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オランウータンの生殖・性1 ~オランウータンが授乳期間や子育て期間を延ばしたのは何で?~

これまでの記事で、人類の祖先は”オランウータン”であることがほぼ明らかになりました。

サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編②~ [1]
オランウータン・ゴリラ・チンパンジーの生態の違いはどうして生まれるのか? [2]
人類の祖先はゴリラ?オランウータン?チンパンジー? [3]
チンパンジーと人類DNA99%一致説を検証する [4]

今回からは、そのオランウータンを中心とした、類人猿の【生殖や性】について追求していきたいと思います。

大前提として、【生殖や闘争】は一番大事で抑えておくべき課題。しかし、大事であるにも拘わらず、生殖過程についてはわからないこと、未解明の課題ばかりなのが、現在の生物学であり、人類学です。

したがって、固定観念に縛られずに追求していくことが重要になります。それでは追求していきましょう。

 

■そもそも、テナガザル系が授乳期間や子育て期間を延ばしたのは何で?

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画像はリンク [6]からお借りしました

では、まずオランウータンにいきなり行く前に、テナガザル系の最大の特徴として、【授乳期間や子育て期間がかなり延長された点】があります。

授乳期間や子育て期間が長いということは、母親にとっては子を抱えて種間闘争に適応しなけらばならない為、リスクは大きいはず。それでも尚、授乳期間や子育て期間を延長させたということは、大きな意味・意図があるはず。

例えば、樹冠(細い枝の環境)に適応する為に、子どもの「バランス感覚を鍛える」為や、母親の行動を見て「真似」をする為や母親と連携行動をとる為だとします。しかし、バランス感覚を鍛える、連携行動をとる、母の真似をするためならば、「密着」だけでもできるはずです。

 

したがって、「授乳期間を延ばす」決定的な理由にはなりません。

 

ちなみに授乳期間の長さは、①テナガザル(2年)<②ゴリラ・チンパンジー(3~5年)<③オランウータン(7~8年)の3段階あります、その段階毎に見ていきましょう。

 

■Q1.テナガザルになって授乳期間が延びたのは何で?

・テナガザルは、種間闘争に対応して樹の頂上部(林冠)へ適応した種。林冠は枝が細く、木が揺れる。その中で【体性感覚がさらに必要になった】

・しかもテナガザルは、時速38㎞の速さで枝渡りをする。木の上で飛んでいるバッタやセミを捕食する等、相当な体性感覚に加えて、瞬発力、動体視力、判断力、把握力を獲得している。つまり、ここまで知能進化させなければならなかったということ。

・ここまで体性感覚等を上昇させるためには、【後天的に脳回路(運動神経と判断力)を形成していくこと】が必要。
そして脳回路の形成には、「母乳」が不可欠だったと考えられる。だから【密着だけでなく、授乳期間が必要だった】のではないか。

・ちなみに母乳は、成長や体調などに応じて成分を変えられる。さらに母乳には栄養分だけでなく、免疫細胞(初乳に多く含まれる)や神経細胞の元の神経繊維、駆動物質、μRNA等が含まれている。このことからも【母乳で後天的に脳や神経の発達を促した】と考えられる。

・加えて、樹の頂上部では広い縄張りは確保できないので子育て期間を延ばし、成体数を減らす必要もあったこれも授乳期間を延ばした理由。

 

 

■Q2.ゴリラ・チンパンジーになって授乳期間が2倍になったのは何で?

・樹の頂上部での生活に加えて、テナガザルと異なる点はかなり「大型化」していること。
「大型化+林冠生活」でより小型テナガザルよりも体性感覚が必要になった。ちなみに、樹上の移動時は3点で体を支えている。

・林冠付近の枝は細く、大型化した類人猿は枝が折れないかなどの判断も小型テナガザル以上に必要になるしかも、その判断は瞬間的な判断が求められる。よって小型テナガザルよりもさらに授乳期間を延ばす必要があったと考えられる。

 

 

■Q3.オランウータンは、さらに授乳期間が延びている。なぜか?

①唇がある=授乳によって神経回路=皮膚感覚を発達させ、【知能進化】させる為

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・唇はオランウータンなどの“類人猿のみ”に見られる。他の哺乳類には唇はない。
母乳を”吸える”のもサル特有。(他の哺乳類は出てくる母乳を飲んでいるだけ)
オランウータンは7~8年の授乳期間があるが、ずっと母乳が出て続けているかまではわかっていない。

したがって、この【母乳を吸う行為自体が充足行為】だとも考えられる。(安心や充足の感覚→“心のミルク”をあげる期間か?)

・唇と指先に神経回路が集中しており、唇の感覚は敏感。(赤ちゃんは何でも口に入れて確認する=探索している。)
その結果、【唇の皮膚感覚もより発達し、さらなる知能進化につながった】可能性がある。

画像はリンク [6]からお借りしました

 

②飢餓の圧力に適応する為に【母乳で栄養を補う】

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画像はリンク [6]からお借りしました

・オランウータンは、他の類人猿にはない「飢餓の圧力」が働いている。餌が無い状態では子どもに必要な栄養を母乳で補う可能性が高い。(餌が無い状態で子どもが餌を確保するのは難しい)子どもの生存率を上げるために授乳期間を延ばしたと考えられる。

・しかし、非果実期ではメスも果実期の1/4カロリー程度にとどまり、ガリガリに痩せる。むしろこの状態こそが常態か?。
授乳期間が延びると、子どもにとっては生存確率も上がるが、母親の負担も増える。その状況でどうやって母乳を作り出したのか?この点は、次回以降の記事で明らかにしていく。

 

今回の追求・検証はここまで。次回も【生殖・性】について扱っていきたい。

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