生物史に興味を持ってもらうシリーズ-3 ~その1.中心体が生命活動の統合役~
takesyoさんの記事生物史に興味を持ってもらうシリーズ② ~DNAとRNAって何?~から、たんぽく質の組み立てという重要な仕事を担っているのは専らRNAだということがわかりました。
■RNAの働き(タンパク質の生成)を統合しているのは中心小体か?
タンパク質の生成は生命活動そのものであり、これを統合している物質が生命起源に近いはずです。つまりこの問いは生命起源は何かということそのものです。その答えは生物学会では未だ出ていません。それはDNAばかりに注目しているからです。
中心体(原基)が生命の起源であり、生命活動を統合している
というのが今回の記事の論旨です。全部で4回ぐらいの予定です。
(なお、中心体は中心小体と周辺物質と呼ばれるものからできています。次回の記事で詳しく説明します。以後、生命起源及び生命活動の統合役としては中心体または中心体原基という名称を用います。)
まずは中心体が生命活動の統合役だと考えられる現象を見てみます。
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■細胞分裂の初めに中心体の分裂あり
中心体が統合役だと考えられる現象がみられるのが細胞分裂です。それは種の保存に直結しており、生命にとっては重要な‘生殖’という行為です。タンパク質を合成しているのもそのためですし、細胞(生物)は分裂(生殖)するために生きているといっても過言ではありません。
細胞分裂は タンパク質合成(G1期)→DNA複製(S期)→分裂(M期) という手順で進みます(下図を参照してください)。
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(なんでや劇場資料44より)
タンパク質を合成するG1期は、細胞が2つに分裂するために内容物を2倍にするのですが、2倍になったことを認識して最初に分裂の過程を始めるのが中心体なのです(図中ピンク色で表現)。中心体はDNAの複製に先立って分離を始めます。(図中のS期-1参照)。
また、細胞の分裂過程(M期)に入ると、DNAは折りたたまれて染色体の状態になります。DNAはほどけなくなり働かなくなります。だから、その後の分裂過程ではDNAもそれと関連するRNAも働かず、中心体とタンパク質群が専ら働くことになります。なかでも中心体は染色体を2つに分けたり、組み替えたり、複雑な仕事を正確に行います。(冒頭の写真は中心体(オレンジ色)が染色体を2つに分けようとしているところ)
■中心体は自己複製ができる
中心体は分裂を統合しているだけでなく、自らの複製→分裂を独自に行っています。ある実験によれば、DNAを含む核を取り除いても中心体は複製を続けました。
例えばウニ卵から核を物理的に取り除くか、核DNAの複製をDNA合成阻害剤で阻害しても、中心体の倍加と分離の周期はほぼ正常に進行します。また、ショウジョウバエの初期胚で同じようにDNA阻害剤処理を行うと、胚の内部で増えた中心体は、複製を阻害されている核から離れて細胞膜へ向かって細胞質の中を少しずつ移動していきます。細胞膜まで来ると、中心体は星状体を介して膜とその内側の皮層の形を変え、中心体はあるが核を持たない細胞を作り出すようです。
参照:「中心体の基礎知識」
つまり、中心体はDNAに頼らず自己複製するのです。それ自体が生命体としての要素を持っていると言えます。その仕組みはまだ解明されていませんが、少なくともDNAの中に中心体の遺伝子はコードされていません。これは、中心体原基がDNAが誕生する前からあったことを示していると思われます。
中心体の重要性がわかっていただけたのではないでしょうか。
次回は、中心体が生命活動の統合役を担えるのはなんでなのか。その秘密に 迫ります。
お楽しみに
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