2014-07-22

「理想の食事は元禄以前の玄米菜食」~約40年前のアメリカが評価、抹殺、そしていま、再評価

漬物や梅干や魚の麹漬けなどはosouzai、昭和の30年代までは自家製の自給食が主流でした。自家製の発酵食品が日本の食卓から消えたのは、学校給食に始まったパン食の普及と、米国過剰農産品の無償援助の受け入れが契機です。特に朝食が伝統的な日本食から、米国まがいのパン食に代わってしまって急速に進んでしまったのです。

続いて団塊の世代が子育て世代となって以降は、食卓から自家製の発酵食品は姿を消してしまいました。敗戦による食糧難と米国・食料メジャーの対日攻勢が、市場社会に突入し始めた日本の食卓を大きく変えてしまった頃、米国社会ではマクガバンレポート(1977年)が発表されました。

5000ページにも及ぶレポートの中で、さも理想的な食習慣は日本食(しかも元禄期)であると結論付けられています。まだ米国に言論の自由があった時代のことですが、それから食料や医療メジャーの圧力が強まりマスコミの愚民化キャンペーン(現在に続く世論操作)の下で葬られていきました。(引用:自家製の発酵食品が食卓から消えた日、然し再生の機運が高まっている。 )

 

マクガバンレポートは現在、第二版は国会図書館で見ることができますが、圧力により内容が大幅に改訂されたものになります。オリジナルの第一版は原文でも手に入らないようです。戦後、日本人は食文化が西洋化していきます。その発端には、熾烈なやりとりがあったことがわかります。

しかし、いくら世論操作、言論弾圧しようと、事実は変えることができません。いまやアメリカをはじめ世界で日本食が見直され、マクガバンレポートも再評価され始めています。その内容から、西洋医学の問題と、日本の食文化を見直してみたいと思います。(原文訳は見つからないので、もっとも詳しく解説されている「http://www.laface.biz/file/43/makugaban.pdf」より引用・抜粋します。)

(さらに…)

  投稿者 kumana | 2014-07-22 | Posted in ⑩微生物の世界6 Comments » 

腸内細菌が私たちの食を変える?微生物と食性の関係を探る

今回は、「腸内細菌」と「食性」というテーマで記事を投稿したいと思います。近年、微生物の未知なる可能性が注目されはじめました。ある微生物は放射性物質を浄化したり、ある微生物は発電装置になったりと、「万能生物」として様々な応用が期待されています。

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 画像はこちらから借りましたhttp://news.livedoor.com/article/detail/4238249/

 

微生物は、実は私達の身体のあちこちに住み着いています。特に腸内に住む微生物は、腸内細菌と呼ばれ、食べ物の消化に大きく関わり、私達人間の免疫や健康に影響を及ぼしています。

本記事では、人間の「食性」という部分に焦点をあてて、微生物が人の食を変えていく、その可能性についてみなさんに知ってもらいたいと思います。

■まずはじめに。消化における腸内細菌の重要性

私たちが生きていく為には、毎日、食事という形で、様々な栄養や、水分を摂ることが必要です。そして、
●腸で分解・消化・吸収された「栄養分」を、
●「酸素」とともに、「※血液(血流)」にのせて、
●60兆個といわれる、体の隅々までの「細胞」に行きわたらせる
ことで、健康を保ち、命をつないでいます。
※毛細血管の長さは約10万km、地球約2周半分もあります。
私達が口から摂った食べ物などは食道を通って胃に運ばれ、食物を胃液(pH1の強酸性)とよく混ぜ合わせ、流動的なかゆ状にし、次に送られる小腸での本格的な消化、吸収に備えます。胃液にはタンパク質分解酵素は含まれていますが、炭水化物や脂肪を消化する酵素は含まれていません。

胃で栄養分などの吸収が行われていると思っている方も多いと思いますが、胃は食物が消化・吸収される前に腐敗しないよう、胃液に含まれる塩酸で食物を殺菌したり、アルコールを吸収したり、食物を少しずつ小腸に送り出すための一時的な保管場所、などの役割をもっています。胃でかゆ状になった食物は、幽門を通り、十二指腸、小腸へと送られます。

腸内の絵

 

 

 

 

画像はこちらから借りました http://biota.co.jp/bacteria.html

 

小腸は身体の中で最も長い臓器で、ヒダが多い上に内部の表面はイソギンチャクのような絨毛突起におおわれています。この絨毛の表面を加えると、小腸の表面積は約200平方メートル(約60坪)、人間の体表面積の百倍以上にもなります。また、腸全体では、約3000万本もの絨毛があり、1本の絨毛は約5000個の栄養吸収細胞で覆われています。
(約3000万本の絨毛×約5000個の栄養吸収細胞=約1500億個の栄養吸収細胞)※腸全体の栄養吸収細胞の数は、約1500億個になります。

さらに、1個の栄養吸収細胞の先端には直径が0.1ミクロン(10000分の1ミリ)、高さが1ミクロン(1000分の1ミリ)という、微絨毛が約2000本も並んでいるといいます。
(腸全体の栄養吸収細胞の数1500億個 ×約2000本の微絨毛=約300兆本の微絨毛)
⇒腸全体にある微絨毛の数は、約300兆本になります。

人間ひとりの全てを構成する細胞の数が60兆個といいますから、それを超える300兆本が腸内にのみ存在するということが、スゴイ事ということがおわかりいただけるでしょうか。
この腸全体の微絨毛(約300兆本)の一本一本から栄養成分を吸収することが、私たちのからだにとっての本当の吸収といえます。

 炭水化物、たんぱく質、脂肪などの栄養成分は、元々は大きい分子なので、これらの成分がブドウ糖やアミノ酸などの最小単位にまで分解されていなければ、微絨毛から無駄なく吸収することができません。 消化において、今まで分解を行うのは「消化酵素」のみと考えられていましたが、腸内に100兆匹もいる「腸内細菌」が「消化酵素」に協力した形で、栄養分に対する、分解、消化、吸収、そして排泄などの作業すべてに大きく関わっているということが解ってきました。

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栄養成分の分解・消化・吸収と「腸内細菌」 より引用http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=291313

 

 このような消化に関わる腸内細菌には、様々な種類がいます。よく言われるのは善玉菌・悪玉菌・日和見菌といった大きく3つに分けた分類ですが、実際には数百種類の腸内細菌が人の腸には住み着いています。それぞれの腸内細菌は、人が消化できない栄養分を分解したり、ビタミンやタンパク質の合成をしたりと様々な役割を持っています。この種類とバランスが、私達の消化吸収に大きく影響しているのです。

 それでは、その腸内細菌の種類はどのように決まるのでしょうか。

 

腸内細菌を形成する上で重要なのは食事!

食事を変えれば腸内細菌の種類はたった一日で変化する

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=291313 より引用

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肉体や精神の健康は、腸内細菌と密接な関わりがあり、果てにはわれわれの思考にまで影響を及ぼすことが明らかになっている。以前、「腸内細菌は両親から受け継がれ、生涯変わることはない」という研究結果をお伝えしたが、今回の実験はそれに疑問を投げかける結果となっている。なんと肉食から菜食へ、菜食から肉食へと食事内容を変えるだけで、腸内細菌の種類は大幅に変化した。それも変化は一日という早さで起こることが確認されたのだ。

 
「変化は細菌の種類だけではなく、それらの活動に伴う遺伝子の発現にも変化がみられた。腸内微生物はわれわれの食事内容に大きく反応するのかもしれない。そして以前考えられていたよりもこの反応は短い時間のうちに起こる」と、説明するのは米デューク大学ゲノムサイエンス研究所のローレンス・デーヴィッド。何兆という腸内細菌が人間の体内に住みついており、それらは消化、免疫、体重変化にも大きく関わっていることが明らかになっているが、今回の結果は「人の健康を語るにおいて何を意味するかはまだわからない」そうだ。

実験は、21歳から33歳までの男性の被験者6人と女性の被験者4人を対象に行われた。最初の4日間は普通に食事をしてもらい、次に5日間ずつ完全肉食か完全菜食だけをしてもらい、それぞれ腸内細菌を採取した。肉食の内容は「朝:卵にベーコン、昼:リブやブリスケット、晩:サラミ、生ハム、チーズ、おやつには豚の皮を揚げたもの」、菜食の内容は「朝:グラノラ、シリアル、昼:米に玉ねぎ、トマト、ズッキーニ、にんにく、グリーンピース、レンズ豆などを調理したもの、夜:昼と似たようなメニュー、おやつにはバナナとマンゴー」だった。

肉野菜

 

 

 

 

 画像はこちらから借りました http://www.ohsawa-ap.jp/746

 

結果は、肉食をした場合、22種類の細菌の増殖に拍車をかけ、菜食をした場合は3種類の細菌が増殖した。驚くべきことは、腸内細菌の種類が一日という早さでシフトしたことだ。これが健康にどう影響するのかは定かではないが、肉食では肝臓が脂肪を分解するのに胆汁酸を分泌するので、それに強い細菌が増殖するのは説明がつくという。逆に菜食により増殖した細菌は食物繊維を分解するのに特化したものだと考えられている。

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引用終わり

 

もし腸内細菌の種類を短期間で変えることができるのであれば、例えば人も草食動物のように、植物からたんぱく質やビタミンを分解して吸収でするといったように、腸内細菌によって食性を変えていくことができるのではないでしょうか。

 実際、これまでの生物史において、肉食の動物から草食の動物が進化するということは珍しいことではありませんでしたが、その変化にかかる時間は少なくとも数十~数百万年の月日がかかるとされていました。そこにはDNAの変異が必要だからです。しかしながら、パンダはどうでしょうか。パンダは肉食の(植物を分解する酵素をもっていない)身体でありながらも、笹や竹を食べて生きています。これはDNAの変異によって実現されたものではありません。

一体パンダはどのようにして笹や竹を消化できるようになったのでしょう。2013年に出版された著書の中で夏井睦氏は次のように述べています。

 ■パンダは他者の分解菌を取り込んで笹を消化できるようになった

http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=-3143 より引用
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パンダがもともとは肉食だったことは、腸管の構造からほぼ確実とされている。しかし、何らかの原因で、本来の生息地を追われて高緯度地域に移動し(人類の祖先がパンダ本来の生息地に侵入して、パンダを追い出したという説が有力)、そこでタケやササという新たな食料に適応したとされている。高緯度地域にはエサとなる動物が少ないため、動物以外のものを食物にするしかなかったからだ。
しかし、他の哺乳類同様、パンダはタケ(=セルロース)を分解する酵素を持っていないため、以前から「タケを消化することができないのになぜ、タケだけ食べて生きていけるのか」は長らく謎とされてきた。

パンダ

 

 

 

 

 

画像はこちらから借りました http://karapaia.livedoor.biz/archives/52045273.html

 
その謎が解明されたのはここ数年のことだ。パンダの消化管内から、他の草食動物の腸管内に生息しているのと同じセルロース分解菌が発見され、タケ食で生きていけるメカニズムが解明されたのだ。しかし、本来肉食である動物が、タケのみを食べる生活に簡単に切り替えられるのだろうか。肉食動物の腸管に、肉食動物とは無縁のセルロース分解菌が、そんなに都合よく住み着いてくれるものだろうか。

 
こういうことを考える時、私たちはともすれば「進化とは数万年、数十万年かけて起こるものだ。パンダだって数万年かけてタケのみを食べる生活に適応したのだろう」と考えがちだ。だが、人間に追われて高緯度地域に避難したパンダにとって、今日明日、食物にありつけるかどうかは生死を分ける問題なのだ。何かを食べて栄養をとらなければ、数日後には確実に餓死するしかないのだ。数万年かけてタケ食に適応すればいい、というのは机上の空論で、獲物を見つけられない肉食パンダにとっては、数日以内にタケを食べて栄養を得なければ死が待っているのだ。しかし、肉しか食べていなかったパンダがタケを食べたところで、それを消化も吸収もきず、これまた死を免れることはできない。

 
その地域には、これまでパンダがエサとしてきたような動物は少なく、肉食を続けることは不可能だった。何日間も絶食状態が続いたパンダはそこで、生えているタケやササを口にしたのだろう。もちろん、パンダはセルロースを分解できるわけではなく、タケをいくらたくさん食べても、栄養にはならない。だが、その地に草食動物がいるかぎり、セルロース分解菌は必ず存在する。草食動物の消化管内にいる常在菌(=セルロース分解菌)で、排泄物と一緒に外に出てしまった細菌だ。これらの細菌は当然、タケの表面にも付着していて、パンダはタケとともに、これらの細菌も摂取する。そのうちの大部分の細菌は、胃酸で消化されてしまうだろうが、一部の菌は生きたまま、タケの破片とともにパンダの大腸に運ばれる。

 
そして、肉食獣パンダの大腸に、噛み砕かれたタケとともに到達したセルロース分解菌は、それまでしてきたようにセルロースの分解を始め、短鎖脂肪酸やビタミンを分泌し始める。彼らにとっては、日常が戻ったようなものだ。そしてそれらは、パンダの栄養源となった。新たなすみかでも肉食の習慣を捨てようとしなかったパンダは滅び、タケやササという未知の食物を口にしたもののみが、生き延びることができたと想像される。もちろんタケやササだけ食べているパンダは、タンパク質(アミノ酸)をどこから調達しているのかという疑問が残る。残念ながら、現時点でのパンダに関する研究ではこの謎を解き明かしてくれるものはなく、今後の研究を待ちたいと思う。

 
いずれにしても、肉食パンダが短期間に草食パンダに変身したことは事実である。しかも、その変身は1週間程度の短い日数でなしとげられたはずだ。食を絶たれた肉食パンダが生きられるのはそのくらいが限界だからだ。この変化が現実に起きたのであれば、他の動物に起きても不思議はない。
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引用終わり

 これらのことは、食性が腸内細菌次第で簡単に変えられること示してくれています。

もし実験で示されたように人が腸内細菌の種類を短期間で変えることができるのであれば、例えばパンダのように、肉食であるにもかかわらず、植物を食べて生きていけるような食性の進化が、人にも簡単に起こりえるのではないでしょうか。青汁だけで生きていける腸をもつ人や、食べても食べても太らない腸をもつ人は、もしかしたら人間の食の進化の最先端にいるのかもしれません。

 

  投稿者 MATUSYO | 2014-07-12 | Posted in ⑩微生物の世界1 Comment » 

【放射性物質を無害化する微生物vol.1】~放射性物質を吸収する微生物編~

微生物2

かつて日本が経験した原爆投下による放射能地獄も、70年を経た現在、広島・長崎共に見事に復興を遂げています。放射性物質は半減期をもって徐々に安定した物質へと変化していく性質を持ち、その期間は途方もない年月を要するようです。しかし、広島・長崎のわずか数十年で放射性物質が減衰したという現象事実から、おそらく他の因果が深く関わっているという視点にたつ必要がありそうです。環境微生物学博士の高嶋康豪氏は、耐放射線微生物により放射性物質の除染・浄化・消失が出来ると強く提唱する方で、氏曰く、なんと広島・長崎の原爆投下時、この対策方法は当時国の機関が認め、その効果を実証していたようなのです。

広島・長崎での放射性物質の軽減消失については、昭和30年代初頭に大蔵省滝野川醸造試験所において、政府機関の科学者により連合軍の資料に基づき耐放射性細菌の微生物触媒による放射性物質、放射能の除染・浄化・消失が発表されています。

今日は、放射性物質を吸収する微生物を紹介したいと思います。地球上に無数に存在する微生物たちは、人間が生み出した科学技術や想像を遙かに超える営みを行っているようです。

(さらに…)

  投稿者 yidaki | 2014-07-03 | Posted in ⑩微生物の世界, ⑪福島原発問題2 Comments » 

シリーズ 人類と病気 アレルギー(5) 乳酸菌が効くって本当?

乳酸菌って本当に効くの?
「乳酸菌」と聞くとヨーグルトなどの乳製品を連想させる。しかし、縄文時代から日本人は乳酸菌と共生してきたが、それは乳製品ではない。味噌や醤油、みりん、酢などの発酵食品を通じて体内に取り込み、腸内細菌として共生してきたのである。
乳酸菌(顕微鏡)
昨今、アレルギーに効果があるといわれている乳酸菌はヨーグルトなどの動物由来の乳酸菌ではなく、日本人が昔から馴染んできた植物由来のものである。
 
 

2001年KalliomakiらはLactobacillus rhamnosus GG(LGG)をアトピー素因を持つ159名の妊婦およびその生後6ヶ月までの乳児に二重盲験法で投与し、乳酸菌がアレルギー疾患の発症を抑制する効果を有するかどうかを検討した。その結果、2才時の児のアトピー性皮膚炎の発症率は、乳酸菌投与群ではプラセボ(偽薬)群に比較して有意に低かったことが明らかとなり、乳酸菌の投与がアトピー性皮膚炎の発症を抑制する可能性が示唆された。その後、被験者は追跡調査され、生後4才の時点でも乳酸菌投与群ではアトピー性皮膚炎の発症頻度が低いことが報告されている。
http://www.nyusankin.or.jp/scientific/matsumoto.html

60年代後半からのアレルギー疾患の増加は、大気や水そして植物の人口物質による汚染の拡大と軌を一にしている。
と同時に、食生活の変化とも軌を一にしているのである。「塩分ひかえめ」が食生活指針となり、味噌汁や漬物といった日本食を塩分過多として敵視してきた栄養学の普及とアレルギー疾患の増加はパラレルである。

日本人や日本の風土にあった乳酸菌を排除したことが、腸内細菌の構成を変え、アレルギー体質を作り出してしまったことは想像に難くない。
そして、親の腸内細菌を受け継ぐ乳幼児にアレルギー疾患が増加していることは、親世代の食生活の変化(西洋化)に対応していることを如実に示している。

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  投稿者 seibutusi | 2014-06-12 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

君もシャーマンになれるシリーズ31(最終回) ~人類は「幻覚」をみて、やがて「精霊」を。そして「観念」を生み出した~

  精霊的・・・

古代部族民

 前回の「古代人は「幻覚」をみていた」に続いて、今回は、われわれ人類が生み出した「観念」について考えていきます。

 今までみてきた人類の脳の進化と構造(機能)から、過去の経験にとらわれずに創造的でありながら自律的かつ自発的に脳が活動する「観念」は、脳回路が暴走的して生じる「幻覚」が起点となって、進化上適応的な脳回路として生み出されたと考えられます。自然に対してあまりにも弱い存在であった始原人類における適応とは、自然への適応に他ならず、人類の人類たる脳回路が自然に適応した進化を遂げたことは間違いありません。

自然に対して適応的な脳回路とは、本能を超えて、自然の「摂理」、「秩序」、「法則」に適応することに他ならず、人類が自然そのものを対象化し、自らが自然の一部であることを認識して自然と一体化することに他なりません。

今までの流れを整理しながら、暴走して「幻覚」をみる脳回路が(幻覚をみながらも)秩序性のある脳回路を形成した時のことを考えてみましょう。

  (さらに…)

  投稿者 seibutusi | 2014-06-10 | Posted in 4)サルから人類へ…, ④脳と適応, ⑬宇宙人・スピリチャルNo Comments » 

シリーズ 人類と病気 アレルギー(4) なぜ人工物質がアレルギーを引き起こすのか?

みなさん、こんにちは。
シリーズ「人類と病気 アレルギー」、第4回目は「なぜ人工物質がアレルギーを引き起こすのか?」です。

鼻をかむ

* * *

前回記事では、アレルギーが、直接的には体内(=腸壁および鼻粘膜の内側)に侵入したタンパク質を異物と認識することによって起こる、と解説しました。
では、本来入ってくるはずのないタンパク質が体内に入るのはなぜなのか?というと、
タンパク質と結合した人工物質が(直接or起因して)、細胞膜を破壊するからなのです。
今回は、代表的な人工物質を例に挙げ、タンパク質がどのように体内に侵入するのか、その原因構造を解明します。

①花粉症と排ガス

自動車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や黒煙微粒子は活性酸素を持ち、細胞膜を酸化させることがわかっています(http://www.nies.go.jp/kanko/news/13/13-5/13-5-05.html)。

当然細胞は、それを修復するのですが、排ガスが大量に入ってくるために修復が間に合わないと考えられます。
そして、排ガスと花粉が複合分子としてやってきて粘膜にくっつき、大量の活性酸素によって生じた細胞膜の穴から花粉のタンパク質が侵入するのです。穴といっても細胞一つ分より小さい、目に見えないほどの小さなものです。
アジュバントのついた花粉スギ花粉の電子顕微鏡写真。表面に小さな物質が付着しているのがわかります。排気ガスはこのように花粉の表面にくっついて私たちの体内に侵入します。

 

 

 

②食物アレルギー(主に卵)と抗生物質

中国抗生物質抗生物質は家畜が病気にかからない様にえさに混ぜて与えられています。国の検査でも、数日間はその肉に抗生物質が残留することが示され、出荷前の投与を制限するなどしています。その場合も飽くまで残留濃度以下にしようとしているだけで、決してゼロになるわけではありません。更に、鶏の卵となると、毎日産み落とされるもので、抗生物質を断つ運用は困難です。

また、抗生物質が細胞に作用する過程で、活性酸素を産生してしまうこともわかっています。
抗生物質の場合も、結果的には活性酸素の働きを促進し、細胞膜を破壊してしまうのです。
私たちの細胞は、日常的に活性酸素にさらされていますが、酵素による修復機能によってバランスを保っています。
ところが抗生物質の中には、この酵素の働きを抑止してしまうものがあり、結果的に活性酸素による細胞膜破壊が進行して、タンパク質の侵入を許してしまうのです。

③食物アレルギーと農薬

中国農薬農薬の中でも一般的な有機リン系殺虫剤(ex.ジクロトホス)は、それ自体が活性酸素を生じ細胞を破壊します。更に、細胞が細胞膜を修復するための酵素の働きを阻害します。
また、カビキラーなどの家庭用洗剤にも含まれる塩素系の薬剤は、触るとヌルヌルとしますよね。これは、塩素系の物質が手表面のたんぱく質を溶かしているのです。これが体内に入ることで、細胞膜を破壊してしまうのです。

 

 * * *
いかがでしたか?
人工物質が、なぜアレルギーを引き起こしてしまうのか、おわかりいただけましたか?

では、アレルギーの元凶が人工物質であるなら、これからの私たちは、どのように健康を守っていけばよいのでしょうか?
次回は、アレルギーから身を守るには?を、追求していきます!

今回画像は
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20101221/1033996/?SS=expand-life&FD=-638114566
http://eco.goo.ne.jp/news/ecotrend/ecotrend_20100125_164_ep.html
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=46088
http://dontena.doorblog.jp/archives/38008970.html
からお借りしました。

  投稿者 seibutusi | 2014-06-05 | Posted in ⑤免疫機能の不思議, ⑥病気の起源、正体No Comments » 

「かたちから自然の摂理を学ぶ」シリーズ3~樹木を流れる水から樹木のデザインを捉える

 河川のかたちは水の流れを、道路のかたちは車や人の流れを、ラジエターであれば熱の流れを、生物であれば地球上の物質の流れを、より効率的に流すためのデザイン(かたち)に収斂している。

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エイドリアン・ベジャンが唱える「コンストラクタル法則」によれば、樹木は地中の水分を大気に運び、不均衡を均一化するストローのようなものであり、水を運ぶために最も理に適った形状に進化するという。

参考:「かたちから自然の摂理を学ぶ」シリーズ2~樹木が発生するのは水を好むからではない

 

さて、今回は最適な水の流れをつくりだすための樹木デザインについて見ていきます。

まず、樹木の形を考察する前に樹木を流れる2つの流れを把握します。1つは、前述したように、地中から大気中への水の流れ。そして、もう1つは風によって引き起こされる応力の流れ。これは樹木の存続に関する課題といえます

つまり、樹木は内部を通過する水の流れを良くし、吹きつける風に対する強度を備えた構造となる必要があります。

■樹木の根のデザイン                                                                                      

水の流れを追うために、まず根から始めて、根がこの流れをどう処理すべきかを考えます。

ベジャンは根のあるべき姿をこう説明します。

 『流れとかたち』(P.202)より引用開始

私たちが描き出す木の根は多孔性で、様々な深さで水が系に入れるような(あらゆる側からの)横方向の流れと、地中から水を持ち上げられるような縦方向の流れの、二種類の水の流れを可能にするものでなくてはならない。縦方向の流れ(貫通水路)は横方向の流れよりも抵抗性が低い。

地面に近づくにつれて根の図の幅を拡げ、下方のさまざまなアクセスポイントから入ってきて増える一方の水を処理できるようにしなければならない。

多くの地下水を根に取り込んで幹に引き上げる形は、円形、円錐、先が尖った形、丸い形など様々な形が考えられますが、最も抵抗が少ない根全体の形は円錐形(ニンジン形)であると、ベジャンは予測します。さらに水を吸い上げる1本1本の導管は断面が円形で直径が均一なときに最も抵抗が少なく水が流れやすくなります。円形の断面は、あらゆる方向への曲げに対して大きな抵抗力になるというメリットもあるため、風力に対しても適応的です。

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この形はちょうど河川流域の形と似ています。河川流域も縦方向の本流に支流が川岸から横方向に合流するれ根系になっており、水という流動系を一領域から一点に効率的に運ぶには、背後に類似する法則があるということを示唆しています。

■幹と枝のデザイン                                                                                         

次に地上の上部構造をみていきます。

水は上に働き、風に起因する応力は地面へ流れます。幹の中を進む2つの流れのためにふさわし形とはどんな形なのでしょうか。

『流れとかたち』(P.209)

驚くにはあたらないが、私たちが理論に基づいて描き出した幹のデザインは、根のときに得られたものと同じ形になる。今回は下端で太く、高くなるにつれて狭まる。水は途中で低い枝へ分散するので、上に行くほど量が少ないからだ。このデザインは枝にも当てはまる。根や幹と同じで、枝も円錐に近くなるはずだ。

(系は水を吸い上げ、より大きな流路へと吸い込むで)地下に深く潜るほど小さな根が多く見つかるのと同じで、木の上へ行くほど小さな枝が多く見つかる。水を大気中に戻すのには、これが効率的なデザインだからだ。

ベジャンの予測によれば、幹も枝も全て円錐形であることが、水の流れからみても、風力に対応する応力を処理する形としても合理的であると結論づけます。

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また、幹の断面積と枝の断面積も明快なルールが存在し、先端に向かって細くなるのに伴う幹の断面積の減少分は、それぞれの幹の区分から生えている横方向の枝の断面積に等しくなると説きます。

イメージ的には、樹木の幹を100本のストローと見立てるとわかりやすいです。最初の枝で10本のストローが分かれ、残りの幹は90本。二番目の枝は9本のストローに別れ、残りの幹は81本となる。これを繰り返しながら、幹と枝のスケールを構成していく、という感じです。

蛇足ですが、レオナルド・ダ・ヴィンチは緻密な観察から上記の法則を既に発見していたといわれていますが、その法則の背後にある構造(水と応力の流れ)までは鮮明にすることができなかったようです。

ちなみに、幹周りの枝や葉や花びらの配列は、螺旋状に配列され、フィボナッチ数列に則って現れるといわれています。

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写真は松ぼっくりの模様

この数列もルールを暗記(?)するよりも、木や草が大地から大気中へ水を効率的に移動させるのに適している形であるから、と捉えるのがよいと思います。どの枝(にくっつく葉)も大気中へ水を放出しており、水を蒸散する他の枝から一番遠い所に最も乾いた空気があります。つまり、枝同士の干渉を減らすことが水の蒸散に最も適した形となるのです(注)

(注)一般的な説明では、枝や葉の配列は、光合成がしやすいように上下の葉の重なりを極力なくす配列であると説明されます。しかし、太陽の光は、毎時真上から来るわけではないので、(光合成がしやすい形態に収斂したという点は間違いではないですが)説明としてはやや疑問が残ります。

もちろん、ベジャンが予想する樹木デザインやフィボナッチ数列は外的要因を限定した時に成立する法則です。現実の樹木は、日射量や気温、風特性、周辺の樹木との相互作用などの複数の物理的要因によって、多様な形態が現れる、というのは外で観察してみて理解するのがよいと思います。

コンストラクタル法則は、多様性が全面に打ち出される生物の背後に潜む主構造を理解するのに役立つ認識である、と捉えるのが良いと思います。

 

 

 

  投稿者 seibutusi | 2014-06-03 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

米国人がホラー映画に支出するお金は1年間に5億ドル~人が生み出した恐怖という感覚~

みなさんこんにちは。
ここでは、人がつくり出した恐怖という感覚について、シリーズで調べていこうと思います。
第一回目は恐怖の起源と変化について記載させていただきます。

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Prologue

00|ホラー映画=恐怖を体験したいという欲求。。。

米国人がホラー映画に支出するお金は1年間に5億ドルとされています。日本においてもホラー映画は、毎年新作が制作され、ホラーというジャンルが欠かせないものとして定着しています。
映画に限らず、ホラーゲームやお化け屋敷などのアトラクションにおいても同じことがいえるでしょう。
これらは、人が意図的に恐怖を感じたい思い、自発的に恐怖体験を促している事になります。
なぜ、人は恐怖を自ら感じたいと思うのでしょう??

 

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01恐怖の起源。。。。。

恐怖の誕生は、扁桃体の誕生とも言えるでしょう。扁桃体とは、脳の中にある渦巻き状の神経細胞の集まりで、一般的にこの扁桃体が機能しなくなると、人間は恐怖を感じることができなくなるとされています。
生物はこの扁桃体と呼ばれる部分を進化させ、高い危険逃避(恐怖から逃れる)能力を身につけることで繁栄してきました。この扁桃体の歴史は古く、魚類の段階から近いものが形成されており、人類に限らず多くの生物が有するものでもあります。
しかし、上記のような自発的に恐怖体験を促す行動をとるのは、人類特有の物ではないかと思います。

02恐怖という感覚の変化。。。。。。      

ホラー映画の始まりは、エジソンが発明した覗きからくり式の「キネトスコープ」を用いて、1895年 アルフレッド・クラークによる『スコットランドの女王メアリーの処刑』で、女王メアリーの首がはね落ちるシーンが最初の残酷映像と言われています。
しかし、ホラー映画のように、人が自発的に恐怖体験を促す行為を行うようになったのは、さらに昔からだと考えられます。
それは、通過儀礼(イニシエーション)と呼ばれるものです。主に成人、結婚、死などの人間が成長していく過程で、次なる段階の期間に新しい意味を付与する儀式のようなものです。

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この儀礼は、文化が発達していない、原始的な時代から行われていた行為であり、現在でも一部の国や未開部族の中で行われています。その儀礼には、『抜歯・ピアッシング・バンジージャンプ・猛獣との格闘』といった耐え難い苦痛など、恐怖を伴うものが多くあり、これも自ら恐怖体験を促すものであると考えられます。このイニシエーションについての考えをフランスの民俗学者ファン・ヘネップの著書『通過儀礼』から一部を引用します。

イニシエーションは、『死と再生』の象徴的儀礼として展開する。つまり、今まで親から保護され社会から子どもとしてある程度の甘えが許されていた『子どもの社会的立場にある自分』をいったん殺して、『勇気と忍耐のある自立した一人前の成人』として生まれ変わり再生するのである。

何故、その様な苦痛や恐怖を感じる行為を通過儀礼として行うのかの説明は幾つかあるが、総じて言えば、『所属共同体を運営・防衛していく重い責任の自覚を強めること。共同体の生産労働・戦闘活動・家庭の家父長といった中核的役割を担う成人男子相互の連帯感を強めること。それらの結果として共同体の存続・発展・拡大を実現すること。』と言えるだろう。(引用終了)

上記の内容から、原始的な恐怖体験は、所属する共同体を防衛していく責任を自覚すること。また、仲間として認められることを目的に恐怖と自ら対峙していたことがわかります。

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03|
今後...

このように、恐怖という感覚は古くは危険逃避からはじまり、共同体の形成などへと進展していきました。いずれも生物が繁栄していくうえで重要な内容であり、恐怖という感覚が人類史の中ではかかせない位置づけがなされていることがわかります。

では、なぜこのような儀礼なしに共同体を形成している現代においても、ホラー映画のような擬似的な恐怖体験が存在するのでしょうか?

今後は、この擬似的な恐怖体験も含め、起源や変遷についてもう少し詳しく調べていきたいと思います!!

  投稿者 seibutusi | 2014-05-21 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

シリーズ 人類と病気 アレルギー(3) アレルギーを引き起こす原因構造

 前回の記事(リンク)でアレルギーは先進国病であり、原因は人工物質ということが状況証拠から分かりました。今回は、アレルギーの原因が人工物質であるという原因構造を解明していきたいと思います。

 

アレルギーイラスト

(さらに…)

  投稿者 honda-y | 2014-05-11 | Posted in ⑤免疫機能の不思議, ⑥病気の起源、正体1 Comment » 

「右脳・左脳」 機能分化の真実を探る その2

みなさんこんにちは。
前回記事(2013年12月)から随分間があいてしまいましたが、『「右脳・左脳」機能分化の真実を探る』シリーズ第二回です。

前回記事では、生物史上の右脳・左脳分化に注目し、「危機逃避=外圧適応戦略」として右脳・左脳分化が発生したこと、そして右脳が天敵からの回避と仲間認識左脳がパターン化した日常的な行動を担っていること、右脳は全体視を行い、左脳は部分視・中心視を行うことを明らかにしました、

このように生物史上、右脳・左脳は意味があって分化したと言えますが、前回記事でも書いたように、現在の教育論・ビジネス能力開発などでよく言われるような「左脳=観念的・論理的、右脳=直感的・創造的」と言ったとらえ方=認知的機能分化論には私は極めて懐疑的です。
やはり前回記事で書きましたが、「右脳・左脳」はあくまで一体的かつ全体的に機能していると言うのが事実であり、教育論等で言うような「右脳開発」のような考えは意味を無しません。
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画像はこちらから頂きました→虚構の中の真実の在る処

今回記事では、このような右脳・左脳の認知的機能分化の事実について見てみたいと思います。

脳の両半球の機能差に焦点をあてた研究は以前からたくさんあって、代表的なものにガザニガとルドゥー、スプリンガーとドイッチュ、ブライデンそしてヤングらの研究がある。これらの研究からわかったことは、一部の例外を除いて、左右半球の機能差は予想に反して小さいものである。という事実である。もちろん脳の機能という観点からは、理論的な関心は非常に大きいものなのだが、いわれたほどの違いはないということだ。

巷の右脳・左脳相違説が立てている機能の厳密な分類(たとえば芸術性は右脳にあって、左脳には芸術的才能が潜んでいないといった分類)すらも成立していないのである。正確には特定の知的作業に関して、一方の半球の方が他方よりもすぐれてはいるが、いずれもおこなうことはできる、といった連続的な機能差があるくらいなのだ。

両半球の差異に関する研究から、一般的に目で単語を読む場合や耳で話を聞く場合などの、言語情報による刺激がからんだ仕事に関しては、左脳の方が右脳よりもすぐれていることが判明している。この事実は脳に損傷を受けた被験者を調べることによってわかった。言語野と呼ばれる左脳の特定部分に障害を受けると、失語症という機能障害にかかるからだ。この失語症とは、話すことができなかったり、言葉を聞いても理解できなかったり、あるいは両方できない症状を持つ。右脳に損傷を受けて失語症になることは、非常に希ではあるがないわけではない。普通の人間を被験者にして研究しても、やはり左脳のほうが言語刺激の処理をするには右脳より適していることがわかる。つまり被験者の左脳に言語情報を流したほうが(右側の視野に単語をみせたり、右耳だけに音を流す)、右脳に流す(左側の視野に単語をみせたり、左耳だけに音を流す)よりも判断するまでの反応時間は短くなるのである。短いといってもその差は微々たるもので、ほとんどの研究で100ミリ秒単位の違いしかでていない。つまり右脳にも言語情報を処理する能力はあるわけで、ただ刺激を処理する手際の点で左脳のほうがすぐれている、というだけの話なのである。

ほとんどの人間において、右脳だけではできそうにない作業が一つある。それは話すことだ。もっと正確にいうと、右脳は音声を伝達する筋肉を制御することができない。それゆえ右脳だけでは唖になってしまうわけだ。研究者レベルの文献で左右半球の機能がはっきりとわかれるのは、この発生能力についてだけである。だからといって、機能相違説の疑似科学に根拠を与えることにはならない。この機能分化は筋肉制御にかかわるあくまでも運動機能の分化であり、一般にいわれるような認知的な機能の分化ではないからだ。同じような発声筋肉の運動制御という点における左右脳半球の機能の差異は、さえずる鳥の多くの種類に認められている。

脳腫瘍や脳卒中などの神経病理上の疾患のため、脳に障害を生じた患者に創造力や芸術性の面でどのような変化があったかを調べることは可能である。このような患者を調査した結果、絵や音楽の才能や創造性が右脳に宿っているという俗説はまったくのでたらめであることが判明した。ガードナーがこうした研究を手際よくまとめている。音楽的才能や創造性は、右脳と左脳のどちらに損傷を生じても悪い影響を受ける。美術の才能についても同様のことがいえる。ところが作文能力や創作の才能は、右脳よりも左脳に障害を生じた時に悪影響が現れる。もちろん作文の基本は言語能力にかかわることだからである。
井山弘幸訳 : 『ハインズ博士「超科学」をきる』 より引用

 

右脳型・左脳型という迷信は1800年代からあります。片側の脳にダメージを受けた人が特定の能力を失ったことに注目したドクターが言い始めた説です。しかし、脳をスキャンしてみると、右脳と左脳は当初考えられていたよりももっと複雑にリンクしていることがわかりました。つまり、情報を整理して問題解決しようとしているときも、クリエイティブな思考が必要なタスクを行っているときにも、脳の片側だけではなくて両方を使っていることがわかったのです。ただ、左脳が右半身、右脳が左半身をコントロールするというのは正しい説明なので、右脳を損傷すると左半身に麻痺が出るというのは本当です。

私たちの経験は複雑に編み込まれたタペストリーのようになっているのですが、これは記憶に基づいて保存されているのではなさそうです。むしろ、スペースの関係で圧縮され、大事なポイントのみ、要約された形(「ディナーは期待はずれだった」)になっていたり、キーポイントの集約(ステーキ固い、ワインにコルク、横柄なウェイター)だったりします。
後日、その記憶をもっと詳しく思い出したくなったとき、脳は経験の集まったタペストリーを編み直すのですが、そのときに少しだけ記憶を偽造するようにできています。この偽造は実にスムーズに、自然に行われるので、私たちはあたかもそれが実際に経験したことで、細かいところまですべて頭に入っていたと思い込んでしまうのです。

1998年に、アメリカのサテライト放送の広告が全米規模の雑誌に載ったのですが、そこに脳の絵が描かれていました。絵の下のキャプションには、「あなたは自分の可能性のうち11%しか使っていない」とあります。また、同じ年に放送されたABCテレビの秋の新番組「The Secret Lives of Men」の番宣では、画面いっぱいに「男は脳のたった10%しか使っていない」と表示されたのです。
PETスキャンとMRIで脳の働きを観察してみると、頭を使う複合的な活動には脳の広い範囲が使われていて、一日を通して脳は全体的に使われていることがわかりました。脳の全てが重要であることは、ほんの一部がダメージ受けただけでも障害が起こることからも証明されています。しかし、脳は補完機能を持っているのです。
頭を使う活動、たとえば新聞を読む、演劇を見に行く、チェスをするといったことを生前好んでいたお年寄りの脳を解剖した結果、典型的な認知症による脳のダメージがあったとしても、アルツハイマーを発症しにくいということがわかりました。つまり、脳の機能は使わなければ衰えるのです。脳に刺激を与え続けている人は補完機能も向上するので、認知症やアルツハイマーが見られても、見かけ上は普段と同じように脳が機能します。
以上、LIFE HACKERより引用

 

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 03月号 [雑誌]/著者不明より左脳・右脳は存在しない、という科学的な研究によって真理が覆ったことを多くの人たちは知らずにいる、というセンセーショナルな記事です。

左脳・右脳モデルの応用例、左脳をオフにして、右脳で自由な発想をしようという手法「ブレーンストーミング」があります。これは、まったく効果的でも効率的でもない、というのが最近明らかになってきてます。別途、最近出版された、マッキンゼーでえらかった人たちが書いた「ブレーンステアリング」でも、同様のことが記載されています。

新しい脳モデルは、98年に提唱された、「知的記憶」というものでした。

どのような思考においても、「分析」と「直感」が脳内で協力して働いている、あらゆる思考には「学習」と「想起」があるだけで、左脳も右脳もない、というものです。

新しい情報は、古い棚にあるもののどれと合致するか、検索され、組み合わされ、収納されます。この検索が「直観(想起)」であり、分類→収納が「分析(学習)」です。

また、もっともアイデアが生まれるのが、シャワーを浴びているときや、眠りにつくときだったりするのはなぜか?脳がリラックスしている状態、という、いわゆる「セルフ1」=雑念=欲、、、などの思考の害虫に侵されていない、まっさらな状態で、それが最も起こりやすいということです。

多くのインプットをしておいて、脳環境をよく(要は集中したりリラックスしたりする)することで脳の生産性が高まるということだと理解しています。
以上、U1STYLEより引用

 

以上からまとめると、右脳・左脳の認知的機能分化は以下のようにまとめられます。

①右脳・左脳は左半身、右半身とそれぞれ機能的に接続されているが、認知機能分化は行っていない。(言語情報への刺激への対応は左脳が若干「優れる」が右脳も行っている)

②認知機能上、右脳・左脳は複雑にリンクしており、全体で機能している
 全体を使って「分析」と「直感」が行われている。

いかに「右脳開発」などの教育論やビジネス能力開発が、事実に基づいていないか解って頂けたでしょうか。

繰り返しになりますが、生物史上、右脳・左脳の分化は、「危機逃避=外圧適応戦略」として発生しました。そういう意味では右脳・左脳が分かれていることには大きな意味があります。

次回記事では、この外圧適応と右脳・左脳分化について、より深めて追求します。お楽しみに!

 

 

  投稿者 seibutusi | 2014-05-06 | Posted in ④脳と適応No Comments »