲得した形質が遺伝する例がさまざまな生物種で報告されつつありますが、そのメカニズムについては未解明な部分が多く、本研究成果で示したエピジェネティック情報の組織間伝達による形質の継承メカニズムは、当該分野において重要な知見となると期待できます。

補足説明

1. エピジェネティクス、エピジェネティック情報
DNAの塩基配列に依存しない遺伝子の調節機構をエピジェネティクスと呼ぶ。エピジェネティクスの分子基盤は、DNAのメチル化やヒストンのメチル化/アセチル化によりゲノムの特定領域に可逆的につけられた「目印」であり、このメチル化やアセチル化の情報をエピジェネティック情報と呼ぶ。

2 .線虫
線形動物門に属する体長1mmほどの土壌動物。学名Caenorhabditis elegans。体が無色透明であることから、生きたまま細胞の中を顕微鏡で観察できることや、動物では初めて全ゲノム配列が解読されたこと、発生時の細胞分裂パターン(細胞系譜)が全て分かっていること、遺伝学的な実験手法、遺伝子機能の操作が容易であることなどから、モデル生物として広く利用されている。

3. ストレス応答、酸化ストレス
熱ショック、活性酸素、高浸透圧、紫外線、放射線など、環境からのストレスに対して生体が示す反応。酸化ストレスは、活性酸素によって引き起こされ、脂質やタンパク質が酸化されることによる分子機能の低下、DNAの損傷による遺伝子変異などを招く。本研究では、過酸化水素に晒した線虫の生存率をストレス応答(酸化ストレス耐性)の指標とした。

4. ヒストン
DNAを巻き付けることで、長大なDNAを核内に納める役割を担うタンパク質。代表的なヒストンはH1、H2A、H2B、H3、H4の5種類があり、H2A、H2B、H3、H4の4種類(コアヒストン)が二つずつ集まってヒストン8量体を形成する。

5. ヒストンのメチル化、ASH-2タンパク質、RBR-2タンパク質
ヒストンはメチル化、アセチル化などさまざまな化学修飾を受け、これらがエピジェネティック情報として機能することが知られている。ヒストンのリジン残基またはアルギニン残基に生じるメチル化修飾は、ヒストンメチル化酵素と脱メチル化酵素によって可逆的に制御されており、遺伝子発現を促進または抑制する役割を持つ。ASH-2タンパク質は、ヒストンH3リジン4のメチル化修飾に働くタンパク質複合体の構成因子であり、遺伝子発現(メチル化)を促進することが知られている。逆にRBR-2タンパク質は、ヒストンH3リジン4のメチル基を特異的に脱メチル化する。

6. ノックダウン
mRNAの分解や翻訳抑制などの操作により、遺伝子機能の発現を大幅に低下させること。本研究では、線虫で一般的に用いられるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる手法を用いた。

 

(以上)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2020-11-05 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-10-30

男女の役割分担と駆動物質

■生物の基本的構造

・膜構造 (内外の分離)    (膜内部を安定状態にする)      (群れる)

・代謝機能  (エネルギー生成)    (ミトコンドリア/光合成菌の取り込み)   (捕食)

・複製機能  (子孫を残す)  (正確に次世代に情報を伝える)←(安定状態が必要)

上記の基本条件は、単細胞~多細胞~哺乳類~人類を通じて相似形で持っている。

単細胞 内膜に遺伝子+外膜と内幕の間に代謝機能(ミトコンドリア・光合成菌)

多細胞 内部に生殖細胞(安定)+外側に体細胞(変異:各部に変化する)

哺乳類 内雌外雄の構造 内部に子供とメス 外側に外圧適用する雄

  進化に連れて、群れは巨大化(分裂の危機を常に存在する)しており、群れを統合するには、人間は観念(事実情報の共有)によって統合しているが基本構造は変わっていない。

人類は、男(外圧適応態)と女(生殖存在:安定充足存在)の役割分担で、男は活力(期待と充足)を女からもらい、女は男に庇護される関係で集団は統合されている。

■男女の脳構造

  • 男性ホルモン(テストステロン)・・・男性は睾丸から、女性は卵巣や副腎でそれぞれ生産されます。男女みんなに攻撃性と集中力を向上させます。
  • 女性ホルモン(エストロゲン)・・・女性は卵巣から、男性は睾丸と副腎で生産されます。体内で骨密度を向上させて、血圧を下げて、コレステロール、脂肪代謝、体毛の発達を制御します。
  • 雌雄分化→内雌外雄(内側:安定存在≒生殖 外側:変異存在≒捕食)

【オスの役割】 闘争存在⇒外部環境の認識強化(脳拡大)⇒追求機能⇒観念機能 五感(触覚・味覚・臭覚・聴覚・視覚→男は多量な情報を持った視覚を基に総合判断する)→ドーパミン(欲望や渇望:快感)→ノリアドレナリン(精神:不快な刺激)→アドレナリン(肉体:筋力や運動能力を高める) 成功体験でご褒美のドーパミンが出る(新たな経験・未知で有る事)。この循環回路が記憶され塗り重ねで進化していく。 ⇒記憶して学習する⇒探求機能の獲得

【メスの役割】 充足存在:集団の安心基盤⇒親和能力・母性⇒人の活力源

オキシトシン(女性の方が圧倒的に多い)は他者との触れ合い(五感でも最も古い触覚)により愛情を感じることで、心地よい気分になるという点です。このスキンシップ(肌から毛がなくなり気持ちいい肌)等により幸せ感を創り出している。

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List    投稿者 seibutusi | 2020-10-30 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-10-22

【実現塾】人工物質による動物のメス化と人類の精子1/4に激減・・・なぜ止められないのか?思考停止の原因構造

メス化する自然2018年に調査した、精子数の激減の内容は以下の通り。

このままだと、人類は子を産めなくなり絶滅する。これほど重要な問題が、社会問題として大きく取り上げられることもなく、無意味なニュースばかりながすマスコミ。その背後で、精子減少はどんどん進行している。

それに対して、何の実害もなく、科学的にも極めて幼稚な理論である『二酸化炭素による地球温暖化仮説』に基づく規制は法制化され、私たちの行動を制限している。

なんでこんなことになるのか?

 

 

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List    投稿者 sinsin | 2020-10-22 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-10-22

生物として、人類は世界帝国を求めていたのでしょうか?

人類史を通じて、人類は世界帝国を求めていたのでしょうか?

「世界帝国」とは、多くの異なる民族、文明圏を包含する統一的支配圏を有した国家形態。

世界帝国は、生物史を通して考えると生物の大原則(生き残る為の多様性・共生関係)に反するものと言えます

多様な地域に根差した文化(文明)を一つの価値観で秩序化する世界帝国(一神教・共産主義・資本主義などの観念で統一する)は、「生物の大原則(多様な同類他者を創り・周りと共生関係を創る)」に反するものと言えます。

帝国/世界帝国とは(世界史の窓より)

>世界史上は、オリエント世界を統一したアッシリア帝国に始まり、アケメネス朝ペルシア帝国アレクサンドロスの大帝国ローマ帝国、中国の帝国、帝国がある。

>ヨーロッパにおける神聖ローマ帝国や、ユーラシア大陸の東西に出現した、モンゴル帝国、ティムール帝国、オスマン帝国、ムガル帝国、中国とその周辺を支配した、明王朝や清王朝などであり、

>近代における大英帝国やナポレオンのフランス帝国、ドイツ帝国、ロシア帝国、

>現代は、かつてのソ連や現在のアメリカ・中国など、世界的な覇権を争う覇権国家を「帝国」と称する。

 

同様な観念の結果、現在の生物界においても生物多様性も危機に晒され、生物の生存基盤も危うくなっています。

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生物の多様性 

地球上には多様な生物が生息している。科学的には約175万種と言われてもいるが、実際には300万種~1億1100万種が生存しているとの推計もされる。これらの生物は、必ず他の生き物とのつながりの中で生存している。

生物種の減少 ~恐竜時代以上の速さで進む絶滅~

これまでの地球の歴史の中で、多数の生物種が生存できなくなる「大量絶滅」の時代が何度かあった。主なものとして、オルドビス紀末(約4億3500万年前)、デボン紀末(約3億6000万年前)、ペルム紀末(約2億5千万年前)、三畳紀末(約2億1200万年前)、白亜期末(約6500万年前)の5つが知られている。 地球上の約9割以上の生物種が絶滅したペルム紀末や、隕石や彗星などの天体の衝突が原因として有力視されている恐竜の大量絶滅があった白亜紀末などをはじめ、自然状態で起こった絶滅はいずれも数万年から数十万年の時間がかかっており、その絶滅速度は年に0.001種程度であったと考えられている。 これに対して、現在の人間活動によって引き起こされている種の絶滅は、過去とは比較にならない速度で起きていることが問題視されている。1600年~1900年には1年で0.25種だった生物種の絶滅速度は、1975年以降、1年に40,000種と急激に上昇し続けている。

図1 大量絶滅と影響を受けた生物種(左)出典:Global Biodiversity Assessment, UNEP

図2 様々な時代における生物種の絶滅速度の比較(右)出典:国立環境研究所 五箇公一氏資料

生物多様性の重要性 ~低下しつつある生存基盤~

さまざまな姿・形、生活様式などの変異性を総合的に指す概念を「生物多様性」といい、生態系・生物群系または地球全体に、多様な生物が存在していることを指す。地球上には、既知の生物が約175万種、うち哺乳類約6,000種、鳥類約9,000種、昆虫約95万種、維管束植物約27万種など。未知のものも含めると、実際には300万種~1億1100万種が生存しているとの推計もされる。 生物多様性については一般に、(1)同じ種でも遺伝子が異なる「遺伝的多様性」、(2)様々な生物種が存在する「種の多様性」、(3)様々な生物の相互作用から構成される様々な生態系が存在する「生態系の多様性」という3つの階層で捉えられている。例えば、種の多様性が低ければ、環境変化などにより1つの種が絶滅したときに他の種も絶滅するリスクが高まるなど、3つの階層それぞれに多様性の保全が必要とされている。 生物多様性は生命の豊かさを包括的に表す広い概念で、その保全は、食料や薬品などの生物資源にとどまらず、広く人間に不可欠な生存基盤としても重要である。 反面、人間活動の拡大とともに、生物多様性が低下してきていることが、今日の大きな課題となっている。

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List    投稿者 seibutusi | 2020-10-22 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-10-22

森の未来は菌だけが知っている? ~森林と微生物の共存関係~

人類は、滅亡の危機意識を本能的に感じ、生き残りをかけ、自然の摂理に則った「日本文明(木の文明)→地域循環共生社会」に向かい始めたのではないかリンク

日本は国土の約70%を森林が占める森の国で、北から南にかけての気候の違い、地形の複雑さに対応して、様々な樹木が生育し、北方の針葉樹林や温帯落葉樹林から亜熱帯の常緑樹林まで、多様な植生が分布していますリンク

日本は実に様々な森林に恵まれています。このような多種多様な森林はどのようにして成立しているのか? とりわけ微生物との共存関係はどうなっているのか?

今回は、森と微生物の共存関係について書かれた記事より見ていきます。

academistJournal(2019年1月15日) より。

森の未来は菌だけが知っている – 森はどのように成り立ち、遷移していくのか

土のなかには、私たちがかつて想像もしなかった微生物の世界が広がっています。その目に見えない微生物たちがつくりだすネットワークは、私たちが普段目にしている地上の世界をも変えてしまう、驚くべき力を持っているのです。ここでは、その土のなかの微生物たちのはたらきを紹介します。

なぜ樹木は森を作るのか

樹木 には、固まって林をつくる種類もあれば、人間が植えなければ林をつくらない種類もあります。たとえば、どこの野山でもマツ林(松林)は普通に見られますが、サクラ林モミジ林はありません。では、林を作る樹種と作らない樹種は、一体、何がどのように違うのでしょうか。その答えは、見上げるように大きく育った樹木ではなく、そっと視線を下ろした足元で見つかるのです。

地面から数センチのところには、実生(みしょう)と呼ばれる木の赤ちゃんが生えています。その実生がぐんぐん成長して成木となり、さらに次世代の実生の定着を促進するとき、ひとつの樹種だけの林ができます。その過程のなかで、土壌環境に変化が起き、マツの下の土壌にはマツの実生の成長を助ける「共生菌」が増えます。さらに、その共生菌が次世代の育成を助け、このサイクルが繰り返されることで、マツ林ができあがるのです。

一方で、サクラの下には、共生菌と異なり寄生菌が土壌に蓄積し、その実生の成長を阻害するため、寄生菌に影響されにくいサクラ以外の実生でなければそこに定着することができません。野山でサクラが固まって生えることなく、森の中でぽつりぽつりと疎らに生えているのはそのためです。

このように、樹木はそこに存在するだけで土壌環境に影響を与え、その土壌環境の変化が、将来その場所で育つことができる樹木を決定づけるところまで影響を及ぼします。要するに、樹木は足元に蓄積する「土壌微生物」と相互作用しながら変化し、その結果、時間とともに森を構成している樹木も移り変わる のです。
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秋の深まりとともに山の色が夏らしい緑から秋めいた黄色やオレンジ色に変化し、紅葉のモザイク模様ができあがるのは、土壌微生物によって豊かな樹木の多様性が守られているからである。

樹木の多様性を守り、森林の変化を促す原動力「菌根菌」

土壌にはさまざまな微生物が存在し、実生を待ち構えています。その代表格といえるのが、「菌根菌」という仲間の共生菌です。菌根菌は、根の表面付近や内部に侵入して生きる「かび」や「キノコ」の仲間です。これらの菌類は水分や土壌の栄養分を吸収して植物に与え、一方で植物は糖を菌類に与え、互いに役立つ関係を持っています。このような関係を菌根共生といいます。

菌根菌は糸のような足(菌糸)を方々に伸ばし、地面の中で網目状の構造(ネットワーク)を作っていますこのネットワークにつながることは、実生の定着と成長を左右する重要な条件です。しかし、ネットワークにつながれば何でもよいというわけではありません。樹木が共生する菌根菌はいくつかの種類に分類でき、代表的なのは、サクラ、モミジ、ツバキやクスノキなどと共生する「アーバスキュラー菌根菌」、アカマツ、コナラ、シイやアカシデなどと共生する「外生菌根菌」という2つの菌根タイプに分類され、これらはそれぞれ異なるネットワークを作っています。

樹木の種類によって、同じ菌根タイプのネットワークにつながれば成長できる樹種もいれば、同じ菌根タイプであり、かつ同種の樹木のネットワークでなければ成長できない樹種、どのような菌根タイプの樹木のネットワークでも成長がそれほど変わらない樹種がいます。そうした特徴に応じ、どの樹木の種類の実生がどのような条件下で生き延びることができるのかが決まります。

アーバスキュラー菌根菌と共生する樹種と比べ、外生菌根菌と共生する樹種の方が菌糸のネットワークを広げる能力が高いため、日本の森では、アーバスキュラー菌根菌と共生する樹種よりも外生菌根菌と共生する樹種が優占しています。アーバスキュラー菌根菌はキノコを作りませんが、外生菌根菌の多くはキノコを作るため、日本の野山で多種多様なキノコが見られるのは菌根菌のはたらきのおかげともいえます。
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キノコの多様性。これらのキノコを作るのはすべて外生菌根菌である。

このように、菌根菌が森林における樹木の多種共存を維持したり、樹種を置き換える遷移(樹種の移り変わり)を促進したりします。菌根菌は、樹木の多様性を守りながらも、森の変化の原動力となる大きな役割を果たしているのです。

森林から見た私たちの暮らし

近年、未曾有の自然災害が世界各地を襲っています。そうした災害から私たちの身を守ってくれるもののひとつが自然の森です。私たちの研究では、土壌に生息する微生物のはたらき(土壌微生物が原動力となる環境変化)を理解することではじめて森の成り立ちと遷移を理解できることを示しました。よって、菌根菌は、さまざまな生態系サービス(炭素の蓄積や水源の涵養、防災、食料や木材生産などの人類の利益になる生態系の機能)の重要な基盤となります。

003-8

美しい森は豊かな土壌微生物の世界に支えられている。

森をきちんと管理していくためには、森がどのようにできているのかを知ることが重要です。土壌微生物のはたらきから森を捉えるアプローチは、将来、森林を守ったり、再生させたりするうえでスタンダードになっていくかもしれません。

さらに、土壌微生物が大切となるのは、森林だけではありません。農地においても重要です。1種類の農作物だけでは豊かな土壌微生物を育むことはできません。しかし、混作をすることで、農作物の多様性が豊かな土壌微生物相を作り出すことにつながります。植物とともに豊かな土壌を育むことが、森林や農地が提供する生態系サービスを向上させ、人々の暮らしを支えることにつながるのではないかと考えています。

 

(以上)

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List    投稿者 seibutusi | 2020-10-22 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-10-16

男女の役割分担からドーパミン(快感)とセロトニン(安心)及びオキシトシン(愛情)の関係

 男の男たる由縁は、追求機能⇒観念機能の獲得。

>肉体的危機対応(アドレナリン)→【精神的危機対応(やる気を高めるノルアドレナリン)→成功体験の御褒美(快感をもたらすドーパミン)⇒記憶して学習する≒探求機能の獲得】の流れと考えます。

又、男女の役割分担からドーパミン(快感)とセロトニン(安心)及びオキシトシン(愛情)の関係を調べると、

男性は外圧に適応する為に、ドーパミン及びセロトニンが優位で、女性は生殖機能を保持する為にオキシトシンが優位となって居ると考えられます。

ドーパミンは『欲望や渇望』という形でストレス生み出し、それが物事への意欲やモチベーションへとつながっている。しかし、快楽の方法を間違えると、お酒やギャンブルの強い依存症になります。

そこで、セロトニンの登場です。

セロトニンは不安や恐怖といった感情を抑え、精神を安定させる役割を担っています。ノルアドレナリンやドーパミンの分泌をコントロールして暴走を抑えます。

次に、男女融合のオキシトシンについてです。

オキシトシン(女性の方が圧倒的に多い)は他者との触れ合いにより愛情を感じることで、心地よい気分になるという点です

このスキンシップが人類の皮膚から体毛がなくなった理由かもしれません。

参考資料を下記に転載します

_______________________________

セロトニンとドーパミンとノルアドレナリンは脳内や中枢神経系で働く神経伝達物質のうち、モノアミン神経系と呼ばれる神経伝達物質です。この3つの神経伝達物質は、人の感情や精神面、記憶や運動機能、睡眠といった、人体の重要な機能に深く影響を与えているため、しばしば三大神経伝達物質と表現されることがあります。リンク

役割と特徴

セロトニンとドーパミン、ノルアドレナリンそれぞれの働きの特徴などをご紹介します。

ドーパミン

役割・快楽を司り報酬系と言われる神経伝達物質・向上心やモチベーション、記憶や学習能力、運動機能に関与・ノルアドレナリンの前駆体

特徴分泌が不足すると、物事への関心が薄れ、運動機能、学習機能、性機能が低下する可能性があります。ドーパミンの減少がパーキンソン病の原因とも考えられています。一方、ドーパミンの分泌が過剰だと、統合失調症や過食症、その他アルコール依存症やギャンブル依存症など様々な依存症を引き起こす可能性があります。

ノルアドレナリン

役割物事への意欲の源、生存本能を司ります。ストレスに反応して怒りや不安・恐怖などの感情を起こすため、「怒りのホルモン」や「ストレスホルモン」などの異名を持ちます。また、交感神経を刺激して心身を覚醒させる働きがあります。

ノルアドレナリンはアドレナリンの前駆体でもあります。

特徴分泌が不足すると、気力や意欲の低下、物事への関心の低下など抑うつ状態になりやすいとされ、うつ病の原因とも考えられています。逆に、分泌が過剰だと、怒りっぽく、イライラ、キレやすくなり、躁状態を引き起こします。血圧が上がるため、高血圧症や糖尿病の原因になるとも言われています。

セロトニン

役割精神を安定させる役割を担っています。ノルアドレナリンやドーパミンの分泌をコントロールして暴走を抑えます。咀嚼や呼吸、歩行といった反復する運動機能にも関与しています。

特徴セロトニンが不足すると、ぼーっとしやすい、鬱っぽくなる、パニックを起こしやすいなどの症状が現れます。投薬などで過剰になると、精神が不安定になったり、発汗や発熱、振戦(震え)など、セロトニン症候群という症状が起こることがあります。

相互の影響

セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンは単体でもそれぞれ心身に重要な影響を与える働きをしています。そして、何より重要なのは、これらの物質は、それぞれ相互に影響を与え合う関係にあることです。セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンがバランスよく分泌されることで、心身のバランスも保たれています。

セロトニンとドーパミン

セロトニンとドーパミンの関係は、セロトニンがドーパミンの働きを制御することで保たれます。物事への興味や関心を得るためのモチベーションは、ドーパミンが放出されることで得られる「快感」によって生み出されていると考えられています。

人類が海に出て未知の大陸を目指したのも、アポロが月へ行ったのも、達成した時に得られる快感があったからこそだと考えられますし、こうして更なる快感を求めて人類は進化を続けて来たとも言えます。

一方、ドーパミンによる快感だけを追い求めると、際限なく満足できない状態になります。そんなドーパミンの働きにブレーキをかけて、正常な精神状態、つまり平常心を保つ役割をするのがセロトニンです。

ドーパミンが人類を進化させてきた未知への飽くなき探究心の源だとすれば、セロトニンはそれを制御する安全弁であり、モラルなどを守るための自制心として働いています。

こうしたセロトニンとドーパミンの分泌バランスが崩れると、心身に様々な影響が生じます。ドーパミンの分泌が過剰なことで起こると考えられている疾病の一つに統合失調症があります。統合失調症の治療には、セロトニンやドーパミンの働きに作用のある薬剤が広く用いられています。

また、セロトニンが弱まりドーパミンが暴走すると、アルコールやパチンコなどの依存症に陥りやすくなると考えられています。

セロトニンとノルアドレナリン

セロトニンとノルアドレナリンには、ノルアドレナリンによる身体の興奮をセロトニンが鎮静していると言う関係があります。

ノルアドレナリンは、主にストレスに反応して分泌される物質で、ストレスに対して怒りや恐怖、不安などの感情の反応を示します。これは主に、例えば人が獣に襲われたときに、怒りで身体を奮い起こして反撃するのか、恐怖によって逃げるのかと言った、生存のための適切な行動の選択、またはそうした状況に陥らないために、常に不安を抱くことで、注意力や集中力を高めることを促す原始的な本能によるものです。

ノルアドレナリンは脳を覚醒させ、集中力や判断力を高めますが、一方で興奮作用があるため、分泌されると怒りっぽく、イライラしやすくなったり、躁状態になりやすくなります。

ノルアドレナリンが過剰に働こうとするとき、その働きを抑えて精神を鎮静させるのがセロトニンです。セロトニンは抗ストレス作用を持ち、怒りや恐怖と言った不安を鎮めて、感情を安定させています。

ドーパミンとノルアドレナリン

「快楽を司るドーパミン」と「怒りのホルモン・ノルアドレナリン」には、非常に密接な関係があります。

ドーパミンとノルアドレナリンはチロシンと言う同じアミノ酸から作られる物質で、カテコールアミンという神経伝達物質に分類されます。また、ドーパミンはノルアドレナリンを合成する前駆体でもあり、ノルアドレナリンの合成にはドーパミンが必要になります。そのため、これらの物質のトランスポーターや代謝・分解に関わっている酵素などの多くが共通しています。

ドーパミンとノルアドレナリンはストレスに強い関わりがあります。ストレスを受けると、ストレスに抗うためにノルアドレナリンが分泌されますが、同時にドーパミンも分泌されやすくなります。

ストレスを解消する手っ取り早い手段が、ドーパミンを分泌させて快感を得ることだからです。ストレスは食事をしたり、運動をしたり、たばこを吸ったりアルコールを飲んだりすることで、ドーパミンを分泌させて解消(麻痺)させることが出来ます。

そのため強いストレスを受け続けると、その解消手段として快感を得られる何か(人によって、環境によって対象は異なる)を体が欲しやすくなります。ドーパミンが暴走すると、やがてアルコール依存症やギャンブル依存症などの依存症へと繋がります。

また、ノルアドレナリンが分泌されるストレスと、ドーパミンが分泌されるストレスには、一定の違いがあります。

ノルアドレナリンが反応するのは、暑い/寒い/痒い/痛い/苦しい/つらい/悲しいなど、肉体や精神が感じる「不快な刺激」に対してです。(※ストレスは必ずしも実感出来るものとは限りません。)

一方、ドーパミンは『欲望や渇望』という形でストレス生み出します。何かをしたい、何かが欲しいといった欲望は、達成されないうちはストレスでもあり、それが物事への意欲やモチベーションへとつながっているのです。

ただし、ドーパミンの生み出す欲望が行き過ぎると、法を犯してでも目的を達成しようとするなど、間違った方向へと進んでしまうかもしれません。

オキシトシン

人体に与える影響

オキシトシンは、他者との触れ合いで分泌されるという特徴を持っています。よく「人と人との触れ合いは大切だ」という言葉を耳にしますが、オキシトシンの分泌という面から考えても正しい言葉だったのですね。

どのような効果があるかというと、セロトニンと同じくストレスの緩和や学習意欲を向上させるといった効果があります。一見セロトニンと同じ効果に見えますが、ストレスを緩和させる方法に違いがあります。

セロトニンは不安や恐怖といった感情を抑えることでストレスを緩和しますが、オキシトシンは他者との触れ合いにより愛情を感じることで、心地よい気分になるという点です。

オキシトシンが不足するとどうなる?

オキシトシンが不足してしまうと、他者から愛情を感じ幸福感や信頼を生まれにくくなってしまいます。このような状態になると、日常生活にとても大切な対人コミュニケーションに悪影響が生まれてしまいます。

具体的には、気分が落ち込む・他者に対して不信感を抱く・消極的になる、など人間関係が悪くなってしまう恐れがあります。

増やす方法・軽い運動・バナナなどを食べる・日光浴をする・激しめの運動・たくさん笑う・小さな目標を達成する・恋人や友人とコミュニケーションを取る・感動的な映画や漫画を見る・動物とふれあう

男女で違う?男性のオキシトシンの働き リンク

【幸せホルモン】オキシトシンは、その本来の効果が子宮収縮などにもあげられるように、女性が多く分泌し高い効果を発揮するホルモンとして知られています。それでは男性には一切効果がないのでしょうか?そんなわけではありません!というのを本記事では紹介していこうと思います。
男性女性におけるオキシトシンの違い

そもそもこれから下記に挙げる男女のオキシトシンの効果の違いというのは、女性がエストロゲンというホルモンを多く分泌するのに対し、男性はテストステロンというホルモンを多く分泌する性質の違いから来ています。女性ホルモンであるエストロゲンはオキシトシンを増幅させる効果を持つのです。そもそもの量が女性に比べて男性は少ないということなんですね。

セックスの時の男女の感情の違い

「セックスの前、最中はあんなに愛し合っていたのに終わった途端に男性が醒めてしまった・・・。」みたいな話をよく耳にしないでしょうか。この話にも実はオキシトシンが関わっているのです。

オキシトシンは相手への愛情、信頼の大きさに関わるホルモンで性欲が高まっている時は男女ともにこの濃度が高く放出されるのですが、男性はなんと、生殖機能が反応した直後にこの濃度が急激に下がってしまうのです。一方女性の方はというと・・・。行為中にその濃度を高め続け、行為後にはその濃度が最高潮に達しているのです。

相手の男性が突然冷たくなった、結局ヤリたかっただけなのか、などと心配になる女性も、行為後に抱きつかれたりなどめんどくさいなあと思ってしまう男性も相手のホルモンの違いを知ることで相手の理解につながるのではないかと思います。

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List    投稿者 seibutusi | 2020-10-16 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2020-10-15

環境電流と電気合成生態系 ~電気を食べる生物はいつからいたのか?~

熱水噴出孔から噴き出す熱水には、電子を放出しやすい硫化水素や水素が多く含まれ、放出された電子が熱水噴出孔の硫化水素の中を移動する事で電気が流れ、それにより持続的にエネルギーが供給されていたと考えられています。<「最初の生命は、深海の熱水活動域で電気をエネルギー源として生まれた」

前回 「電子だけを食べて生きる電気生命体」~電気エネルギーと生物~   に引き続き、生物と電気エネルギーはどんな関係があるのか?

今回は、環境電流というもの、環境電流に影響を受けている可能性のある生態系(電気合成生態系)について、日本農芸化学会の記事より見ていきます。

ポイント

環境電流とは、主に深海熱水噴出域の海底面で観察される発電現象。熱水から海水へと電子が移動するときに生じる電流。

・化学合成生物や光合成生物に加えて第三のエネルギー獲得機構をもつ“電気合成生物”の位置づけが提案されている。

・環境中には知らないだけで電気はいろいろな所に流れており,陸生の電気合成生態系も存在するかもしれない。

 

公益社団法人日本農芸化学会(2018-12-20) より。

環境電流と電気合成生態系 ~エネルギー代謝の原型? 進化型?
  電気を食べる生物はいつからいたのか?

2015年,理化学研究所と東京大学の共同研究チームが,「電気で生きる微生物を初めて特定」というニュースリリースを論文発表とともに行った(1)。この研究内容は,さまざまなメディアで報道されて注目を浴び,学生時代に当該微生物を別の研究で用いていた筆者にとっても興味深い内容であった。

この実験は端的に言うと,実験室レベルで外部からのエネルギー供給を電気だけにして微生物を生育させることができたということであるが,これを環境中に落とし込むと,環境中で電気だけが供給される環境はあるのか?それがなければただの人工的なご飯の上げ方を見つけただけという話にもなりかねない。しかしながら,そうではなく,本稿の主テーマの一つである環境電流という話に結びついてくる

環境電流は一部の研究者の間で使われている言葉であり,サイエンスとして広く認知されている言葉ではないかもしれないが,シンプルにイメージしやすく,この現象を発見した研究者も使っているのでこの言葉を使わせてもらう。

環境電流とは主に深海熱水噴出域の海底面で観察される発電現象を指し,海洋研究開発機構と理化学研究所の共同研究チームが2017年にプレスリリースを発表している。海水中には酸化的な物質が含まれ,噴出している熱水には還元的な物質が多く含まれており,熱水噴出孔のチムニー(筒状の堆積物)が導電性の高い硫化鉄を多く含むことが知られていたが(2),共同研究グループは深海で実際に深海熱水噴出域付近の堆積物の酸化還元電位を測定するとともに,実験室レベルでも再現試験を行い,熱水から硫化鉱物を介して海水に電子が渡っていることを証明した(3) (図1)

熱水中の還元的な物質(硫化水素や水素)は酸化されやすく,海水中の酸素は還元されやすい.したがって,導電性鉱物からなる熱水噴出孔堆積物を介して,熱水中の硫化水素や水素が酸化され,海水中の酸素が還元される際に電子が移動している.すなわち,海水から深海の熱水噴出孔周りの堆積物に対して電流がピリピリと流れていることになる.電気風呂みたいで深海は案外心地いいのかもしれないというオチではなく,最初の段落で出てきた電気で生きる微生物との関係性に結びついていく.

 

無題
図1  深海熱水噴出域での環境電流と電気合成生態系の存在仮説

還元的な物質を含む熱水から導電性鉱物からなる熱水噴出孔堆積物を介して海水へと電子が移動しており,このときに生じる電流を環境電流と便宜的に呼んでいる.このような熱水噴出域では,化学合成生物が一次生産者となる生態系がよく知られているが,電気合成生物や電気共生系がそこに加わると環境電流を一次エネルギーとする電気合成生態系の存在の現実味が高まる.

人工的な環境ではあるが,電気を唯一のエネルギー源として生育できる微生物がおり,環境中には場所が限られるけれども連続的に電子が供給される場所があるとなれば,自然環境中で環境電流をエネルギー源として使って生きている生態系はないだろうか? という話になる。

電気エネルギーを唯一のエネルギー源として生育できる生物については,化学物質のエネルギーを利用できる化学合成生物や光エネルギーを利用できる光合成生物に加えて第三のエネルギー獲得機構をもつ“電気合成生物”としての位置づけが提案されている(図1)

少し勘違いする人がたまにいるので少し補足しておくと,電気合成生物というのは,電気を合成する生物ではなく,電気エネルギーを使って自身の生体材料を作り上げていく生物ということ である。微生物燃料電池の話と混同しないように注意が必要である。

この電気合成生物という概念にぴったりマッチするのは,最初に出てきた鉄酸化細菌(Acidithiobacillus ferrooxidans)だけであるが,本菌は深海由来ではない。一方で,深海の海底電流と熱水噴出孔付近の比較的豊かな生態系を考えると,熱水中の化合物に支えられた化学合成生物を生産者とする生態系の中にその環境中で持続的に供給される電気を使っている電気合成生物が隠れており,実は電気合成生態系でもあるのではないかという仮説へとつながっていく(図1)

また,分断された代謝経路をもつ2種微生物間で導電性ナノ粒子を介した電気共生が証明されていることから(4),電気合成生物と化学合成生物と従属栄養生物の共存する生態系がそこに存在しても不思議ではない。
環境電流と電気合成生態系の例を取るとそれは深海だけの話であり,深海の研究者以外にとって魅力的ではない話になりかねないので,身近な環境電流 についても触れておきたい。たとえば,迷走電流という言葉をご存じだろうか? 電車はパンタグラフを通してその上空を走る架線に触れて電流を受け取り,レールを通して変電所に戻しながらレールの上を走っている。

この過程で,レールから電流が漏れ出すことがある。この電流を迷走電流と呼び,迷走電流は付近の埋設管などの腐食に関与することがある。また,もっと身近なところで言うと,家の中の家電,洗濯機や冷蔵庫にはアース線が取り付けられている。これは,漏電してしまったときに感電を避けるために,電流をアース(大地)に散らすためのものである。

また,も電気である。雷が多い年はキノコがよく取れる という話があり,それをヒントにシイタケ栽培時に高電圧のパルスをかけて生産性を向上させたという研究もある(5).もちろん,シイタケはその電気エネルギーで生育しているわけではない.とにかく,環境中には知らないだけで電気はいろいろな所に流れており,陸生の電気合成生態系も存在するかもしれない.

~中略~

この電気合成システムは,生物の歴史上,いつから自然界に存在したのだろうか? 潤沢なエネルギーを含む有機物を使う化学合成従属栄養性や大気中の酸素濃度を爆発的に増加させた酸素発生型光合成よりも先に存在したのだろうか? それとも,複雑なエネルギー獲得機構を進化させていくなかで,化学合成や光合成の進化形として確立されたのだろうか? 筆者はなんとなく前者であるような気がしているが,読者の皆様はどうだろうか? まだ答えのない現象であり,個人として空想にふけるのも良いし,研究仲間と議論の種にしていただくのも良い.きっとそうやってサイエンスは熟成していくのだろう。

(引用文献 (1)~(6)は元記事 リンク を参照願います。)

(以上)

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List    投稿者 seibutusi | 2020-10-15 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments »