2018-01-03

生命の起源が明らかに!?~液滴の成長・分裂~

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画像はこちらからお借りしました。

生命の起源に関しては、様々な仮説が提起されていますが、20世紀前半にロシアのオパーリンが提唱した「有機物が集まって形成された“液滴”が自然に成長・分裂する」という説が注目されています。
これまで不明であった「液滴が細胞に至るまでの成長・分裂・増殖の過程」について、何らかのエネルギー源と液滴内の有機物が反応して、生命活動のような変化を示すことが確認されたのです。

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原始の地球で最初の細胞が誕生した仕組みを明らかにする、新発見がもたらされた。1924年以来、長らく忘れ去られていた進化史上の仮説に再び、注目が集まっている。

生命の起源については1924年、ロシアの生化学者アレクサンドル・オパーリンの発表した説が広く支持されている。原始の地球で、大気中の成分から合成された非生物的な有機物がいくつも集まり、海中で「液滴」と呼ばれる形態になる。膜はないものの、袋状の構造をもつ液滴がその後、生命を得て細胞になったというものだ。

しかし、液滴が細胞に至るまで、どのような成長・分裂・増殖の過程を経たのかは、これまで誰も説明できなかった。「膜なくして進化なし」とオパーリンの理論に異議を唱える研究者もいる。化学物質を集めて生命を育むには、脂肪酸の膜が必要不可欠で、膜のない液滴から細胞は発生しないという。

こうした議論に新たな風を吹き込む発見が2016年12月、物理学の国際学術誌『ネイチャー・フィジクス』で発表された。独ドレスデンのマックス・プランク複雑系物理学研究所と同分子細胞生物学・遺伝学研究所のデヴィッド・ツヴィカーと共同研究者による論文がそれだ。液滴が細胞の大きさまで成長したあと、まるで細胞のように分裂する傾向があったという。

膜のない液滴が自発的に分裂するなら、「(オパーリンの言った通り)非生物的な有機物の濃縮されたスープから、生命が自然に発生した可能性は高まります」と論文の共著者で生物物理学者のフランク・ユーリヒャーは言う。

細胞のようにふるまい“分裂”する液滴

実験では、細胞の分裂などにかかわり、液滴と似たふるまいをする細胞小器官「中心体」をモデルとした模型をつかった。内部に含まれるタンパク質は、エネルギー源があると逆反応を起こした。水溶性のものは不溶性に、不溶性のものは水溶性となった。液滴は直径数十~数百ミクロンに成長したところで、分子の流出入が釣り合い、成長が止まった。ユーリヒャーは、「原始の地球では、太陽光が液滴を成長させる原動力になったはずです」と言う。

「分裂」と非常によく似た現象も見られた。液滴の大きさは安定しているものの、形状が不安定で、不溶性タンパク質の分子が過剰に流入すると、その方向へとわずかに膨らんだ。膨張した部分の表面積が広がる一方、表面積が小さいままの中央部はくびれ、最終的には2つの液滴に分かれた。

単純な分裂する液滴が、アメーバからシマウマまでさまざまな動物に進化した可能性はあるのだろうか? 今回の新発見に通じている物理学者や生物学者は「あり得る」と話す。

研究チームは次の段階として、今後数カ月で中心体などのタンパク質と物理的に似た合成ポリマーで液滴をつくり、どのように成長・分裂するか観察しようとしている。さらにその後は、中心体そのものの液滴の分裂を観察するなどし、ツヴィカーらが論文で発表したメカニズムがつかわれるかどうかを確認する。これらの実験は、マックス・プランク分子細胞生物学・遺伝学研究所で生物学研究所の所長を務めるドーラ・タンらの協力を得て進められる予定だ。

反対論者も納得する新たな仮説

カリフォルニア大学サンタクルーズ校の生化学者デヴィッド・ディーマーは、「膜なくして進化なし」説を長らく擁護してきた。今回、新たに発見された液滴分裂のメカニズムについても、「興味深いが、現在の細胞分裂で見られる多段階で複雑な過程とはかけ離れており、生命の起源との関連はまだ分からない」と話す。

他の研究者たちはこう反論する。タンによると、母核となる液滴がいったん分裂を始めると、すぐに遺伝情報を伝達する能力を得て、タンパク質を合成する情報を持つDNAやRNAを娘核のために等しく配分できたという。これらの遺伝情報伝達物質が液滴の分裂速度を高めるタンパク質を合成するようになれば、原子細胞は自然状態にある物質が無秩序に広がってゆく「エントロピー増大の法則」と太陽光によって、だんだん複雑化していくだろう。

ユーリヒャーらの研究チームは、「原子細胞はこの複雑化の過程で膜を獲得した可能性がある」と主張する。液滴は、自身と周囲の液体との境界面にとどまろうとする脂質の外皮を自然と集めるからだ。さらに、遺伝子が何らかの方法でこうした膜を一種の防御として組み込み始めたかもしれないとも言う。この仮説について、ディーマーは「そういうことなら同意できます」と言い、原子細胞の定義を「膜を持った最初の液滴」とすべきだと主張した。

~後略~

「生命の起源」ついに明らかに? その想像以上にシンプルなメカニズム
<WIRED>より
実験で扱われた「中心体」モデルがどこまで厳密なものであったかは不明ですが、中心体は細胞分裂の司令塔で、起源は膜である可能性もあり、追求課題はたくさんあります。
中心体が生命活動の統合役
中心体の起源は膜に有り?

有機物の集合体(液滴)が形成され、外部エネルギーを受けて「分裂」の原型を獲得したことと、そこに“膜=識別機能”が形成されることで、膜による有機物の選択透過⇒連結が促進されたことが、生命活動の始まりであったのではないでしょうか。
液滴の形成と膜の獲得については、継続追求していきます。

※当ブログでの生命起源と膜に冠する過去記事
驚くべき機能。それは”膜”
膜タンパクこそ最初の認識機能 膜タンパクの様々な働き
脅威の「膜」機能

List    投稿者 seibutusi | 2018-01-03 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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