2023-03-12

微生物と次代を生き抜く① ~プロローグ 病を抱えた現代人

人類の平均寿命は、ここ100年程の間に大きく変化しています。日本では、1900年の男女の平均寿命は44歳、現在では80歳を超えています。先進国を中心に各国とも同じような傾向にあります。

100年程前の人類の代表的な死因は、肺炎、結核、感染性下痢症でした。この100年程の間に、予防接種の浸透。医療現場の衛生概念の進化による医療現場での感染の減少。水道をはじめとする、公衆衛生の充実。抗生物質の利用などにより、感染による病の克服が著しく進みました。

その結果、乳幼児の死亡率は減少し、平均寿命も著しく伸長してきました。現在では、代表的な死因も、かつての細菌に感染して起きる病から、心臓病、癌、脳卒中へと変化しています。

我々の寿命は延びましたが、21世紀に入ると、先進国を皮切りに、アレルギー、自己免疫疾患、消化器系の不全、心の病、肥満が激増してきました。高齢化によって体が弱った人にこうした病が増えているのかと思いきや、そうではないのです。むしろ若い人々にこそ増えているのです。                                                                                                            

身近でもこうした症状を抱える人は珍しくなく、かなりの割合の人がこれら慢性的な不調に陥っている事が、一見当たり前の様になっています。すぐ死に至るものではなくとも、理由がよくわからないままに心身の不調に陥り、長期に渡って苦しむ。死に至る症状に繋がる遠因にもなる。など、急増している現代病によって、我々は大なり小なり常時不調をきたしているのです。これらはほんの数十年前は稀な事象であり、ごく短期間の内に進行している、人類にとって異常な事態なのです。

これら21世紀以降急増している現代病は何故ここまで増えてきたのでしょうか?

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先にあげた現代病は、1940年以降、先進国のアメリカにはじまり、続いてヨーロッパといった具合に広がりながら急増していきます。地域限定的なものではなく、新興国でも豊かになるにつれ、同じような傾向で急激に増えています。

共通点は、感染症の様に他の生物に攻撃されて発症しているのではなく、免疫の過剰反応など、自分の体の仕組みが自分を攻撃するような、体の機能がバランスを崩す形で発症している事です。また、何らかの消化障害を併発している事が多い事も共通した傾向が見て取れます。

戦後のアメリカから始まっている事、その後の資本主義社会の発展と共に、新興国でも同じような傾向が見られるという事象からは、豊かさと共に、食生活や体を使った労働、歩行など、我々がそれ以前の生活を大きく変化させ、それが何らか体のバランスの崩壊を引き起こしている事が伺えます。

また、共通して見られる消化器系の不全の増加、免疫機構の暴走からは、免疫系組織の60%が存在する腸の活動のバランスとの関連が無視できません。

A・コリン著 あなたの体は9割が細菌より

腸の活動と言えば、近年、人体に共生している細菌集団が人体の免疫システムとも緊密な連携をして、いわば免疫機構の一端を外注化しているような関係にあること。腸内細菌の勢力図が人の体にも大きな影響を与えることなどが明らかになってきています。

腸活、といった言葉で腸内の細菌のバランスを整える事の重要性も、中身は詳しく理解していないまでも多くの人が知る、一般的な認識になってきています。

そこで、

・人体は、いかに他の生物との共生で成り立っているか
・全ての病は腸から始まること
・腸はどのように進化してきたのか
・我々は失ったバランスをどう取り戻し、現代病を克服できるのか

これらを探索していく事を通じて、短期間に急増してきたアレルギー、自己免疫疾患、消化器系の不全、心の病、肥満などの現代病と共生微生物、微生物が棲む腸との関係を読み解きながら、これから先、我々は何を変えればよいのか、どうバランスを取り戻していけば良いのかを考えていきたいと思います。

List    投稿者 yana-tak | 2023-03-12 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

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