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サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編①~

テナガザルの特徴として「チンパンジー、ボノボ、ゴリラ」を扱ってきましたが、次はオランウータンに入ります。

チンパンジーに代わる人類の起源として可能性があるオランウータンの生態に迫ります。

 

①基本情報

・期限は1,700万年前~900万年前

・オランウータンには三亜種(スマトラ・ボルネオ・タバヌリ)がおり、タバヌリは2017年に発見された。※ボノボ以来100年ぶりの発見。

・タバヌリは、378万年前スマトラオランから分岐し、ボルネオは67万年前に分岐されたと推定されているが、年代が合わない。

・最盛期は90万頭。現在7万頭弱(スマトラ1.4万、ボルネオ5.5万)と10数分の1

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図:オランウータンの三亜種(画像はこちら [2]からお借りしました)

 

②生育環境

・オランウータンはスマトラ(現在のインドネシアなどの東南アジア)に生息し、樹冠で10m~50mの高さに棲む。樹種が1,700種で高さは様々(樹冠の高さも様々)。地上には体重100~150kgのトラがいる。葉っぱでうっそうとしているため、地上に太陽光が届かないため、地上にはほとんど食料がない。

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図:オランウータンの生息地(画像はこちら [2]からお借りしました。)

 

・東南アジアと言えば「南国の果実」を誰もがイメージするかと思いますが、、、。なんと「一斉開花で数年に一度一斉結実」するらしい。それ以外は果実欠乏期が続く(少なくとも1年以上。おそらくエルニーニョが原因か?)。従って、結実期に食いだめ、オスで8,422kcal→3,842kcal(45%)。メスで7,404kcal→1,7093kcal(24%)。特にメスはガリガリにやせ細る=飢餓に度々直面している。7割の期間が栄養過少。

・アフリカは少なくとも年一回は結実するという点でははるかに安定。熱帯雨林といえども疎林的で地上にも日があたり、食物がある。

★つまり、一般的なイメージでは「アフリカの方が厳しい環境(乾燥地帯)」ですが、東南アジアの方が外圧状況は厳しいのです。

 

③生態

・非結実期(ないしはボルネオでは)基本的に単体

・メスは性成熟(15歳)後は、母親の近くに棲む。

・オスは群れを出ていくが、20歳くらいで一度出生地近くに戻り、メスとの交尾機会を伺う。スマトラでは、豊かな結実期にはアンフランジオス、母メス、大人メス含めて集団で構想することもある。また非常時(森林伐採や火災)などではフランジオスも含めた群れをつくる。若者オスは(スマトラでは)2頭で行動することも多い。

・その後、周囲との関係で優位なオスはフランジオスとなる。フランジオスは、フランジ、ロングコール(縄張りの主張)。臭腺。喉袋などが特徴。フランジオスは縄張りをつくらず、他のオスと遊動圏が重合。広域を移動し、交尾したメスの元を数年で離れる。再び戻ってくるかどうかは分からない。

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図:フランジオス(画像はこちら [5]からお借りしました)

 

・オスを一生通じて観察した事例はなく、オスの一生(60年)は今もなお不明(フランジオスとの間にも優位劣位あり)。

・アンフランジオスはメス並みの大きさのものから、フランジオス並みの大きさまで様々。フランジオス同士は出くわさないようにしているが敵対的。闘い始めれば大けがになるほどの闘いで傷だらけになる。フランジオスとアンフランジオスの間は敵対ではない。顔を20センチ位に近づけて、口元を覗き込むという行為が見られるが、エサをねだる等、上位者のケンカの仲裁など劣位者の優位者に対する緩やかな期待を表す。

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図:アンフランジオス(画像はこちら [5]からお借りしました)

 

・優位なフランジオスはロングコールを発するとメスが近づいてくる。メスとの関係は親和的な性。出産経験のあるメスしか相手にしない。

・アンフランジオスはメスに付きまとって交尾を迫る。一種のストーキングだが、メスは抵抗しつつも諦めて、95%は結局交尾に至る。初産メスも相手にする。

・フランジオスの優位性が崩れ順位が混乱すると、アンフランジオスも親和的に交尾。

・フランジオスで優位オスから劣位オスになっても、フランジは無くならないが痩せ衰え、フランジが小さくなるオスもいる。フランジになるかどうかは、状況を見てのオスの決断なのか?

基本的に樹上生活えメスや子どもは滅多に地上に降りない。フランジオスでも木から降りることはまれ。地上では、ナックルウォークではなく、掌を地面につけて歩く(ヒヒ等も同じ)。

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図:アンフランジオス(画像はこちら [5]からお借りしました)

 

・樹上では少なくとも3点を支点にして行動。一点に体重が集中することはしない。また木を体重で揺らして移動する。樹上では2足歩行も行う。

・巨体なので、移動のたびに樹質や実がなる場所などを判断しながら、一定の速さで動く。一歩一歩が命がけの判断ともいえ、相当の洞察力があることが見て取れる。

 

以上です。いかがでしたでしょうか。人類と近い特徴が(特に性に関して)いくつかありますね。

次回はオランウータンの続編を扱っていきます。

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