サル社会の構造18 ~テナガザルの特徴 ゴリラ編~
世界最大の猿として有名な類人猿の動物ゴリラ。
皆さんはゴリラと聞いてどういったイメージを思い浮かべるでしょうか?
キングコングのモデルとなったゴリラ。人によってはゴリラという名前を聞くと「大きくて力強い動物」というイメージを抱く人もいれば、中には「凶暴で怖い動物」といったイメージを抱いている方もいるでしょう。
動画は『こちら』よりお借りしました。
しかし、実際はその強そうな見た目からは想像ができないほどけっこう温厚な動物なのです!
あの有名なドラミング(胸を手で叩く行動)は、よく威嚇行為と言われることが多いですが、実際は威嚇ではなく「無駄な争いはしたくない。」といった平和的な行為であると言われており、他にも楽しい時、好奇心を持った時に行われることがあります。
(キング・コングはグーで叩いていますが、実際のゴリラはパーで叩いています。)
そんなゴリラの生態、どのようになっているのでしょうか?
■生態
類人猿の中で最も大きなゴリラは、ニシゴリラとヒガシゴリラの2種に分かれ、ニシゴリラはニシローランドゴリラとクロスリバーゴリラの2亜種、ヒガシゴリラはヒガシローランドゴリラとマウンテンゴリラの2亜種に分類されます。
・オス 体長:130~190cm 体重:140~230kg
・メス 体長: 85~100cm 体重: 70~100kg
画像は『こちら』よりお借りしました。
例えば、マウンテンゴリラは一般的に、背中が鞍状に白くなったシルバーバックと呼ばれる1頭の大人の雄と、複数の雌やその子どもからなる10頭前後の群れを形成しています。採食のために移動する時は先頭に立ち、寝場所の決定もシルバーバックが行い、ほかの雄の侵入やヒョウなどの肉食獣の接近から群れ全体を守るリーダーです。異なる群れのリーダーと激しく争うこともあるが、普段は温和に群れをまとめて導きます。
巨大なゴリラですが、産まれたての赤ちゃんは2キロ弱と、人の赤ちゃんよりかなり小さい。1年ほどは母親が肌身離さず世話に没頭し、母乳で育てる。群れの若いゴリラたちも赤ちゃんには興味津々で、構いたくてしょっちゅう近づいていく。生後1年を過ぎると母親は、赤ちゃんを時々シルバーバックに預けるようになるのり、3歳を過ぎて乳離れをするようになると寝る時もシルバーバックのそばにいることが多くなるようです。
おとなのオスゴリラは1日の食事量が約18キロ、食事に費やす時間は10時間以上。
食事は植物性。アリなど小さな虫を食べることもあります。葉や果実などを求め移動しては食事をし休息をとる、という生活をしています。
■分布
アンゴラ(カビンダ)、ウガンダ、ガボン、カメルーン南部、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国東部、赤道ギニア、中央アフリカ共和国南部、ナイジェリア東部、ルワンダ。
■食性
植物食傾向の強い雑食で、果実、植物の葉、アリやシロアリなどの昆虫を食べます。
低地では種にかかわらず果実食傾向が強く、果実が豊富な環境では果実を主に食べ、食べる果実の種数がチンパンジーと同程度に達することもあります。本属とチンパンジーが同所的に分布するガボンの調査例では、食性の57 %(果実では79 %)がチンパンジーと重複します。
マウンテンゴリラは季節によって果実なども食べますが、乾季に食物が少なくなると植物の葉・芽・樹皮・根などの繊維質植物を食べます。低地ではアリを日常的に食べ、糞の内容物の調査では糞中からアリの破片(コンゴ共和国24 %、カフジ=ビエガ国立公園およびロペ30 %、中央アフリカ43 %)が発見されています。食べるアリの種類や、採食方法などは地域差があります。
■集団
ゴリラは集団で行動し、1つの集団には、1頭の大人のオスと、複数のメスやその子どもからなる10頭前後の群れを形成するのが一般的です(低地に生息するローランドゴリラの群れは10頭以下、一方で、高地に住むマウンテンゴリラに関しては、30頭以上の大きな群れが確認されている)。
大人のオスの中には、群れではなく、単独で暮らすものや大人の若オスだけの集団もいます。また、群れに複数の大人のオスがいることもあり、とくにマウンテンゴリラで、その割合が高いことが知られています。
ゴリラの群れのメンバーは比較的まとまって移動しています。食べ物を食べるときなど群れが広がることもありますが、基本的に、群れのメンバーは一緒に移動していて、寝るときもまとまっています。
ゴリラは基本的にはメスもオスも放逐。若いメスゴリラは繁殖の準備ができたころ、親の群れを出ていきます。また、オスの子どもは成熟する前に群れから追い出されます。
但し、リーダーが年を取った場合には、オスが集団に残留し集団を引き継ぐようです。
リーダーはシルバーバックが前提ですが、闘争によってリーダーが決定するわけではありません。どちらについていくかはメスに決定権があります。例えば、メスは集団同士が邂逅したときや、単独生活者のオスを見つけたときに、「これは」という相手を見つけると、そのオスのもとにさっさと移ってしまうようです。
■性
ゴリラのメスに決まった発情期はありません。
ゴリラのオスは、メスが発情しない限り自分も発情しません。また、メスの発情を見抜く能力がないため、誘われるまで気がつきません。一方、メスは発情すると外見上の変化はないものの歩き方からして普段と変わります。オスにそっと近づいて、顔をのぞきこんだりオスの肩や腕にふれたりする。そうかと思うと静かに立ち去り、少し離れたらふっとオスを振り返るなどの挑発行動を行うようになるようです。
メスはオスより成長が早く、7歳ごろ性成熟を迎えます。ところが、実際に繁殖に至るのは10歳以降と言われています。
妊娠期間は8~9か月。基本的に、1度に1頭の子を産みます。育児と妊娠の期間が長いゴリラの妊娠間隔は、4年ほど。生涯に産む子どもは、数えるほどしかいません。加えて、乳児期に亡くなる子も多く、個体数増加への足かせとなっています。
また、オス同士の同性愛があり、射精を伴う性交が行われています。ゴリラ研究の第一人者として知られる山極教授よると、ゴリラの同性愛の萌芽のひとつに、遊びがあるのではないかと考えています。
ゴリラは遊び好きな生き物で、二時間も三時間も、追いかけっこやレスリングをして、たわむれ続けるそうです。また、オスメスで差があって、オスの方が頻度が高く、時間も長い。
遊びはお互いの立場に立つという共感力がないと出来ません。また、力の強いものが、力の弱いものに、わざとやられてやったり、追いかけられたりするという、役割の転換なしでは成り立たず、また面白くないものです。
そして、セックスもまた、遊びと同じく役割の転換や逆転を呼び起こすものです。性愛のベッドの上では、強いものが弱くなったり、弱いものが強くなったりします。また、ゴリラの同性愛では、セックスに誘う仕草と遊びに誘う仕草はまったく同じものです。年少者の方から意味ありげに相手の顔を下からのぞき込むようです。
なお、同性愛についてはキリンを代表として一部の哺乳類でも見られる現象です。
■人類との共通点と違い
歯
ヒトとゴリラの歯は似ており、特に臼歯の形はとても似ています。唯一の違いは「犬歯の長さ(大きさ)」です。ゴリラの犬歯が発達しているのは、武器であり、威嚇に使用するためです。
また、ヒトは子供の歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)に生え変わりがありますが、ゴリラもそのような生え変わりがあります。
ヒトは永久歯の本数は28本で、親知らずが4本全て生えそろうと32本ですが、親知らずがない場合や半分だけ出ている状態(半萌出)など個人差があります。一方、ゴリラは人間でいう親知らずが生えるスペースがあるため、永久歯は全部で32本あります。
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