2019-03-07

細胞が音を聴く? -音により細胞に遺伝子応答が起こる可能性を示す-

音(周波数情報)は耳の専用神経細胞が感知して大脳に知らせるのだから感知できる周波数(20~20000HZ)以外は認識できないとおもっていました。

しかし最近のCD音楽で、人間の聴覚範囲を超える20000HZ以上の周波数をカットして録音した所、違和感を感じる人が多くいたそうです。

又人は、音について音楽治療や癒し効果があったり、無音響室では精神不安になります。

この様な事象から人の音との関係はもっと深い関係があるのではと考えていた所、

「細胞によっては特定の遺伝子群のはたらきが抑制されることを発見しました。」との驚くような記事が有りました。

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細胞が音を聴く? -音により細胞に遺伝子応答が起こる可能性を示す-

2018年02月01日

 粂田昌宏 生命科学研究科助教、吉村成弘 同准教授らの研究グループは、可聴域の音に対して細胞レベルで遺伝子応答が起こることを示しました。生命と音との根本的な関係の解明が期待されます。

本研究成果は、2018年2月1日午前4時にオンライン学術雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。

研究者からのコメント

 これまで音(可聴域音波)は、耳などの感覚器によって受容され、脳によって統合解釈されることで、はじめて生命にとって意味のある情報になるものと捉えられてきました。本研究では、この「常識」にチャレンジし、音が直接細胞に作用して遺伝子応答を引き起こすことを示す結果を得ています。今後も、生命にとって音とは何なのか、独自の切り口から考えていきます。

概要

音は、人をはじめとする動物個体にとって、外界の認識やコミュニケーションのツールとして非常に重要な役割を果たします。その個体レベルでの重要性は誰もが認めるものであるのに対し、細胞レベルで音を認識する仕組みがあるかどうかについては、これまでに科学的な検証がほとんどなされていませんでした。

そこで本研究では、可聴域音波が細胞レベルでの応答を引き起こすかどうかを、細胞の遺伝子応答に着目して追究しました。様々な種類の細胞に様々な音波を当て遺伝子解析を行ったところ、細胞によっては特定の遺伝子群のはたらきが抑制されることや、その応答レベルには音の大きさや波形などの特徴が大きく影響することを明らかにしました。中には抑制応答が見られない種類の細胞もあることから、分化など細胞の状態によって、音に対する応答の仕方が異なると考えられます。

今後、さまざまな実験を通して検証を進めることで、細胞が持つ音波に応答する仕組みを明らかにするとともに、音が生命に与えうる影響を多角的に考察していきます。

詳しい研究内容について

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List    投稿者 seibutusi | 2019-03-07 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-03-01

脳と記憶、記憶のされ方

 

「脳と記憶、記憶のされ方」について

・記憶の仕組み神経細胞には、細胞体の周りにある短いヒゲの「樹状突起」と、細胞体からのびた長いヒゲの「軸索」がある。軸索は長いもので数十センチもあり、別の神経細胞の樹状突起と繋がっていて、複雑な神経細胞ネットワークを形成している。物を覚えるなどで脳を使っていると、神経細胞ネットワークが太くなったり、機能を高めたり、新しく形成されたりする。このネットワークこそが「記憶」の正体。

・短期記憶から長期記憶への移行記憶が持続するためには、それが短期記憶を介して固定される必要がある。固定は記憶の痕跡が形成される際、脳細胞内の記憶タンパク(中心体?)に置換されると考えられている。

・記憶を向上させるポイント:環境刺激、主体性、知的好奇心である。

解りやすく説明されている記事が有りましたので紹介します。

海馬の我楽多箱 http://www.geocities.jp/todo_1091/short-story/026.htm より

 

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●脳と記憶

脳と記憶について、中学生以上なら分かる内容で説明。前半は主に「日本学術会議・面白情報館」の「学習と記憶」の要約を中心に紹介。

(前略)

(2)脳の分業機能と記憶

物を見る「視覚野」、音を聞く「聴覚野」、動作の指令を出す「運動野」、物を考える「前頭葉」など、脳は分業をしながら働いている。

(3)人間の脳には3つの動物が住んでいる

地球上に生命が生まれて以来、生物の脳もゆっくりと進化して現在の形になった。人間の脳には、その進化のなごりが継承されている。

(略)

(5)記憶の仕組み

覚える・考えるなどの高度な事は、神経細胞(ニューロン)を通して起こっている。脳全体には約一千億個の神経細胞がある。神経細胞には、細胞体の周りにある短いヒゲの「樹状突起」と、細胞体からのびた長いヒゲの「軸索」がある。軸索は長いもので数十センチもあり、別の神経細胞の樹状突起と繋がっていて、複雑な神経細胞ネットワークを形成している。物を覚えるなどで脳を使っていると、神経細胞ネットワークが太くなったり、機能を高めたり、新しく形成されたりする。このネットワークこそが「記憶」の正体だ。細胞ネットワーク間は信号の形で伝達される。軸索と樹状突起が接続した部分にはすき間(シナップス)があり、繋がっていない。神経細胞から電気信号がシナプスに到達すると、手前の細胞から神経伝達物質と呼ばれる化学物質が放出され、次の細胞の表面にある受容体(レセプター)という受け皿でキャッチされて電位が発生し、その量が一定以上になると活動電位(電気信号)が発生して信号が伝わる。




(6)脳とコンピュータとの違い

何かを覚えようとすると、脳の神経細胞ネットワークには、それに対応した電気信号が流れてる。そのときシナプスでは、繰り返し電気信号が来ると受容体(レセプター)の数が増え、シナプスの感受性が高まる。このおかげで神経細胞ネットワークには、よりスムーズに情報が流れるようになる。さらに、神経細胞は軸索が伸びて新しいシナプスを形成し、ネットワークを補強したり新しく作ったりもする。脳には、外部刺激によりどんどん変化していく事が出来る能力がある。私たちの脳が何かを記憶する時、同じ神経細胞をいくつもの記憶に対して使い回している。つまり限られた数の神経細胞を効率的に使っている。この仕組みは、人間の脳のすばらしい能力を作り出す原動力にもなっている。1つの神経細胞を使って違う情報をいくつも扱える事は、「連想」という人間にしか出来ない脳の機能を生み出す。神経細胞のネットワーク上で、「全く違った情報」を色々と組み合わせたり離したりする事で、空想したり、ひらめいたり、創造したりする事が出来る。

 

(7)新しい記憶の整理「海馬」、記憶の保管「大脳皮質」

大脳辺縁系は「馬の脳」とも呼ばれるが、その中にはタツノオトシゴのような形をした「海馬(かいば)」がある。記憶の司令塔と言える大切な場所で、日常的な出来事や勉強して覚えた情報は、海馬の中で一度ファイルされて整理整頓され、新しい記憶として短期保管される。その後海馬で必要なものや印象的なものと認識を得たものが、長期記憶の保存先である大脳皮質にファイルされる。しかし、海馬はとても繊細で壊れやすい精密機械の性質があるので、これが働かなくなると新しい事が覚えられなくなる。つまり、昔の事は覚えていても、新しい事はすぐに忘れてしまうのだ。酸素不足で脳がダメージを受けると、最初に海馬あたりから死滅する。また、とても強いストレスにさらされた場合にも、海馬は壊れてしまう事がある。地下鉄サリン事件や阪神大震災が起こった時、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が発症した場合があるが、これも海馬に異常が現れる病気だ。アルツハイマー型認知症が最初にダメージを受けるのも海馬である。

注:短期記憶と長期記憶)記憶には「短期記憶」「長期記憶」という二つの貯蔵庫があるとされる。新しい情報が頭に入力されると、まず短期記憶として海馬に蓄えられるが、この貯蔵庫は一時的に情報を保存するだけで容量が小さい。それが短期記憶の貯蔵庫にとどまる限りは、すぐに忘れてしまう。一方、長期記憶はいったん貯蔵されると容易に忘れる事はなく、しかも膨大な量の情報を保存出来る。その容量は1000兆項目とも言われる。更に人間は、文書などの記憶媒体に保存し、情報を子々孫々に伝える事で飛躍的な進歩を続けている。

注:長期記憶への移行)情報を長期的に保存し定着させるには、短期の貯蔵庫から長期の貯蔵庫に移す必要がある。つまり記憶が持続するためには、それが短期記憶を介して固定される必要がある。固定は記憶の痕跡が形成される際、脳細胞内の記憶タンパクに置換されると考えられている。この移行がうまくいかなければ、覚えた記憶もすぐに忘れてしまう。海馬は長期記憶を蓄積しないが、長期記憶を作り出す際にも重要な役割を果たしている。大量の情報はまず海馬に集まる。海馬でその情報が必要か不必要かの選別が行われ、必要なものだけが大脳皮質に保管される。また、インパクトのある出来事は記憶に残りやすい。喜びや恐怖の感情などは、海馬の近くの扁桃体という器官の働きが影響しており、喜怒哀楽といった感情が伴うと覚え易くなる。こうして、海馬が受ける刺激が強ければ強いほど長期記憶になりやすい。海馬に蓄えられた記憶を何度も出し入れする事で、記憶が定着しやすくなる。ところが海馬が傷くと、長期的な記憶を作り出す事が困難になる。このように脳では分業体制が出来ている。

 

(8)消えない記憶の保管、「大脳基底核と小脳」

記憶には、頭で覚える「陳述的記憶」と、体で覚える「手続き記憶(技の記憶)」の2種類がある。漢字を覚えたり計算の方法を覚えたりするのが陳述的記憶。海馬は陳述的記憶をする際、大切な役割を果たすが、一度覚えても結構忘れてしまう。手続き記憶は、自転車の乗り方や泳ぎ方などを覚える記憶で、一度しっかり覚えればなかなか忘れない。20年間も自転車に乗らなくても体が覚えていて乗れる。この2種類の記憶は、両方とも脳を使って記憶している点では同じだ。手続き記憶で中心的な役割をはたしているのは、海馬ではなくて脳のずっと奥にある「大脳基底核」と、後ろ側の下のほうについている「小脳」。大脳基底核は、脳が体の筋肉を動かしたり止めたりする時に、小脳は筋肉の動きを細かく調整してスムーズに動くために働く。一生懸命に体を動かし、何度も失敗を繰返しながら練習するうち、大脳基底核と小脳の神経細胞ネットワークが正しい動きを学び記憶していき、消える事なくいつまでも脳に刻み込まれる。

(9)ワーキングメモリー(心の黒板)

「人の脳」と呼ばれる大脳皮質には、「前頭連合野」という部分がある。この前頭連合野は、脳のあちこちにファイルされている情報をかき集め、一時的に保存(ワーキングメモリー)する事が出来る。集めた情報を組合わせたりバラバラにしたりして、「これからどうするか」といったことを検討する場所だ。その働きがまるで「黒板」にいろいろな情報を書き並べて作業しているようなので、「心の黒板」とも呼ばれる。そして前頭連合野は、自分の意志で何かを計画し、それを行うためのプランを立て、成功するために動き、反省もするという「脳の最高司令官」とでも言える重要な場所となっている。ワーキングメモリーは記憶の一種だが、人間の自意識につながるような、脳の情報処理のもっとも高度な働きとも言える。色々な情報を組み立て、問題を解決する時にワーキングメモリーは威力を発揮するので、人間特有の記憶と言えるかもしれない。

(10)脳の廃用性症候群

脳の働きは、神経細胞ネットワークに電気信号が流れる事であるが、脳の働きが活発だとネットワークに活発に電気が流れる。ネットワークに活発に電気が流れると質的な変化、細胞と細胞をつなぐ線が太くなったり、線が増えたりする。逆に、活発に電気が流れなくなると、線が切れたり細くなって消滅してしまう。つまり、あまり脳を使わないと衰え萎縮してしまい、脳の廃用症候群が生じる。また脳が老化すると、シナプスが減弱しシナプスの可塑性(刺激への対応能力)が低下したり、神経細胞の物質代謝に変化が起こり、異常物質が出現したり、何らかの原因で細胞死が起こったりする。老化に伴う神経ネットワークの伝達機能の低下だが。

 

(11)脳の柔軟性

神経細胞は軸索を伸ばしてネットワークを補強したり新しく作ったりする発芽と呼ばれる現象があり、神経細胞が死んでも、別の神経細胞の発芽によりネットワークを作直す事が出来る事を意味する。重度の水頭症の2歳児がいた。脳の中に水がたまる病気で、2歳児の脳には、生きるための基本的な働きをする脳幹と、ものを考える前頭葉の一部しかなかった。大脳皮質も薄い皮くらいしかなく、運動を担当する小脳もほとんどない。普通は生きていく事すらできないはずだが、この子は友達と一緒に遊戯をしたり、走ったり遊んだり出来た。この子の脳は、実は柔軟性に富む生後間もない頃に大きく組替えられていたのだ。母はこの子が生まれた直後から一日中体をマッサージしたり、話しかけたりしながら、外からの情報の刺激を赤子に与え続けた。柔らかい赤子の脳は、母の刺激を一杯受けて、残されたわずかな神経細胞を使ってネットワークを作り上げていったのではないかと判断されている。人間の脳がコンピューターと比べて一番違う点は、柔軟性という性質がある事で、特に子どもの脳の柔軟性は凄い。子どもの脳の神経細胞は、大人に比べて突起を伸ばしてネットワークを作りやすく、また学習や記憶に関するレセプターが多いため、柔軟性に富み、失われた能力を「肩代わり」する力が大きいのだ。

(12)大人の脳の神経細胞も新生する

脳は一定の年齢に達すると成長が止まり、後は退化するだけと言われてきたが、最近の研究によると、成人の脳でも記憶に関係する海馬において神経細胞が新生する事があるとか…海馬では新生ニューロンと言われる神経細胞が日々生まれている。しかし新生ニューロンの数は年齢を重ねるに従って急激に減少して行く。新生ニューロンを増やす事が出来れば、脳の成長を促す事が可能。学習する時や睡眠中に出るシータ波という脳波が、記憶を担う海馬の神経細胞の新生を促進している事が分かった。シータ波が海馬に伝わると、神経細胞が神経伝達物質ガンマアミノ酪酸(GABA)を放出し、それが神経細胞の元となる前駆細胞を刺激して神経細胞が出来ると言う…これは脳が成熟してしまった後でも、新たな神経細胞が神経ネットワークを形成出来る事を意味する。海馬と連携して思考・判断等を司る前頭前野にも刺激が伝わる。繰返し刺激を与えていると脳細胞が活性化する。日常生活での脳への刺激は、手先を動かし、変化のある生活を送り、頭を積極的に使うなどを行い、海馬の幹細胞を刺激して神経細胞の新生を促し、前頭前野の機能を高め、脳の情報伝達ネットワークを活性化して記憶力を保つようにする事で、脳の老化をある程度防止する事が可能と言われる。

注:具体例)ドイツに住む中年男性のAさんは、隣人の家に招かれて楽しく話をしている最中に、突然体調がおかしくなり意識を失った。目が覚めると病院にいて、医師達に取り囲まれていたが、彼らが話している事が全く理解できない。しかも、自分から言葉を話す事も出来なくなっていた。普通、私達が言葉を聞いて理解したり話したりする時、左脳の言語野を使っている。Aさんは、脳卒中で左脳の言語野をやられてしまったのだ。その後一生懸命にリハビリを行い、ついに言葉を取り戻した。Aさんの脳を調べると、左脳の言語野の機能を右脳が肩代わりしている事が分かった。左脳にある言語野が右脳に移動していたのだ。このケースは、大人の脳でも神経細胞ネットワークが組変わる事が可能だと示している。

(13)記憶を向上させるポイント、「環境刺激」「主体性」「知的好奇心」

記憶の状態は、記銘、保持、想起の3段階からなり、記憶の種類には、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3種類がある。外部からの情報は、まず感覚中枢でキャッチされ感覚記憶で捉えられ、それが短期記憶となり、これを繰り返すことで長期記憶になる。記憶は映像、音、言葉など多くの分野に分けて保存されている。想起(思い出す)は、これら記憶の情報の結びつきをたぐり寄せる事であり、物忘れは想起の能力が低下していて、記憶の整理を担う海馬自身の仕事が充分に果たせていない状態だ。記憶のバトンタッチの中心である海馬が記憶力のポイントと言える。ただし、記憶は貯め込めば良いというものではなく、大脳皮質の様々な場所に保管されている長期記憶を、必要なときに必要な記憶を引き出して(想起)使ってこそ意味がある。この必要に応じて使うのは前頭前野の働きで、記憶を使うためには前頭葉の働きも良くする必要である。

(A)環境刺激

アメリカの生物学者ゲイジによるマウス実験で、一つの飼育箱は何も入れていないガランとした環境、もう一つの飼育箱はハシゴや回り車などたくさんの遊び道具を入れた環境で、それぞれの中でマウスを育てた。こうした中で成長したマウスの脳を調べると、遊び道具を入れた環境で育ったマウスの海馬が良く発達している事が分かった。豊かな環境のマウスの方が、海馬の神経細胞の数が15%も多く増殖能力も2倍以上にまで上昇していた。海馬がこのように大きくなり活性化すると、当然学習する能力も高くなる。多種多様な環境の方が脳の成長を促すのだ。

(B)主体性

学習や記憶をする時に大切な事の一つは「主体性」、自分から進んで行う事だ。意欲を持って勉強しないと身に付かないのは、誰でも体験的に知っている。イヤイヤやっても効率は上がらない。脳に大きなダメージを受けながらリハビリでそれを克服した人を調べると、共通するのはどの人も自分から積極的にリハビリをするという「主体性」を持っていた事だ。脳の奥深くにある脳幹部分には、青斑核という青い小さな部分が左右1つずつあるが、この青斑核は、あるものに注意を向けたりすると興奮してノルアドレナリンを作り、脳全体に供給している。ノルアドレナリンには、脳の柔軟性を増し、神経細胞ネットワークが作られやすくする働きがある。つまり主体的に学習しながらノルアドレナリンが脳内に出ると、ネットワークがスムーズに作られ、記憶が定着しやすくなる。私達が初めての場所に行ったり、新しいものに出会ったりして興味を持っている時、海馬から脳波のシータ波が出る。この時、シナプスでは情報伝達の効率がアップする。

(C)知的好奇心

赤子に色々な図形を見せると、複雑な図形の方をじっと見る。人間は生まれた時から、もっと知りたいもっと学びたいと言う知的好奇心があり、それに注目して物を考え学習するように出来ている。知的好奇心は、進化の中で人間が獲得した宝、大切に育てて使っていかなければならない。脳では、何かをして上手く行った時「良い気持ち」になる仕組みがある(脳内麻薬、脳の報酬系機能)。そして「がんばるぞ」という気持ちになる。脳の深い部分からは「A10神経」と呼ばれる神経束が伸びていて、大脳辺縁系から前頭葉に向かっている。知的な事を行っているとこの神経が刺激され、脳内麻薬物質(βーエンドルフィン)が出て「もっとがんばる」という気分になる。

(D)記憶力アップ

年齢を問わず、海馬は使われることによって鍛えられ、膨らみ、さらに記憶力が増大する。海馬に送られた短期記憶は持続時間があまり長くない。長期記憶として定着させるためには、繰り返し思い出す(復習)事が必要。また、記憶するときに何かに関連付けて覚える事で、映像、音、言葉などに分けられて保存されている記憶を思い出しやすくなる。思い出そうとする際に脳内で擬似検索を行っているが、関連付けが多いほど記憶を引き出しやすい。更に、手や耳などの器官を刺激して記憶したものも長く保持されやすい。覚えるときには、重要なポイントとなる項目をメモし、何度も読み返すと定着しやすくなる。そして、常に意識的に脳を使う事で、脳の老化を防ぎ、脳を新生させる。一方、時々休憩をとり軽い運動をする事も重要だ。軽い運動は脳の血行を良くして海馬の脳細胞を増やそうとするし、散歩する事で前頭葉の働きを活発にしてくれる。

 

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-03-01 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-26

脳回路の仕組み11 構造認識と大脳連合野

・小脳や大脳の回路の全ては、瞬間瞬間の外識発で形成された専用回路である。

・しかし、瞬間瞬間の外識発で専用回路を形成してゆけば、忽ち脳容量の限界に達する。(脳容量に限界があるからこそ、使われない回路は新しい外識発の専用回路に乗っ取られ、塗り変えられてゆく)

・与えられた容量限界の中でより速く正体を掴むために生み出されたのが構造認識(共通項を抽出した類型認識や抽象概念や法則や原理)であり、そのために形成されていったのが大脳連合野である。

実際、大脳連合野は、同類情報が飛躍的に増大した共認動物において、更に共認機能を進化させて観念機能を生み出した観念動物において、著しく発達した。

・様々な認識群を構造認識で統合すれば、「どうする?何?何で?」の判断スピードが飛躍的に上昇する。更には、その体系化された認識群を使って新たな可能性(新認識)を発掘する地平が開かれる。かくして、全ての認識は構造認識へと先端収束してゆくことになる。

 

・共認動物→観念動物は、生存上の極限状態に追い込まれて本能を超えた共認機能や、その共認機能を超えた観念機能を形成する過程において、どうする?⇒何?なんで?の探求機能を飛躍的に発達させたが、この探求を主要に担ったのが大脳連合野である。

・そこでは、どうする?⇒何?なんで?の探求に関連する情報を突き合わせて統合する必要がある。その突き合わせのために形成されたのが、5秒~10秒だけ情報を再現する(そして突き合わせる)作業記憶の回路である(その機能は反復体(海馬)に似ているが、反復体よりも遥かに短時間で消去されてゆく)

・そして、部分的に統合された認識(初歩的な構造認識)とその関連情報の専用回路が、連合野に形成されてゆく。これが、サル→人類と二段階に亘って、大脳連合野が飛躍的に発達していった理由である。

 

・構造認識は、大脳中枢の外識→内識をフル稼働させて照準を絞り込むことによって生み出される。その際、大脳中枢→大脳(専用回路)→連合野を何度も反復させて絞り込んでゆくが、そのサイクルを駆動させるのは連合野ではなく大脳中枢である。つまり、潜在思念が何らかの可能性を感取しない限り、連合野発でどれだけ追求しても、使える構造認識は生み出せない。

・また、外圧から遮断された学校での試験勉強等によって大半の潜在思念が封鎖されてしまった脳は、闘争照準力が極めて貧弱である。従って、照準がズレまくることになるが、狂った照準に基づいて観念回路だけで「何で?」を追求しても成果が0に終わる。文字脳・公式脳・暗記脳の人は、頭で考えるよりも、高速音読等で潜在思念を解除することの方が先決である。

 

 

(岡田淳三郎)

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-26 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-25

脳回路の仕組み10 人類の思考様式と構造認識

・人類が言葉を話しはじめて、60万年しか経っていないが、音声機能はすでにDNAに刻印されている。従って、それ以前に形成された観念機能(数十億本の神経回路)も、大きな大脳連合野(の神経回路)も、当然、DNAに刻印されている。

・それに対して、二元化や類型化等の把握機能は、DNA変異以前に、細胞質(おそらく中心体)に刻印されていると考えられるが、人類は、感覚機能の把握様式を踏襲しているだけのように見える。換言すれば、感覚機能の二元化や類型化を超えた、観念機能に固有の把握様式やその類型は未だ登場していないように見える。

・しかし、その萌芽はある。感覚機能の類型化を超えた観念機能に固有の類型認識として確立されてゆく可能性が高いと思われるのが、論理整合性に貫かれた構造思考と構造図解である。

脳回路の仕組み9,ブログ図解-01-01

◎どうする⇒なんで?を生起させるのは、不整合感や危機感→探求核、および可能性展望→充足核の駆動物質。

◎人類は、未明対象の本質を把握する手法として、感覚機能の二元化と類型化を下敷きにして、根元と先端に二元化する根端思考と共通部がありそうな事象を探索する連想思考を発達させた。(共に感覚機能の応用)

◎どうする?や何?の探求は、必然的に根端や連想の各項の統合に向かうが、統合するためには各項の因果や関連を明らかにする必要がある。従って連合野は、因果思考や関連思考に先端収束していった。

◎しかし、部分的な因果や関連が分かってその部分が統合できても、全体との関連や位置は不明であり、その部分的認識が誤っている可能性もある。つまり、どうする?の答えになっていない=実現できない可能性がある。従って、因果思考や関連思考は、実現可能性を求めて、際限なく深化し、広域化してゆくことになる。それが実現思考=構造認識である。

 

 

(岡田淳三郎)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-25 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-25

脳回路の仕組み9 生命の始源:中心体の仕組み

本稿は竹内美継の「中心小体論」を基に諸説を組み入れた仮説である。

1.ソマチッド(珪酸塩SiO4)と有機物と結合した蛋白粒が、螺旋状に伸びて微小管を形成する。この微小管が電磁波を受・発信するアンテナとなっている。

1’.細胞は、一次繊毛という数μmの小さな突起を持つが、この突起は微小管を繊毛膜で囲んだもの。この繊毛膜には、物理的・化学的信号を受信する受容体やイオンチャンネルが高密度に局在している。つまり、一次繊毛は、細胞が外部情報を感知するアンテナとして、細胞の維持や増殖などの第一義的な役割を担っている。

・微小管は弱伝導性で、電磁波を受信するシステムそのもの。八木アンテナは、伝導性の管がその長さに応じて特定の電波を受信するが、それとよく似た仕組みで、各波長の電磁波を受信している。この情報は、中心小体に集約していると思われる。(因みに、神経細胞の構造は、この一次繊毛の構造に類似している)

 

2.微小管はαチューブリンとβチューブリンが重合した二重螺旋の管構造。GTPやGDP等のヌクレオチドが糊のように働いて重合を可能にしている。(つまり、微小管にはRNA蛋白重合体が含まれている。)

 

3.中心小体は、微小管が集合して形成された。

・微小管が集合して全体として一つの方向性を形成(中心体の祖先)

 

4.中心体は中心小体が2つ連なって構成されている。

・L字型に直行する中心小体とそれを囲む顆粒状or繊維状の外周物質からなる。中心小体は直径200ミリミクロン、長さ700ミリミクロンの円筒。その構造は3連微小管が9本円筒状に並んだもので、その中心は一対の微小管。断面は、中心から伸びたタイヤのホイールの様な形状。

 

5.そのホイールを形成しているのは、SAS・6という蛋白質で、2つの球状の頭部と繊維状の尾部からなる二量体を形成している。この二量体どうしが頭部で結合することにより、9放射相称形という独特の形に会合する。

 

6.中心体が複製を作る機能を持ち、中心小体類と呼ばれる細菌(モネラ)が誕生。

・中心体は複製機能を持ち、始原生命体に最も近い生命体である。

・有糸分裂の際に紡錘体を形成し、細胞分裂の全体を統合している。 (中心小体が原核細胞と真核細胞を作った。DNAは中心小体の付帯装置に過ぎない。)

 

7.中心体周辺物質(γチューブリン)から中心体に向かって微小管が伸びているが、その微小管は、中心小体とは繋がっていない。

中心体 合体のコピー

 

微小管の2量体構造

 

微小管 中心体 中心小体

 

 

 

 

 

(岡田淳三郎)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-25 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-23

脳回路の仕組み8 把握様式の進化と脳容量の拡張

<把握様式の進化か、脳容量の拡張か?>

脳回路の仕組み8把握様式-01

・脳容量の拡張にはDNA変異が必要で数万年はかかる。そこで、本能は最適手法たる照準化→類型化に収束。この照準化→類型化が先に細胞質(おそらく中心体)に刻印された。

・このことは、DNA進化に先行して、まず細胞質が進化することを明示している。考えてみれば、それは当然であって、卵子と精子の細胞質の全ては(精子の鞭毛とミトコンドリア以外)そっくり遺伝する。そして細胞質は必要発の駆動物質によって、DNA変異より遥かに容易に変異する。

・又、細胞質の変異は≒進化だが、DNAの変異はそのごく一部が進化に寄与するに過ぎない。更に、たとえDNA変異が中立(無方向)だとしても、その変異DNAの適・不敵を判断するのは駆動物質である。従って、進化の方向を規定しているのは、要・不要発の駆動物質であり、DNAではない(DNA進化は、その結果にすぎない)。

 

<視覚:形の類型化> 脳回路の仕組み8-01

・鮮明度の上昇もDNA変異を待たねばならず、その前に形の類型化に向い、形の類型が先に細胞質(おそらく中心体)に刻印された。

・これは、鮮明度(解像度)を上げるのに必要な物質を増大させるDNA変異より、駆動物質発で把握機能を進化させる細胞質の変異の方が容易だからである。

・又、細胞質の変異は≒進化だが、DNAの変異は大半が不適応態で、ごく一部だけが進化に寄与するに過ぎない。更に、たとえDNA変異が中立(無方向)だとしても、その変異DNAの適・不適を判断するのは駆動物質である。従って、進化の方向を規定しているのは、要・不要発の駆動物質であり、DNAではない(DNA進化は、その結果にすぎない)。生物学者たちも、いい加減にDNA神話から脱却しないと、世間の笑い物になるだけだろう。

 

<赤ん坊:言葉の類型化>

・本能(細胞質)に刻印されている把握機能で言葉を類型化し、類型発で掴む→声に出す。

・音韻の類型認識→一音毎の類型認識→文法的な類型認識(語尾活用etc.)

・主要には1才前後によく聞く言葉を(本能に刻印された把握様式に基づいて)類型化している。ex.飲む、噛む、生む→死む。いない、しない→来(き)ない。

 

<人類の脳容量の急拡張>

・足の指が先祖返りして樹上で生きてゆけなくなった人類は、類型化etc.の把握機能を駆使してもとうてい対応できないような極限状態に陥った。

・そこで人類はひたすら「どうする?」をみんなで追求し続けるしかなかった。それが、チンパンジーの400ccから1400ccへと人類の脳容量が急拡張した理由である。言い換えると、人類の脳は「どうする?」を追求するためにある。その追求こそが、抽象化の極北に言葉(観念機能)をも生み出した。

・衝撃的な体験や映像は殆どが言葉化される。そして、一旦言葉化されると、その言葉を起点にして体験や映像を思い出すようになる。例えば、「幼児期の記憶」という言葉発でいくつかの体験や映像が思い起こされ、「3.11」という言葉でいくつかの出来事や映像が思い出される。

◎従って、言葉は様々な体験や映像の言葉化された(半)永久回路を飛躍的に増大させ、思い出し能力を飛躍的に上昇させる。それが、言葉(観念機能)を獲得して以降、人類の脳容量が飛躍的に拡張されると共に、知的能力が飛躍的に上昇した理由である。

・しかし、人類はその観念機能によって、約20万年前に極限状態を脱した。それ以降、人類の脳容量は増大していない。

そうなると、人類の進化は、他の動物と同様に、二元化→類型化→構造化という把握機能の進化に委ねられることになる。

・おそらく人類は、(現在既に登場しているが)論理不整合な文章(書き言葉)を脱して図解化に向かうだろう。

 

 

(岡田淳三郎)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-23 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-22

脳回路の仕組み7 把握(認識)の二元化と類型化

脳回路の仕組み7ブログ図解-01

◎照準収束とは本質収束であり、それが手順律を下敷きにして感覚把握の二元化と類型化を生み出し、それらが抽象化を生み出した。この感覚機能の二元化と類型化および抽象化は、脊椎動物以来細胞質(おそらく中心体)に刻印されている。

◎意識は、類型に先端収束し、類型だけが深く意識に定着して先天機能となり、全ての対象を類型発で捉えるようになった。つまり、背景と対象に二元化したり、共通部を抽出して類型化したり、抽象化するのは、本能に備わった根元的な把握機能であり、カエルも、ネズミも、ネコも、無意識にそうしている。

 

◎本質収束とは最も重要な部分への収束であるが、その重要度を指示しているのは基盤神経や判断核etc.が放出する駆動物質である。

◎現実対象に対する照準収束→本質収束→抽象化の極北に生み出されたのが「精霊」を原観念とする観念機能である(100万~60万年前)。観念機能は仲間内で交信する必要から発声機能の発達を促し、それにつれて原観念は言葉として発信されていった。

◎原観念は共認機能の最先端に形成された窮極の抽象概念の像であり、それを音声化したものが、言葉=観念である。

 

 

(岡田淳三郎)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-22 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-21

霊長類の大脳は、DNA(塩基配列)変化の伴わない進化形態である。

 

 

DNAの発見以降、生物の進化はDNAの変化に支配されていると言われていましたが、近年の分子生物学では、DNAに依らない進化(エピジェネティクス)≒ラマルクの進化論(要不要説 生物には「向上性」が内在していてこれが進化の要因と考えている。これが作用して、環境との相互作用の結果進化が起こる)

その代表例が人の大脳の進化であると思われる

霊長類の大脳は、DNA(塩基配列)変化の伴わない進化形態である。

http://www.nibb.ac.jp/press/2013/12/19.htmlより

 

霊長類大脳皮質領野で特定の遺伝子のON/OFFが調節される仕組みの解明

大脳皮質は、ほ乳類の高次脳機能に中心的役割を担うものであり、霊長類、特にヒトで良く発達し、脳全体を覆うに至ります。大脳皮質はその場所によって異なる機能を持つことが知られており、それぞれ連合野、運動野、視覚野などの「領野」として区別されています。領野ごとの違いがどのように形成されるのかは、大変興味深いテーマですが、未だ多くの謎に包まれています。

基礎生物学研究所の脳生物学研究部門では、これまでに霊長類を用いて、脳の領野によって異なる発現パターンを示す遺伝子を発見してきました。それらの遺伝子は、例えば、連合野で発現し(ONになり)、視覚野では発現しない(OFFになる)、という発現の調節が行われていますが、領野の違いによって特定の遺伝子のONとOFFが調整される仕組みは、全く不明でした。

今回、畑克介研究員と山森哲雄教授らは、マカクザルの連合野ではONになり、視覚野ではOFFになる遺伝子の領野特異的な発現調節の仕組みの一端を明らかにしました。連合野特異的にONになる遺伝子のグループは、遺伝子発現を調節するプロモーター領域が高い割合でメチル化されていること、および、メチル化DNA結合タンパク質の一つとして知られるMBD4が連合野特異的に存在していることがわかりました。また、メチル化されたプロモーター領域にMBD4が結合することで、連合野特異的に遺伝子がONになることも明らかとなりました。これは霊長類の脳において、領野特異的な遺伝子のON/OFFの調節機構が明らかとなった初めての例です。

高度な認知機能を司る霊長類連合野に特異的に発現する遺伝子の発現機構はこれまで全く判っておらず、今回の成果は、今後の霊長類の大脳皮質の発達に関する研究と精神疾患の病因解明や治療等の研究につながる可能性が期待されます。この成果は、米国神経科学会誌Journal of Neuroscience(ジャーナルオブニューロサイエンス)2013年12月11日号にて発表され、「This Week in The Journal」として紹介されました。

 [本研究の背景]

大脳皮質は「領野」と呼ばれる50程の区分に分けられ、それぞれの領野は、視覚や聴覚、運動機能などの機能を司ります。山森研究室では、霊長類の大脳皮質の領域特異的な機能分担や、脳の進化を探ることを目的として、マカクザル大脳皮質領野に特異的に発現する遺伝子の探索を行ってきました。霊長類大脳皮質の代表的領野である前頭連合野、側頭連合野、運動野、一次視覚野間で顕著な差のある遺伝子発現を比較検討し、RBP4遺伝子、PNMA5遺伝子、SLIT1遺伝子が連合野特異的に発現していること、HTR1B遺伝子、HTR2A遺伝子、FSTL1/OCC1遺伝子が一次視覚野特異的に発現していることを明らかにしてきました。

霊長類以外(例えばネズミやウサギやフェレットなど)では、これらの遺伝子は、領野特異的な発現を示しません。このことは、霊長類大脳皮質の領野特異的遺伝子の発現メカニズムは霊長類への進化の過程で備わったものであり、この機構を明らかにすることは、霊長類の脳の発達や進化のメカニズムの解明に重要な知見をもたらすものと期待されます。これら領野特異的遺伝子の発現パターンが各グループで良く似ていることから、共通の発現制御機構があると推測してその解明を目指しました。

[本研究の内容]

研究グループは、連合野において特異的に発現する遺伝子のグループ(RBP4遺伝子, PNMA5遺伝子, SLIT1遺伝子)と、一次視覚野において特異的に発現する遺伝子のグループ(HTR1B遺伝子, HTR2A遺伝子, FSTL1遺伝子)の、プロモーター領域のDNAメチル化の程度を解析しました。その結果、連合野に特異的な発現をする遺伝子グループのプロモーター領域は高度にメチル化されているが、一次視覚野に特異的な発現をする遺伝子グループのプロモーター領域はメチル化の程度が低いことを発見しました。

さらに、メチル化DNA結合タンパク質の一つとして知られるMBD4の遺伝子発現が連合野特異的遺伝子と非常に似た発現を示すことがわかりました。

また、メチル化DNA結合タンパク質MBD4が連合野特異的遺伝子の高度にメチル化されたプロモーターに結合し、その結果として連合野に特異的な遺伝子発現を促すことが明らかとなりました。DNAのメチル化による遺伝子発現の制御は、DNAの塩基配列の変化を伴わないエピジェネティクスな機構として、生物の多様な表現型の形成や、種々の発達障害、がん化などに関わることが近年明らかになってきています。本研究は、霊長類の脳において、領野特異的な遺伝子のON/OFFの調節機構が明らかとなった初めての例であり、その調節がDNAのメチル化によるエピジェネティクスな機構でコントロールされていることを示しました。

[今後の展開]

高度な認知機能を司る霊長類連合野に特異的に発現する遺伝子の発現機構はこれまで全く判っておらず、今回の成果は、今後、霊長類の大脳皮質の発達に関する研究、精神疾患の病因解明や治療等につながる可能性があります。

以上です。

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-21 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-21

脳回路の仕組み6 成績圧力と文字脳・公式脳

・誰もが文字を読めるようになって、たった150年で言語能力がドン底にまで劣化してしまった原因は、「そもそも文字は潜在思念とのつながりが貧弱である」という文字の根本欠陥だけにあるのではない。

・私権社会に特有の私権の強制圧力→学校の強制圧力→勉強の強制圧力が、子供の意欲や追求心を封鎖してしまうという現実の圧力の方が、はるかに大きな原因として在る。

・貧困が消滅して、すでに50年。貧困の圧力に基づく私権の強制圧力(私権を獲得しなければ生きていけないという否も応もない強制圧力)はとことん衰弱し、代わって仲間充足と追求充足が新しい活力源として、すでに顕現している。従って、今や私権の強制圧力を土台とする「いい生活⇒いい大学⇒いい成績」では全く意欲が湧かないどころか、その強制圧力が仲間充足・追求充足という活力源を封じ込めるので、子どもたちの肉体的な拒絶反応を引き起こし、それが年を追って深刻な状態になってきている。

・しかし、嫌だから引きこもるでは答えにならない。それでは敗け犬にしかならない。実は目先の成績に囚われている親→子ほど、より強く時代遅れの私権の強制圧力に囚われており、それ故、子供の肉体的な拒絶反応はより深刻な状態にあるので、何かのきっかけで簡単に引きこもり状態に陥る。

学校や塾の教師が生徒を潰す-01

・私権社会の共認形成は、窮乏(きゅうぼう)圧力であれ、利益誘導であれ、あるいはいじめ集団の親分・子分であれ、学校の教師の脅しであれ、国家の権力であれ、全て私権の強制圧力を基盤とする脅し→騙しによって成り立っている。脅されると、脳の危機逃避の回路が強く作動し、その逃避先として与えられた所に簡単に収束するからである。

・学校について言えば、私権の強制圧力を背景とする成績圧力で親と子供を脅して、「ノートを取れ」「公式で解け」と誘導し、そうして意欲も追求心も奪い取り、ひたすら暗記脳・文字脳・公式脳に染め上げてゆく。その結果が、

意欲も追求心も失い、思考停止に陥った子供たち→大人たちである。

・しかし、今や暗記脳の試験エリートなど、社会に出れば使い物にならない。だから、これは大いなる騙しである。しかし、それが騙しであることに気付く人は少ない。親も子供も、大半が学校の脅しに騙されている。だから、「脅しに騙されるな」、「今や学校は、国民を無能化する装置でしかない」ことを、声を大にして周りに訴える必要がある。

・しかし、現に学校の強制圧力に晒されている生徒たちは、どうしたら良い?

まずは、脅しに騙されないこと=目先の成績から脱却すること、そして、本来の追求心を解放して強制圧力を突き抜けてしまうこと。

・追求力さえ身につけば、(1年ぐらいで)追求力が成績圧力を突き抜けて、実は簡単に成績も上がってゆく。もっとも、学校の成績を上げる気が全くない生徒は、別に上げなくても追求力さえ身に付ければそれで良いが。

目先の成績から脱却-01

・自分の頭で追求して得た認識は、その答えに達するまでに関連する認識群を何度も反復しているので、3~5回ほど反復するだけで永久回路として定着する。

・教科書etc.で与えられた認識は、内識と殆ど繋がっていないので、100回以上反復しないと定着しない。しかも、100回反復しても半永久回路にしかならず、1年後、3年後、10年後には曖昧にしか思い出せない。

・言語能力を形成する秘訣は、赤ん坊が言語を習得する過程に凝縮されている。即ち、聞いて、真似して、しゃべるを繰り返すこと。それが最も効率的な言葉の習得法である。国語の成績を上げる秘訣も同様で、ひたすら相手の表情や口元を真似して(文字は見ずに)高速で音読すること。そうすれば封鎖された潜在思念が解放されて能力が上昇する。

・又、英語などの新しい言葉を吸収する場合も、赤ん坊と同様にゼロから直結回路を形成してゆくのが最も効率的である。この場合、既存の日本語を媒介にしていると、スピードが遅すぎて会話についてゆけないだけではなく、直結回路の形成が疎かになり、捨象されてしまう。従って、あくまでゼロから(聞いて、真似して、しゃべるを繰り返して)英語脳を形成してゆくことが、外国語を吸収する最短の道である。

 

(岡田淳三郎)

 

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-21 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 
2019-02-14

長期記憶形成に必須な分子メカニズムを特定

長期にわたる記憶形成するためには、ニューロンの樹状突起を肥大化しシナプスと呼ばれるつなぎ目と繋がりやすくする必要があります。そのメカニズムの一端を明らかにした研究報告が有りましたので転載します。

基礎生物学研究所 http://www.nibb.ac.jp/press/2017/11/21.html 2017年11月

長期記憶形成に必須な分子メカニズムを特定 ~タンパク質の設計図を神経樹状突起へ局在化させる因子が不可欠~

(前略)

 我々が物事を覚える際に、数時間、数日間、あるいは数年間という長期に渡る記憶を形成するためには、脳内でのタンパク質合成が不可欠であることが知られています。しかし、そのタンパク質合成の分子メカニズムは四半世紀に渡って未解明の問題として残されていました。神経細胞におけるタンパク質合成には、細胞全体で起こる一般的な制御と、神経細胞間の興奮伝達を仲介する樹状突起上のシナプスの近傍でのみ起こる局所的な制御とが存在します。本研究では、後者の局所的制御に関わる因子「RNG105」に着目し、マウスを用いて、RNG105の欠損が長期記憶や伝令RNAに及ぼす影響について解析を行いました。その結果、RNG105欠損マウスでは、特定の伝令RNAの樹状突起への局在化が低下し、長期記憶が著しく低下することが明らかになりました。これら特定の伝令RNAをもとに合成されるタンパク質には、シナプスでの興奮伝達を担う「AMPA受容体」を制御するタンパク質が多く含まれていました。RNG105欠損マウスでは、このAMPA受容体が上手く機能できず、シナプスを介した興奮伝達も著しく低下しました。以上の結果から、RNG105によって伝令RNAを樹状突起に局在化させ、その伝令RNAをもとにしてAMPA受容体制御タンパク質の合成を樹状突起上のシナプス近傍で起こすことが、シナプスの正常な興奮伝達、ひいては長期記憶の形成に不可欠であるという新たな分子メカニズムを提唱しました。

 

本研究成果は、2017年11月21日付けで英国オンライン科学誌eLifeに掲載されます。

 

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【背景】

私たちの脳を構成する神経細胞(ニューロン)は、2種類の長い突起(軸索・樹状突起)を持ち、あるニューロンの軸索と異なるニューロンの樹状突起がシナプスと呼ばれるつなぎ目で結合しています(図1)。長期記憶の形成には、樹状突起上にある後シナプス(スパイン)を肥大させ、そこにAMPA受容体*1を増やすという「シナプス強化」が不可欠です(図1)。このシナプス強化のためには、樹状突起のスパイン近傍で「局所的タンパク質合成」が起こることが重要だと考えられています(図1)。局所的タンパク質合成が起こるためには、タンパク質合成の設計図である伝令RNAが、「RNA顆粒」と呼ばれる複合体により細胞体から樹状突起へと輸送されることが必要です(図1)。しかし、RNA顆粒の働きが実際に長期記憶に必要かどうかは、長年の間、未解明の問題として残されていました。

 

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本研究では、RNA顆粒の主要な構成因子“RNG105”(別名Caprin1)に着目しました。これまで、RNG105を恒常的に欠損したマウスは生後まもなく死亡するため、成体マウスにおけるRNG105の機能は不明のままでした。そこで本研究では、RNG105を胎仔期後期以降、脳で欠損させたRNG105コンディショナル欠損 (cKO) マウスを作製し、成体マウスを得ることに成功しました。このマウスを用いて、RNG105が長期記憶に与える影響、およびその基盤となる分子メカニズムの解明を目指して研究を行いました。

 

【研究成果】

・RNG105コンディショナル欠損 (cKO) マウスでは長期記憶が低下する

RNG105 cKOマウスの学習・記憶能力について、モリス水迷路テストおよび条件付け文脈学習テストにより測定を行いました。モリス水迷路テストは、円形プールの特定の場所にマウスが回避できるプラットホームを隠して置き、その回避場所を数日かけて覚える長期記憶テストです。正常マウスはテストを重ねるごとにプラットホームの位置を学習して記憶したのに対し、RNG105 cKOマウスはテスト回数を重ねてもほぼ全く記憶ができませんでした(図2)。

 

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条件付け文脈学習テストでは、明るい部屋と暗い部屋とを自由に行き来できる装置を用います。通常、マウスは暗い場所を好み、そこに長く滞在します。しかし、暗い部屋に入った際に弱い電流を経験すると、マウスは嫌悪の経験を記憶し、その後は電流が流れなくても暗い部屋の滞在時間が減少します。この暗い部屋の滞在時間を計測した結果、RNG105 cKOマウスは5分間の短期記憶は正常に形成されるのに対し、1日から1週間に渡る長期記憶の形成は著しく障害されていることが明らかになりました(図3)。

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・RNG105 cKOニューロンではシナプス強化 (スパイン肥大) が減弱する

RNG105 cKOのシナプス強化に対する影響を調べるために、興奮刺激を受けた際のスパインの肥大化(図1)を計測しました。正常ニューロンでは刺激によりスパインが肥大し、そのサイズは刺激後1時間経っても維持されました。一方、RNG105 cKOニューロンでは刺激によりスパインは一度肥大したものの、時間経過とともに次第に縮小しました(図4)。よって、RNG105は長期的なスパイン肥大化(シナプス強化)に必要であることが示されました。

 

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・RNG105 cKOニューロンではシナプス興奮伝達が低下する

次に、シナプス興奮伝達の指標となる興奮性シナプス後電位(fEPSP)の測定を行いました。その結果、RNG105 cKOマウスは正常マウスと比較し、fEPSPの大きさが約半分に低下しました(図5)。このことは、RNG105 cKOマウスでは、シナプスの興奮伝達を担うAMPA受容体が上手く機能できず、興奮伝達が低下していることを示しました。

 

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・RNG105 cKOニューロンでは樹状突起への伝令RNAの局在化が低下する

以上のようなRNG105 cKOマウスの表現型の基盤となる分子メカニズムを解明するため、RNG105 cKOが伝令RNAに及ぼす影響を解析しました。その結果、通常ではニューロンの樹状突起へ局在化する特定の伝令RNA群が、RNG105 cKOニューロンの樹状突起では局在化が低下していることを見出しました(図6)。そのような伝令RNA群の中には、AMPA受容体を制御するタンパク質の設計図である伝令RNAが多数含まれていました。以上のことから、RNG105 cKOニューロンでは、樹状突起上のスパイン付近へ本来供給されるべき伝令RNAが不足し、それをもとに合成されるAMPA受容体制御タンパク質もスパイン付近では不足していると考えられました。

 

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・RNG105の欠損は樹状突起におけるAMPA受容体の表面提示制御を低下させる

AMPA受容体制御タンパク質は、樹状突起内のエンドソームに隔離されたAMPA受容体を細胞表面に提示し、そこにつなぎ止めることによって、シナプス強化に関わることが知られています(図7)。そこで、AMPA受容体が樹状突起の表面にどのくらい提示されているかを定量解析しました。その結果、RNG105欠損ニューロンでは、樹状突起の表面にAMPA受容体を提示する制御機構が上手く機能せず、正常ニューロンに比べて表面のAMPA受容体が減少していることが明らかになりました。

 

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以上の知見をまとめると、RNG105によって特定の伝令RNAが樹状突起に局在化し、樹状突起上のシナプス近傍でその伝令RNAをもとにしてAMPA受容体制御タンパク質を合成することが、シナプス強化、すなわち、スパインを肥大させてその表面に多くのAMPA受容体を提示させるのに必要だと考えられます。本研究は、このメカニズムにともなう分子が、シナプス興奮伝達ひいては長期記憶の形成のために必要であるという新たなモデルを提唱しました。

【本研究の意義と今後の展開】

長期記憶形成にはタンパク質合成が必要であることが知られていたものの、両者をつなぐ分子メカニズムはこれまで明確に示されていませんでした。本研究は、RNA顆粒の構成因子であるRNG105が長期記憶の形成に不可欠であることを明らかにしました。さらに、その基盤となる分子メカニズムとして、RNG105は樹状突起への特定の伝令RNAの局在化を制御し、AMPA受容体の樹状突起における表面提示制御に関与することを示しました。

 

記憶は生物の生存や精神活動の基盤となる脳機能です。記憶の障害は様々な精神神経疾患とも関連しています。また、RNA顆粒の構成因子には、筋委縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患の他、精神遅滞症、自閉症スペクトラム(ASD)などの原因因子が数多く含まれています。RNG105の変異も、ASD様の行動を引き起こす原因の一つです。したがって、RNG105およびRNG105が樹状突起へ輸送する伝令RNA群は臨床的なマーカーや創薬のターゲットとなりうる可能性を有しており、本研究の成果は、記憶形成の分子メカニズムのさらなる解明に加え、臨床・創薬分野において役立つことが期待されます。

 

【用語説明】

*1AMPA受容体:興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体の一種。中枢神経系のシナプス興奮伝達は主にこの受容体が担い、学習・記憶に必須の役割を果たしている。

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List    投稿者 seibutusi | 2019-02-14 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments »