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【番外編】オミクロンは重症化しない?①致死率は低いが死者数は増加

日本でも世界でも「オミクロン株は従来のコロナに比べて重症化しない」という意見が一般的になっていますが、それで安心して良いのでしょうか?

オミクロン株は従来のコロナに比べて感染率が高く、致死率は低くなっているようですが、それによる死亡者の数が減るかというとそうではありません。感染率が高い分、従来のコロナより死亡者の数は増える可能性もあります。実際、ヨーロッパの国の中にはオミクロンによる死亡者数が最大になっている国もあります。
[1]

現在のオミクロン株とはどのようものなのか?従来のコロナとの関係はどうなっているのか?など、複数回に分けて追求していきます。

■重症化の定義
消防庁による重症の定義は、傷病の程度が3週間以上の入院を必要とするもの。入院を必要とするが、重症に至らないものを「中等症」。入院加療を必要としないものは「軽症」といます。

国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)が、新型コロナウィルスをSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス(SARS-CoV)の姉妹種であるとして「SARS-CoV-2」と名付けたこともあり、現在、良く耳にする「重症者」というのは新型コロナ=肺炎への対応として新たに設けられたもので、厚生労働省が出した通知では、入院患者などのうち、次の3つの条件のいずれか1つでも当てはまる場合は「重症者」としています。
(1)集中治療室(ICU)などでの管理
(2)人工呼吸器管理
(3)人工心肺装置(ECMO)による管理

因みこの重症者、国や東京都、大阪府で定義が違っており、病床使用率など正確なデータが取れないと問題になっています。

[2]

■重症化するリスクは低いが・・・

気になるのは症状だ。「軽い」と言われる一方で、実際に感染した人からは「きつかった」という声も。専門家は、死亡率はデルタ株よりは低いが、インフルエンザよりはかなり高いとみており、警戒を怠らないよう呼び掛けている。

『オミクロン株は「軽い」と言われるが 致死率はインフルよりかなり高い』 [3]より引用します。

NHKによると、WHO(世界保健機関)の責任者マフムード氏は4日、オミクロン株の症状について、鼻やのど、いわゆる上気道の炎症を引き起こしやすいものの、ほかの変異ウイルスと比べて肺まで達して重症化するリスクは低いという見解を示した。

「肺まで達して深刻な肺炎を引き起こすほかの複数の変異ウイルスと異なり、上気道の炎症を引き起こしやすいとする研究結果が増えている」と述べ、炎症の場所が鼻やのどにとどまるケースが多く、重症化するリスクは低いという。

ただし、ワクチンを接種した人や過去に新型コロナウイルスに感染して回復した人が再び感染するおそれがあるとも指摘し、各国に警戒を呼びかけた。

英保健安全局の初期の分析によると、オミクロン株はデルタ株に比べて入院に至る重症化率が50~70%低い、とされている。

最初にオミクロン株を特定した南アフリカの医療関係者も、オミクロン株感染者の大半は軽症か無症状、味覚や嗅覚の異常はない、と語っていた。

「筋肉痛」や「関節痛」の症状

日本ではどうなのか。TBSは5日のニュース番組で、オミクロン株に感染した人の症状をSNSなどで取材している。

「一晩中39.5度の熱が続いたが、熱よりも喉の痛みがつらかった。鼻も詰まって苦しくて眠れなかった」
「喉の痛みから始まり、39度の熱、1日の中で発熱と平熱の繰り返しが6日間続いた」
「喉の痛み、せき、筋肉痛、関節痛、けん怠感、頭痛、鼻水、38.3度の熱」

多かったのが、「筋肉痛」「関節痛」の症状を訴えるケースだ。インターパーク倉持呼吸器内科倉持仁院長は「オミクロン株はデルタ株より症状の種類が多い傾向にある」「ウイルスが体のいたるところで増えているという可能性があり、筋肉痛であったり、けん怠感が出やすくなるのでは?」と語っている。

ロイターによると、WHOの当局者は6日、新型コロナウイルスのオミクロン変異株について、デルタ株に比べ症状は重症化しないもようとしつつも、「軽度」に位置付けるべきでないという認識を示した。「重症化リスクは低いが、軽症ではない」としている。

オミクロン株の死者数はじきにデルタを超える見込み
また、世界では死者数も増え続けています。
『オミクロンが軽い病気? 欧州各国のデルタを超える死亡数、そしてすでに出現しているオミクロンの新変異種による「永遠の再感染のループ」が導くもの』 [4]より引用します。

たとえば、以下は、1日の感染者が 20万人を突破しているイタリア(人口約 6000万人)の「死亡数の推移」の 7日移動平均です。

デルタ株が世界的な流行となったのは昨年 9月からですので、デルタとオミクロンの比較ということで、過去半年分です。

イタリア (オミクロン占有率 88% / ワクチン接種率 70% / 人口約6000万人)
[5]
ourworldindata.org [6]

デルタ株の時期と比べると、オミクロン株のほうが死者数の増加グラフが急激になっていて、死者数そのものもデルタの数倍となっています。

感染確認数そのものが、オミクロンはデルタの 10倍から数十倍となっているわけですので、「致死率」というような概念を持ち出せば、オミクロン株はデルタ株より「軽い」のかもしれません。

しかし結局、人間が死亡している事由ですから、死亡率より「実数」のほうが重いと思われ、結局のところ、イタリアが単に示しているのは、

「オミクロン株により、デルタ株より多くの人が亡くなっている」

という事実だけとなると思われます。

他のヨーロッパの主要な国を見てみます。7日移動平均での死者数です。

 

ヨーロッパの国の死者数の推移 (過去半年)

英国 (オミクロン占有率 99% / ワクチン接種率 70% / 人口約6700万人)
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ourworldindata.org [8]

フランス (オミクロン占有率 89% / ワクチン接種率 75% / 人口約6700万人)
[9]
urworldindata.org [10]

スペイン (オミクロン占有率 85% / ワクチン接種率 81% / 人口約 4700万人
[11]
ourworldindata.org [12]

ポルトガル (オミクロン占有率 83% / ワクチン接種率 90% / 人口約 1000万人)
[13]
ourworldindata.org [14]

スウェーデン (オミクロン占有率 78% / ワクチン接種率 73% / 人口約 1000万人)
[15]
ourworldindata.org [16]

ヨーロッパの主要な国でこのようになっている国々が複数あり、現時点でのデータで、まさに「今」、直近で最大の死者が出ています。

もちろん、このようになっていない国(ドイツ [17]オランダ [18]など)もあります。

しかし、全体としてはこのような国が多く、現時点で、デルタ株の流行とは比較にならないほどの死者が出ている場合が目立ちます。

アメリカでも、1月19日に、1日の新たな死者数が 3,810人となり(データ [19])、過去半年で 2番目の多さとなっています。

なお、米ペンシルバニア州立大学のカトリアナ・シェイ博士という方は、これまでのパンデミックのモデリングから、アメリカでのオミクロン株による死亡のピークは 1月下旬から 2月上旬に来ると見られるとして、

「オミクロンによるアメリカでの死者数は、デルタを超える可能性があります」

と述べたことが報じられて [20]います。

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