外圧適応の意志が遺伝子のスイッチを作動させる
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20世紀中ごろにDNAの二重らせん構造が発見されました。研究が進む中で、生物はDNAという設計図とそこに記載されている遺伝情報(遺伝子)に規定され、「遺伝子がすべてを支配する(=遺伝子決定主義)」という考え方が主流となりました。
遺伝子が生物を形作る上で重要な役割を担っているのは確かですが、遺伝子がすべてを支配しているのではありません。生命体が外部環境(の変化)を察知して、適応しようとすることで、遺伝子群の作用の仕方が決まってくると捉える方が、事実と整合することがわかってきています。
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生命の起源が明らかに!?~液滴の成長・分裂~
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生命の起源に関しては、様々な仮説が提起されていますが、20世紀前半にロシアのオパーリンが提唱した「有機物が集まって形成された“液滴”が自然に成長・分裂する」という説が注目されています。
これまで不明であった「液滴が細胞に至るまでの成長・分裂・増殖の過程」について、何らかのエネルギー源と液滴内の有機物が反応して、生命活動のような変化を示すことが確認されたのです。
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獲得形質が遺伝する構造
あけましておめでとうございます
昨年は、アメリカの影響力が目に見えて衰退し、民族派のプーチンほかの指導者の影響力が高まった時代でした。今年は影響を受けて、グローバルという拝金主義の価値から、人類は本来どう生きるべきなのかの新しい価値を追求して行く時代に転換していく時代になりそうです。
そんな時代に、人間の本性に関わる部分での学説の誤りは、追求の大きな足かせになります。その一例が、生物学の学説の中にある、獲得形質は遺伝しないというドグマです。
今回は、この学説がいかに幼稚な理論であるかを追求していきたいと思います。
ジャンクDNAは進化の推進力
最新のゲノム解析から、生物ゲノムには、多くのウイルス(およびその関連因子)が存在しており、それらが生物進化に重大な貢献をしてきたことが明らかになりつつある。ヒトゲノムでも、その約半分はウイルスとウイルスもどきの遺伝子配列が占めている。
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■ジャンクDNAは宝の山だった
以前は、そういったゲノム中の「ウイルスのようなもの」は、利己的な寄生者たちが勝手に増えて、その死骸、痕跡を巻き散らかしているだけの、ゲノムのゴミ=「ジャンクDNA」と呼ばれていた。
しかし、最近、実はその「ゴミ」が生物の機能や進化にとても大切な役割を果たしていることが次々と明らかになっている。生物のシステムというのは、例えば「哺乳動物とはこうあるべきだ」みたいな形で整然と進化してきたというより、ウイルスのような外部からの侵入者も取り入れ、あるいはゲノムの寄生者みたいなものも積極的に利用して、進化しているらしい。
いろんな技術者がパーツとなるソフトウエアを持ち寄ってシステムを作り上げて行くリナックスOSのように、ウイルス感染やトランスポゾンの転移により取り込まれた「パーツ」がて、それまでのゲノムに付加されて、いわばOSのバージョンアップのように進化が起こったのかもしない。
■ジャンクDNAから転写されるRNAの新しい機能
では、そのようなジャンクDNAはどのような機能担っているのだろうか?
最近の研究によれば、ncRNA(=ジャンクDNAから転写される、タンパク質の情報を持たないノンコーディングRNA)に遺伝子の発現を制御する重要な機能を持つことを明らかになってきている。
ncRNAには、「レトロトランスポゾン」(レトロウイルスのように、DNA→RNAへの転写と、RNA→DNAへの逆転写によって増殖する遺伝因子)に由来する配列が多数含まれている。その一部は発生や細胞分化に関わっている。
最近のマウスのiPS細胞での実験では、細胞内で発現しているレトロトランスポゾン由来のncRNAを、1種類ずつ阻害したところろ、4種類のncRNAをそれぞれ阻害すると、iPS細胞が特定の種類の細胞に分化し始めることを確かめられた。それらのncRNAは、幹細胞が特定の種類の細胞に分化するのを抑えていると考えられる。
幹細胞が特定の細胞に分化せずに、あらゆる種類の細胞に分化できる能力を保ち続けるためには、たくさんの種類のタンパク質を合成する必要があり、そのためには、多くの遺伝子のスイッチを同時に活性化させる必要がある。ncRNAはその役割を担っている可能性が高い。
ジャンクDNAやその情報を転写したncRNAは、これもの生命科学の常識を覆し、新しい生命観や新しい医療を築くための宝庫であることが明らかになりつつある。
参考
・書籍 :中屋敷均著『ウイルスは生きている』講談社現代新書
・サイト:「ncRNA の発現がiPS細胞とES細胞の違いを決める」
アマゾンの原住民ヤノマミ族は“先進国の民”よりも腸内細菌叢の多様性を保持している
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ヤノマミ族は、南米の熱帯雨林の奥地で暮らしを営んでいる原住民で、21世紀になって初めてその存在が確認されました。
文明との関わりはほとんどないままに過ごしてきていますが、これまでに確認された人類の中では最も多様な腸内細菌叢であることが判明しました。
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生物と鉱物は互いの進化・変化を促進してきた
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生命は地球上に誕生してから今日まで、著しい進化を遂げてきました。地球を構成する鉱物もまた、今日までの間に激しく変化してきました。
学問の世界では、「生物学」と「鉱物学」は互いに異なる分野として扱われ、その関わりにはあまり注目されてきませんでしたが、これらは密接に関わり、互いの進化・変化に大きな影響を与えてきました。
実際、地上に存在する約4500種の鉱物の3分の2程度は、大酸化イベント以降に、生物の営みにより生成された酸素を多く含む水と、以前から存在する鉱物の相互作用により、新たに形成されています。
エピジェネティクス~DNA配列を変えない=適応速度を高める生き残り戦略~
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かつては、遺伝子の配列によって形質は規定されるという考え方が主流でした。しかし、「DNA配列の変化によらず後天的な修飾により遺伝子発現が制御・維持される(=エピジェネティクス)」という考え方で捉えることで整合する事実が確認されるようになりました。これは、生物の適応戦略において極めて重要な仕組みです。
エピジェネティクスについては、当ブログで過去にも紹介していますが、今回は生物にとって重要な外圧適応という観点から考えてみたいと思います。
【参考】
◇エピジェネティクスって、何?
◇エピジェネティクス~世代を超えて情報を伝える仕組み
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日本語の科学の可能性
多くの国では、基本的に科学を英語で学んでいるが、日本では科学を母国語で学ぶことができ、専門用語も多くが日本語であらわすことができる。実は世界を見渡しても、欧米の言語と全く異質な母国語を使って科学をしている国は極めて稀なこと。そうであれば、ここに日本から近代科学を超えた次代の科学を生み出す可能性があるかも知れない。
科学はなぜ停止したのか?
20世紀初頭のアインシュタイン等の時代以降、科学の発展は止まっている。しかし、もし科学が大きな進化を遂げれば、人々の生活も大きく変わる。
例えば、生命原理を深く捉えた科学理論が出来上がれば、生きることや健康であることの意味すら塗り替えられ、よりよく外圧適応できる(=より充足できる)未来生活を送るために、精神と体をどのように統合していくか?などが新しい医療とも哲学ともいえる思想として共認されるだろう。
そこでは、もはや物質に偏った科学や生活や医療ではなく、人間としての生き方を問う、本源的なものになるだろう。
では、科学や医療が停滞している理由はなにか?それは、市場社会での金貸支配という現代社会の支配構造の問題という側面もあるが、より深い位相に、『近代科学の思考方法の限界』と『科学者という職業選択の動機が私権獲得のみになった』が存在する。
生物の“知能”の原型
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生物が知能(ex.判断力や記憶力といった能力)を行使できるのは、神経細胞の集合体である脳によるところが大きいです。
しかし、脳はおろか神経細胞すら全く持たない単細胞生物が、判断力や記憶力を備えているかのような行動をとることがわかっています。
生物が備えている“知能”とは何なのでしょうか?