2017-11-28

アマゾンの原住民ヤノマミ族は“先進国の民”よりも腸内細菌叢の多様性を保持している

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画像はこちらからお借りしました。

ヤノマミ族は、南米の熱帯雨林の奥地で暮らしを営んでいる原住民で、21世紀になって初めてその存在が確認されました。
文明との関わりはほとんどないままに過ごしてきていますが、これまでに確認された人類の中では最も多様な腸内細菌叢であることが判明しました。

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ベネズエラに広がるアマゾンの熱帯雨林の奥深くで暮らす南米の先住民、ヤノマミ族の人々を検査したところ、体内の細菌叢から驚きの発見がなされた。
ヤノマミ族は、人間で確認された中では最も多様性に富んだ微生物群を保有しているのだ。さらに、彼らの微生物群ゲノムには抗生物質耐性を持つ遺伝子まで含まれていた。こうした遺伝子の中には、最近開発された合成薬への耐性を示すものもあるという。
村人が外の世界や抗生物質との接触経験がないことを鑑みると、憂慮すべき発見であると研究者は述べている。
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画像はこちらからお借りしました。

調査の対象は、2008年、上空から初めてその存在が確認されたヤノマミ族だ。その後、ベネズエラ政府は違法採掘者などから持ち込まれる疫病から村人を守るため、彼らに対して定期的な医療サービスを提供していた。2009年には許可を得たうえで、4~50歳までの34名の村人の腕、口内、便などからサンプルが採取された。
ここから入手した細菌のDNAをアメリカ人および他の2グループ(ベネズエラおよびアフリカの先住民族。現代文明と一定の接触がある)のものと比較した結果、ヤノマミ族はアメリカ人の2倍、ベネズエラおよびアフリカ先住民の1.3~1.4倍程度の多様性を有していることが判明した。
また、一部の便サンプルから抗生物質耐性がある細菌が28種も発見された。これらが獲得された経緯は不明であるが、土壌微生物に由来するのではないかと研究者は考えている。土壌微生物の中にも耐性を持つ種があり、これまで市場に登場した抗生物質の大半はこれらに由来しているのだ。
こうした遺伝子が細菌内で別の機能を担っている可能性、あるいはヤノマミ族の中にはTシャツ、鉈、缶を所有する者がいることから、文明との間接的な接触があったという可能性もある。さらには、ヤノマミ族には発酵させたキャッサバを飲む習慣があるため、食事が原因ということも考えられるようだ。
実は細菌は人間の生理機能に決定的な役割を果たしており、免疫反応や代謝機能、さらには行動にすらも影響を及ぼすことが分かっている。しかし、近代的な衛生環境や生活様式が、人間の微生物群ゲノムに与えた変化については明らかとなっていない。ヤノマミ族の微生物群ゲノムの研究からそれを解き明かす手がかりが得られる可能性があるという。

人類(生物)は恒常的に“飢えの圧力”に晒されてきました。常に豊かな食事で栄養を摂取することは困難であるが故に「腸内の細菌たちが産み出してくれる栄養」を頼りとする適応戦略をとってきました。
腸内細菌の数も種類も豊富で、健全性・正常性を完全に保持していれば、直接摂取する栄養素が多少不足していようとも、 “宿主が生きるのに必要な栄養” を産生してくれていたとも言えます。

先進国においては“物質的な豊かさ”は上昇していますが、腸内細菌槽の多様性では、アメリカ人はヤノマミ族の1/2程度という結果から見ると、長い年月の中で獲得した適応能力が低下していることも十分に考えられます。
自然の摂理に合致しているかという判断軸で生活を見直してみることで、適応可能性を高めていけるのではないでしょうか。

List    投稿者 seibutusi | 2017-11-28 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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