2014-04-01

君もシャーマンになれるシリーズ30 ~古代人は「幻覚」をみていた~

ラスコーの壁画

前回(こちら)の「人類の観念(創造性)は「ドーパミン」によって造られた」に続いて、今回は始原人類の脳について考えていきます。

生きていく上で過酷な環境にあった始原人類は、身体や生命の危機に際して現代人が体験する幻覚と同様な幻覚をみていた可能性が高いと考えられます。果物が豊富な樹上生活を失い、ビタミンC不足に陥った始原人類の脳は、ドーパミンからノルアドレナリンを生成できずに、幻覚を誘因しやすいドーパミン過多の状態に陥っていた可能性が高いのです。また、ドーパミン優位の大脳を発達させてきた人類の脳は、初期段階ではドーパミン系の新しい大脳と古い脳との連係も未発達で不安定だった可能性があります。

なお、ドーパミン優位の脳は、集中力を高めて脳を覚醒させ、ストレスの解消や楽しさ・心地よさといった感情を生み出す働きがありますので、そのことも生存には欠かせない適応的な要素の一つだったことでしょう。生存をかけた適応とドーパミン優位の人類の大脳の発達の必然性はここにあるのかも知れません。人類は「解脱」(苦からの脱却)なしには生きられないものなのですが、その理由もドーパミン優位の大脳とその形成過程に見いだせます。

さて、最近あった研究に、「古代壁画の絵は麻薬で体験する幻覚とよく似ており、古代人は儀式等で麻薬を使っていた可能性がある。」というものがありました。ただし、古代人は麻薬でラリッていたのではなく、「幻覚をみやすい脳を持っていた」というのが正しいと考えます。そして、古代壁画の絵が現代人のみる幻覚とよく似ているということは、古代人は現代人と同じような幻覚を見ていたということを示唆します。

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洞窟壁画は我々の偉大なる先祖が麻薬でヨタって描いていたことが判明

洞窟絵にはどこか現実離れした、この世のものとも思えぬサイケデリックな躍動感がありますが、それもそのはず…ドラッグでトリップして見える絵そっくりなことが東大の調べで明らかになりました。

     古代人の壁画は幻覚様だ

東京大学池上高志教授と池上ラボで去年までポスドクだったトム・フローズさん(現メキシコ国立自治大学研究員)、現ポスドクのアレクサンダー・ウッドワードさんが6月に発表した論文(こちら)によりますと、4万年を超える歳月の間に残された壁画をつぶさに調べてゆくと、そこに看過できないパターンがあるのだそうな。

ぐるぐる巻きのラビリンスのような模様。これが何千マイルも離れた場所で多発生的に残ってるのは単なる偶然ではなく、現代人が麻薬の幻覚症状の実験で見る模様そのものだったのです。原始人の共通点は想像以上というか、みんなハイになるのが好きだったんですね。

原始文明における麻薬使用に関する既存の調査では、精神活性作用をもつ様々な植物を大量摂取すると脳内に化学反応が起こり、脳の細胞構造によく似た「神経パターン」が見えることがわかっています。これが俗に言う「チューリング不安定性(拡散に誘導された不安定性)」で、例えばこんなかたち。

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これが洞窟絵そっくりんこなんざますよ。

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       縄文土器やナスカの地上絵にも同じようなパターンが・・・(引用外の追記)

研究論文では、たぶん麻薬とかでスピリチュアルな境地に至る儀式に参加していたのではないか、とあります。ドラッグでハイになったときの絵は普通の絵とは別格に扱われた。そして時と場所を超えて何度も繰り返し描かれた。「変性意識状態でこの種の視覚パターンが見えると、人はそれをあたかも重要な意味を帯びてるもののように体で直に感じる。つまり何か意味あるものとして直に受け止める、だから儀式で使うモチーフとして突出したのではないか」というんですね。

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幻覚誘引ドラッグが初期洞窟絵と無関係じゃなさそうだという話は今回が初めてではありませんが、ここまで科学的に厳密なのは初めて。

2011年にも「6000年前のスペインの洞窟絵はマジックマッシュルームの幻覚そのものだ」という科学論文が発表になってちょっとした話題になりました。サハラ砂漠の岩絵からも同様の仮説が導き出されており、例えばタッシリの岩絵にはキノコを持って走る人たちや全身にキノコを生やした化身の姿も残っています。

今回の研究はしかし、太古の岩絵を既存の幻覚症状の研究に結びつけるだけじゃなく、そういうドラッグ摂取で活性化される脳の部位に幻覚を結びつけてマッピングしているところがポイントで、それが科学的と言われる所以です。発見のベースがニューロ・フェノメノロジー(神経現象学)の基礎概念なのですね。ニューロ・フェノメノロジーとは脳の働きと人の体験の相関関係の学問のことです。1万年前の人の脳内まではスキャンできないけど、1万年前の人の頭から出た像と現代人が幻覚状態で描くアートの類似点を探すことはできるというわけですね。

論文では、洞窟生活の古代人は麻薬でスピリチュアルな境地に至る儀式に参加していたのではないか、と考察されているようです。無論、その可能性は否定できませんが、場所の違う複数の壁画等に共通した傾向であることから、麻薬以外の要因で幻覚を体験していた可能性が高いと考えられます。

ビタミンC不足に陥ってドーパミン過多となった始原人類の未発達の脳が幻覚を見やすい状態であったことに加えて、飢餓や外敵などによる危機が常態化した環境において、生命の危機に際して様々な神経伝達物質が放出されて幻覚を見る脳の特徴から、始原人類の脳が幻覚をみていた可能性が高いと考えます。

なお、引用文中に、「変性意識状態でこの種の視覚パターンが見えると、人はそれをあたかも重要な意味を帯びてるもののように体で直に感じる。つまり何か意味あるものとして直に受け止める、だから儀式で使うモチーフとして突出したのではないか」とありますが、幻覚あるいは幻覚で見た対象に対して、「何かの意味を見いだす」ことは、観念が生まれる以前の人類にとって重要な意味を含んでいると考えられます。おそらく「観念」の始まりは本能的な深い地平で生起する「欠乏」やその欠乏に対する「可能性」を揺さぶるような精神的な高ぶりが起点となっていると想像します。そして、それは間違いなく自然と人類の関係の中から生まれていることでしょう。なぜならば、人類は自然と仲間が共存すること、自然の中で仲間と共に生き続けることが存在の全てであったわけですから・・・。なお、このことに関しては、次回にもう少し具体的に見ていくことにします。

今回見てきた洞窟壁画は、現代人の目から見ても芸術的で、創造的な造形だと捉えられます。理屈では理解できない超人的な感性を秘めた古代人の姿が浮かんできます。ある意味(現代人からみて)、「天才」だったのかも知れません。

ちなみに、「狂人と天才は紙一重」とは良く言われてきたことですが、このことは今まで見てきた脳の特徴からも頷けます。人類が発達させた前頭葉に興奮性のドーパミンが発動することで、脳が自発的に活動して人類特有の創造性が発揮される構造にあることから、いわゆる「天才」と呼ばれる人々はドーパミンを強く、頻繁に分泌している可能性が高いと考えられます。その創造的な状態=脳内でドーパミンを多く使用している状態がある一線を越えてしまうと、状況が一転し、幻覚をみて暴走する脳になってしまうと考えられます。一説では、神経伝達物質が過剰に放出されることで、それに反応する脳の受容体が耐えられなくなり、最後には受容体自身が自死し、分裂病的になってしまうともいわれています。

既成概念や既成の体験にとらわれない発想やひらめきを得ている「天才」が、幻覚をみて統合失調状態に陥った例は数多くあります。狂気を内在した天才と呼ばれるムンク、ゴッホ、シューマン、モーッアルト、チャイコフスキー、トルストイ、カフカ、ニーチェ、ルソー、芥川龍之介、夏目漱石・・・

なお、統合失調症は人種を問わず一律に約1%という高率で発病しています。これはこの症状が人種に分離する前からあった源初的なものであることを示しています。

壁画から想像すると、観念を持たない始原人類の見る幻覚は、仲間の姿であったり、自然に生きるありがたい動物であったり、自然の造形であったりしたことでしょう。それらは、恐怖や苦痛を和らげるものであったでしょうし、希望や活力や充足に基づくものであったことでしょう。そうでなければ、幻覚を見ることが進化的に適応的だったとはいえません。幻覚を見ることが種として適応的であったからこそ、人類が今まで生き残ってこれたのです。ドーパミンには脳を覚醒させ、集中力を高め、ストレスの解消や楽しさ・心地よさといった感情を生み出す働きがあります。そのことも極限状態の人類には必要かつ適応的だったと考えられます。

脳にとって幻覚をみることは、脳が自発的に回路を活動させることですが、脳の神経回路は使えば使うほど強化される性質をもつと同時に、活動する脳の部位に送り込まれる血液や栄養も増え、脳の成長を促すと考えられます。ビタミンC不足に陥ってドーパミン過多となった大脳、特に前頭葉が人類特有の拡大と進化を果たした理由の一つがここにあると考えられます。要するに、ビタミン不足→ドーパミン過多→幻覚による回路の活性化→ドーパミン優位の大脳、特に前頭葉の発達、という関係が成立するのです。

幻覚と人類の新しい脳の関係が見えてきたところで、いよいよ次回は、幻覚から観念が生み出された過程とその背景を大胆に展開します。幻覚をみる人類は、あるとき「特別な意味を持つ幻覚」を見て、それに突き動かされるように「観念」を登場させたと考えられるのです。

List    投稿者 cosmos | 2014-04-01 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 2310 | 2014.04.03 15:17

 果実等を摂取できないかたわの猿(木に登れない猿)人類が、突然、ビタミン不足に陥ると、地上生活という壮絶な外圧状況に晒されることも相まって、緊張状態と危機状況のため、ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン→何らかの原因で酸化=活性酸素が体内充満→アドレノクロム(酸化アドレナリン物質)→幻覚症状を引き起こした結果、このような幻想文化が残されたとも考えられます。
 初期段階では、このような状況であったのでしょう。しかし、その後、生存を掛けて、踊りや性解脱をもって幻覚をみて自然を注視していた人類が自然の背後に見た精霊は、このような状況から生まれたのでしょう。
 さらに、洞窟に隠れ住むしかなかった人類は、食欠乏を満たされることなく、動物の食べ残した植物や残飯を食していたのだろうと思います。幻覚や麻薬症状、中毒などを引き起こす植物などを食べざるを得なかったのだろうと思います。
 こうした外圧状況と食と性の関係も含み、人類は幻覚を見ることがあったのでしょう。しかし、幻覚といえども、自然に同化した意識の中では、自然の摂理に沿った予言や予想、神の声を看取したのでしょう。現実そのものと整合性が高く、やがて人類のゆく方向性を委ねるようになったのでしょう。
 それが、シャーマンであり、加持祈祷であり、卜占や亀卜、鬼道をよくした卑弥呼へと繋がっていきます。 また、観念が発達するにつれて、幻覚を引き起こし易い植物も発見され、その秘儀を持った民族は、大きな力(=制覇力)をもったのでしょう。また、麻薬などの物質は、痛みの緩和などの医療にも使われることで、その秘儀の意味は大きかったと思います。後に民を統合しえる力になったのだろうと思います。
 日本の氏族である葛城氏、賀茂氏、秦氏、卜部、忌部氏、藤原氏、中臣氏などの祭祀族は、このことをよく承知していたのだろうと思います。

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