2014-05-06

「右脳・左脳」 機能分化の真実を探る その2

みなさんこんにちは。
前回記事(2013年12月)から随分間があいてしまいましたが、『「右脳・左脳」機能分化の真実を探る』シリーズ第二回です。

前回記事では、生物史上の右脳・左脳分化に注目し、「危機逃避=外圧適応戦略」として右脳・左脳分化が発生したこと、そして右脳が天敵からの回避と仲間認識左脳がパターン化した日常的な行動を担っていること、右脳は全体視を行い、左脳は部分視・中心視を行うことを明らかにしました、

このように生物史上、右脳・左脳は意味があって分化したと言えますが、前回記事でも書いたように、現在の教育論・ビジネス能力開発などでよく言われるような「左脳=観念的・論理的、右脳=直感的・創造的」と言ったとらえ方=認知的機能分化論には私は極めて懐疑的です。
やはり前回記事で書きましたが、「右脳・左脳」はあくまで一体的かつ全体的に機能していると言うのが事実であり、教育論等で言うような「右脳開発」のような考えは意味を無しません。
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画像はこちらから頂きました→虚構の中の真実の在る処

今回記事では、このような右脳・左脳の認知的機能分化の事実について見てみたいと思います。

脳の両半球の機能差に焦点をあてた研究は以前からたくさんあって、代表的なものにガザニガとルドゥー、スプリンガーとドイッチュ、ブライデンそしてヤングらの研究がある。これらの研究からわかったことは、一部の例外を除いて、左右半球の機能差は予想に反して小さいものである。という事実である。もちろん脳の機能という観点からは、理論的な関心は非常に大きいものなのだが、いわれたほどの違いはないということだ。

巷の右脳・左脳相違説が立てている機能の厳密な分類(たとえば芸術性は右脳にあって、左脳には芸術的才能が潜んでいないといった分類)すらも成立していないのである。正確には特定の知的作業に関して、一方の半球の方が他方よりもすぐれてはいるが、いずれもおこなうことはできる、といった連続的な機能差があるくらいなのだ。

両半球の差異に関する研究から、一般的に目で単語を読む場合や耳で話を聞く場合などの、言語情報による刺激がからんだ仕事に関しては、左脳の方が右脳よりもすぐれていることが判明している。この事実は脳に損傷を受けた被験者を調べることによってわかった。言語野と呼ばれる左脳の特定部分に障害を受けると、失語症という機能障害にかかるからだ。この失語症とは、話すことができなかったり、言葉を聞いても理解できなかったり、あるいは両方できない症状を持つ。右脳に損傷を受けて失語症になることは、非常に希ではあるがないわけではない。普通の人間を被験者にして研究しても、やはり左脳のほうが言語刺激の処理をするには右脳より適していることがわかる。つまり被験者の左脳に言語情報を流したほうが(右側の視野に単語をみせたり、右耳だけに音を流す)、右脳に流す(左側の視野に単語をみせたり、左耳だけに音を流す)よりも判断するまでの反応時間は短くなるのである。短いといってもその差は微々たるもので、ほとんどの研究で100ミリ秒単位の違いしかでていない。つまり右脳にも言語情報を処理する能力はあるわけで、ただ刺激を処理する手際の点で左脳のほうがすぐれている、というだけの話なのである。

ほとんどの人間において、右脳だけではできそうにない作業が一つある。それは話すことだ。もっと正確にいうと、右脳は音声を伝達する筋肉を制御することができない。それゆえ右脳だけでは唖になってしまうわけだ。研究者レベルの文献で左右半球の機能がはっきりとわかれるのは、この発生能力についてだけである。だからといって、機能相違説の疑似科学に根拠を与えることにはならない。この機能分化は筋肉制御にかかわるあくまでも運動機能の分化であり、一般にいわれるような認知的な機能の分化ではないからだ。同じような発声筋肉の運動制御という点における左右脳半球の機能の差異は、さえずる鳥の多くの種類に認められている。

脳腫瘍や脳卒中などの神経病理上の疾患のため、脳に障害を生じた患者に創造力や芸術性の面でどのような変化があったかを調べることは可能である。このような患者を調査した結果、絵や音楽の才能や創造性が右脳に宿っているという俗説はまったくのでたらめであることが判明した。ガードナーがこうした研究を手際よくまとめている。音楽的才能や創造性は、右脳と左脳のどちらに損傷を生じても悪い影響を受ける。美術の才能についても同様のことがいえる。ところが作文能力や創作の才能は、右脳よりも左脳に障害を生じた時に悪影響が現れる。もちろん作文の基本は言語能力にかかわることだからである。
井山弘幸訳 : 『ハインズ博士「超科学」をきる』 より引用

 

右脳型・左脳型という迷信は1800年代からあります。片側の脳にダメージを受けた人が特定の能力を失ったことに注目したドクターが言い始めた説です。しかし、脳をスキャンしてみると、右脳と左脳は当初考えられていたよりももっと複雑にリンクしていることがわかりました。つまり、情報を整理して問題解決しようとしているときも、クリエイティブな思考が必要なタスクを行っているときにも、脳の片側だけではなくて両方を使っていることがわかったのです。ただ、左脳が右半身、右脳が左半身をコントロールするというのは正しい説明なので、右脳を損傷すると左半身に麻痺が出るというのは本当です。

私たちの経験は複雑に編み込まれたタペストリーのようになっているのですが、これは記憶に基づいて保存されているのではなさそうです。むしろ、スペースの関係で圧縮され、大事なポイントのみ、要約された形(「ディナーは期待はずれだった」)になっていたり、キーポイントの集約(ステーキ固い、ワインにコルク、横柄なウェイター)だったりします。
後日、その記憶をもっと詳しく思い出したくなったとき、脳は経験の集まったタペストリーを編み直すのですが、そのときに少しだけ記憶を偽造するようにできています。この偽造は実にスムーズに、自然に行われるので、私たちはあたかもそれが実際に経験したことで、細かいところまですべて頭に入っていたと思い込んでしまうのです。

1998年に、アメリカのサテライト放送の広告が全米規模の雑誌に載ったのですが、そこに脳の絵が描かれていました。絵の下のキャプションには、「あなたは自分の可能性のうち11%しか使っていない」とあります。また、同じ年に放送されたABCテレビの秋の新番組「The Secret Lives of Men」の番宣では、画面いっぱいに「男は脳のたった10%しか使っていない」と表示されたのです。
PETスキャンとMRIで脳の働きを観察してみると、頭を使う複合的な活動には脳の広い範囲が使われていて、一日を通して脳は全体的に使われていることがわかりました。脳の全てが重要であることは、ほんの一部がダメージ受けただけでも障害が起こることからも証明されています。しかし、脳は補完機能を持っているのです。
頭を使う活動、たとえば新聞を読む、演劇を見に行く、チェスをするといったことを生前好んでいたお年寄りの脳を解剖した結果、典型的な認知症による脳のダメージがあったとしても、アルツハイマーを発症しにくいということがわかりました。つまり、脳の機能は使わなければ衰えるのです。脳に刺激を与え続けている人は補完機能も向上するので、認知症やアルツハイマーが見られても、見かけ上は普段と同じように脳が機能します。
以上、LIFE HACKERより引用

 

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2012年 03月号 [雑誌]/著者不明より左脳・右脳は存在しない、という科学的な研究によって真理が覆ったことを多くの人たちは知らずにいる、というセンセーショナルな記事です。

左脳・右脳モデルの応用例、左脳をオフにして、右脳で自由な発想をしようという手法「ブレーンストーミング」があります。これは、まったく効果的でも効率的でもない、というのが最近明らかになってきてます。別途、最近出版された、マッキンゼーでえらかった人たちが書いた「ブレーンステアリング」でも、同様のことが記載されています。

新しい脳モデルは、98年に提唱された、「知的記憶」というものでした。

どのような思考においても、「分析」と「直感」が脳内で協力して働いている、あらゆる思考には「学習」と「想起」があるだけで、左脳も右脳もない、というものです。

新しい情報は、古い棚にあるもののどれと合致するか、検索され、組み合わされ、収納されます。この検索が「直観(想起)」であり、分類→収納が「分析(学習)」です。

また、もっともアイデアが生まれるのが、シャワーを浴びているときや、眠りにつくときだったりするのはなぜか?脳がリラックスしている状態、という、いわゆる「セルフ1」=雑念=欲、、、などの思考の害虫に侵されていない、まっさらな状態で、それが最も起こりやすいということです。

多くのインプットをしておいて、脳環境をよく(要は集中したりリラックスしたりする)することで脳の生産性が高まるということだと理解しています。
以上、U1STYLEより引用

 

以上からまとめると、右脳・左脳の認知的機能分化は以下のようにまとめられます。

①右脳・左脳は左半身、右半身とそれぞれ機能的に接続されているが、認知機能分化は行っていない。(言語情報への刺激への対応は左脳が若干「優れる」が右脳も行っている)

②認知機能上、右脳・左脳は複雑にリンクしており、全体で機能している
 全体を使って「分析」と「直感」が行われている。

いかに「右脳開発」などの教育論やビジネス能力開発が、事実に基づいていないか解って頂けたでしょうか。

繰り返しになりますが、生物史上、右脳・左脳の分化は、「危機逃避=外圧適応戦略」として発生しました。そういう意味では右脳・左脳が分かれていることには大きな意味があります。

次回記事では、この外圧適応と右脳・左脳分化について、より深めて追求します。お楽しみに!

 

 

List    投稿者 seibutusi | 2014-05-06 | Posted in ④脳と適応No Comments » 

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