2015-07-16
免疫:3つの未解明の迷宮~1.免疫記憶
2,500年前に「二度なし」現象(一度感染症に罹患した人は次に同じ感染症にはならないという事象)の記録があるように、人類が経験的に免疫の存在を知ってから随分時間が経過しているが、実は、免疫について詳しく分かり初めてのは20世紀になってからだっだ。それ以後、20世紀の終わりから21世紀にかけて、免疫学の世界では、いくつかのブレークスルーがあり、最近でも、従来の免疫のイメージを覆す新発見が相次いでいる。
しかし、それでも未解明な領域がまだ多く残されているのが現状だ。その中でも「未解明の迷宮」とも呼ばれる、次の3つの免疫機能について考えてみたい。
- 免疫記憶
- 経口免疫寛容
- 腸内細菌と免疫の関係
今回は、獲得免疫特有の機能である『免疫記憶』を取り上げる。
ウイルス、細菌などの招かれざる訪問者を排除する分子の番犬「抗体」
(写真はコチラからおかりしました)
ワクチンの有効性の原理でもある「 抗原投与による免疫記憶によって抗原排除に有利な抗体を作るという現象」の根幹をなす『免疫記憶』だが、実は、分かっていないことだらけ、というのが現状のようだ。
熱力学第二法則に抗する生命活動と生物進化
生命活動の根本原理は、秩序が崩れて無秩序化するとされる自然現象に抗して、秩序を高めていくことにある。例えば、生物は、生きている状態は、同じ物質でも腐敗しないが(常に秩序化されている)、死ぬとすぐに腐敗する(無秩序化する)。
画像はコチラからお借りしました
また、進化は巨大化と特殊化によって実現されてきが、巨大化とは構成分子の極端な増大であり、それ自体が高度な秩序化になる。それは、自由で無秩序に動いていた分子を、複雑な組織の中に取り込んで秩序化する物理現象だからである。
つまり、生命活動や生物進化は秩序化のエネルギーに貫かれている。だから、常に無秩序化に向かう熱力学第二法則が支配する従来の物理学では説明できない。よって、生命の起源の探究には、なぜ、秩序化できるのか?を含めて説明できる物理理論が必要になる。
そのヒントが、佐野博士の、『熱とは何か?温度とは何か?現代熱力学の誤りを正す(リンク)』にある。
単細胞生物と多細胞生物の適応戦略
単細胞生物と多細胞生物の適応戦略
「単細胞生物」というと“一個の細胞”で完結した生命体というイメージがあるが、実際は一匹で生きているわけではなく“群”として生きている。
では、多数の細胞で構成される「多細胞生物」とは何が違うのだろうか?
その違いを、“集団性と適応戦”という視点で考えてみる。
シアノバクテリア
光合成によって酸素を生み出すという特徴を持つ。
単細胞で浮遊するもの、少数細胞の集団を作るもの、糸状に細胞が並んだ構造を持つものなどがある。
(写真はコチラからお借上しました)
腸内細菌のバランスが崩れると何が起こるのか?
ヒトの腸は食べ物や外界からの病原菌などの異物に常にさらされています。しかし、腸管免疫はこのような宿主にとって排除するべきものと許容するべきものを選択しながら、500~1000種類、約100兆個といわれる腸内細菌ともバランスを保っています。
「酵母と桿菌が共存」(写真はコチラから)
腸管免疫と腸内細菌叢との間で、ダイナミックな平衡関係が保たれることで、私たちの健康が成り立っています。「腸内細菌のバランスを保つことが健康保持の秘訣のひとつ」といわれるのは、こうした理由によるものです。
では、安定的に形成されていた腸内細菌のバランスが崩れるようなことがあったら、何がおこるのでしょうか?また、バランスが崩れるとは具体的にどのような現象なのでしょうか?。