- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

雌雄分化は、DNA変異を利用した「同類他者」を生み出す機能

生物の進化の源泉はDNAの多様性にある。つまり、同一の自己を複製するのではなく、出来る限り多様な同類他者(非自己)を作り出すことこそ、全ての進化の源泉であり、それこそが適応の基幹戦略である。

それを実現する代表的な機能の一つが雌雄分化だ。

雌雄分化は生命の誕生に次ぐ様な最も劇的な進化(=極めて稀な可能性の実現)の一つで、光合成(それによって生物界を窒素生物から酸素生物に劇的に交代した)に次ぐ大進化である。

生物が雌雄に分化したのはかなり古く、生物史の初期段階とも言える藻類の段階である。それ以降、雌雄に分化した系統の生物は著しい進化を遂げて節足動物や脊椎動物を生み出し、更に両生類や哺乳類を生み出した。しかし、それ以前の、雌雄に分化しなかった系統の生物は、今も無数に存在しているが、その多くは未だにバクテリアの段階に留まっている。これは、雌雄に分化した方がDNAの変異がより多様化するので、環境の変化に対する適応可能性が大きくなり、それ故に急速な進化が可能だったからである。

種内に多様な個体がいれば、能力ヒエラルキー・淘汰圧が働き、種内の多様な個体による相互作用・協同作業により、種としてより多様な環境変化にも適応できる。その実現機能が雌雄分化であり、減数分裂による遺伝子組換えにより「個体の多様性」を実現し、同時に多様な個体の協同により「種の同一性」を実現する。

減数分裂_151025 [1]

 (図は「減数分裂 多様さを生み出す厳格なしくみ [2]」よりお借りしました

 このような雌雄分化のあり様をみると、生物の進化とは、専門家が言うように遺伝子変異ありきで考える必要はないことが分かる。「DNA変異の結果、生命多様性が生まれる」というよりも、むしろ「生命多様性をつくりだすために、積極的にDNA変異を作り出している」と捉えたほうが、生命体としての本質に近いのではないだろうか。

[3] [4] [5]