2023-04-29

膜たんぱく質の判断機能は腸の判断機能へと受け継がれている。

腸の「判断機能」の起源を追求する中で、細胞膜=膜たんぱく質が重要な器官であること、その選択透過性が判断機能の起源になっているのではないかという部分まで見えてきました。

今回は、膜たんぱく質の選択透過性とその仕組みについて追求していきます。

細胞は、脂質二重層構造を持った細胞膜で内外が隔てられています。この性質だけでは、ホルモンやたんぱく質などの物質を取り込むことができません。
そこで、膜タンパク質の判断機能を活かして細胞膜を透過する膜輸送の仕組みをもっているのです。

では、具体的にどのように判断して取り込んでいるのでしょうか?

実は、小さな物質大きな物質を取り込むのとで、その方法が異なります。

小さな物質の代表としてナトリウム-カリウムポンプ等のイオンポンプが該当します。
それらを取り込む場合は、これら専用の鍵穴(受容体)に、鍵(ナトリウムイオンやカリウムイオン)
が結合した際に輸送たんぱく質に変容して通過していきます。

受験のミカタ(https://juken-mikata.net/how-to/biology/cell-membrane.html)様より転載

大きな物質の代表としてはホルモンやたんぱく質などがあります。
それらを取り込む場合は、細胞膜上の鍵穴(受容体)ホルモンやたんぱく質などの鍵(細胞外物質)が結合して初めて取り込みが行われます。
具体的には細胞膜がタンパク質等大きな細胞外物質を取り込む形で陥入し、陥入した部分が細胞外物質を包みこむ形で細胞膜から分離して、細胞内に物質を取り込んでいます。

受験のミカタ(https://juken-mikata.net/how-to/biology/cell-membrane.html)様より転載

 

 

細胞は常に周囲からの様々なシグナル(細胞外物質)にさらされており、細胞の特性に従って、細胞膜に組み込まれた受容体(鍵穴)を変容させて選択的に応答しています。このようなシグナルの無限的組み合わせと、それにフィットする選択的応答方法(=受容体)が実現されています。

これら細胞内への取り込みこそ、膜たんぱく質が選択性を持って行われている、つまり判断していることを意味しています。

この膜輸送システムは、単細胞時代から存在するものです。
多細胞生物になった段階においても、それぞれの組織機能に応じた機能特化が行われていますが、基本的な構造は単細胞時代から変わっていないのです。

腸のもつ判断機能が膜たんぱく質の判断機能に由来しているという事が分かりますね。

  投稿者 t-gouki | 2023-04-29 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

■微生物と次代を生き抜く③~肥満の原因は腸内細菌が大きく関係している~

  • 肥満はここ数十年における人類史上の大きな変化

 

現代はかつてなかった自己免疫疾患や、消化器系の不全、心の病、アレルギーが増えています。(http://www.seibutsushi.net/blog/)それに伴い目立つようになってきたものが、肥満です。

1950年代に、アメリカで突如体重増加が顕在化し、現在では、成人の1/3が過体重、1/9が肥満となっている。ヨーロッパでも、過去50年において平均して20%も体重が増えており、肥満はここ数十年における人類史上の大きな変化となっています。肥満の増加に伴って、糖尿病や心臓病も増加しています。

  • 肥満の原因は腸内細菌が大きく関係している!

肥満の主な原因は、一般的には食べ過ぎと運動不足と言われているが、最近の研究によると、腸内細菌バランスが肥満と大きく関係してることが分かってきました。肥満の人と痩せている人の腸内環境を比べると、ある特定の腸内細菌のバランスが大きく異なる事が分かってきました。

  • 吸収を抑えてくれる腸内細菌

もう一つは「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という細菌。痩せた人では腸内微生物全体の4%を占めるが、太った人にはほとんどいないことが分かった。アッカーマンシア・ムシニフィラは、腸壁を覆う厚い粘膜層の表面にいる細菌で、腸壁細胞に働きかけて粘液の分泌を促している。この細菌が少ないと、粘液の層が薄くなり、リポ多糖が血液に入り込みやすくなり、肥満につながってしまう。つまり、アッカーマンシア・ムシニフィラは吸収を抑えてくれます

 

  • 食欲を抑えてくれる腸内細菌

まず一つは、「フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ」という細菌。日本人で肥満の人と痩せている人、10人ずつの腸内細菌を検査したところ、やせている人のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィの割合の平均は5.9%に対して、肥満の人は3.9%と少ないという結果が報告されている。この腸内細菌は「短鎖脂肪酸」をつくり、腸からGLP-1などさまざまなホルモンの分泌を促進することで、胃腸の動きをゆるやかにします。食べたものが胃腸をゆっくり通過すると、満腹感を得やすくなって食事量が減り、肥満が抑制されるのです。つまりフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィは「もっと食べたい!」という欲を抑えてくれるのです。

 

  • 腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸を増やす「食物繊維」や「多糖」

ただし、肥満の人でも、腸内細菌に短鎖脂肪酸を多くつくらせることが可能です。 その方法の1つが、食物繊維を多く摂取することです。食物繊維は、腸内細菌によって短鎖脂肪酸につくり変えられるためです。食物繊維は、根菜類、豆類、きのこ類、海藻類などに多く含まれています。

また、最近の研究では、イモ類や寒天などに含まれる多糖という物質の一種が、腸内細菌によって、より短鎖脂肪酸につくり変えられやすいこともわかってきました。

肥満にならないために食べる量を抑える傾向がありますが、腸内細菌の働きや仕組みを知り、それを活かした食生活を整えることが健康への第一歩ですね!

  投稿者 kubota-t | 2023-04-21 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

生き物とは何か?~生き物の細胞分裂の仕組み~

今回は、生き物とはそもそも何なのか?を考えていきたいと思います。

生き物とは何か?という根源的な問いに答える前に、「サビ」と「カビ」の違いを押さえることで、生き物の共通項を導くことができます。

どちらもどんどん増殖していく様を想像すれば、同じような現象だと思われるかもしれませんが、まったく異なる現象です。少し考えてみましょう。

 

・サビは鉄に酸素が結びついた化学変化?しかし、カビも化学変化で増殖している。

・サビは無機質な感じがして、カビは生き物っぽい気がする。

・カビは自ら増えている。サビは自分では増えることができない。水にさらされるとか、環境の変化で増殖していく。

 

どうやら、「自ら分裂し、複製できること」が生き物とそうでないものの違いになりそうです。
しかし、そもそも分裂して複製するってどういうことなのでしょうか?
私たちの体の中でも起こっている現象をクローズアップしていきましょう。

(さらに…)

  投稿者 takayama | 2023-04-14 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

『外圧判断機能』の起源~細胞膜の仕組み/膜たんぱく質がポイント?~

外圧判断機能」の起源を追求する中で、腸の起源から海綿動物へ、その体を構成する細胞の一つの襟細胞、さらに襟細胞は単細胞生物の中の立襟鞭毛虫と類似するとろこまで見えてきました。さて、立襟鞭毛虫から、さらに遡って「判断機能」を軸にさらに探ってみようと思います。

(さらに…)

  投稿者 huji-kou | 2023-04-07 | Posted in ①進化・適応の原理, ⑤免疫機能の不思議, ⑩微生物の世界No Comments »