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古細菌(アーキア)はなぜ多様に進化することができたのか?

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人類はもともと細菌だったということは現在ではよく知られていることです。細菌には、古細菌(以下、アーキア)真正細菌(以下、バクテリア)の2系統が存在しています。しかし、哺乳類まで進化できたのはアーキアだと言われています。アーキアはなぜ多様に進化することができたのでしょうか。アーキアとバクテリアの違いから考えてみましょう。

 

40~35億年前、この時期に誕生したのが、アーキア、バクテリアの2系統の原核単細胞です。もともと地球には酸素がなかったので、両者とも0.5~2μm位のサイズの球状、棒状、または不定形の非常に小さな生物です。アーキアには、好熱菌、好塩菌、メタン生成金などがあります。バクテリアには、大腸菌、シアノバクテリア、枯草菌などがあります。これらの原核単細胞生物は、まだ地球に酸素がない時代に、硫黄や窒素を代謝してエネルギーを生み出していました。実は、人類も極めて少量ではありますが、硫黄を代謝しています。

アーキアとバクテリアの共通点は、DNAはむき出しの状態で核を持たないということです。しかし、アーキアは植物、哺乳類など多様に進化した真核生物へと分岐しましたが、バクテリアは微生物のままです。この違いは何なのでしょうか。

1.丈夫な細胞壁がない

細胞壁には、病原菌から細胞を保護し、細胞の形を保つ働きがあります。細胞壁の性質は、構成される成分によって変わります。例えば、植物の細胞壁は、セルロースが主成分です。メッシュ状に構築され、リグニンと結合することで強固な細胞壁を作っています。植物が重力に逆らって、しっかりと地上にそびえたつことができるのは、この強固な細胞壁のおかげです。

バクテリアの細胞壁は、ペプチドグリカンが主成分です。ペプチドグリカンはこれによって、細胞室の浸透圧の耐久性を高め、細胞の形を保持させています。一方、アーキアは、セルロースやペプチドグリカンなどから構成される細胞壁は持っていません。細菌にも見られる細胞膜の外側を覆うS層が細胞壁の役割を担っています。S層は糖タンパク質などで構成されており、熱に強いという性質をもっていますが、浸透圧に対してはめっぽう弱く、純水で溶けてしまいます。

つまり、アーキアはバクテリアほど丈夫な細胞壁をもっていなかったため、バクテリアを取り込むことができたと考えられます。逆に言えば、アーキアは細胞壁が溶けてしまうため、バクテリアの中では生きていけないということになります。

 

2.細胞膜がエーテル脂質でできている

バクテリアほど丈夫な細胞壁をもっていない古細菌ですが、細胞膜に関しても細菌とは反対の性質を持っています。どの細胞でも、細胞膜や細胞内の膜は脂質分子からできています。

アーキアは、細胞膜の脂質分子がエーテル脂質という特殊な脂質でできています。それに対してバクテリアはエステル脂質と呼ばれる脂質で出来ています。エーテル脂質はエステル脂質よりも、強酸や強アルカリなどに対する耐久性が高く、アーキアは過酷な環境でも生き延びることが出来ます。アーキアが地底火山などの極限環境で生き延びることができるのは、細胞膜がエーテル脂質で構成されているからなのです。

丈夫な細胞壁も強酸や強アルカリなどには対応できなません。バクテリアは過酷な環境で生き残るためにアーキアの中に潜り込んだということが考えられます。

 

この時代からすでに細胞同士でDNAのやり取りを行なわれていました。異なる性質を持つアーキアとバクテリア。アーキアはそのやり取りの過程でバクテリアを取り込み、真核生物に進化したと考えられます。

今回2つの仮説をもとに、アーキアがなぜ多様に進化できたのかを追求してきました。アーキアについては、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。今後のアーキアの研究が、生命の起源を追求する糸口になりそうです。

 

次回は、細菌のネットワーク「バイオフィルム」について追求していきます。

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