2023-04-14

生き物とは何か?~生き物の細胞分裂の仕組み~

今回は、生き物とはそもそも何なのか?を考えていきたいと思います。

生き物とは何か?という根源的な問いに答える前に、「サビ」と「カビ」の違いを押さえることで、生き物の共通項を導くことができます。

どちらもどんどん増殖していく様を想像すれば、同じような現象だと思われるかもしれませんが、まったく異なる現象です。少し考えてみましょう。

 

・サビは鉄に酸素が結びついた化学変化?しかし、カビも化学変化で増殖している。

・サビは無機質な感じがして、カビは生き物っぽい気がする。

・カビは自ら増えている。サビは自分では増えることができない。水にさらされるとか、環境の変化で増殖していく。

 

どうやら、「自ら分裂し、複製できること」が生き物とそうでないものの違いになりそうです。
しかし、そもそも分裂して複製するってどういうことなのでしょうか?
私たちの体の中でも起こっている現象をクローズアップしていきましょう。

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自ら分裂し、複製できることが生き物の定義です。
(例えば、コピー機などは複製することができますが、自ら複製ししているわけでもないし、分裂しているわけでもありません。)

では、分裂して、複製するためには何が必要なのでしょうか?

学校の教科書では、体細胞分裂の仕組みについて、細胞の核やDNAが取り上げられていることがほとんどです。
では、DNAがあれば分裂、複製することが可能なのでしょうか。
実際、そんな単純な仕組みではありません。私たちが生きているこの環境は、化学変化の嵐です。
DNAは非常に脆く、その外の環境に触れるだけで壊れてしまいます。つまり、DNAだけでは、細胞分裂することはできないということです。

DNAを守るために必要なのが、「膜」です。

膜があることによって、化学変化など厳しい環境から細胞を守り、DNAを壊すことなく細胞を分裂させることができるようになります。また、膜は必要なものを細胞内に入れたり、不要なものを細胞外に出したり、新陳代謝の役割も担っています。膜は、分裂だけではなく、生命活動を維持していくために必要不可欠なものなのです。

では、細胞の膜とはどういう者なのでしょうか。
シャボン玉を思い浮かべてもわかるように、単純な膜というのは非常に壊れやすいですが、細胞の膜は「リン脂質」という成分で出来ています。リン脂質は、疎水性を持つ脂質と親水性を持つリンで構成されており、リン脂質は水と油の両方をなじませる性質(両親媒性)があります。細胞膜がリンと脂質の二重構造になることで、壊れにくい膜をつくっているのです。

DNAを守る膜が必要なのは解りましたが、それでも細胞分裂はできません。

細胞分裂を完遂させるには、複製されて倍加したDNAを均等にわける必要があります。不均等にDNAを移動させてしまうと、細胞を破壊してしまうことになるからです。そうならないようにするために、細胞分裂の司令塔が必要です。

司令塔の役割を担っているのが、「中心体」です。

細胞分裂の際、複製されて2倍に肥大したDNAは娘細胞に均等に分配されます。このとき、DNAを 2 方向に引っ張っているのが、微小管(紡錘糸)とよばれる繊維です。中心体は、この微小管形成の中心として働いているのです。

よって、細胞分裂するためには、この中心体も複製されて倍化する(2個になる)ことが、染色体の均等な分配にとって重要な役割を担っています。つまり、中心体の数の制御が重要になってきます。中心体が倍加しなければ、DNAを運ぶことはできません。逆に、中心体が増えすぎてもあっちこっちにDNAが運ばれてしまい、同様に細胞分裂することができません。

中心体の数を制御するための因子が5つ存在しています。そのうち3つの因子が特に中心体の数の制御に重要な役割を持っているとされています。なぜなら、これらの因子が破壊されると、中心体の倍化が行われず、細胞の移動が始まらなかったからです。これらの因子のうちPlk4というリン酸化酵素が中心体の複製開始を制御しています。Plk4というリン酸化酵素が他の因子をリン酸化することによって、中心体が正常に倍化することが研究で明らかになっています。

それぞれの因子が作用しあうことによって、安全に細胞分裂が行われているのです。

今回は、生物とは何なのか?という大きなテーマの中の、細胞分裂について「膜」と「中心体」の役割について追求してきました。学校の教科書で習った体細胞分裂も、実はいろんな機関が役割を担っていて、DNAだけが主役ではないことがわかりましたね。まだまだ、これ以外にも細胞内には様々な役割を担っているものがあり、生物が「安定」と「変異」を繰り返して、身に着けた仕組みなのです。そして、いまだ解明されていない仕組みがたくさんあります。

細胞の仕組みとして、判断機能が備わっていることが解ります。膜の中に入れるor入れないの判断、中心体の増やすor増やさないの判断など、どのようなメカニズムで行われているのか?も今後追求していきたいと思います!

List    投稿者 takayama | 2023-04-14 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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