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光合成は太陽光の届かない海底で始まった

熱水噴出口 [1]
画像はこちら [2]からお借りしました。

地球上で最初に行われた光合成は、光合成細菌が光エネルギーを利用して硫化水素を分解し、水素を(の還元力)を取り込んで硫黄を生成する酸素非発生型の反応でした。

このときに利用された光エネルギーは太陽光で、光合成が行われたのも海中の太陽光が届く範囲というのが旧来の説でした。

しかし、近年の調査・研究により、太陽光が全く届かない海底の熱水噴出口に光合成細菌が存在することが確認されています。
また、熱水噴出口から放射される遠赤外線領域(750 -1,050 nm)の光や、微弱ながらも可視光線領域の光(650 -750 nm)が実測された例があり、光合成が不可能な環境ではないことが分かっています。

熱水噴出口の赤外放射に関連して、光合成生物が熱水噴出口で初期の進化を遂げたとの提案がなされた[21]。これは、細菌についても、熱水噴出口からの赤外線を感知して移動することにより、熱水噴出口から適度な距離を取っているとの予想による。水自体の吸収により、熱源から放射される赤外線は、800 – 950 nmと1,000 – 1,050 nmの2箇所にピークを持つが、これは、生体内におけるバクテリオクロロフィルaとbの吸収極大にそれぞれ近い。熱水噴出口の赤外線のエネルギーは光合成を駆動するには充分ではないが[3]、熱水噴出口の赤外線に対する走光性がいわば光合成への進化への下準備となっていたと考えられなくはない。最初に走光性の光センサーとしてバクテリオクロロフィルが用いられ、これが光合成に転用されたと考えることができる。

熱水噴出口付近の光の波長 [3]
光合成色素の吸収スペクトル
画像はこちら [4]からお借りしました。(引用者にて挿入)

その後、1998年になって、実際に太平洋の熱水噴出口から光合成細菌と思われる細菌が単離された[27]。この細菌は、光合成的な生育は観察できなかったが、細胞に集光性複合体と反応中心複合体に結合したバクテリオクロロフィルaと思われる色素を持っていた。この細菌は、16SリボソーマルDNAの配列解析から、αプロテオバクテリアの一種と思われ、Citromicrobium bathyomarinumと名付けられた[28]。さらに、2005年には、光の存在がその生育に必須な緑色硫黄細菌型の光合成細菌が熱水噴出口から単離された [2]。熱水噴出口の生態系の生物生産における光合成の寄与の割合は低いと推定されるが、従来、光合成とは無関係の暗黒の世界であると考えられてきた熱水噴出口のイメージは変更が迫られている。

熱水噴出口の光環境については実測された例があり、実際に遠赤領域(750 – 1,050 nm)の光が検出されている[26]。しかし、650 – 750 nmの領域の光も弱いながら検出されており、遠赤領域の光に関しても熱水噴出口の温度の黒体放射から予想される光量子密度よりずっと高い。このことは、熱水噴出口からの発光に、黒体放射以外のメカニズムも関与していることを示しているが、その具体的なメカニズムについては不明のままである。

※[ ]内は参考文献(下記引用元サイト参照)
熱水生物群集の成り立ち [5] <光合成の森>より

原始地球では、大気層も十分に形成されておらず、生命体に有害な宇宙線が降り注いでおり、最初の生命体も海の深部で誕生したという説が有力となっています。

生物による最初の光合成も、宇宙線の影響を受けにくかった海底において、熱水噴出口の熱放射からもたらされる光エネルギーを元に始まった可能性が高いのではないでしょうか。

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