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990以上の村を調査して分かった『寿命の「長寿/短命」を決める食生活』とは?

 

『寿命の「長寿/命村」を決める食生活』とは何だろうか?

この疑問について、書籍「日本の長寿村・短命村―緑黄野菜・海藻・大豆の食習慣が決める」(近藤正二、サンロード出版)の豊富な事例を参照しつつ、考えてみたい。

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この本は、東北大学公衆衛生学教室の近藤教授が、昭和10年頃から満36年の長い間、日本全国くまなく990ヵ所の長寿村・短命村を、自らの足で歩き続け、『寿命の「長寿/命村」を決める食生活』を明らかにした貴重な記録だ。

昭和初期の日本は、ヨーロッパの文明国と比較して、平均寿命が短いことは分かってたが、満70歳以上の人の比率までも低いことを知り、「乳幼児の死亡が多いのももちろん問題だが、成人して70歳にならないうちに、どんどん死ぬのはまことに残念だ」と感じ、筆者は調査を始めたそうだ。

「物事は机上で考えて、結論を出してはなりません。実地に、実例を集めて見なければ結論を出してはいけない。」という気持ちで、全国の長生き村と短命村を回り、実地に捉えて出てきた結論が、『一番の決めてになる要因は、若いころから、長い間、何十年というあいだ毎日続けてきた食生活にある』ことだった。

それまでは「ドブロクの飲酒量」「長時間の重労働」など、食事以外の要素が「長寿/短命」を決める要因だと、一般的には考えられていたが、著者は多くの実例を通じて、それらの要因と寿命との関連は特に見られず、『寿命の「長寿/短命」を決めるのは、食生活がもっとも大きな要因』だと結論を出している。

では、この貴重で膨大な調査結果を通じて著者が明らかにした『寿命の「長寿/命村」を決める食生活』とは何か?

【お米ばかりをたくさん食べている村は短命村】
まっ白いご飯を驚くほど、たくさん食べ、野菜や大豆はあまり食べない秋田県は短命。まっ白いご飯をおいしく食べるために、塩気をたくさん取るので、カロリーは摂り過ぎるくらいとっているが、こういう食事を若いときからやってきた人は、みんな40歳ごろから、脳溢血で倒れる。これが短命の原因。

【野菜を食べす魚ばかり食べる漁村は短命】
新鮮な魚を食べられる村漁村は、空気がきれいで、紫外線もよいから長生きだろうと言われるが、必ずしもそうとは言えない。さかなばかり、たくさん食べて、野菜の食べ方が極めて少ない、そういうところの人は、間違いなく若死にする。

【大豆製品を毎日かかさない村は長寿】
大豆製品を毎日食べていれば、必ずしも動物性のものを食べなくても、長生きの人が多い。

【果物は野菜の代わりにはならない】
新鮮な魚を食べられる村漁村は、空気がきれいで、紫外線もよいから長生きだろうと言われるが、必ずしもそうとは言えない。さかなばかり、たくさん食べて、野菜の食べ方が極めて少ない、そういうところの人は、間違いなく若死にする。

【少量でも海藻を毎日食べている村は長寿】
海藻を毎日のように食べるある村は脳卒中が少ないが、海藻を食べる習慣のないとなり村は脳卒中で短命。

【隠岐島の食生活】(本書のまとめで紹介される「代表的な長寿食」の事例)

1.魚も大豆も豊富
2.野菜(特に人参、かぼちゃ、長芋等)が豊富
3.米が少ない(麦が主で、甘藷も多い。現在は米も摂っている)
4.山菜に富む
5.海藻の常食(ワカメを豊富に食べている)
6.胡麻をよく食べる


豊富な実例から見えてくる長寿食/短命食の特徴を一つ上げるとすれば、「野菜」「大豆製品」「海藻」を毎日欠かない食生活は『長寿』に繋がり、一方、「白いお米」「肉」「魚」に偏った食生活は『短命』になる』、というだろうか。ここでは紹介できなかっが、この書籍はもっと多くの事実を教えてくれるので、機会あれば一読あれ。

最近では、「糖質制限」「菜食主義」「マクロビオティック」など、様々な食事法が巷にあふれているが、どれもそれなりに効果はあるものの、その一方で問題点もあるようだ。それらを見ていると、どうも理念や理論が先走り、地に足が付いていないのではないかと感じる。

「健康で長生きしたい」、誰もがそう思うのは、昔も今も変わりはないだろう。今必要なのは、本書で紹介されているような実地に積み上げられた事実を基盤に、健康に長生きするにはどんな食生活が良いのか?を改めて考えてみることではないだろうか。

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