2022-01-12

サル社会の構造15~テナガザルの特徴 シロテテナガザル編~

前回の真猿たちの種間闘争に対してオナガザルがどのように適応してきたのかを抑えましたが、今回からテナガザルへと移行します。

今回はその中でも最も原始的はシロテテナガザルの生態を掴みたいと思います。

 

■1.シロテテナガザルってどんな生態?

・白手手長猿。東南アジアに広く生息し、主に昼光性。体長は頭胴長は45~60cm程度で、主に果実や、葉っぱを食べている。


・集団形態としては、オス、メスのペアにこどもが1匹程度の最小集団。こどもが成体した後は、基本的にオスもメスも集団から放逐される。
・授乳期間は約2年と、原猿に比べて伸びており、メスの性成熟(=子が産める状態)までに、生後6~9年もかかる。オナガザルに比べても格段に長い。
・発情期が無く、年中発情している。

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■2.主な特徴となぜそうなったのか?

①手が伸長の約2倍!
テナガザルは、オナガザルが住めない高い木の樹冠(樹のてっぺん)を生息域としている為、細い枝が密集しているような世界。だから細い枝先の果実や葉を採る為に手を伸ばす必要があった。
加えて、原猿時代は木々間を”飛び移る”ことができたが、30~40mもの高い樹冠で飛び移って落ちたら、危険。だから、細い枝につかまって”腕渡り”ができるように適応する為にも手を長くする必要があった。

(画像はコチラよりお借りしました)

 

②集団形態はオスメスのペア集団(つがい)
集団の形態としては、1匹のオスに対して1匹のメスで集団を形成する「単雄単雌」。このオス・メスのペア(つがい)で縄張り防衛を行っている。でも、集団をつくるなら、オス同士の方が優位なはず。なのになぜ複数オスで集団をつくらなかったのか?

テナガザルは、オナガザルが住めない高い木の樹冠(樹のてっぺん)を生息域としている。したがって、縄張りを拡大できる余地が少なく、オス1匹にメス1匹とこどもも1~数匹という最小集団となった。

樹冠に住む為に、オスも軽量化=メスとの体格差が無くなった。その為、複数メスを確保できなかったという側面もあると推定される。
子供の数が少なく、したがってメスの数も少ないので、引き寄せられるオスの数も少ない。これでは頭数でオナガザルに負けるので、複雄化ではなく、大型化路線の適応路線に走ったのではないだろうか?

 

③歌のような独特な鳴き声
※動画↓

雌雄のペアとその子どもたちから成る“核家族”が基本単位になっているいるが、この鳴き声は大きく、数キロメートル先まで響きわたる。
つがいが、この歌のような鳴き声で縄張りを宣言し、侵入者を追い払っていると解釈できる。また、つがいが声を交し合うことで、一体充足を深めているとも捉えることができる。

こどもでも生まれて2週間程度で歌い始める。寝返りすらできない無力な時期に何の必要性があって歌うのか。おそらく、親の縄張り宣言を手助けしているのか、母子間のコミュニケーション(親和充足)に役立っているのではないかと推測される。

参考:https://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/ja/k/058.html

 

④なぜ「年中発情」するようになったのか?
通常の哺乳類であれば発情期(=限定された時期のみ交尾ができる)があるが、テナガザルは、限定的では無く、年中発情している状態になった。これは何故なのか?

 

授乳期間の延長によって、発情したメスは減るので、それだけで性闘争は激化する。しかし、さらに発情期間を延長したのには、さらにそれ以上に性闘争を激化させる必要があったからではないかと推測される。
授乳期間や子育て期間を長くすることは、(皮膚感覚の上昇→)知能進化には不可欠だったが、オスに対する過保護とも言え、そのままでは、結果的にオスは軟弱化するという欠陥をはらんでいる。

 

そこで、オスの軟弱化を防ぐ為、性闘争を激化させ、その為に発情期の延長させたとも言える。

よって、「発情期の延長→年中発情」した理由は、充足追求⇒オスの活力アップという側面と、オスの弱体化を防ぐ為に性闘争圧力を高め闘争力強化という2つの側面があったのではないかと推測される。

今回は以上。

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