オランウータンの生殖・性2 ~テナガザル系が”年中発情”する深い理由とは?~
前回のエントリーに引き続き、今回もオランウータンの性について扱いたいと思います。
今回はとりわけテナガザル系の類人猿全般にみられる、”年中発情”という生殖様式。
この秘密を探りたいと思います。
■1.”年中発情”とは何を意味するのか?
哺乳類にとって、【排卵】とは繁殖可能な(交尾して妊娠可能な)期間を示していますが、哺乳類は【交尾排卵方式】。つまり交尾による刺激で排卵するという方式をとっており、ほぼ100%妊娠します。
大半の食虫類、食肉類とげっ歯類の一部(フェレット、ウサギ、リス、イエネコ、ラクダ等)は、オスの交尾により排卵が誘発される方式をとっており、これが、より原始的な生殖形態と考えられます。(おそらく原猿初期も交尾排卵方式)
その後、霊長類(草食動物も)は【自然排卵方式】、つまり交尾がなくても定期的に排卵する方式に転換しました。
これは、雨季や春の始まりなど【餌が豊富になる時期に出産できる】よう、春や雨季の始まりから逆算して妊娠期間を引いた時期に排卵=交尾期が設定されるという適応戦略の為です。
しかし、サル達が適応した熱帯では、乾季や雨季等が無く、季節性がなくなります。
その結果、それぞれのメスが異なる時期に一定期間発情するようになります。
つまり、【年中発情】とは、「季節を問わず排卵ができる」ということ。
ちなみに妊娠するまで1か月ごとに排卵が続き、排卵の前後にメスは尻を赤くし、フェロモンでオスを惹きつける様式をとります。
では、”年中発情”すると一体何が変わるのでしょうか?
続きを読む "オランウータンの生殖・性2 ~テナガザル系が”年中発情”する深い理由とは?~"
オランウータンの生殖・性1 ~オランウータンが授乳期間や子育て期間を延ばしたのは何で?~
これまでの記事で、人類の祖先は”オランウータン”であることがほぼ明らかになりました。
・サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編②~
・オランウータン・ゴリラ・チンパンジーの生態の違いはどうして生まれるのか?
・人類の祖先はゴリラ?オランウータン?チンパンジー?
・チンパンジーと人類DNA99%一致説を検証する
今回からは、そのオランウータンを中心とした、類人猿の【生殖や性】について追求していきたいと思います。
大前提として、【生殖や闘争】は一番大事で抑えておくべき課題。しかし、大事であるにも拘わらず、生殖過程についてはわからないこと、未解明の課題ばかりなのが、現在の生物学であり、人類学です。
したがって、固定観念に縛られずに追求していくことが重要になります。それでは追求していきましょう。
続きを読む "オランウータンの生殖・性1 ~オランウータンが授乳期間や子育て期間を延ばしたのは何で?~"
チンパンジーと人類DNA99%一致説を検証する
前回の投稿では、身体の類似点から人類の祖先はオランウータン説が有力と述べた。
しかし現状の人類学では、チンパンジーと人類のDNAが99%類似していることを根拠として、チンパンジー=人類の祖先説(人類とチンパンジーの共通祖先から人類は分岐した)という説が主流となっている。
果たして、それはチンパンジーが人類の祖先であるという根拠になるのだろうか?
続きを読む "チンパンジーと人類DNA99%一致説を検証する"
【番外編】オミクロンは重症化しない?②オミクロンはどこで誕生したのか
『オミクロンは重症化しない?①』では、オミクロン株は致死率は低いが感染率が高いため、結果、死者数が増えてくる可能性が高いとお伝えしました。
ウィルスは単独で増殖していくことはできず、人間や動物の細胞がなければ増殖できない性質を持っています。
致死率を高めすぎると感染した宿主(人間や動物)が死亡してしまい増殖できません。軽症で済む感染症ほど宿主を介してウィルスが運ばれ、感染率をあげることが可能となります。
ウイルスは遺伝子を世界中に広めたいと思えば、自ら毒性を弱めて発症までの潜伏期間を長くし、保菌者が元気に(不顕性感染)あちこち動き回ってくれた方が、ウイルスは拡散し世界中に広がります。自分の勢力を広げたいウイルスは、感染力を高めるためにあえて自身の毒性を弱めることだってあるのです。
画像は『まにゅまるスクリプト』さんよりお借りしました。
また病状として、これまでのウイルスは肺まで達して深刻な肺炎を引き起こしていましたが、今回のオミクロンは上気道の炎症を引き起こしやすいと言われているのに加えて、「筋肉痛」「関節痛」の症状も多くなっており、ウイルスが体のいたるところで増えているという可能性もあるで、これまでのコロナウイルスとは別物の症状が現れているような気もします。
今回のオミクロン株はどこで誕生したのでしょうか?
続きを読む "【番外編】オミクロンは重症化しない?②オミクロンはどこで誕生したのか"
人類の祖先はゴリラ?オランウータン?チンパンジー?
前回の投稿では、ゴリラ、オランウータン、チンパンジーの違いを押さえ、その違いはそれぞれが置かれている外圧状況が関係していることが明らかになりました。
今回はそれらの違いを踏まえて、「人類の祖先は誰なのか?」について迫っていきたいと思います!
人類の祖先と言われているのは、「足の指が先祖返りして木から落ちたサル」。
足の指が先祖返りするというのは、足の指で木が掴めなくなること。
樹上機能を失い、地上で生きていくことになったサルたちはどのような状況に陥ったのでしょうか?
続きを読む "人類の祖先はゴリラ?オランウータン?チンパンジー?"
【番外編】オミクロンは重症化しない?①致死率は低いが死者数は増加
日本でも世界でも「オミクロン株は従来のコロナに比べて重症化しない」という意見が一般的になっていますが、それで安心して良いのでしょうか?
オミクロン株は従来のコロナに比べて感染率が高く、致死率は低くなっているようですが、それによる死亡者の数が減るかというとそうではありません。感染率が高い分、従来のコロナより死亡者の数は増える可能性もあります。実際、ヨーロッパの国の中にはオミクロンによる死亡者数が最大になっている国もあります。
現在のオミクロン株とはどのようものなのか?従来のコロナとの関係はどうなっているのか?など、複数回に分けて追求していきます。
続きを読む "【番外編】オミクロンは重症化しない?①致死率は低いが死者数は増加"
オランウータン・ゴリラ・チンパンジーの生態の違いはどうして生まれるのか?
これまで様々なテナガザルの生態や特徴を紹介してきました。今回は類人猿のオランウータン・ゴリラ・チンパンジーに注目していきます。まずは3種の違いを見ていきましょう。
(画像はこちらからお借りしました) (画像はこちらからお借りしました)
(画像はこちらからお借りしました)
・ゴリラやチンパンジーは地上に降りて生活しているのに対して、オランウータンは専ら樹上生活。(地上には滅多に降りてこない。)
・ゴリラやチンパンジーは集団を組むが、オランウータンはオスもメスも単独で生活している。(集団を組むこともあるが、基本はオスメス単独)
・授乳期間がゴリラは3~4年、チンパンジーは4~5年に対して、オランウータンは7~8年と各段に長くなっている。
などの違いがあります。
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?
続きを読む "オランウータン・ゴリラ・チンパンジーの生態の違いはどうして生まれるのか?"
サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編②~
前回のオランウータンの生態に続き、彼らの子育てに関する内容と、人類との共通点に焦点を当てていきます。
■1.オランウータンの子育てについて
※画像はコチラからお借りしました
オランウータンは、前回扱った”飢餓に度々直面している”にも関わらず、なんと15歳まで生き残る確率が【94%】と、他の哺乳類、類人猿に比べて圧倒的に高い。
ちなみに未開部族でも57%しか生き残らないというが、一体どこその秘密が隠されているのか?
①授乳期間の長さ
・母親と子どもの密着期間の長さが特徴的で、授乳期間は類人猿の中でも最大長さの7~8年に至る。
・生まれた時の赤ん坊の体重は1500gとヒトの半分。ゴリラで2000g、チンパンジーで1800gなので、ヒトの赤ん坊は類人猿の中では際立って大きい。
②子どもの成長過程→母子密着度の高さと遊び
・6か月までは授乳のみで、赤ん坊は腹をつけて這うことしかできない。6か月で母親から1~2m程度離れて、木登りやぶら下がり程度できる。
・6か月~1年で葉や果物も食べられるようになる。
・1歳で母親から2~5m離れて木揺らしや枝を振り回すなどの「一人遊び」を行う。
※画像はコチラからお借りしました。
・2歳からは、母親の役割は周囲の個体との社会的接触をさせる。兄弟はもとより血縁関係の無い、他の子どもや、子どもの居ないメスや大人オスとも遊ぶ。
・遊びの内容はひたすら樹上でレスリングごっこ。この時期(2~10歳くらい)の他個体との接触で社交性を養う。
・子どもメスにとっては、赤ん坊との接触の機会となり、これが無いと子育てが満足にできない。(※動物園での事例)
・3歳から母乳が無くとも育つだけの身体になっているが、乳首は咥えている。しかし、母乳が出ているかは不明で、精神的な栄養の方が大きいのかもしれない。
→母子密着による充足度の高さ(⇒充足追求度の高さ)と、遊びを通じた樹上適応が、子どもの生き残る確率94%の高さを維持している秘密だと思われる。
■2.オランウータンと人類の身体的な共通点について
①他の類人猿に比べて人類との類似点が最も多いオランウータン
現在の教科書では、人類の祖先はチンパンジーと言われているが、過去1960年代までは、ラマピテクスの化石が人類に類似していることから、オランウータン説が有力だった。実は骨格などの身体的特徴が人類とオランウータンでは28点程類似しているが、それに対して、チンパンジーは2点、ゴリラは7点しかない。
以下に身体的共通点をあげていくと、
・臼歯が厚いエナメル質で、上部が平ら。
・非対称の左脳と右脳。
→これは、”利き手”があるということ。母親が子どもに添える手が同じ。
・腕の軟骨と骨の比率がほぼ同じ。
・掌が平らに地面につく。(※ただし、この点はヒヒや日本ザルも同じ)
・肩甲骨の形が類似している。
・口蓋に穴が開いているのも人類とオランウータンだけ。→これは発音に関係があるらしい
・眼が横長で、瞳の周りの色が薄い。
→これは視線が強調されているということ。
・血液型が人と同じA型、B型、AB型、O型の4種類。
・乳腺が広範囲に分布しており、乳首の位置や対距離が他の類人猿に比べて離れている。
・髪が長く、生え際がある。
・ゴリラやチンパンジーは発情期に性器が膨らむなどの変化があるが、オランウータンは全く無い→これは、特定の発情期が無く、年中発情期があるということ。つまり、排卵と関係無くいつでも交尾が可能。
・交尾が、正常位なのも人類とオランウータンだけ。 など。
②ヒトの赤ん坊の発現を辿ると、「ナックルウォーク」をしていなかったことが判明している
・オランウータンは樹上中心の生活。(地上に餌が無い、外敵もいるため10m以下にはほとんど降りてこない。)そのため、オランウータンは地上でもナックルウォークをしていない。
・2018年の論文発表で、ヒトの赤ん坊の発現を辿ると、「ナックルウォークをしていない」ことが判明している。
****
新生児から成体への骨格の形成過程に着目し、X線CT(コンピューター断層)データを用いた独自の形態解析手法により、これまでにない精度で詳細に分析しました。ナックル歩行仮説が正しいとすれば、現生の類人猿の発生パターンには、共通祖先から受け継いだ共通点があるはずです。しかし結果は、「ナックル歩行仮説」を否定するものでした。歩行様式の観察、そして全体的に類似したようにみえる骨格形態から、チンパンジーとゴリラの発生パターンは似ていると予想されていましたが、実は著しく異なる発生パターンをもつことが分かりました。この結果は、直立二足歩行はチンパンジーやゴリラのようなナックル歩行者ではなく、「普通の四足」の類人猿から進化したという説を支持するものです。
ヒトの祖先はチンパンジーやゴリラには似ていない -発生パターンの比較から二足歩行の起源に迫る-
****
→これもヒトとオランウータンの共通点として有力な説として上げられる。
本日はこれまで。
次回は、人類の祖先は一体何なのか?に迫りたい。
続きを読む "サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編②~"
サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編①~
テナガザルの特徴として「チンパンジー、ボノボ、ゴリラ」を扱ってきましたが、次はオランウータンに入ります。
チンパンジーに代わる人類の起源として可能性があるオランウータンの生態に迫ります。
続きを読む "サル社会の構造20 ~テナガザルの特徴 オランウータン編①~"
サル社会の構造18 ~テナガザルの特徴 ゴリラ編~
世界最大の猿として有名な類人猿の動物ゴリラ。
皆さんはゴリラと聞いてどういったイメージを思い浮かべるでしょうか?
キングコングのモデルとなったゴリラ。人によってはゴリラという名前を聞くと「大きくて力強い動物」というイメージを抱く人もいれば、中には「凶暴で怖い動物」といったイメージを抱いている方もいるでしょう。
動画は『こちら』よりお借りしました。
しかし、実際はその強そうな見た目からは想像ができないほどけっこう温厚な動物なのです!
あの有名なドラミング(胸を手で叩く行動)は、よく威嚇行為と言われることが多いですが、実際は威嚇ではなく「無駄な争いはしたくない。」といった平和的な行為であると言われており、他にも楽しい時、好奇心を持った時に行われることがあります。
(キング・コングはグーで叩いていますが、実際のゴリラはパーで叩いています。)
そんなゴリラの生態、どのようになっているのでしょうか?