2019-10-17

ヒストン遺伝子を全セット持つ巨大ウイルスの発見~DNA関連遺伝子のウイルス起源に新たな証拠~

☆進化⇒変異の仕組みは、大・中・小の3段階 (実現塾10月5日より)
小:紫外線で傷いたり、分裂時のコピーミスで起きる変異
中:駆動物質の指令による漸進的進化
大:他の生物(ex.ウイルス)が飛び込んできて、そのまま遺伝子を蓄積していくことによる劇的な進化

ウイルスの他の生物への侵入は劇的な進化⇒変異を引き起こすという。
ウイルスと生物進化はどのように関わっているのか? そもそもウイルスとは何か?
ウイルスに関する追求が進められています。

ヒトの細胞は細菌とウイルスと表裏一体の関係にある。
巨大ウイルスから見える新たな生物界の姿②
ウイルスとは何か1~生物と非生物の境界~

そして、京都大学・東京理科大学・生理学研究所・東京工業大学らの共同研究チームが、アメーバに感染する新規巨大ウイルスを発見しました。この巨大ウイルスは、なんとヒストン遺伝子を全セット持っているそうです。

以下、東工大ニュース(2019.02.08)https://www.titech.ac.jp/news/2019/043535.html より紹介します。

ヒストン遺伝子を全セット持つ巨大ウイルスの発見
DNA関連遺伝子のウイルス起源に新たな証拠

【概要】
・・・・・(前略)・・・・・
メドゥーサウイルスと名づけられたこの巨大ウイルスは、全セットのヒストン遺伝子をゲノム内に保持しており、特異な粒子形態とゲノム組成から新たな「科」に属することが明らかになりました。
ヒストンは真核生物がDNAを折り畳んで核内に収納するために必須な5種類のタンパク質で、その一部を持つウイルスはこれまでに知られていました。しかし、ヒストン遺伝子全セットを保持するウイルスはメドゥーサウイルスが初めてです。
真核生物のDNA関連遺伝子がウイルスに由来するという仮説が提唱されていますが、本研究成果はそうした仮説を支持する結果と考えられます。今後、ウイルスヒストンの役割などメドゥーサウイルスの感染過程を分子レベルで解明することにより、巨大ウイルスと真核生物の太古以来の共進化誌が紐解かれるのではないかと期待されます。
本研究成果は、2019年2月6日に米国の国際学術誌「Journal of Virology」にオンライン掲載されました。

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図1. 左はメドゥーサウイルスの粒子構造。右はヒストン遺伝子やDNA複製酵素の系統樹の模式図。真核生物の系統樹の根本からウイルスの遺伝子の系統が派生している。DNA複製酵素(真核生物のDNAポリメラーゼδ)遺伝子やヒストン遺伝子は、遺伝子水平移動によってウイルスから真核生物にもたらされたのかもしれない。

【背景】
今世紀初頭、生物学の常識を覆すウイルスが発見されました。ミミウイルスと呼ばれるそのウイルスは、単細胞真核生物(原生生物)であるアメーバを宿主として増殖します。粒子サイズとゲノム長で数多くの単細胞生物を凌ぐ大きさと複雑さを誇るミミウイルスの発見は、「ウイルスは小さくて単純なものだ」という生物学者の固定観念を覆し、大きなインパクトを与えました。

ミミウイルスの発見を端緒に、世界中の研究者が巨大ウイルスハンティングを開始し、パンドラウイルス、ピソウイルス、マルセイユウイルスなど様々な巨大ウイルスの発見が相次ぎ、日本では東京理科大学 武村政春教授らのグループにより、トーキョーウイルス(マルセイユウイルスの仲間)やミミウイルス・シラコマエ(ミミウイルスの仲間)などの発見がなされました。

こうした巨大ウイルスは調べれば調べるほど、その生き生きとした多様で複雑な「生き様」が伺え、その結果、「ウイルスは生命なのか?」といった根本的疑問が沸き上がると同時に[参考文献1]、ウイルスは細胞から進化したのではないか[参考文献2]、ウイルスがDNAを発明したのではないか[参考文献3]、細胞核はウイルス由来ではないか[参考文献4]という挑戦的かつ挑発的な仮説が提唱されました。

今回、共同研究チームは、北海道にある温泉地域の湯溜まりとその水底の泥土サンプルから、アメーバを宿主として新しい巨大ウイルスを分離し、その感染過程、粒子構造、ゲノム組成の詳細を調査しました。その結果、この巨大ウイルスが、これまでに知られていた巨大ウイルスと多くの点で異なることが明らかになりました。

【研究手法・成果】

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図2. メドゥーサウイルス粒子のクライオ電子顕微鏡による単粒子解析
(a)クライオ電子顕微鏡で見たメドゥーサウイルス粒子。(b)3D構築した粒子の断面図。赤矢印は核を覆う脂質二重膜がカプシドと結合している部分を表す。(c)図bの黄色い四角部分の拡大図。(d)単粒子解析による3D構築した粒子像。白矢印は粒子の大きさ(T=277)を算出するためのk値、h値。(e)図dの黒い四角部分を切り出した拡大図。

新規巨大ウイルスはアメーバを宿主として増殖しますが、感染過程で一部のアメーバ細胞が厚い膜を被り休眠状態に入る(シスト化する)ことが明らかになりました。これが、見たものを石に変える能力を持つギリシア神話の怪物「メドゥーサ」をイメージさせることから、この新規巨大ウイルスをメドゥーサウイルスと名づけました。

メドゥーサウイルスは、粒子径が260ナノメートル、ゲノム長が38万塩基対とこれまでに記録されている巨大ウイルスの中では小型の巨大ウイルスでした。しかし、クライオ電顕単粒子解析により、先端が球状のスパイクでウイルス粒子表面が覆われているなど、独特の粒子形態が浮き彫りになりました。ゲノムの遺伝子組成にも特徴があり、ゲノム内の461個のタンパク質遺伝子のうちなんと61%(279個)が、データベースに類似した遺伝子がない新規遺伝子であることが判明しました。

また、感染過程の観察から、ウイルスゲノムの複製がアメーバの細胞核内で完了していることも伺え、これまでに報告されてきた巨大ウイルスとは様相を異にしていました。こうした結果と遺伝子解析(分子系統解析)の結果を総合し、共同研究チームは、メドゥーサウイルスが新しい「科(family)」つまり「メドゥーサウイルス科」に属するウイルスだと結論しました。「科」はウイルスの分類体系において事実上最上位の分類群です。

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図3. ヒストン遺伝子の系統樹
赤:メドゥーサウイルス、青:その他のウイルス、黒:ヒトを含む真核生物と古細菌。

メドゥーサウイルスのゲノムで最も際立った特徴は、ヒストン遺伝子を全セット(ヒストンH1, H2A, H2B, H3, H4の5種類)保持していたことです。これまでにマルセイユウイルスやパンドラウイルスがヒストン遺伝子の一部を保持していることは知られていましたが、ヒストン遺伝子全セットを保持するウイルスはメドゥーサウイルスが初めてです。

ウイルス粒子からもウイルス由来のヒストンタンパク質が検出されました。分子系統解析の結果はさらに興味深いものでした。これらのヒストン遺伝子はその進化の枝が、真核生物の系統樹の根っこの部分から派生しており、その起源が真核生物の共通祖先よりも古いことが明らかになりました。つまり、ウイルスのヒストン遺伝子は、真核生物の特定の系統から獲得されたものではないのです。このことは、真核生物の先祖がヒストン遺伝子を古代のウイルスから獲得した可能性を示唆しています。同様の進化シナリオがメドゥーサウイルスのDNA複製酵素遺伝子の解析からも浮き彫りになりました。

さらに、アメーバとメドゥーサウイルスのゲノム比較から、進化の過程で数多くの遺伝子の受け渡し(遺伝子水平移動)が両者の間で起こっていたことも明らかになりました。遺伝子の受け渡しの方向は、アメーバからウイルス、ウイルスからアメーバへの両方向の事例がありました。アメーバがウイルスから受け取った遺伝子の中にはウイルスの殻を作るためカプシドタンパク質遺伝子もありました。メドゥーサウイルスは、宿主と遺伝子をやり取りするのが得意なのかもしれません。

・・・・・(以下略)・・・・・

参考文献は、プレスリリースhttps://www.titech.ac.jp/news/pdf/WEBTokyoTechPR20190207_mochizuki.pdfを参照願います。

(以上)

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List    投稿者 seibutusi | 2019-10-17 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-10-10

脳の進化の5億年~誕生からヒトまでの軌跡

生物史を通して、生命体は肉体的強化(運動能力UP・巨大化)と情報能力高度化(大脳の進化)の2方向の進化をして来た。

現生動物で、陸上の王者(ライオン)と大脳を進化させた人間を見比べると、肉体的強化をしたライオンを大脳進化した人間が凌駕している。

事実、現代人は類猿人と比較して、肉体的能力については劣るが、大脳は優れていると考えられる。生物の進化形態は、大脳の進化(情報収取→共認→観念)であると考えられる。

地球規模の環境大変化に対して、肉体的に対応出来ない多くの生物(肉体的変化はDNAに依る為急激な変化はできない)は死滅している。将来、環境の大変化が有っても、観念を働かせ対応できる可能性は大きい。

そこで脳の進化について以下の記事が有ったので転載します

5億年の進化を遂げて

今から5億年前に生命が獲得した神経管は、進化を経て“脳”となった。脳は生物の進化と共に新たな領域を形成し、機能や役割を生み出していった。こうして魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、そして霊長類へと進化を遂げ、5億年という歳月を経て現在のヒトの脳へと進化した。

【脳の進化の5億年~誕生からヒトまでの軌跡~】

https://japan-brain-science.com/archives/112

地球上に存在する全ての動物は、脳を持つ。動物は脳を持つことで、高度な情報処理を可能としている。たとえば、心臓の動きや呼吸、消化、代謝のような生命活動を維持する機能を実現している。また、ヒトのように脳が極めて高度に発達した動物であれば、記憶・認知・想像・創造・判断・伝達・論理的思考・抽象的思考など、さまざまな精神(=思考)活動も可能としている。

地球上に脳という器官が誕生したのは、今から5億年ほど前である。脳を獲得した生命は5億年にわたって進化を続け、その果てに現在のヒトへと至った。以下では、生命が脳を獲得するに至った過程と今日までの進化の歴史を辿る。

神経の獲得と、ヒトに至るまでの進化の歴史

脳の誕生と進化の歴史を振り返るためには、生命の誕生の歴史にまで遡る必要がある。地球上に初めて生命が誕生したのは、今から38億年前である。このときに誕生した“原始生命”は、脳を持っていなかった。原始生命が脳と呼ばれる器官を獲得するまでには、30億年以上の歳月が必要だった。

38億年前:生命の誕生

海中に、“リボ核酸”や“タンパク質”が誕生した。このリボ核酸とタンパク質によって、初期の生命は構成された。生命はその後、DNA(デオキシリボ核酸)を形成し、これによってDNAを持つ“あらゆる生命の共通祖先”が誕生した。共通祖先は後に、原始的な単細胞生物へと進化していった。初期の単細胞生物は、神経や脳を有していなかった。

10億年前:単細胞生物の分岐(1

単細胞生物が、“従来のままの単細胞生物”と“植物・菌類の祖先になる単細胞生物”とに分岐した。

9億年前:単細胞生物の分岐(2

“植物・菌類の祖先になる単細胞生物”に分岐しなかった単細胞生物のグループが、原始的な動物であるカイメン(海綿)と分岐した。このカイメンには、まだ神経系らしきものはなかった。

8億年~65000万年前:多細胞生物の誕生

複数の単細胞生物が集まり、多細胞生物が誕生するようになった。当時の大気には紫外線を防ぐオゾン層がなかったため、太陽からの紫外線が減衰することなく地表に降り注いでいた。そのため、大気中の酸素は毒性の強い活性化状態になり、紫外線とともに生物のDNAに損害を与えていた。損害を受けたDNAは回復を繰り返すことで新しい遺伝子の組み合わせを構成し、多様性を増していった。

63000万年前:刺胞動物の登場

この頃に誕生した刺胞動物(イソギンチャクやクラゲなど祖先)には、『散在神経系』と呼ばれる神経網が存在していた。散在神経系とは、神経細胞が体全体に網目状となって存在している神経系を指す。

54200万年前:カンブリア紀の開始

今から5億4200万年ほど前のカンブリア紀になると、海中には多様な生物があふれるようになった。カンブリア紀に誕生した多くの生物は、体を動かすために神経細胞が集合した“神経節”を獲得した。

6億3000万年前に誕生した刺胞動物は神経細胞が体全体に網目状に分布した散在神経系を獲得したが、さらに進化した生物は神経が集まった『集中神経系』を獲得した。この集中神経系が、一般的に『脳』と呼ばれる器官となる。カンブリア紀には、こうした“原始的な脳”といえる構造を持つ生物が誕生した。ここから、5億年に渡る脳の進化の歴史が始まる。

この時期以降に登場した魚類・両生類・爬虫類・哺乳類などの脊椎動物(多数の椎骨(ついこつ)がつながった脊椎を有する動物)の脳は、どの動物でも基本構造が似ている。どの動物の脳も『脳幹』『小脳』『大脳』から構成され、動物ごとにその大きさが異なった進化を遂げることになる。すなわち、現在までの脳の進化は、基本構造が変化するのではなく新しい機能が付け加わることで実現してきた。

52400万年前:無顎類の登場

顎を持たない『無顎類(ヤツメウナギの祖先)』などが生息していた。 無顎類の脳にはニューロンの活動を補佐するグリア細胞が存在しているが、ニューロンの一部である軸索を覆うミエリン鞘(=軸索を流れる電気信号が拡散することを防ぐ鞘)の存在は確認されていない。ミエリン鞘がないことから、脳内での神経伝達速度は速くなかったと推測されている。

46000万年~2000万年前:顎口類の登場

生物の中に、顎を持つ『顎口類』が登場した。顎口類は、ミエリン鞘を獲得していたと考えられている。軸索のミエリン化は神経伝達速度を高めるため、顎の獲得と神経伝達速度の向上が、生存競争に有利に作用したといえる。こうした要因から、顎口類は進化を有利に進めることができたと考えられている。

顎口類のその後の進化により、脳の形態に大きな変化がみられるようになった。特に終脳(=大脳)は、前方に大きく拡大するようになった。 顎口類の祖先の段階で、頭部を形成する胚葉(=受精卵が卵割することで生じる細胞層)に変化が生じ、脳の前方に存在していた鼻孔の位置が移動し、さらには下垂体(=さまざまなホルモンを分泌する内分泌器官)の位置も移動した。これによって脳の前方が開け、終脳を形成する空間が確保されて終脳の発達が加速していったと考えられている。こうして脳の発達が加速した顎口類は後に、両生類・爬虫類・哺乳類へと進化していくことになる。

37000万年前:両生類の登場

海中で誕生した脊椎動物である魚類の一部が両生類となり、陸上へと進出した。 両生類は大脳と小脳の割合が小さく、本能や反射を司る脳幹が大部分を占めていた。特徴としては、嗅覚に関係する『嗅球』が大きい点があげられる。

31500万年前:爬虫類の登場

陸上で生活するようになった両生類の一部は、『羊膜』を獲得したことによって地上での繁殖を可能とした。羊膜は、胚(胚子:多細胞生物の個体発生における初期段階の個体)を乾燥から守る役割を果たす膜である。この膜を獲得したことによって、それまで海中や水辺でしか生活できなかった魚類や両生類のような脊椎動物は水から離れ、地上の至るところで繁殖できるようになった。

羊膜を獲得した種は、それまでの脊椎動物が住むことのできなかった乾燥地帯や砂漠にまで生息範囲を拡大していった。この羊膜を持つ種(羊膜類)が、後に爬虫類へと進化した。 爬虫類の脳は両生類と同様に、反射やエサの捕獲、交尾といった本能的な行動を司る部位である脳幹が脳全体の大きな部分を占めており、大脳と小脳が小さい点が特徴である。また、中脳の後にある“視葉”が小さく嗅球が大きいため、物を見ることよりも匂いを嗅ぐ方が得意という特徴を持つ。

爬虫類の大脳は小さく、大脳の構成は動物が生きていくために必要な本能や恐怖などの原始的な感情を司る『大脳辺縁系』が主である。爬虫類の大脳辺縁系は主に、においを感じ、本能的行動に直結する部分だけが形成されているに過ぎなかった。なお、大脳辺縁系は進化的に古いことから『古皮質』と呼ばれる。

22500万年前:哺乳類の登場

魚類から両生類、爬虫類へと進化を遂げた後、爬虫類から哺乳類へと進化する直前の段階で、大脳の『新皮質』をつくる基になる部分が形成された。 哺乳類の特徴は、それまでの生物と比較して大脳が大きく、そして小脳の割合が小さいという点にある。大脳の表面を覆う大脳皮質にしわができたことで大きな容量(広い表面積)が確保され、新たに発達した大脳新皮質に視覚野や聴覚野といった感覚を司る『感覚野』や、運動機能を司る『運動野』が誕生した。 爬虫類が哺乳類へと進化したことで、大脳新皮質は大幅に拡大していった。これにより、嗅覚以外にも視覚などの情報が脳に多く取り込まれるようになった。こうして哺乳類は、陸上で迅速な行動が可能となった。 大脳辺縁系も主に嗅覚以外の感覚に対応するようになり、喜怒哀楽が豊かになった。また、情報を記憶する能力も向上した。こうして、哺乳類特有の怒りや恐怖、攻撃、愛、嫌悪などの感情が出現した。

6000万年前:哺乳類(霊長類)の登場

哺乳類の進化の過程で、霊長類に進化する種が現れた。ニホンザルやチンパンジーなどの祖先にあたる霊長類は新皮質がさらに発達して大きくなり、『連合野』が出現し、より高度な認知や行動が可能となった。

連合野の発達はヒトの進化における重要や領域の1つである。霊長類の脳は連合野のみならず、感覚野や運動野も複雑な機能を担うようになった。こうした霊長類が獲得した情報処理機能を土台として、後にヒトの脳が誕生することになる。

霊長類の大脳の発達は、当時の霊長類が身を置いた環境に起因している。樹上で生活するサルには、枝から枝に移る能力が必要だった。そのため、大脳にある手の指や手のひらなどを中心とした腕の運動や感覚を司る領域が発達している個体が、生存競争において有利であった。また、樹上で行動するためには立体視が可能な優れた視覚が必要とされた。こうした要因から、大脳の視覚や聴覚に関わる部位が発達した。これにともない、脳の周辺領域も拡大・進化していくことになった。 類人猿に進化して以降は、指や手のひらを司る領域と隣り合う“脳の顔面筋”や、“舌・唇の運動や感覚”に関わる領域が拡大されたため、表情が豊かになった。その後、さらにその周辺の領域が拡大・発達し、『ブローカーの中枢』と呼ばれる運動性言語中枢が形成された。

ヒトの祖先の登場

440万年前:アルディピテクス・ラミダスの登場

哺乳類の中から霊長類が登場して5500万年程が経過すると、直立二足歩行を可能とする初期の人類の一種である『アルディピテクス・ラミダス』が登場した。身長は120cm、頭蓋容量は300cm^3程度だった。なお、直立歩行をすることなく森に留まった種族は、その後は脳が拡大することなく、現在のチンパンジーやボノボへと進化していった。

250万年~160万年前:ホモ・ハビリスの登場

木材や石を加工して道具を作り出すべく、眼と手を正確に連動させ、手先を器用に動かすようになった。こうした活動により、頭蓋容量は600cm^3程度にまで拡大した。この頃になると、言語を司る『ブローカー野(運動性言語中枢)』が目立つようになった。

ホモ・ハビリスは脳の進化によって自身を取り巻く世界を認識し、言語を用いて周囲の個体に自身の考えを正しく伝える能力を持つようになった。こうした能力は『心』を生み出す生物的基礎となり、現在のヒトに通じる能力となった。

180万年~5万年前:ホモ・エレクトゥスの登場

頭蓋容量がさらに拡大し、950cm^3程度になった。石器をより高度に加工し、槍などもつくるようになった。ホモ・エレクトゥスが加工した石器は、ホモ・ハビリスが加工した石器と異なり石の両面が削られて先端が鋭利に尖っている特徴を持っていた。 ホモ・エレクトゥスは道具を巧みに操っただけでなく、火を使うことも覚えた。火は夜間に肉食動物を寄せ付けない役割を果たし、さらにはそれまで摂取できなかった食糧を調理して摂取できるようになった。また、直立二足歩行によって骨格が変化し、発声気管が従来よりも低い位置に下がった。この変化によって発声が容易になり、言語の発達が加速した。脳内では、言語を司る部位であるブローカー野がますます発達した。さらに、聴覚を司る部位に隣り合う部位も拡大し、『ウェルニッケ野』と呼ばれる感覚的言語中枢に発展した。

20万年前~現代:ホモ・サピエンスの登場

脊椎動物の進化の初期の段階では、脳は神経細胞が集まった“膨らみ”のようなものに過ぎなかった。やがてこの膨らみはヒトへの進化の過程で大脳、間脳、中脳、小脳、延髄、脊髄からなる複雑な構造を形づくり、個体の維持だけでなく高度な精神活動を可能とする器官となった。

原始的な霊長類からホモ・サピエンスへと進化する過程で、大脳皮質は厚みが増しただけでなく表面積も著しく拡大した。また、大脳皮質はより深く複雑なしわをつくって容量を増やし、大脳新皮質の感覚野、連合野がさらに発達した。小脳も大きくなり、ヒトの複雑な動きを可能にした。 霊長類の登場から現在にかけて、大脳新皮質はそれまでの生物史に例がない速度で拡大・発達していった。大脳皮質の中でも新しい皮質(新皮質)は高等動物ほど発達しており、霊長類では認知や思考、判断といった知的活動を司る部位となっている。 こうした変化によって頭蓋容量は1400cm^3まで拡大し、ヒトは抽象的な思考が可能となった。

脳が進化したことにより、思考や創作活動の幅が広がった。たとえば、動物の骨や牙・角を利用してネックレスやペンダントなどの装飾品やフルートのような楽器、裁縫に用いる縫い針、油を燃やすオイルランプなどがつくられるようになった。今から2万5000年前には、動物の油を用いて絵の具を作成し、洞窟の壁に様々な色で牛の絵を描くことも可能となった。

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List    投稿者 seibutusi | 2019-10-10 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-10-10

脊椎動物の骨の進化過程~メダカのウロコが証す骨の起源~

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 海の中には生命活動を維持(いじ)するためのカルシウムなどのミネラル分が豊富にあるが、汽水域ではミネラル分が足りないそこで魚たちは体内にミネラルを蓄積(ちくせき)するための貯蔵(ちょぞう)施設(しせつ)として骨を使った。<(実現塾10月5日)とあるように、脊椎動物の骨は重要な働きをしているようです。

では、人類を含む「脊椎動物の骨」は、どのようにして作られ進化してきたのでしょうか
以下に、メダカのウロコとヒレから骨の起源を追求した研究を紹介します。

東京大学プレスリリース(2013/3/28)https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2013/11.htmlより、以下引用。

メダカのウロコが証す骨の起源

【発表のポイント】

・どのような成果を出したのか
 →ウロコとヒレが発生中の胚のどの細胞に由来するかをつきとめた。
・新規性(何が新しいのか)
 →脊椎動物の骨の進化の過程を明確にした。
・社会的意義/将来の展望
 →骨は色々な由来の細胞から柔軟に作られることを示したことで、骨の発生機構研究や再生医療研究へ基礎的知見を与えた。

【発表概要】

魚のウロコやヒレが発生中の胚のどの細胞から作られるかは、脊椎動物の骨の起源や進化を解く鍵となる問題であるにもかかわらず、長年謎につつまれたままだった。細胞の運命は胚発生初期にまず外胚葉、内胚葉、中胚葉に分かれ、その後それぞれ、神経系や内臓、骨などに順次分化して行く。さらに脊椎動物には第四の胚葉とも呼ばれる特別な細胞、神経堤がある。通常、これらの胚葉を超えて組織を分化させることは難しいため、細胞の由来(系譜)情報は非常に重要である。東京大学大学院理学系研究科島田敦子助教・武田洋幸教授らの研究グループは、基礎生物学研究所亀井保博特任准教授らと共同で、世界で初めて成魚まで骨の細胞系譜をたどる実験系の開発に成功し、ウロコやヒレが従来の説で考えられていた神経堤細胞由来ではなく、中胚葉細胞由来であることを明らかにした。これによって脊椎動物は予想外に「柔軟」な方法で骨を進化させてきたことがわかった。本研究は骨の発生機構や再生医療に関する今後の研究において道しるべともなる成果であり、分化誘導に関わる遺伝子の探索をより正確に行うための情報となると思われる。

【発表内容】

地球上で最も進化した生物は脊椎動物であり、この脊椎動物の最大の特徴は骨組織を持つことである。ウニやサンゴなどがもつ炭酸カルシウムから成る硬い組織とは違って、脊椎動物の骨はカルシウムを再利用できる全く新しいもので、リン酸カルシウムから成るこの骨を獲得したことによってカルシウムの貯蔵庫をたずさえて、海から陸上に進出できたと考えられている

では、骨はどのように進化したのだろうか最初に出現した骨はおよそ4~5億年前に棲息していた甲冑魚(カッチュウギョ)などが身体にまとっていた鎧のような外骨格(注1)である。この骨の構造を調べると、神経堤細胞から作られる歯の象牙質にそっくりだった。神経堤細胞とは脊椎動物だけがもつ多分化能細胞で、脊椎動物に特有の器官を作り出してきたと考えられている。事実、ウロコのすぐそばにある色素細胞や水の流れを感知する側線細胞などは神経堤細胞由来であることが確かめられており、さらに太古の外骨格の姿を残しているウロコやヒレについても、実験的な証拠がないまま神経堤細胞に由来すると類推されてきた。その結果、骨は神経堤によって獲得されたとする説が長年信じられてきた。これまでの骨の分類学や進化学は、このような類推の上に築かれた曖昧なものだったのである。

そこで、東京大学大学院理学系研究科島田敦子助教・武田洋幸教授らの研究グループは、基礎生物学研究所亀井保博特任准教授らと共同で、メダカを用いて2種類の長期細胞系譜解析法を開発し、上記学説の再検証を行った。一つめの技術は「細胞・組織移植(注2)」で、骨細胞だけが緑色(GFP)蛍光を発する遺伝子改変メダカの胚から小さな組織を取り出して別の胚に移植する方法、二つめの技術は「光による細胞標識法(注3)」で、光(赤外線)をメダカ胚の特定の細胞に照射して温め、生涯緑色(GFP)蛍光を発するようにさせ、その細胞の一生を観察する方法である。これらの方法を使ってウロコとヒレが胚のどの細胞に由来するかを調べたところ、どちらも従来の説で考えられていた神経堤細胞ではなく、ウロコ・背ヒレ尾ヒレは体幹筋や背骨などを作る体節中胚葉という細胞に由来、胸ヒレは心臓などを作る側板中胚葉という細胞に由来することが明らかとなった。

今回の研究によって、いままで謎に包まれてきた脊椎動物の骨の進化の過程がようやくはっきりと見えてきた。脊椎動物にはタイプが全く違う外骨格(注1)内骨格(注4)があるが、これまでは、外骨格は神経堤細胞から、内骨格は主に中胚葉細胞からそれぞれ対応して作られると考えられてきた。今回、体幹部を覆う典型的な外骨格(ウロコとヒレ)が複数の種類の中胚葉細胞由来だったことから、骨は由来する胚細胞の種類にはほとんど制約されず、色々な細胞によって「柔軟に」作られることが決定的となった。もともとは魚の形だった脊椎動物が、カエル、鳥、ヒトに至まで次々と姿を変えることができたのは、このような骨の発生の「柔軟さ」によるものだったのかもしれない本研究は骨の発生機構や再生医療に関する今後の研究において道しるべともなる成果であり、分化誘導に関わる遺伝子の探索(注5)をより正確に行うための情報となると思われる。

(中略)

【用語解説】

(注1)外骨格頭蓋骨、歯、ウロコなど、体の周辺にある骨で、軟骨をへずに直接リン酸カルシウムを沈着させて骨化する。皮骨とも呼ばれる。従来は頭部と同じく神経堤由来と考えられていたが、本研究で体幹部外骨格の由来が中胚葉であることがわかった。

(注2)「細胞・組織移植」骨が緑色蛍光を発し、かつ全身が赤色蛍光を発する遺伝子組み換えメダカの細胞や組織を、別のメダカ胚に移植することで、成長後の蛍光色により細胞の由来を解析する方法。本研究で用いた遺伝子組み換えメダカは東京工業大学の猪早敬二助教(共著者)と京都大学の木下政人助教(共著者)らが作製した。

(注3)「光による細胞標識法」生体内の局所や細胞に赤外線を照射して温めて熱ショック反応を起こさせて遺伝子発現を誘導する方法。赤外線を利用するため細胞への害が少なく、また動物・植物両方で応用することができる。2009年に亀井らにより開発され、IR-LEGO(InfraRed Laser Evoked Gene Operator)法と呼ばれる。現在は基礎生物学研究所でこの技術による動物・植物での共同利用研究が進められている。今回遺伝子発現顕微鏡による系譜解析に使用したメダカ胚は、京都大学の木下政人助教(共著者)らの協力により2つの遺伝子組み換えメダカを交配して生涯GFPを発現するように工夫されている。本研究はIR-LEGOが生物学的な重要な発見に応用された初めての例である。(図も参照)

(注4) 内骨格背骨や四肢の骨など体の中心部にある骨で、いったん軟骨を経た後に骨化する。外骨格とは独立に獲得され、進化してきたとされる。

(注5) 分化誘導に関わる遺伝子の探索細胞の運命は胚発生初期に外胚葉、内胚葉、中胚葉に分かれ、以降それぞれ、神経系や皮膚、消化管や内臓、筋肉や血管などに順次分化していく。神経堤(神経冠とも言う)は第四の胚葉とも呼ばれ、末梢神経、グリア細胞などに分化する。通常これらの胚葉の種別を超えて組織を分化させることは難しい。再生研究においては、発生・分化過程で働く遺伝子の制御によって再生する組織の分化制御を行おうとしているので、細胞の由来(系譜)情報は非常に重要な情報である。

 

■顕微鏡技術の概要説明図   画像をクリックで拡大

スライド 1

 

 

 

 

 

 

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2019-10-03

ネアンデルタール人のDNAが語るヒトの進化

 

現代の人類の進化に関する定説は、DNA分析(分子進化学)によるものである。

しかし分子の変化は時間に比例すると仮定したものであるが、「変異は環境変化に依るものである」が生物史からの事実と思う。定説は非常に危うい物である。

[宮田隆の進化の話] より

https://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2004/post_000003.html

【ネアンデルタール人のDNAが語るヒトの進化】

を要約した現在の定説は以下のようになる

【類人猿の進化に関する2つの説】

1967年までの古人類学の定説では、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンを一つのグループにまとめて、これらの類人猿からヒトの系統が分かれたのは2400万年前に遡るとなっていた。さらに、およそ1000万年前に生存していたラマピテックスこそが、証拠は歯の化石だけにも関わらず、現生人類の直接の祖先であると信じられていた。(化石から推定した系統樹)

1967年以降ヒトに最も近い類人猿はチンパンジーで、その分岐時期はたったの500万年前だとする分子進化学からの結論(分子から推定した系統樹)

【多地域起源説vs単一起源説】

・他地域起源説:民族間の争いなどからほど遠い平和主義者の子孫

・単一起源説:われわれ現代人は殺戮者集団の子孫

1997年、現代人のDNAと比べると、ネアンデルター人と現代人の系統が分かれたのがおよそ60万年前で、現代人のなかで最も古い分岐を示すアフリカのグループはせいぜい20万年前に遡る程度だった。つまり単一起源説を強く支持する結果を得たのだ。

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客観性は科学が持つ重要な特徴の一つだが、われわれヒトの進化についてはどうも例外のようで、強い思い込みに真実が歪められてきた苦い思い出が一度ならずある。ヒトがサルから進化したことは渋々認めたとして、その分岐を出来るだけ古い時期の出来事にしたいという気持ちが強く働いていたようだ。
1967年までの古人類学の定説では、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンを一つのグループにまとめて、これらの類人猿からヒトの系統が分かれたのは2400万年前に遡るとなっていた。さらに、およそ1000万年前に生存していたラマピテックスこそが、証拠は歯の化石だけにも関わらず、現生人類の直接の祖先であると信じられていた。そのような当時の状況で、ヒトに最も近い類人猿はチンパンジーで、その分岐時期はたったの500万年前だとする分子進化学からの結論(1967年:ウィンセント・サリッチとアラン・ウィルソン)は、古人類学者にとっては信じ難いことであったに違いない。1980年にラマピテックスの完全な頭骨の化石が発見され、オランウータンのグループに分類し直されるに及んで、15年の長きに亘った「古人類学vs分子進化学」論争がサリッチとウィルソンの主張を認める形で決着した(図1)。

(図1)類人猿の進化に関する2つの説
 現在、世界の各地にはさまざまな皮膚の色や体格の異なる人種が生存しているが、これらの現代人はすべて同じ種、ホモ・サピエンスに属する。ホモ・サピエンスには、現生人類(新人)のほかに、数十万年前に各地に生存していたジャワ原人、北京原人、ネアンデルタール人といった先行のグループ(旧人)もいる。ところで、われわれ現代人の起源に関して「多地域起源説vs単一起源説」と装いを新たに論争が再燃している。火付け役はまたもやアラン・ウィルソンである。
アフリカ大陸は長らく人類進化の揺りかごだったが、ヒトの祖先(ホモ・エレクトス)は150万年前頃になるとユーラシア大陸へ次々と進出し、各地の旧人となった。「多地域起源説」では、現代人に見られる人種の特徴はその地域で発見された旧人から受けついだもので、人種の起源は非常に古く、人種間では遺伝的な交流が常にあったのだと主張する。異なる地域の旧人の特徴はかなり違うのに対し、現代人では人種間にそれほどの差が見られずむしろ一様に見えるのは、混血のせいだというのである。われわれは、民族間の争いなどからほど遠い平和主義者の子孫というわけだ。一方、「単一起源説」では、現在の人種が成立したのはずっと最近のことで、もともとアフリカにいた現代人の祖先が世界中に広まり、各地域にいた旧人たちの子孫と混血することなく、それに取ってかわったのだと主張する。われわれ現代人は殺戮者集団の子孫というわけだ(図2)。アラン・ウィルソンは各地の現代人のDNAを取って系統樹をつくり、最も古い分岐を示すのはアフリカ人であることから、単一起源説を主張した。だが、これだけでは証拠として弱い。
(図2)現代人の進化に関する2つの説
 われわれは平和主義者の子孫なのか、それとも殺戮者の子孫なのか? 2つの説の重要な相違点は、数十万年の時間を隔て「出アフリカ」を果たした旧人と新人の間の混血の有無にある。多地域起源説では「混血あり」を主張するので、現代ヨーロッパ人とネアンデルタール人とのDNAを比べると、両者にはほとんど違いが見られないはずである。一方、単一起源説では「混血なし」を主張するので、両者のDNAは出アフリカの時間差である数十万年分の違いが認められるはずである。ヨーロッパ人とネアンデルタール人のミトコンドリアDNAを比べれば、どちらの説が正しいかが検証できることになる。
しかし、事はそう簡単ではないのだ。「現在生きている生物のDNAを比べるだけで、過去に起きた進化が分かる」というのが分子進化学の売りだが、DNAが取れなければ、その生物の進化が理解できない。化石からはDNAが取れない。そうした常識に果敢に挑戦し、ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの単利に成功した人々がいる。スバンテ・ペーボのグループだ(1997年)。現代人のDNAと比べると、ネアンデルター人と現代人の系統が分かれたのがおよそ60万年前で、現代人のなかで最も古い分岐を示すアフリカのグループはせいぜい20万年前に遡る程度だった。つまり単一起源説を強く支持する結果を得たのだ。(図3)
(図3)ミトコンドリアDNAで推定した現代人の系統樹
 

 

クリックすると拡大図が見られます。
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List    投稿者 seibutusi | 2019-10-03 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-10-03

太古の世界で、「クロロフィルを安全に食べられる」よう進化した生物

>カンブリア紀に入ると、海中の酸素濃度がどんどん上昇してゆき、生物群が爆発的に多様化した。<(カンブリア大爆発:実現塾 9月28日)
>動物が生きていくには酸素が必要だ。エディアカラ紀の進化的多様化は、世界の海の酸素濃度が激しく変動する中で起こった。<「動物の多様化を促進させたカンブリア爆発の原因は1億年間の間に4度起きた海洋の急激な酸素化」

太古の世界で酸素濃度の上昇に対して、私達の祖先たちは、どのようにして適応していったのか?

国立科学博物館らの国際研究チームにより、動物や植物などの共通祖先(真核生物の共通祖先)は、地球の生態系を支える光合成で使われるクロロフィルを安全に食べられるように進化した生物だったことが明らかになりました。
これによると、カンブリア紀の酸素濃度上昇の前に、クロロフィルを有して酸素を発生する藻類と真核生物の“食べる食べられるの関係”=酸化的環境への前適応があったようです。

以下、国立科学博物館プレスリリース(令和元年7月16日)https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/189891.pdfより。

太古の世界で私達の共通祖先が繁栄を勝ち得た仕組みが明らかに!
~「クロロフィルを安全に食べられる」よう進化した生物~

【背景】

光合成に不可欠な色素であるクロロフィル(葉緑素とも呼ばれる)は、他の生物に「食べられる」と活性酸素を発生するため、食べた側に致命的なダメージを与える危険な物質でもあります(光毒性:注1)。食べる側にはクロロフィルを無毒化して光毒性に対抗する仕組みをもつことが不可欠です。

【本研究の成果】

クロロフィルの「無毒化の仕組み」を発見
クロロフィルをもつ光合成生物である藻類を食べている広範な真核生物:注2)が、細胞内に取り込んだクロロフィルを「CPE」と呼ばれる活性酸素が発生しない安全な物質に転換する仕組みをもっていることを突き止めました(図1)。

「無毒化の仕組み」は普遍的
現在の地球上には、非常に多様な真核生物:注2)が存在していますが、クロロフィルをCPEに「無毒化」する仕組みはほとんど全ての系統群に共通して存在することも明らかになりました。これは、現在の多様性の起源となった祖先的な真核生物の段階(10~18億年前の原生代に存在)で、既に「藻類を安全に食べることのできる仕組み」が確立していた証拠です。

「無毒化の仕組み」の獲得は、酸素に満ちた世界への究極の一歩
約6億年前に地球の大気や海洋が酸素で満たされるようになると、クロロフィルをもつ「猛毒生物」としての藻類が大繁栄しました。すると、それまでは藻類を食べて細々と生きていた我々真核生物の共通祖先:注3)が、クロロフィルを無毒化できないライバルたちを差し置いて台頭しました。こうして酸素に満ちた太古の環境で繁栄を勝ち得たことで、私達を含む、現在に続く多様な真核生物の礎になったと考えられます(図2)

■参考図

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図1.藻類を捕食した細胞模式と明視野および蛍光顕微鏡像 左)餌藻類が消化される過程で、クロロフィルがCPEへ転換される。中央)クロロフィルの緑色が失われ、右)赤いクロロフィルの自家蛍光が失われていく。

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図2.地球大気の酸素濃度と生物出現の相関図 上)過去30億年間の地球大気の酸素濃度、下)生物の祖先系統の出現時代。
本研究ではクロロフィルを有して酸素を発生する藻類と真核生物の“食べる食べられるの関係”がこの時代に既に成立していたことを示した。この酸素環境下で藻類を食べることのできた真核生物の子孫が多様化し、現在のように繁栄した。

■用語解説

注1)クロロフィルには光と酸素の存在下で一重項酸素と呼ばれる強力な酸化剤を発生させる作用があり、これが無差別に細胞内の有機分子を破壊する。

注2)細胞に細胞核をもつ生物。動植物を含む肉眼で見える生物のほぼすべてを含むが、その多様性のほとんどは肉眼で見えない単細胞の生物たちである。

注3)現存する全真核生物の共通祖先は、“原初の真核生物”とは区別される。10~18億年前に存在していた(が絶滅してしまった)多様な真核生物の中で、現存する真核生物の祖先のみが生き残り、子孫を繁栄させることができた。

(以上)

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List    投稿者 seibutusi | 2019-10-03 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-09-26

生物学の定説「進化の原動力は突然変異≒DNAを傷つける放射能とDNAの複製エラーによる」は事実なのか?

現代の生物学では、「進化の原動力は突然変異≒DNAを傷つける放射能とDNAの複製エラーによる」

「古代地球は宇宙よりの強力な放射能で生物は存在できなかった。≒放射能がDNAを壊すので複製出来ない」が定説となっています。

本当に進化の原動力は放射能による突然変異なのでしょうか?又強力な放射能の中では生物は生きられないのでしょうか?

改めて、生物と放射能の事実関係を正確に知る(事実追求)時代になっていると思います。

「原子炉のたまっている水の中に生物の姿が!」の記事が有りましたので紹介します

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https://indeep.jp/what-is-about-radiation-exposure-and-human/ より

福島で見つかった「原子炉の水中で繁茂し続ける多数の生き物たち」:そして思い出す数々の「放射能での生物や遺伝子の損傷が見出されない科学的研究論文」

投稿日:2018年3月5日更新日:2019年4月9日

放射能をめぐる生物の多様性が示す真実はいったいどのようなものなのか

「原子炉のたまっている水の中に生物の姿が!」

週プレNEWS 2018/03/05

「なんだ、あのマリモみたいなものは?」「大至急、あの水を調べさせてほしい!」

東京工業大学地球生命研究所特命教授の丸山茂徳氏は、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉格納容器内の映像を見てそう叫んだという。

「昨年から公開されている原子炉内の映像を見て、実に多種多様な生命体がいることに驚きました。しかも、活動しているのは目に見えないミクロン単位のバクテリアや細菌だけでなく、藻類や動物・植物性プランクトンなどミリ単位の多細胞生物が繁殖している可能性が高い。」

「水中のあちこちに沈殿した泥土や水あかのような物質、2号炉の水没した部分に広がる黒や深緑色のシミなども、事故由来ではなく、生命活動によって発生したものでしょう。2、3号炉の金属部分の緑色や、平面に付着した黄土色とオレンジ色の物質は藻類などの群集体でバイオフィルムとも呼ばれています。これは自然界では河原の石などに付着し、好物のミネラルや金属イオンなどを栄養にしながら成長し続けるのです」

「1、2、3号炉すべての水中に漂う半透明の物質も、おそらくバイオフィルムの剥離片や生きたプランクトンでしょう。これは水の対流に乗って浮遊しているように見えますが、もっと念入りに観察をすれば、自立して泳ぐ生物が見つかるかもしれません」

今年1月に調査した2号機格納容器底部の放射線量は毎時8Sv(シーベルト)。人間なら1時間で死亡してしまうほどの高線量だ。これだけの高線量の中で、生物が生き延びることはできるのか。

 

ここまでが抜粋です。

東京電力福島第一原子力発電所の原子炉内の水は、8Sv(シーベルト)というようなレベルの、大変に高い放射線に満ちている場所なのですが、つまりは、

「そこで多種多様な生物が繁茂していた」

ということなのですね。

私たちの多くが「何となく持つ観念」としては「高濃度の放射線に満たされた場所は《死のエリア》である」というようなことだと思います。

しかし、2011年の東北の震災と、そしてそれに伴う原発の事故以来、私は「高濃度の放射能とそこに生きる生物」について、海外で報道があった場合に、なるべく紹介するようにしていました。

古いものでは、震災前の 2010年のものあり、なかなか目にふれる機会もないと思いますので、今回それらから抜粋し、振り返って記事をご紹介したいと思います。

すべて海外の記事、あるいは科学的調査の論文の翻訳などです。

先にそれらの記事を掲載した過去記事のリンクを示しておきます。

高濃度の中の生物たちの記事のリンク(公開の新しい順)

放射線の長期被爆によっての遺伝子への損傷は「ない」ことがマサチューセッツ工科大学の実験で判明 In Deep 2012/06/27

チェルノブイリの野生動物は事故後の放射能の影響を「受けていなかった」調査結果が英国の王立協会の学会誌で発表される In Deep 2012/04/16

未知の生物?:使用済み核燃料の中で「成長するもの」が米国の核保留地で発見される In Deep 2011/12/20

驚異の生命:広島型原爆の3000倍の放射能濃度の中で生きられる微生物 In Deep 2010/04/20

https://indeep.jp/what-is-about-radiation-exposure-and-human/

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List    投稿者 seibutusi | 2019-09-26 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-09-26

植物は自分のおかれた環境を細胞レベルで記憶する~「気孔」の仕組み~

Opening_and_Closing_of_Stoma_svg                   ↑ 画像はこちらより

動物のよう脳構造を持たない植物は、自らの周辺環境(外圧)をどのように記憶しているのか?

>植物の表皮には気孔が数多く存在し、植物はこの孔を通して光合成に必要な二酸化炭素を取り込み、また、水蒸気や酸素の放出など、大気とのガス交換を行っています。<

その秘密は「気孔」という細胞の仕組み にあるようです。

以下、明治大学プレスリリースhttps://www.meiji.ac.jp/koho/press/6t5h7p00001m6r7x.htmlより紹介します。

 

植物は自分のおかれた環境を細胞レベルで記憶する

~植物細胞における記憶の仕組みの解明に道筋~

■ 要 旨

● 明治大学農学部の藤茂雄助教らの研究チームは、植物の気孔が日の長さを記憶し、それに応じて気孔の開き具合を調節していることを発見しました。
● 今回の発見は、植物の光合成や成長に重要な働きをする気孔が、環境情報を細胞レベルで記憶していることを示すものであり、その仕組みの解明に繋がる分子メカニズムが明らかとなりました。

(中略)

■ 研究の背景

植物の表皮には気孔が数多く存在し、植物はこの孔を通して光合成に必要な二酸化炭素を取り込み、また、水蒸気や酸素の放出など、大気とのガス交換を行っています。一つの気孔は一対の孔辺細胞により構成されており、太陽光に応答して開口します。また、真っ暗な状況や乾燥ストレスに応答して作られる植物ホルモン・アブシシン酸 注1)により閉鎖します(図1)。孔辺細胞に光が当たると、細胞内のシグナル伝達を経て、細胞膜プロトンポンプ 注2)が活性化され、その後、孔辺細胞内にカリウムイオンが取り込まれることで最終的に気孔が開口します(図2)。これまでのモデル植物シロイヌナズナ 注3)を用いた研究により、光周性花成誘導に関わる因子(花成ホルモン FTや転写因子 SOC1など) 注4)が重要な役割を果たすことが明らかとなり、日長が気孔開度に影響することが示されていましたが、その詳細は明らかになっていませんでした。

■ 研究手法と成果

本研究では、日長の異なる生育条件で育てたシロイヌナズナの気孔開度と気孔コンダクタンス 注5)の測定を行なったところ、日の短い環境(花芽形成を行わず、栄養成長を行う短日条件:8時間明期16時間暗期)と比べ、日の長い環境(花芽形成を行い、生殖成長を行う長日条件:16時間明期8時間暗期)では、光による気孔開口と気孔コンダクタンス上昇がともに明らかに増加していることがわかりました(図3)。

一方で、花成ホルモン FT 注4)の変異体では、長日条件に応答した気孔開口と気孔コンダクタンス上昇は見られず、この応答が花成ホルモン FTにより仲介されていることがわかりました。次に、どのような遺伝子が変動しているのか、短日および長日条件で生育した植物から単離・精製した孔辺細胞プロトプラスト 注6)を用いて発現する遺伝子の解析を行ったところ、すでに気孔開口への関与が報告されている光周性花成誘導に関わる花成ホルモン FTや転写因子 SOC1 注4)など、いくつかの遺伝子が2倍以上に増加していることがわかりました(図3)。

また、長日条件に依存した SOC1の増加は、花成ホルモンFTの変異体では見られませんでした。以上の結果から、 SOC1は FTを介して、長日条件に依存した気孔開口促進に関わっている可能性が示唆されました。また、詳細な発現解析の結果、気孔開口のエンジンとして働く細胞膜プロトンポンプの一つである AHA5の発現が増加していることを見出し、長日条件に依存した気孔開口促進は、部分的には細胞膜プロトンポンプの増加により引き起こされている可能性が示されました。
さらに、このような長日条件に依存した気孔開口促進が、植物を短日条件に戻した場合でも維持されているかどうかを調べるために、長日条件で育てた植物を短日条件に移し、1週間後に気孔開度を調べたところ、短日条件に移した後も、少なくとも1週間は気孔の開口促進が維持されていることを発見しました(図3)。

これと一致して、 SOC1の発現も短日条件に移した後も、少なくとも1週間は高いレベルで維持されていました。一方で、 SOC1の発現を誘導するFTの発現は、短日条件に移した後1週間では発現が低下していました。以上の結果から、植物の孔辺細胞は、少なくとも1週間は FTに依存せずに、気孔開口促進と SOC1の発現上昇を維持する記憶システムを持っていることが明らかとなりました(図3)。

この記憶システムのメカニズムを探るために、遺伝子発現に重要な役割を果たすことが知られているヒストンのメチル化とアセチル化の状態 注7)を調べたところ、 SOC1遺伝子周辺では、 FT依存的にヒストンのメチル化が引き起こされていることが明らかとなり、ヒストンのメチル化(ヒストンH3K4)が孔辺細胞の記憶を担うメカニズムの一つである可能性が示唆されました(図4)。

(中略)

■ 参考図

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図1 気孔の開閉とその働き
気孔は青色光や赤色光によって開口し、暗処理や乾燥ストレスにより生合成される植物ホルモン・アブシシン酸(ABA)により閉鎖します。気孔は、光合成に必要な二酸化炭素の唯一の取り込み口として働きます。

 

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図2 光による気孔開口
青色光は、青色光受容体フォトトロピンに受容され、細胞膜プロトンポンプを活性化し、カリウムイオン(K+)取り込みを誘導します。これにより、浸透圧が上昇し、水が取り込まれ、孔辺細胞の体積が増加することで気孔が開口します。赤色光は、葉肉細胞や孔辺細胞の葉緑体における光合成を介して細胞膜プロトンポンプを活性化し、気孔開口を誘導します。

 

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図3 日長に応じた気孔の開きと孔辺細胞における遺伝子発現
長日条件(16時間明期)で育てた植物は、短日条件(8時間明期)で育てた植物に比べて気孔が開きやすくなっており、このとき孔辺細胞内ではFT遺伝子やSOC1遺伝子の発現が高まっていた。
長日条件で誘導された気孔開口促進は、短日条件に移してから1週間経っても維持されており、FTの発現は低下していたが、SOC1の発現は維持されていた。

 

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図4 気孔孔辺細胞における日長の記憶
短日条件と比較すると長日条件では、光による気孔開口が増加する。孔辺細胞においても長日条件では光周性花成誘導にかかわるFT遺伝子の発現が上昇する。すると、転写因子SOC1遺伝子の発現が誘導され、同時に、FT依存的にSOC1遺伝子近傍のヒストンH3K4のトリメチル化が引き起こされる。さらに、長日から短日に移し、1週間は気孔の開口促進が維持され、その際、FTの発現は減少したのに対して、SOC1の発現は高いレベルで維持される。植物の孔辺細胞は、少なくとも1週間は、FTに依存した気孔開口促進とSOC1の発現上昇を維持する記憶システムを持っていることが明らかとなり、ヒストンH3K4のトリメチル化が記憶のメカニズムである可能性が示唆された。

(以上)

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List    投稿者 seibutusi | 2019-09-26 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-09-20

人工細胞はシンギュラリティを越えられるか!? – 現代の錬金術で生命の創発に挑む

生命とは自己と外界との境界」「エネルギーと物質の代謝」「自己複製」「恒常性

と言われています。その生命を人工的に作ろうとする研究発表がありました。

多分、実現できると思いますが、まさに、原子力発電と同じで、造った後の影響は考えない所業です。

なぜ「生命とは?」を追求する為に人工生命作成が必要かなのか説得性がなく、非常に危険であると普通考えられると思うのですが・・・・

 

人工細胞はシンギュラリティを越えられるか!?現代の錬金術で生命の創発に挑む

https://academist-cf.com/journal/?p=11629より

注)シンギュラリティ:人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)。

趣旨:普遍的な人工生命を現実世界でつくるために有力な手法が、現代の錬金術である「化学」です

>脂質に変換される脂質の元(エサ)を合成し、これをそのベシクルに添加することで、エサを食べて肥大・分裂する“連続性”もったベシクル(=化学的に自己増殖する分子システム)をつくることに、世界で初めて成功しました。

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【現代のホムンクルス】

注)ホムンクルス:ヨーロッパ錬金術師が作り出す人造人間、及び作り出す技術のことである。

ホムンクルスの現代版ともいえる研究が存在します。20世紀中ごろ、DNAに遺伝情報があり、その発現機構であるセントラルドグマの大筋が解明されたことで、生物由来の物質をうたかた(水面の泡)に入れ、混ぜ合わせ、単細胞レベルではありますが、生物の興味深い性質を再構築した研究成果が次々と報告されています。このように生物の一部の性質を模倣したうたかたを私は“人工細胞”と呼んでいます。ルイージらが1994年に報告した、うたかた内での酵素反応にはじまり、最近では、このacademist Journalでも紹介された、車兪澈さんの光エネルギーをつかってタンパク質を発現する人工細胞が報告されています。

これらの研究には、「ベシクル」を“うたかた”に用いているという共通点があります。ベシクルとは、細胞膜の構成物質でもある脂質分子を水中に添加することで自発的に形成される、水中に漂う袋状の構造物(うたかた:泡沫)です。

注)ベシクル:水中で親水性と疎水性をもち合わせる両親媒性分子が隙間なく並び、脂質二重層を形成した袋状の自己集合体。生体膜と同じ構造をとる

 

筆者がつくった多様なベシクル(左)と球状ベシクル(右)大きさは0.001〜0.1 mm程度。つくり方や組成などによって、形は大きく変化する。

先述の人工細胞の研究は、生物の再現という文脈において、非常に優れた成果です。また、2010年、ベンターらはある最小生物の遺伝情報を簡略化したDNAを合成し、他の最小生物のDNAを抜き取った器に合成DNAを入れなおすことで、”永続性“をもったうたかたの再構築に成功しています。

【Life as it could be – 自己増殖する人工のうたかた】

宇宙(universe)を見渡したとき、太陽系外の惑星に存在する(かもしれない)生物が地球の生物のように核酸やアミノ酸をベースにしているとは限りません。つまり、生命とは何かという普遍的(universal)な問いに迫るためには、パーツをばらして再構成するだけではなく、”あり得る生命”を別のパーツを使って、一から構築する必要があります。

このような普遍的な人工生命を現実世界でつくるために有力な手法が、現代の錬金術である「化学」です。“うたかた”やそれが織りなす“永続性”を化学的に合成したさまざまな分子で実現することで、”あり得る生命”の創製に迫ることができます。日本は、この分野で世界をリードしています。最初の成果は、國武豊喜先生が1977年に報告した、有機合成した脂質によるベシクル形成でした。

合成ベシクルの報告の後、30年が経った2007年。さらに、菅原正先生のグループが、ベシクルによって脂質に変換される脂質の元(エサ)を合成し、これをそのベシクルに添加することで、エサを食べて肥大・分裂する“連続性”もったベシクル(=化学的に自己増殖する分子システム)をつくることに、世界で初めて成功しました。

さて、皆さんは、この“自己増殖する人工のうたかた”を生命だと思うでしょうか? 実はここは人によって、意見がわかれるポイントです。私の友人のほとんどは、「それ、もう生命じゃん!」と言ってくれますが、多くの研究者は「生命ではない」と断言します。では、何が足りないのでしょう?

【うたかたがシンギュラリティを越えるために】

生物(または原始的細胞)は、太古の昔、内包していた何がしかの分子が遺伝情報をもったことで、変異と淘汰による進化を可能とし、シンギュラリティを越えることで“永続性”を手に入れました。人工のうたかたがシンギュラリティを越えるためには、この情報分子をもつことが肝となります。今回、私たちはこの進化に必要な情報をもった自己増殖するうたかたの構築に世界ではじめて成功しました。

2011年に菅原グループで構築されたものをベースに今回つくった人工細胞人工細胞は、内部でDNAを増幅させた後に、エサを食べて分裂する。DNAの長さを認識する人工細胞の能力を助けるはたらきをする高分子(ポリエチレングリコール)の鎖を膜から生やした。

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/////2011年に菅原グループで構築されたものをベースに今回つくった人工細胞
人工細胞は、内部でDNAを増幅させた後に、エサを食べて分裂する。DNAの長さを認識する人工細胞の能力を助けるはたらきをする高分子(ポリエチレングリコール)の鎖を膜から生やした。

【“情報をもった自己増殖うたかた】

内部でDNAを複製しながら自己増殖するベシクルが、2011年に菅原グループでつくられました。今回、私たちはそのベシクル膜から高分子の鎖を生やすことで、DNAの「長さ」がベシクルの増殖を制御する「情報」になることを突き止めました。長さが異なるDNAをもったベシクルにエサを与えてみたところ、短いDNA(1164塩基対)をもったベシクルは速い分裂でより多く増殖し、長いDNA(3200塩基対)の場合はゆっくりした変形であまり増殖しないことが判明しました。

この増殖挙動がDNAの長さによって異なる現象は、DNAが膜中の脂質と形成する複合体にその原因がありました。まず、私たちは、DNAが脂質と複合体を形成し、その複合体がエサから膜をつくる化学反応を促進する、超分子触媒になっていることを顕微鏡観測と反応解析で明らかにしました。さらに、超分子触媒の形成度合いがDNAの長さにより変化することを分光学的な手法で明らかにしました。つまり、DNAの長さによって、膜分子生産を活性化する超分子触媒形成に差が生じるため、ベシクルの分裂挙動にも差が出たと考えられます。

長さの異なるDNAを内包した人工細胞にエサを与えた際の分裂挙動の違い DNAの長さによって、超分子触媒(緑色の楕円)の形成度合いに差が生じる。その結果、膜をつくる速度と分裂挙動にも差が生じる。(顕微鏡写真中の白線は0.01 mm)

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///長さの異なるDNAを内包した人工細胞にエサを与えた際の分裂挙動の違い
DNAの長さによって、超分子触媒(緑色の楕円)の形成度合いに差が生じる。その結果、膜をつくる速度と分裂挙動にも差が生じる。(顕微鏡写真中の白線は0.01 mm)

 

今回得られた結果は「太古の地球の原始細胞を含む自己増殖ベシクルにおいて、ポリマーが形成する複合体が分裂挙動に直接的に影響を与える触媒(酵素)として機能することで、ポリマーの長さを情報とする生物学的な情報の流れが生じる」ことを意味しています。今後、このような情報の流れをもった人工のうたかたが変異と淘汰を経験し、シンギュラリティを越える日もそう遠くないのかもしれません。

 

 

 

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-09-20 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-09-19

植物の驚異的な再生能力の秘密 ~傷を受ける前に再生準備を整える~

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植物には動物にはない驚異的な再生能力があります。
>根を切られた植物はできるだけ早く根を再生しようとする性質があります。 「根を切るともっと根が出る仕組みを解明 」
>葉や枝などが折れても再生する能力があります。何千年も生きる種や、接ぎ木や挿し木で茎の一部から元の木と同じ大きさまで育てることができる種が少なくないのも、植物が持つ強力な再生能力のおかげです。

なぜ植物はこのような、動物よりずっと強力な再生能力を発揮できるのか?その秘密を明らかにした研究があります。

以下、東京理科大学プレスリリースhttps://www.tus.ac.jp/today/2019041701.pdfより。

植物の驚異的な再生能力の秘密を解明
―「備えあれば憂いなし」、傷を受ける前に再生準備を整える 植物再生の新しいメカニズムを発見―

【研究の要旨とポイント】
● 植物は葉や枝が折れてもなぜすぐに生えてくるのか?接ぎ木や挿し木はなぜ元の木のように大きく育つのか? 動物と比べて強力な、植物の再生能力の秘密が明らかになりました。
● 再生能力を支える酵素LDL3は、再生に必要となる遺伝子を、ONになる直前の状態で待機させていることがわかりました。
● 遺伝子が待機状態に置かれることで、植物は再生が必要となる事態に備え、いざというときに素早い再生を果たせることがわかりました。

東京理科大学理工学部応用生物学科の松永幸大教授らの研究グループは、米国カリフォルニア工科大学のエリオット・マイロビッツ教授らの研究グループと共同で、植物の再生能力を支える新たなメカニズムを発見しました。

植物には、葉や枝などが折れても再生する能力があります。何千年も生きる種や、接ぎ木や挿し木で茎の一部から元の木と同じ大きさまで育てることができる種が少なくないのも、植物が持つ強力な再生能力のおかげです。しかし何故、植物はこのような、動物よりもずっと強力な再生能力を発揮することができるのでしょうか。その秘密はこれまで不明のままでした。

松永教授らのグループは、アブラナ科の一年草シロイヌナズナの持つ酵素LDL3(ヒストン脱メチル化酵素)が植物の再生に重要な役割を果たしていることを今回新たに見つけました。LDL3は、動物にがんを引き起こす酵素として知られるLSD1と同じ活性(酵素のはたらきや、効果の強さ)を持っており、シロイヌナズナからこの酵素をなくすと、葉や茎が再生しなくなりました。

植物の再生について、これまでの常識では、組織の切断や植物ホルモンの投与など、再生を促す刺激が与えられた場合に酵素活性が上昇し、再生に必要な遺伝子群がONになると考えられてきました。しかし驚くべきことに、LDL3は、再生の刺激が与えられる前から活性が高い状態にありました。シロイヌナズナは全部で26,000個の遺伝子を持ちますが、そのうち再生に必要な約3,000個が、LDL3のはたらきにより、ONになる直前の状態で待機していました。

【研究の背景】
鹿児島県屋久島に生育し、樹齢数千年と言われる縄文杉。この長寿を支えているのは、風雨で枝が折れても再生を繰り返すことができる、植物特有の高い再生能力です。園芸や農業では、ある植物の根に別の植物の茎を繋いで一個体として育てる接ぎ木や、茎や葉を直接土に植える挿し木もよく行われており、庭木や街路樹を剪定しても、すぐに葉や茎が出てくることもよく知られています。これらもすべて、植物の強靭な再生能力のおかげです。しかし、植物の再生能力のメカニズムは長年、不明なままでした。

【研究成果の詳細】
多細胞生物は、全てひとつの受精卵から始まります。受精卵はその成長と共に細胞分裂して、動物であれば脳や心臓といった臓器、植物であれば根・花・茎・葉など、それぞれの組織に合った形と機能を持った細胞が作られていきます。ひとつの受精卵が複数種類の細胞に分かれていく過程を「分化」と呼んでいます。

植物の組織は傷ついたり、植物ホルモンによる刺激を受けると、それぞれの細胞が持つ形や機能といった情報を失って(脱分化)、特定の機能を持たない未分化の細胞の塊「カルス」を作ります。このカルスに適切な植物ホルモンを与えて刺激すると、細胞は再び分化(再分化)して、根や茎、葉などの組織を作ります。しかし、カルスの段階では、細胞は未分化なので将来どのような組織に分化するのかはわかりません。したがって、再生の刺激があって初めて酵素が働いて、再生のための遺伝子群のスイッチがON(遺伝子発現がON)になり、再分化が開始されると考えられてきました。

(中略)

LDL3はカルスの中で、シロイヌナズナの全遺伝子26,000個の中から、葉や茎をつくる遺伝子群3,000個だけを選び出し、その遺伝子群だけを待機状態にする酵素でした。
遺伝子を待機状態にすることを、「遺伝子プライミング」と呼びます。この遺伝子プライミングにより、植物はいつ再生の刺激が来ても、直ちに茎や葉を再生させる遺伝子群をONにできることがわかりました。これが植物の強力な再生能力の秘密です。動物は捕食者が来れば逃げれば良いし、環境変動が起こっても移住できますが、植物はそうはいきません。植物は瞬時に動くことができない代わりに、捕食者に食べられて傷ついても、風雨で枝が折れても、すぐに再生できるメカニズムとして遺伝子プライミングを備えていたのです。

(後略)

【写真】

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1. LDL3の再生における役割の証明実験
(左)正常なシロイヌナズナの根から作成したカルスからは茎や葉が再生する。
(右)LDL3を欠損したカルス。根は再生しているが、葉や茎は全く再生しない。

 

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2. LDL3の発現部位
LDL3はカルスから葉が再生する細胞群に集中的に存在する。緑色部分がLDL3の存在箇所、紫はカルスの細胞を示している。

(以上)

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List    投稿者 seibutusi | 2019-09-19 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-09-12

オス駆動進化説

生物学者は「雌雄の現象面の差異」の調査そして「差異の原因」を追究テーマとしており、普通に思う疑問「生物はなぜ雌雄分化しているのか?」に答えてくれない。

その疑問の答えについては実現論前史「雌雄の役割分化」(http://www.rui.jp/ruinet.html?i=100&c=1&t=2)の記載されていますので参照してください

今回は生物学会での「オス駆動進化説」を紹介します。

・進化の原動力は突然変異≒DNAを傷つける放射能とDNAの複製エラーによる

・生殖細胞の分裂数になぜ雌雄差が有るのか

・雌雄差からオス駆動進化説(オスが進化を牽引する)の成立

オスの起源はたかりと利己性にあり、一方メスは、自身のDNAを残すという点では利己的だが、子供の無事な成長を願った慈愛に満ちた利他性に起源している

なんとも情けない結論ですね

宮田隆の進化の話より

https://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2005/post_000005.html

【オスは進化の牽引役: Male-Driven Evolution Theory (オス駆動進化説)】

 

雌雄差の起源

 

卵と精子の話から始めよう。われわれ人間では、どの国でも平均すると男性は女性より体が大きいが、これは動物全体でいえる特徴ではない。

チョウチンアンコウのオスのように極端に体を小さくしてメスに寄生し、もはや生殖器官化してしまっているような例もある。

さまざまな雌雄間の違いのうちで、動物界を通じてオスとメスを明瞭に区別する基本的特徴がある。

それは配偶子(卵と精子)、すなわち生殖細胞の雌雄差である。

オスの配偶子(精子)はメスの配偶子(卵)に比べてサイズが極端に小さく、ヒトの場合、卵は直径0.15mmほどだが、精子は長さにして0.06mm程しかない。形態的にも明瞭な違いがある。

卵は球形で、将来の胚の発生に必須の養分が詰まっている。

精子は頭部にエネルギー変換装置のミトコンドリアをぎっしり詰め込み、鞭毛まで備えることで高い運動能力を獲得している。

こうした運動性は、精子間の競争を勝ち抜き、卵を見つけて速やかに結合する上で有利な形質である。

配偶子の生産様式も雌雄間でだいぶ違っている。

ヒトの場合、発生の比較的早い時期に600万個ほどの卵が一斉に作られる。

その後は卵の生産はなく、生殖年齢に達すると1つずつ排卵する。一方、精子は生殖年齢に達した時点で作り始められ、その後連続的に作られる。一回の射精で億の単位の精子が放出される。

なぜ配偶子間でサイズも数もこれほどまで違うのであろうか。

これには現在もっともらしい説明がある。どの生物も配偶子が極端に違っているわけではない。

カビの仲間では同形配偶(isogamy)といって、有性生殖は見られるものの、配偶子の雌雄差は見られないものがある。

おそらく配偶子の原始的形態はこんなものであったと想像される。

雌雄の区別のない同形の配偶子の一つに突然変異が起き、平均よりわずかに大きな配偶子が現れたとしよう。

この変異は平均的なサイズの配偶子に比べて子孫を残す上で有利に働いたと思われる。

なぜなら大型配偶子に由来する胚は平均よりも十分な食物の供給が得られるからである。

こうして大型の配偶子が広まり、より大型の配偶子へと進化していったと考えられる。

こうした大型の独立栄養的配偶子が進化していく状況下で、平均よりわずかにサイズが小さい配偶子が現れる。

サイズを節約した分、数を増やすことが可能になる。

この配偶子が取った戦略は大型の配偶子とうまく合体して食物供給の豊富な胚へと分化することで、自身のDNAを首尾よく残していこうという、いわばたかり的戦略である。

その結果、無駄を省いてより小型になり、配偶子の数もますます増加していったであろう。

精子の数が増えると精子間競争が激化し、速やかに卵と合体するために運動性を高める方向へと進化していったと考えられる。こうして精子は従属栄養的配偶子への進化の道を突き進んだのだ。

将来の胚が正常に発育するための十分な栄養を貯めこんだ大型で独立栄養的な配偶子への進化という卵の戦略と、卵との合体を高める方向への従属栄養的な配偶子への進化という精子の戦略とが、配偶子の形態と生産様式に著しい雌雄差をもたらしたのである。

オスの起源はたかりと利己性にあり、一方メスは、自身のDNAを残すという点では利己的だが、子供の無事な成長を願った慈愛に満ちた利他性に起源している。偶然とはいえ、この最初の戦略が尾を引き、「三つ子の魂百までも」のことわざ通り、その後の形態と行動の雌雄差全般に色濃く反映するに至った。

(後略)

 

 
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List    投稿者 seibutusi | 2019-09-12 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
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