2021-12-31

サル社会の構造13~原猿と真猿の違いとは?~

前々回、仮説と追求を繰り返し、探索していく「手探り回路」の獲得によって、「オスとメス」「ボスと弱オス」のように、状況も不全も欠乏も、全く違う個体が、集団化することができました。

※参考:サル社会の構造⑪~手探り回路による同一視回路の形成~

これにより、基本的に単独で生活する原猿から、「集団化する猿たち」へと変化することになりますが、ここから大きく言うと、テナガサル系とオナガザル系(テナガザル以外)に系統分化していくことになります。

ここでは、これらの集団化する猿をひとくくりに「真猿」と呼ぶことにします。

それでは、この集団化した真猿たちと原猿とでは、具体的に何が違うのでしょうか?
今回は、これらの違いを大きく整理していきたいと思います。

 

■原猿と真猿の違いとは?

まず、真猿と括られる猿には、

オナガザル系:パタスモンキー、二ホンザル、マントヒヒ、カニクイザル など
テナガザル系:シロテナガザル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー など

に系統分化します。下記の写真と特徴を見ながら、違いを抑えていきましょう。

 

 

1)身体的・行動的な違い→共認機能の進化

写真からも分かるように、まず真猿には「顔に毛がありません」。そして、原猿は樹の枝に対して、前足と後ろ足の4つ足で捕まっていますが、真猿は上半身を起こして、後ろ足2本で「半直立」状態を保つことができていますこれは一体何を意味するのでしょうか。

樹上で生活するには、バランス感覚が重要になりますが、その観点からすると、4つ足で捕まった方が有利な気がします。しかし、樹上生活が不利になってまで、上半身を起こす必要性とはどこにあるのでしょうか?

これは、「共認機能をより高める方向に進化した」ということを意味していると思われます。

まず、表情が見えるように”顔の毛を無く”し、身振り手振りのために”上半身を直立”させたと考えられます。例えば、オランウータンは手話ができるとも言われており、人類でもボディーランゲージがあるように、言葉が無くでも対象とのコミュニケーションを取る為には、身振り手振りは必須の手立てです。

そして、共認機能の土台としての親和行為を発達させた”毛づくろい”を行うようになった。原猿時の”鼻のなめ合い”よりも、密着充足度が高く、より充足度を求めた結果なのだと推察できます。

これにより、知能がより一層進化したことになります。共認機能により、集団化が可能となり、様々な集団形態が可能になりました。

 

2)授乳期間、子育て期間の長期化→知能進化

原猿に比べて、授乳期間や子育て期間が異常に長期化します。

例えば、原猿(アイアイやスローロリス)だと、授乳期間は半年程度、子育て期間は2年程度です。
しかし、真猿の授乳期間は、パタスモンキーやマントヒヒで、1年~1.5年。テナガザル系のチンパンジーで4~5年。オランウータンに至っては、7~8年も授乳します。子育て期間はオナガザル系で5~6年。テナガ系だと、15年程度もの子育て期間がかかるようです。

これらの理由として考えられるのは、「大型化」した為と、「知能進化」が理由と考えられます。
特に、知能進化の点については、哺乳類の時にも扱いましたが、皮膚感覚の発達によって探索回路を発達させ、知能進化をもたらします。

皮膚感覚の快感回路(安心感)の発達は同時に不快感や、何かおかしいという違和感や、しっくりこないなどの不整合感の感覚も鋭敏にさせます。
実はこの不整合感の回路こそが、探索回路を発達させる駆動力になります。
哺乳類の知能進化⑤ ~皮膚の発達が先か?脳の発達が先か?~

 

授乳中のスキンシップは皮膚感覚を発達させます。

つまり、授乳期間を延ばすことで、皮膚感覚が発達→加えて授乳中は母ザルに合わせて、子どもも重心を移動させる訓練を積むことで、体性感覚(バランス感覚)が養われ、それらが知能を進化させます。

 

3)集団内で「メスが残留」する

これは、オナガザル特有の特徴ですが、複雄ザルの登場によって、メスは単体はもとより集団での縄張り確保がほぼ不可能となります。したがって、メスはよりオスを引き付けておく必要に迫られるし、集団に依存するしか生き残る術がありません。

このように、メス側の理由は比較的容易に想像が付きますが、ではオス側にとってはどうなのでしょうか?

オスが集団化したということは、オスの闘争力でその集団の強さや序列が決まるはずで、そこに戦力的に劣る「メスを残留させる」意味やメリットはどこにあるのでしょうか?

これは、おそらくオスの闘争力が、メス発の充足力(毛づくろい)によって規定されるという構造があるからではないかと思われます。

つまり、闘争充足よりも親和充足の方が、真猿集団の統合力という点において上位(≒より深い位置)にあり、戦力には劣るが親和充足度の高いメスを残留させたのではないか。

つまり、共認機能を獲得した集団においては、「充足そのものが活力の源であり、闘争力の源である」ということなのではないでしょうか。

 

※今年は、ここまで。

来年度も引き続き、サル社会の解明から、猿人→人類へと進化する過程での様々な機能の獲得や生命の本質、集団の本質を解明していきたいと思います。来年も宜しくお願いします。

List    投稿者 tuti-nor | 2021-12-31 | Posted in 4)サルから人類へ…, ①進化・適応の原理No Comments » 

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