2022-01-28

サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編②~

前回のオランウータンの生態に続き、彼らの子育てに関する内容と、人類との共通点に焦点を当てていきます。

 

■1.オランウータンの子育てについて

※画像はコチラからお借りしました

オランウータンは、前回扱った”飢餓に度々直面している”にも関わらず、なんと15歳まで生き残る確率が【94%】と、他の哺乳類、類人猿に比べて圧倒的に高い。

ちなみに未開部族でも57%しか生き残らないというが、一体どこその秘密が隠されているのか?

 

①授乳期間の長さ
・母親と子どもの密着期間の長さが特徴的で、授乳期間は類人猿の中でも最大長さの7~8年に至る。
・生まれた時の赤ん坊の体重は1500gとヒトの半分。ゴリラで2000g、チンパンジーで1800gなので、ヒトの赤ん坊は類人猿の中では際立って大きい。

 

②子どもの成長過程→母子密着度の高さと遊び
・6か月までは授乳のみで、赤ん坊は腹をつけて這うことしかできない。6か月で母親から1~2m程度離れて、木登りやぶら下がり程度できる。
・6か月~1年で葉や果物も食べられるようになる。
・1歳で母親から2~5m離れて木揺らしや枝を振り回すなどの「一人遊び」を行う。

※画像はコチラからお借りしました。

・2歳からは、母親の役割は周囲の個体との社会的接触をさせる。兄弟はもとより血縁関係の無い、他の子どもや、子どもの居ないメスや大人オスとも遊ぶ。
・遊びの内容はひたすら樹上でレスリングごっこ。この時期(2~10歳くらい)の他個体との接触で社交性を養う。

・子どもメスにとっては、赤ん坊との接触の機会となり、これが無いと子育てが満足にできない。(※動物園での事例)
・3歳から母乳が無くとも育つだけの身体になっているが、乳首は咥えている。しかし、母乳が出ているかは不明で、精神的な栄養の方が大きいのかもしれない。

→母子密着による充足度の高さ(⇒充足追求度の高さ)と、遊びを通じた樹上適応が、子どもの生き残る確率94%の高さを維持している秘密だと思われる。

 

■2.オランウータンと人類の身体的な共通点について

①他の類人猿に比べて人類との類似点が最も多いオランウータン
現在の教科書では、人類の祖先はチンパンジーと言われているが、過去1960年代までは、ラマピテクスの化石が人類に類似していることから、オランウータン説が有力だった。実は骨格などの身体的特徴が人類とオランウータンでは28点程類似しているが、それに対して、チンパンジーは2点、ゴリラは7点しかない。

以下に身体的共通点をあげていくと、
・臼歯が厚いエナメル質で、上部が平ら
・非対称の左脳と右脳。
→これは、”利き手”があるということ。母親が子どもに添える手が同じ。
・腕の軟骨と骨の比率がほぼ同じ。
・掌が平らに地面につく。(※ただし、この点はヒヒや日本ザルも同じ)
肩甲骨の形が類似している。
・口蓋に穴が開いているのも人類とオランウータンだけ。→これは発音に関係があるらしい
・眼が横長で、瞳の周りの色が薄い。
→これは視線が強調されているということ。
・血液型が人と同じA型、B型、AB型、O型の4種類
・乳腺が広範囲に分布しており、乳首の位置や対距離が他の類人猿に比べて離れている
・髪が長く、生え際がある。
・ゴリラやチンパンジーは発情期に性器が膨らむなどの変化があるが、オランウータンは全く無い→これは、特定の発情期が無く、年中発情期があるということ。つまり、排卵と関係無くいつでも交尾が可能。
交尾が、正常位なのも人類とオランウータンだけ。    など。

 

②ヒトの赤ん坊の発現を辿ると、「ナックルウォーク」をしていなかったことが判明している

・オランウータンは樹上中心の生活。(地上に餌が無い、外敵もいるため10m以下にはほとんど降りてこない。)そのため、オランウータンは地上でもナックルウォークをしていない。
・2018年の論文発表で、ヒトの赤ん坊の発現を辿ると、「ナックルウォークをしていない」ことが判明している。

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新生児から成体への骨格の形成過程に着目し、X線CT(コンピューター断層)データを用いた独自の形態解析手法により、これまでにない精度で詳細に分析しました。ナックル歩行仮説が正しいとすれば、現生の類人猿の発生パターンには、共通祖先から受け継いだ共通点があるはずです。しかし結果は、「ナックル歩行仮説」を否定するものでした。歩行様式の観察、そして全体的に類似したようにみえる骨格形態から、チンパンジーとゴリラの発生パターンは似ていると予想されていましたが、実は著しく異なる発生パターンをもつことが分かりました。この結果は、直立二足歩行はチンパンジーやゴリラのようなナックル歩行者ではなく、「普通の四足」の類人猿から進化したという説を支持するものです。

ヒトの祖先はチンパンジーやゴリラには似ていない -発生パターンの比較から二足歩行の起源に迫る-

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→これもヒトとオランウータンの共通点として有力な説として上げられる。

本日はこれまで。

次回は、人類の祖先は一体何なのか?に迫りたい。

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2022-01-25

サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編①~

テナガザルの特徴として「チンパンジー、ボノボ、ゴリラ」を扱ってきましたが、次はオランウータンに入ります。

チンパンジーに代わる人類の起源として可能性があるオランウータンの生態に迫ります。

 

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2022-01-21

サル社会の構造18 ~テナガザルの特徴 ゴリラ編~

世界最大の猿として有名な類人猿の動物ゴリラ。
皆さんはゴリラと聞いてどういったイメージを思い浮かべるでしょうか?

キングコングのモデルとなったゴリラ。人によってはゴリラという名前を聞くと「大きくて力強い動物」というイメージを抱く人もいれば、中には「凶暴で怖い動物」といったイメージを抱いている方もいるでしょう。

動画は『こちら』よりお借りしました。

しかし、実際はその強そうな見た目からは想像ができないほどけっこう温厚な動物なのです!
あの有名なドラミング(胸を手で叩く行動)は、よく威嚇行為と言われることが多いですが、実際は威嚇ではなく「無駄な争いはしたくない。」といった平和的な行為であると言われており、他にも楽しい時好奇心を持った時に行われることがあります。
(キング・コンググーで叩いていますが、実際のゴリラはパーで叩いています。)

そんなゴリラの生態、どのようになっているのでしょうか?

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List    投稿者 m-yoriya | 2022-01-21 | Posted in 4)サルから人類へ…, ②シリーズ“祖先の物語”No Comments » 
2022-01-19

サル社会の構造17~テナガザルの特徴 ボノボ編~

シロテナガザル、チンパンジーに引き続き、今回は「ボノボ」の生態を見ていきます。
ボノボの特徴は「生殖目的でない性行為」がオスメス共に盛んであること。
今回はこの特徴も詳しく押さえていきたいと思います!


(画像はこちらからお借りしました)

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List    投稿者 takayama | 2022-01-19 | Posted in 4)サルから人類へ…No Comments » 
2022-01-14

サル社会の構造16 ~テナガザルの特徴 チンパンジー編~

これまでサル社会の構造を追求していく中で、様々なサルが登場してきました。

特に共認機能を獲得した真猿では、テナガザル・オナガザル・オランウータン・ゴリラ・チンパンジー…etcと種類も様々。現在の定説ではチンパンジー起源説が主流ですが、人類との類似点はオランウータンの方が多いことから「オランウータンが起源ではないか?」などの仮説も出ています。何が事実かは分かりません。

そこで、サル社会の構造をより深めていく上でも、各種サルの特徴や違いを掴み、この先の追求の土台としていきたいと思います。本日は「チンパンジー編」を扱っていきます。

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2022-01-12

サル社会の構造15~テナガザルの特徴 シロテテナガザル編~

前回の真猿たちの種間闘争に対してオナガザルがどのように適応してきたのかを抑えましたが、今回からテナガザルへと移行します。

今回はその中でも最も原始的はシロテテナガザルの生態を掴みたいと思います。

 

■1.シロテテナガザルってどんな生態?

・白手手長猿。東南アジアに広く生息し、主に昼光性。体長は頭胴長は45~60cm程度で、主に果実や、葉っぱを食べている。


・集団形態としては、オス、メスのペアにこどもが1匹程度の最小集団。こどもが成体した後は、基本的にオスもメスも集団から放逐される。
・授乳期間は約2年と、原猿に比べて伸びており、メスの性成熟(=子が産める状態)までに、生後6~9年もかかる。オナガザルに比べても格段に長い。
・発情期が無く、年中発情している。

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2022-01-06

サル社会の構造14~種間闘争にどのように対応した?-オナガザル編-

弱オスたちが複雄集団に吸収された後、それまでの同種間の縄張り闘争に加えて、異種のサル間の種間闘争が激しく争われるようになりました。

この種間闘争にオナガザル達はどのように対応したのでしょうか?今回は図を見ながら追求していきたいと思います。

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List    投稿者 takayama | 2022-01-06 | Posted in 4)サルから人類へ…No Comments » 
2022-01-04

【番外編】宇宙が電気的である理由

あけましておめでとうございます。
本年も当ブログを宜しくお願い致します。

前回の番外編『生物の形は、DNAではなく電磁波が作り出す』では、「ある個体が自己に内在する能力だけで組織化を行うわけではない。外界(外圧)との関係の中で形成されるもの」、つまり内識=外識とし、生物の形には電磁波が関係していることを述べてきました。

外識、外界は我々の身の回り、地球上の問題だけでなく、もっと広い世界、宇宙と捉えることができます。
では、外界である宇宙、それはどのようになっているのでしょうか。

宇宙論では重力が全てというのが主流です。ところが宇宙には磁場があって、磁場があるということは、電気が流れています。電磁力が重力の10の39乗倍強いのにも関わらず、この電磁気力を無視しているのです。
つまり重力という弱い力で宇宙で起きていることを説明しようとしているということです。ですから無理が生じます。
実際、重力理論では説明できないという原因には立ち返らず、結果としての新たな現象の発見という結果を解釈しようとしているのです。

まずは宇宙磁場について『宇宙の磁場─電気宇宙論』より引用します。

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List    投稿者 m-yoriya | 2022-01-04 | Posted in ⑧科学ニュースより, ⑫宇宙を探求するNo Comments » 
2021-12-31

サル社会の構造13~原猿と真猿の違いとは?~

前々回、仮説と追求を繰り返し、探索していく「手探り回路」の獲得によって、「オスとメス」「ボスと弱オス」のように、状況も不全も欠乏も、全く違う個体が、集団化することができました。

※参考:サル社会の構造⑪~手探り回路による同一視回路の形成~

これにより、基本的に単独で生活する原猿から、「集団化する猿たち」へと変化することになりますが、ここから大きく言うと、テナガサル系とオナガザル系(テナガザル以外)に系統分化していくことになります。

ここでは、これらの集団化する猿をひとくくりに「真猿」と呼ぶことにします。

それでは、この集団化した真猿たちと原猿とでは、具体的に何が違うのでしょうか?
今回は、これらの違いを大きく整理していきたいと思います。

 

■原猿と真猿の違いとは?

まず、真猿と括られる猿には、

オナガザル系:パタスモンキー、二ホンザル、マントヒヒ、カニクイザル など
テナガザル系:シロテナガザル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー など

に系統分化します。下記の写真と特徴を見ながら、違いを抑えていきましょう。

 

 

1)身体的・行動的な違い→共認機能の進化

写真からも分かるように、まず真猿には「顔に毛がありません」。そして、原猿は樹の枝に対して、前足と後ろ足の4つ足で捕まっていますが、真猿は上半身を起こして、後ろ足2本で「半直立」状態を保つことができていますこれは一体何を意味するのでしょうか。

樹上で生活するには、バランス感覚が重要になりますが、その観点からすると、4つ足で捕まった方が有利な気がします。しかし、樹上生活が不利になってまで、上半身を起こす必要性とはどこにあるのでしょうか?

これは、「共認機能をより高める方向に進化した」ということを意味していると思われます。

まず、表情が見えるように”顔の毛を無く”し、身振り手振りのために”上半身を直立”させたと考えられます。例えば、オランウータンは手話ができるとも言われており、人類でもボディーランゲージがあるように、言葉が無くでも対象とのコミュニケーションを取る為には、身振り手振りは必須の手立てです。

そして、共認機能の土台としての親和行為を発達させた”毛づくろい”を行うようになった。原猿時の”鼻のなめ合い”よりも、密着充足度が高く、より充足度を求めた結果なのだと推察できます。

これにより、知能がより一層進化したことになります。共認機能により、集団化が可能となり、様々な集団形態が可能になりました。

 

2)授乳期間、子育て期間の長期化→知能進化

原猿に比べて、授乳期間や子育て期間が異常に長期化します。

例えば、原猿(アイアイやスローロリス)だと、授乳期間は半年程度、子育て期間は2年程度です。
しかし、真猿の授乳期間は、パタスモンキーやマントヒヒで、1年~1.5年。テナガザル系のチンパンジーで4~5年。オランウータンに至っては、7~8年も授乳します。子育て期間はオナガザル系で5~6年。テナガ系だと、15年程度もの子育て期間がかかるようです。

これらの理由として考えられるのは、「大型化」した為と、「知能進化」が理由と考えられます。
特に、知能進化の点については、哺乳類の時にも扱いましたが、皮膚感覚の発達によって探索回路を発達させ、知能進化をもたらします。

皮膚感覚の快感回路(安心感)の発達は同時に不快感や、何かおかしいという違和感や、しっくりこないなどの不整合感の感覚も鋭敏にさせます。
実はこの不整合感の回路こそが、探索回路を発達させる駆動力になります。
哺乳類の知能進化⑤ ~皮膚の発達が先か?脳の発達が先か?~

 

授乳中のスキンシップは皮膚感覚を発達させます。

つまり、授乳期間を延ばすことで、皮膚感覚が発達→加えて授乳中は母ザルに合わせて、子どもも重心を移動させる訓練を積むことで、体性感覚(バランス感覚)が養われ、それらが知能を進化させます。

 

3)集団内で「メスが残留」する

これは、オナガザル特有の特徴ですが、複雄ザルの登場によって、メスは単体はもとより集団での縄張り確保がほぼ不可能となります。したがって、メスはよりオスを引き付けておく必要に迫られるし、集団に依存するしか生き残る術がありません。

このように、メス側の理由は比較的容易に想像が付きますが、ではオス側にとってはどうなのでしょうか?

オスが集団化したということは、オスの闘争力でその集団の強さや序列が決まるはずで、そこに戦力的に劣る「メスを残留させる」意味やメリットはどこにあるのでしょうか?

これは、おそらくオスの闘争力が、メス発の充足力(毛づくろい)によって規定されるという構造があるからではないかと思われます。

つまり、闘争充足よりも親和充足の方が、真猿集団の統合力という点において上位(≒より深い位置)にあり、戦力には劣るが親和充足度の高いメスを残留させたのではないか。

つまり、共認機能を獲得した集団においては、「充足そのものが活力の源であり、闘争力の源である」ということなのではないでしょうか。

 

※今年は、ここまで。

来年度も引き続き、サル社会の解明から、猿人→人類へと進化する過程での様々な機能の獲得や生命の本質、集団の本質を解明していきたいと思います。来年も宜しくお願いします。

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List    投稿者 tuti-nor | 2021-12-31 | Posted in 4)サルから人類へ…, ①進化・適応の原理No Comments » 
2021-12-29

サル社会の構造⑫~真猿の進化史~

サル社会の構造シリーズでは、原猿の進化過程とその過程で獲得した機能などを追求してきました。

直近のブログでは同一視回路→共認回路を獲得した原猿の「オス・メス関係」や「オス・オス関係」がどのように変化したのか?を追求し、オスメス単独からサル集団へ至る過程と獲得した機能を追求しました。

サル社会の構造⑨ ~共感機能→期待応合回路を獲得した後、オス・メスの関係はどのように変化したか~

サル社会の構造⑩ ~オス同士の集団化はどのようにして形成されのか?~

そして、原猿弱者同士が闘争共認してできたサル集団を「真猿」と呼んでいます。次のブログから「原猿と真猿の違い」を追求テーマに進めていくため、今日のブログでは「真猿の進化史」について扱い、原猿と真猿の違いを追求する基礎としていきます。

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List    投稿者 t-kenta | 2021-12-29 | Posted in 4)サルから人類へ…, ①進化・適応の原理No Comments »