2021-12-14

サル社会の構造⑨ ~共感機能→期待応合回路を獲得した後、オス・メスの関係はどのように変化したか~

これまでのブログでは、弱オス間で形成された「共感機能(同一視)→期待応合回路」について扱ってきました(サル社会の構造⑤~原猿オスに同化⇒若オス達の意識にどんな変化が生まれたのか?~)。

不全感に苛まれ続ける、先の見えない無限苦行の状況から「相手と自分の”状況”の同一視」→「相手と自分の”欠乏(心情)”の同一視」→「期待応合関係」の獲得へと向かいます。

やがて、期待応合回路を獲得した弱オスの一部がボスとなり、その子どもたち(オスメス)にも受け継がれていきます。それによってオスメスの関係はどのように変化していくか?ここが今日扱うテーマです。

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■取り引き的な関係から期待応合関係へ

まずは、期待応合回路を獲得する前のオスメス関係に同化してみましょう。

オスメス単体の頃、繁殖期にはメスはオスから求められる存在で「オスが寄ってくる」構造でしたが、繁殖期以外の恒常的な闘争下ではメスは最も弱い存在。この時、メスが生き残るために取った手段が「強いオスの傍に置いてもらう」そのためにオスを徹底注視する中でオスの不全解消欠乏を見出し、そこに哺乳類の頃から備わっていたメスの武器「親和機能」でオスの不全を解消していきます。

オスは不全解消欠乏、メスは縄張り防衛欠乏で、オスとメスの欠乏は全く異なり(オスは意識の混濁、メスは肉体不全)ますが、オスにとってのメスは激しい闘争で傷ついた体と心に親和を与えてくれる存在、メスにとっては守ってくれる存在となります。しかし、この時突破口として使われたオスメスの武器は「縄張り闘争機能」と「親和機能」で、既存の哺乳類の本能が使われており、この段階でのオスメス関係からは同一視や共感は生まれない。むしろ「取引関係」に近いと言えます(サル社会の構造③~恒常的な縄張り闘争の下でメスはどうした?~)。

そして、本題である期待応合回路を獲得した以降のオスメス関係はどうなるかというと「取引的な関係から期待応合関係へ進化」していきます。同一視回路によって“充足度の共有”が可能になり、より充足を求めて探索を行うようになっていくのです。

 

■より充足度の高い内容に収斂

相手の期待を自ら探索し、つかんだ期待に応える。メスであれば、オスに守ってもらうためにひたすら探索・行動します。メスは何もできない(守ってもらいたい)からこそ、オスを徹底注視してひたすら“応合”。そこに応える充足感を共有する中で、相手の期待に応えることこそが(自分も)最も充足することに気付き、自らの欠乏も変化していきます。

羅針盤となったのが「充足度=“相手がどれだけ充足したか”」(ここが取引関係との決定的な違い)。そこから、相手を(自分も)もっともっと充足させたいという欠乏が高まると同時に、探索回路が強烈に作動し、より充足度の高いものを探索し続けます。充足度が最も高い内容に収斂していくのです。

そして、オスメス相互の充足度の高さを求めた結果、「闘争役=オス」「不全解消役(解脱役)=メス」の役割共認が成立します。これによって、オスメスの関係は半継続的なものとなり、オスの庇護意識も登場します。

 

■オスとメスは置かれた状況も欠乏も違う。この状況でオスとメスはどうやって同一視したか?

オスとメスの欠乏は互いに“充足すること”。これを同一視(共有)出来たとき、“もっと充足するには?”と探索が深まります。期待・応合回路があるから、(自分よりも)相手の期待に応えた方が充足することもわかっており、相手の期待に応えたくなる。原猿時代に手探りでも探索し続け、みんなの充足度を羅針盤に状況も欠乏も期待も掴めるようになり、相手と充足できる地平まで探すようになったからこそ、欠乏の異なるオスメスであっても同一視出来るようになったのです。

 

■より高い充足を求めて行動を組み替えていく「共認機能」の獲得

ここまでをまとめます。哺乳類の探索回路の上に、相手との心情の同一視を基盤に充足度を共有、より高い充足を求めて行動を組み替えていく、これらを「共認機能」と呼びます。

共認機能は、親和過程で登場した快充足の回路に導かれていることが特徴で、哺乳類の探索回路と決定的な違いがあります。哺乳類は必要に迫られて(本能的に)探索しますが、サルは、より高い充足をもとめて探索することができるのです。「もっと充足したい」「もっと一体化したい」という、ひたすらプラス視で追求していくのです。

 

いかがでしたでしょうか。期待応合回路を獲得した以降のオスメス関係は、お互いを「充足存在」として見出し「もっと充足したい」「もっと一体化したい」と注視し続ける中で、本能を超えた共認機能を獲得していくのです。

今日はオスメス関係について扱いました。では、オスとオスの関係はどうなったのか?は次回扱います!

 

List    投稿者 t-kenta | 2021-12-14 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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