- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

免疫とは『仲間を認識し、共生関係を構築するしくみ』

■免疫に関する考え方は時代とともに変化してきた

昔は、免疫は「病気(疫)から免(まぬが)れるためのしくみ」と考えらえた。牛の乳搾りなどで牛と接することによって自然に牛痘にかかった人は、その後天然痘にかからないという農民の言い伝えがあった。ジェンナーはこれを天然痘の予防に使えないかと、研究を続け、ついに天然痘ワクチンが開発され、「免疫=予防接種」という考え方が一般的になる。そしてその後、免疫は「自己と異なる非自己(異物)を認識し排除する」ためと考えられるようになる。

しかし、「食物」や「腸内細菌」などは人にとって異物でありながら排除されない。むしろ、異物でありながら積極的に体内に取り込む必要がある。そのために備わっているのが、「経口免疫寛容」と呼ばれる、異物に対して寛容(=反応が起こらず異物の存在を許す)するしくみだ。

つまり、免疫の認識機能は、次の2段階構成になっていると考えられている。
1.まず、自己と非自己(異物)を認識。
2.次に、非自己(異物)のうち、身体に必要な物に対しては寛容し、一方不用なものを排除する。

 ■免疫は「自己/非自己」でなく「身体にとって必要/不要」を認識する?

しかし、この考え方には、不整合感を強く感じる。なぜなら、もともと食物を外部から体内に摂取してきたのだから、ここまで複雑に認識する必然性が無いからだ。

そもそも、免疫は「自己と異なる非自己(異物)を認識する」というのは、人間の解釈の一つに過ぎない。むしろ、次のように解釈したほうが、現象事実との整合性は高い。

ストレートに、免疫は『「身体にとって必要/不要」を認識している』、と。

つまり、「外部から身体に必要な食物を取り入れ身体の一部にする」「腸内細菌を取り入れ共生関係を構築する」そのための仕組み、いわば『仲間を認識し共生関係を構築する機能』が、免疫の本質なのではないだろうか?

 

■『仲間を認識し共生関係を構築する機能』の形成の鍵は授乳期の母乳

母乳は、乳児期が口にする唯一の栄養源だ。(現在は粉ミルクが主流だが)

母乳には赤ん坊の好き嫌いに関係なく、成長に必要な栄養素がバランスよく含まれている。代表的な栄養素は以下の通り。
・タンパク質
・脂肪
・炭水化物
・ビタミン
・ミネラル等
その他、「免疫物質」や「成長因子」、そして母親由来の「細菌群」(これが腸内細菌となる)も含まれる。

これは、大人が日常的に食べる栄養素とほぼ変わりはない。このように、乳児期の赤ん坊は、唯一の栄養源である母乳を口にすることで、栄養源=「身体にとって必要なもの」という認識が形成される。また、同時期に皮膚免疫を通じて、皮膚から侵入を企てる細菌=「身体にとって不要なもの」の認識も形成されていく。

こうして、乳幼児期に「身体にとって必要/不要」の免疫の認識が形成される。そして、その成立以降、離乳期へと移行し、次第に母乳以外の食べ物だけを食べるように成長していく。

ここでは、「自己/非自己」という認識も「経口免疫寛容」という機能も特に考えることなく、免疫の「身体にとって必要/不要」という認識の形成を説明できる。そうだとすれば、免疫の本質は『仲間を認識し共生関係を構築する機能』と考えたほうが自然ではないかと考えられる。

 

(補足)
免疫の本質は『仲間を認識し共生関係を構築する機能』と考えると、近年のアレルギー疾患、自己免疫疾患も次のように説明できる。

 近年のアレルギー疾患、自己免疫疾患の急速な増加と時を同じく、母乳の有害化学物質による汚染も報告されるようにようなった。本来「身体にとって必要」なものしか含まない母乳に、「身体にとって不要」な有害化学物質が混在するという、自然には起き得ない状況が、免疫系の機能不全を招き、それがアレルギー疾患・自己免疫疾患の急増に繋がっているものと推測される。

[1] [2] [3]