2006-08-28

今日(8月28日…

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今日(8月28日)の日経新聞の夕刊一面に、“ゼロ歳「おけいこ」”と題して、英才教育に奔走する母親達の姿がレポートされていた。母親も大いに不安なのだろうが、子供たちの将来にちょっと危機感を持った。
人間の赤ん坊の脳の重さは400g。これは体重が10倍もある大人のチンパンジーの脳と同じ重さ。それが、わずか1年ほどで2倍の800gに、さらに4年目で1200gに増加し、6~7歳になるまでにほぼ大人と同じ重さになる。
ところが、この同じ時期に大量の神経細胞(ニューロン)が死滅し、シナプスが消失していく。
>生まれてまもなくの幼少期に、実は脳細胞は半分近くが死滅しているのです。残った半分の脳細胞は、豊かに発達し、神経回路も複雑になってゆきますが、この急増も4-5歳をピークに衰え始め、先に述べたように、15歳ころには増殖は停止してしまう。リンク
Huttenlocher,P.R.1990年のシナプス密度の調査報告によると、出産時は0.3×10の12乗/㎝3であったのが、生後8ヶ月には2.5×10の12乗/㎝3に急増する。まだ一歳にもなっていないのにそこから一転して急激に下がり始め、2歳では2.0×10の12乗/㎝3に、そして10歳には半分の1.2×10の12乗/㎝3にまで半減してしまう。それから多少の上昇するけれど、老化するまではほぼその密度のまま推移することになる(参考:リンク)。
「三つ子の魂百まで」とよく言うけど、このニューロンの急激な増加と、生後八ヶ月から始まるシナプスの刈り込み(急激な消失)は、その後の記憶や知性・学習能力に多大な影響を与える。要するに、この時期、受ける外圧(経験)と関連しながら、使われる回路が残りあまり使われない回路が消失していくという形でドラスティックに最適化に向うわけだ。
一般には、音楽・芸術にしろ、語学にしろ、勉強にしろ、頭のやわらかいうちに吸収すれば才能を伸ばすことができる、と信じられていおり、それが「英才教育」の根拠になっているが、確かに「音感」など特定の領域で才能がもともとある子供にとっては有効な場合もあるらしい。しかし、偏った幼児教育は、大抵の場合、それほど有効に機能しないばかりか、子供の正常な精神発達を阻害する。
というのも、その時期の幼児の脳は、人間として仲間・社会の中で生きていくための能力を習得することを必要としてそれに対応して急激に変化しつづけている。相手の表情から相手の気持ちを読み取る力や、それに同化することで自分の気持ちや意思を相手に伝えるすべを体感の中から学んでいくその重要な時期に、極めて限定的な、しかも偏った(現実の社会に適応する上で最大の外圧=同類圧力を無視した)能力を身につけることを親に強制される(当然いいことと思い込まされて取り組む)わけだ。
実際は親の見栄(相対優位の欠乏)や不安の解消など自我充足のために英才教育を強要する母親と、それを金儲けのネタとしている幼児教育業界の方々は、このような教育が子供の脳に取り返しのつかない弊害となり、それが人と関わる能力を未熟にし、ひいてはひきこもりやうつの原因になっていることを考えていくべきだと思う。併せて、親の「過期待」が原因で自己攻撃にはしる人が多い世代:特に現在の20代後半から30代前半(?)は、その原因の一つに上記のような外圧を無視した偏った幼児教育の影響があったかもしれないことを総括し、今後はよりスキンシップや仲間との関係、そしてより多様な外圧に対応する能力を育成するにはどうするかということに頭を使っていく必要があると思う。
↓ここに、これに関連して興味深い記述を見つけた。
リンク
>不登校児含めて現在の若者でうつ症状に陥る人間の大半は『小児うつ』の経験者らしい。
>小児うつとは5歳くらいまでに現れる症状で、行動の不活発、母親の目を見て話せない等のコミュニケーション不全が現れ、一見自閉症とよく似た症状を示す。
>この『小児うつ』の原因の大半は5歳位までに夜十分に睡眠をとっていない、もしくは睡眠時間が不定期な状態に長期晒されることによる。(例えば託児所に子供を預け、夜遅く子供を迎えに来るケースなどに発生しやすい)
>そのような不十分な睡眠状態が続くと脳は不活性状態になりやすい。というのは、このような状態では、脳内に脳細胞の休息を命ずる物質が分泌される。加えて抑制物質であるセロトニンが分泌されることにより脳内伝達物質の分泌量そのものが抑制される。脳内神経が最も発達する3歳くらいの時期にこのような不活性状態が続けば、脳内の神経ネットワーク形成が不十分となり、その結果その後も脳活動そのものが不活性な状態が恒常化する。

母親が“英才教育幻想”に獲り付かれると、必然的に子供への親和が犠牲にされ、その評価の厳しさが不安を常態化させる。しかし、母親は子供にとっては最大の親和対象であるので、潜在思念や欠乏を犠牲にしてでも母親の期待に応えようとする。ここに葛藤が生じる。
これについては「うつのメカニズム」として既にここに書いたが、
リンク
このような脳の状態が常態化することで、幼少期に脳に癖のようなものができあがってしまい、後々まで致命的な影響を与えるということだろう。
>不登校児たちに対しては(特に小児うつ経験者の場合)、先ず最初に睡眠時間のコントロール(決まった時間に眠る)の方法を教え、訓練する。次に電話で話す訓練を経て目を見て話す訓練へと移行させる(共認回路を使う訓練をする)。更に体の姿勢が一定に保たれるような座り方や机との間合いなど姿勢を保つ訓練を行う。などが治癒上経験的に有効らしい。
やはり、この状態を克服するにも、現実の人間関係における共認充足しかないようである。
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  投稿者 staff | 2006-08-28 | Posted in 未分類 | 5 Comments » 

「母子手帳」に添った子育ては危ない?!

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’90年くらいからアトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー症状が急増してきて問題になっている。既に、極めて身近な問題になっており、’98年に日本 学校保健会が行った全国調査では、アレルギーと診断されている子どもはなんと“4割”を超えているというから驚きだ。実際、友人の子供にもアトピー性皮膚炎を患っている子供は珍しくはなく、アナフィラキシー(急激なアレルギー症状によりショックを起こし死ぬこともある)を起こすので母親が神経をすり減らしながら食事制限をしている、といった人も友人にいる。
2005/1/31の東京新聞に、このアレルギーの急増の原因についての記事があった。
かなりショッキングだったので紹介する。
変温化する子ども 『早期の離乳食原因』
>「全国一律で進める育児法の誤りが子どもを壊している。母子健康手帳の指導で、生後五カ月から食べさせる離乳食が変調の要因だ」と警鐘を鳴らすのは、元東京大学医学部講師で日本免疫病治療研究会の西原克成会長だ。「人の腸は一歳前後で完成する。それまでは母乳か人工乳だけで育てるべきだ。早期の離乳食でタンパク質を与えると、分解できずにそのまま吸収して抗原になり、アトピー体質になる」
西原氏は、学会の主流からは外れているようだが(トンデモ系と思われている節もある)、重力進化論を唱えたり、子育てにおける免疫・内臓系の言質で有名(著書もいくつか)。彼のHPなどを見てみると、全面的に事実とするには慎重になった方がよさそう、と思う反面、一部かなり注目すべきと思われることも書いてある。
>当時の育児書に「スポック博士の育児書」があり、出産祝いに贈るのが新しい流行でもありました。因みに、私自身この育児書を友人から贈られた一人でした。そこには、それまでの本能や祖母・母から受け継いだ子育てではなく、高度に管理された「知的な新しい子育て」が書かれていました。個性や自立が何よりも重要だと教えられた世代の母親にとって、多くはわが子もそのように育てることが必要だと信じて疑いませんでした。そのために、「一人で寝かす、添い寝はしない」「泣いてもすぐに抱いてはいけない」など、乳幼児期にこそ必要なスキンシップが欠落し、親和欠損・親和不足をもたらしてしまったのだと思います。(“「母性喪失」から「母性再生」へ”大木さん)
この投稿にも出てくる、当時流行した育児書『スポック博士の育児書』なるものが、この記事でも問題になっている。
>国内で離乳食が広がり始めたのは、早期の離乳食を薦める『スポック博士の育児書』の翻訳本が発行された六六年からだ。八〇年に厚生省(現厚生労働省)が離乳ガイドラインを定め、母子健康手帳で全国一律に指導し始めてから一般に定着した。
どうも、この育児書を参考にして育児要領、「母子手帳」が作られ、それに基づき半強制的に誤った指導が行われている可能性がある。(子供をさっさとおっぱいを吸う状態から引き離すことは、楽だしバストの崩れも抑えられるし…、という面で母親にとって願ったりかなったりだったことも、その育児書が“流行”にまでなった背景にはあるのだろう。)
>西原氏の批判に賛同する声は多い。大手育児用品会社の研究員は「西原先生の理論は筋が通っていて分かりやすい。子どもの体の変調は深刻で、国が全面的に西原先生の考えを受け入れれば、状況が変わるのではないか」と期待する。が、一方で「日本のお役所は何事につけ、一度決めたことは変えない体質がある。子どものためを第一に考えたいが、国が方針を変えてくれないと、営利企業は動けない。現状を変えるのは難しい」と悲観的だ。
>西原氏は過去に三度、厚労省幹部に離乳食の廃止を訴えた。しかし、幹部らは「先生の意見はよく分かるが、離乳食で利益を得ている人が多く、方針を変えるのは資金がかかりすぎる。一度決めたことは動かせない」と話したという。

このくだりに耳を疑うと同時に、もし事実だとしたらかなり犯罪的なのではないかと感じる。
>西原氏はこう警告する。「子どもの変温動物化と少年犯罪の凶悪化はリンクしている。体の不調が強いストレスになり、キレやすくなっている。性問題の低年齢化も早期発情が原因だ。動物は体が弱り生命の危機を感じると、子孫を早く残そうという本能が働く。早期の離乳食をやめ、戦前から昭和四十年ごろまで行われていた、一歳まで母乳・人工乳中心の育児に戻すべきだ。育児法とは、医学ではなく伝承。哺乳動物として自然にかなった育て方が正しい」
変温動物化や子供がキレやすくなったことまでもが、彼の指摘する育児書の誤りに起因すると言い切ってしまうには、まだ証拠不十分という気はしますが(加えて、東京新聞の過剰にセンセーショナルな報道姿勢も疑問ですが)、この『スポック博士の育児書』に基づく子育てで実際問題が起きていて、アメリカの現場では既に切り替えられているという事実もあり、そういった可能性については考慮して転換すべきところは転換すべきだと思う。それなのに、日本の官僚のこの対応…。どうなの?これって。
さらに、彼は自身のHPで以下のようなことを書いていた。
>国民の健康よりも、自分の名誉や経済のほうが大事な人が、日本の医療の頂点で隠然たる力を発揮し続けています。かつて『スポック博士の育児書』を導入した人たちが、その誤りを認めないまま逃げ切ろうとしています。この人たちは、いまの医療の問題点をマスコミで公表しようとしても裏から手を回してもみ消しています。
「社会を変えられる可能性があるのは、庶民だけなのだ」(冨田さん)にあるように、事実や人々の危険を無視して保身に走る統合階級・メーカー・マスコミは一刻も早く一掃しなくてはならない。
それにしても、従来の『母子手帳』に基づいて治療を受けながら「アトピーが治らない」「アナフェラキシーがいつ起こるかわからない」「ゼンソクの発作がしょっちゅう起こってえらいことだ」と、今この瞬間苦しんでおられるおかあさん方や子供たちが山のようにいるわけで、「一部ガセの可能性もあるけど、少なくともこういう研究結果もあるよ」と多くの人に伝えたくなった。
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  投稿者 staff | 2006-08-23 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

「進化の袋小路」の謎(繁栄を誇った生物はなぜ絶滅するのか?)

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ウィキペディアのページに、マンモスアイルランドヘラジカが絶滅した理由について、実におもしろいことが書かれている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E5%90%91%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AA%AC(定向進化説)
>例えば、マンモスの牙は実用的でなかったかもしれないが、その先祖の、まだ小さいが真っすぐに突き出た牙は、明らかに樹皮を剥いだり根を掘り起こしたり、あるいは種内、種間で戦う武器としても有効だったはずである。当然、立派な牙をもった個体は自然淘汰に勝ち残る。そうすると、繁殖を行う場合、相手の異性が立派な牙を持っている個体のほうが、多く子孫を残せただろうとは言えよう。
>そのような条件下では、例えば雌が雄を選ぶ場合に、牙が立派なものを選ぶ傾向が生じても不思議ではない。そこで、そのような配偶者選択の傾向が遺伝的なものとして定着すれば、それ以後は実際の牙の機能より、異性に気に入られる牙をもつ個体が選択的に残るようになる。このような選択を性淘汰と言う。
>立派すぎて機能的には疑問のある牙の出現も、これによって説明することが可能な訳である。多分、この場合、機能的には大きすぎる牙は、生存に不利に働くだろうが、配偶者を獲得するためには有利に働くので、その両方の働きのバランスの取れるところに、牙の大きさが落ち着くことが期待される。

以前、このブログhttp://moer.but.jp/blogn/index.php?eid=63で紹介した論理を使うと、こういうことになるのではないか。
自然外圧がメインに強力にかかっている状況では、その自然外圧に対応する能力・本能が適応に必要なので獲得されていく(もちろん、獲得できない大半の種は絶滅ということになる。獲得した機能や本能はその外圧がかかり続ける限り維持される)。
自然外圧が一旦安定すると、今度は種間圧力がメインに、これまた強力にかかってくる。そこで、弱い種は辺境に追いやられ、また強力な自然外圧を受けることになる(賭けに出て新機能を獲得したものだけが生き延び、残り大半は絶滅していく)。
種間闘争を制覇した種には、自然圧力も種間圧力もかかりにくくなり、もっぱら個体間闘争圧力が主圧力源になる
>個間闘争圧力>自然圧力・種間圧力。自然圧力と種間圧力は種間闘争をどのような戦略で突破した種がどのような状態であるかによって強弱が違ってくる。この個間闘争には捕食闘争と性闘争(性淘汰)が考えられるが、外圧が極めて低いという段階での餌の奪い合いはほとんど意味をなさないので、この個間闘争の中でも性闘争の圧力が主圧力になると考えられる。(http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=3996 吉国氏)
こうなると、非常にヤバイことになってくる。
一旦本能に刻み込まれた“性選択”の特性(でかいオスを選択する等)が、自然外圧や種間外圧を無視して暴走し、恐竜のように異常に身体が大きくなったり、マンモスやアイルランドヘラジカのように牙や角が自然外圧に適応するのに支障となるくらいに巨大化したり、クジャクのようにやたらと派手になって目立つようになったり…といった様々な弊害が現れてくるのではないか?
これが、「進化の袋小路」というやつなのかもしれない。
そして、その後に続く環境の大激変(強力な自然外圧)に対してはひとたまりもなく、あっけなく絶滅!、ということになる…というストーリーだ。
こう考えていって、今の人類を振り返ってみると空恐ろしくなってくる。
金持ちやイケメンや口説き上手ばっかりをいくら「性選択」したって、外圧状況が激変すれば、そいつらは適応に何のメリットも無い…なんてことになりかねない。
’70年貧困の消滅によって全ての圧力が弱くなるにしたがって、次世代が退化していってるように見えるのは気のせいか?(肉体は脆弱になり、学力は低下し…これは社会的要因の方が大きいのだろうが)
むしろ、外圧をトータルでしっかり捉える認識力(←これが人類にとって適応の最先端機能でもある)が今後の適応を左右するメインではないだろうか。
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  投稿者 staff | 2006-08-14 | Posted in ①進化・適応の原理7 Comments » 

エイプマン第五回<人類の拡散>(後編)

さてさて、今回は第五回のまとめの続きをアップする。

(さらに…)

  投稿者 staff | 2006-08-05 | Posted in 4)サルから人類へ…1 Comment » 

BBC製作エイプマン<第5回>「アフリカからの出発」(前編)


さてさて中断してましたが、今回からはひさびさにまたBBC製作のエイプマンについてまとめてみる。
今回は、「アフリカからの出発」ということで、現生人類の直系の祖先の特徴は何だったのか、どのようにして世界に広がって行ったのかを探っていく。
人類の歴史は、人類の祖先が直立歩行を始めてから数えると700万年とか600万年とかと言われているが、私たち人類に直接繋がる種が登場したのはたった20万年~15万年前だったようだ。それまでの種や亜種は全て絶滅してしまったということ。
それと、この回のポイントのもう一つは、人類の脳や人間らしい特徴発達はヨーロッパで起こった、と欧米の学者どもは考えていたのだが、それはアフリカで既に起こっていた、というところ。
欧米人の学者の一部(でも結構主流)は、勝手に我田引水の説を立てて、それに固執して事実の追及や科学の発展を遅らせることが多々ある。自分たちを含む人種がより優れているってことを証明したくて仕方がないんだよな、まったく…
この番組、他にもそういうバイアスがかってるかも…と思って読んでください。

(さらに…)

  投稿者 staff | 2006-08-01 | Posted in 4)サルから人類へ…4 Comments »