前回の投稿に続き、オランウータンの性について扱います。
今回のテーマは「オランウータンが際立って性収束が強いのはなぜ?」です。
チンパンジーの交尾は15秒程度なのに対して、オランウータンはなんと対面で40分も交尾を行います。
チンパンジーやゴリラは排卵時にしか交尾いない=「繁殖のための性」であるのに対して、オランウータンは排卵に関係なく、交尾をする。つまり「繁殖を超えた性」に発達したのです。なぜここまで性収束が強くなったのか?追求していきます。
■「繁殖の性」から「充足の性」への進化
テナガザル系は、発情(排卵)に季節性がなくなり、なおかつ発情時期を長期化させるなど、共通して性機能の進化が見られます。
その後大型類人猿(チンパンジー、ゴリラ)になると、排卵時に性器上皮を膨張させ、排卵のサインを示す種が登場するなど、一段と雌の性機能は進化していきます(このサインを示すものだけが優先的に交尾の対象となり、オスに対する挑発のサインでもある)。
しかし、チンパンジーやゴリラは排卵日前後数日しか交尾しない(かつ交尾時間も短い)という点では、一般哺乳類と同様に、繁殖の性にとどまっているともいえます。
※注:ニホンザルやヒヒの尻が赤いのは主としてオス。メスに対するアピールであると同時に、オス間の優劣関係を示す
それに対して、オランウータンは排卵と関係なく交尾を行います。しかも、他のサルが後背位であるのに対し、対面(いわゆる正常位)でなおかつ、長時間の交尾を行うのです。これらが示すことは、オランウータンは繁殖のための性から、充足のための性へと一大変化を遂げたということです(密着充足)。
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いうまでもなくこれは人類と共通しており、オランウータンが人類の祖先(両者に共通祖先がおり、そこから人類が進化した)であることの有力な根拠であるといえます。
※注:ボノボも交尾回数が多く、地上で正常位を行うなど、性収束していますが、主として性器のこすり合いなど粘膜刺激中心で、交尾時間そのものは長くない(粘膜刺激では駆動物質は生みだされない)。
■なぜここまで性収束が強くなったのか?
これのらオランウータンの性収束の強さを説明するものとして、次のような仮説が考えられます。
オランウータンと他のサルとの違いとして、
①飢餓の圧力を経験していること(それに対応する機能を備えていること)
②授乳期間(母子密着期間)が著しく長いこと
の2点が挙げられます。つまり、オランウータンは飢餓の圧力と(それに加圧された種間闘争の圧力)に直面する中、密着充足による活力とエネルギーの上昇に突破口を求めたのではないか?という仮説です。
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現代人には性は「エネルギーを浪費する」という印象がありますが、飢餓の中エネルギーを浪費するならそこに収束はしません。また、浪費しないというだけなら睡眠時間を長くするのが手っ取り早いです。
原猿以降のオスメス間には、期待応合関係が存在しますが、その土台をなす「相手同一視」については、オスとメスは存在様式が異なり「部分同一視(深底同一視)」にとどまっていました。しかし、飢えの圧力はオスメスに共通した強い外圧であり、そのことによって、初めてオスメス間で「完全同一視(一体化)」が可能になりました。
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この一体充足(密着充足)は、母子間の密着充足(による相互充足=エネルギーの交換)を土台にしていますが、一体充足の性には、共認充足にオスメス間の性引力が加わって、さらに充足エネルギーが強化されたのではないでしょうか。
一体充足の性は交換したエネルギーを、さらに増幅させる機能もあると思われますが、その仕組みを明らかにするには、さらに「生体エネルギーとは何か?」の解明が求められます。
一体充足の性には、相互にエネルギーを与え合う(交換・増幅させる)機能があります。それがオランウータンが性収束した理由です。
※その意味では、ボノボの性収束は周囲から隔絶された地域で、種間闘争の圧力がなくなった中での、解脱⇒快感収束であるのに対し、オランウータンは種間闘争と飢えに対応するための活力上昇⇒一体充足のため、根本的なベクトルが異なります。
オランウータンの性収束は、オスメス間の期待と応合に基づく充足追求の極地でもあるとも言え、もし人類がオランウータンから進化したとすれば、それが過酷な外圧下にあった初期人類が生き延びることを可能にした、重要な土台の一つを形成していることになります。