2022-01-19

サル社会の構造17~テナガザルの特徴 ボノボ編~

シロテナガザル、チンパンジーに引き続き、今回は「ボノボ」の生態を見ていきます。
ボノボの特徴は「生殖目的でない性行為」がオスメス共に盛んであること。
今回はこの特徴も詳しく押さえていきたいと思います!


(画像はこちらからお借りしました)

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■ボノボの生態
アフリカ中央部の赤道付近のコンゴ盆地のザイール川の左側の熱帯雨林にのみ生息している。
複数のオス・メスからなる単位集団のメンバーが離合集散し、いくつかの分節集団(パーティ)に分かれ、果実を主食とした生活を送っている。
メスは交尾ができる状態(性成熟)になると、自分の集団を離れて他の集団に入っていく。
ボノボの単位集団は、メンバーの入れ替わりも少なく、何週間も安定していることもある。すべてのメンバーがいつも行動を共にしている。また、チンパンジーで見られた「同種殺し」はボノボでは観察されない。


こちらからお借りしました。)
■ボノボの性
ボノボは挨拶替わりに性行為をするといわれるくらい、生殖目的以外の性行為が盛んにおこなわれている。
1日に何度も性行為を行うが、1回の交尾時間は15秒程度と比較的短い。

・メス同士もオス同士も性器をこすりつけ合う。(メス同士は「ホカホカ」、オス同士は「ペニスフェンシング」と呼ばれる。)
・オス同士の性器のこすりつけ合いはまれで、「尻つけ」と「マウンティング」が多い。(オスと発情していないメス間でも行われる。)
マウンティングも大抵は優位者が馬乗りになるが、ボノボはする方される方がはっきりと決まっているわけではない。

ボノボに見られる独特の性的行動が平和共存のための潤滑油になっているのでは?といわれている。
餌場や果実をたくさんつけた木に到着した時、ひとしきり盛んにこれら「性的行動」を行う。
性的行動を行うのは、餌を見つけた喜び、個体間同士が近くなった緊張、食べ物への競争心などの興奮「性的興奮」に転換発散し、攻撃性を鎮めるためだと思われる。

またボノボの子どもは生後1年未満で性的行動を行う。
子どもは3,4歳まで母親と一緒の生活をする。1歳までは母親のお腹に掴まり、2歳からは背中に乗って移動する。だから母親は性行為など性的行動をする時も子どもはずっと一緒。その時に性器のこすりつけ合いや性行為を行うという。

■「ニセ発情」
メスは出産後、次の妊娠までは3~4年間の授乳期間には発情しない。
かしボノボのメスも出産して3~4年経たないと排卵は再開しないが、発情は1年後に再開できるようになる。(「ニセ発情」と呼ばれる。)
従って、ボノボはチンパンジーに比べて8~10倍の期間、性交渉が可能になる。
チンパンジーのオスの子殺しの目的の一つが、発情メスを得ることにあったことを思えば、ボノボのメスが授乳期間中に発情することは、ボノボの社会に子殺しがないことの説明の一つになるはず。

■オスメス対等の集団
ボノボの雌雄間の優劣格差は極めて小さい。オスがメスを攻撃することは少なく、採食する時などはむしろメスのほうがいい場所を占める。高齢のメスたちは、成熟して高い順位についた息子の保護者として、集団内の社会関係の中心的な存在になっている。
ボノボのメスの発情期の期間が延びたこと、「ニセ発情」もオスメスの優位にかかわっている。
ボノボの社会では、発情したメスをめぐって争うことはまれ。「ニセ発情」状態だと、妊娠に結びつくたった1回の交尾を自分のものにするためには、頻繁に行われる性交渉を独占する必要がある。そのために、オスは動き回らなければならない。そうして、ボノボの長期的な発情は、オスは地位や力による生殖の独占を諦めざるを得ない状況を作り出していると考えられる。

いかがでしたか?今回は以上です。

参考:リンク
「サル学の現在(上)」 著:立花 隆 文春文庫出版
「サルの分化誌」編:西田利貞 伊沢紘生 加納隆至 平凡社出版

List    投稿者 takayama | 2022-01-19 | Posted in 4)サルから人類へ…No Comments » 

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