2014-09-28

【乳酸菌はどのようにしてヒトの免疫機能を正常化するのか?】-4.乳酸菌がアレルギーや花粉症を緩和するしくみ

301239腸内細菌が免疫力にどのように影響するのか、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。

世間では様々な実験を通じて、乳酸菌が免疫力向上やアレルギー症状の緩和に寄与するとされています。実際そのような現象が表れていますが、そのメカニズムははっきりしていません。

現代人の免疫機能は正常

よく、そのメカニズムについて「免疫細胞のバランスが正常化する(=過剰細胞を抑制する)」という説明がなされます。しかし、「バランス」というはいかにも曖昧です(従って、衛生仮説も疑問)。免疫機能を悪者にしているところに違和感も残ります。その根本にあるのは、現代人の免疫反応が「異常」であるという考えです。

その考えのおかしさは、花粉も乳酸菌も、とにかく腸壁や鼻の粘膜を通過して入ってくることを前提=当たり前としている点です。それが本来の身体のしくみであれば、花粉が多い地域ほど花粉症の人が増えるはずです。あるいは、江戸時代にもアレルギーや花粉症があってもおかしくありません。

そうなっていないということは、まず前提とすべきは、花粉、食物、微生物といった異物は、本来腸管や粘膜を通過して来ないということです。アレルギーのショックで死に至ることもあるように、異物は滅多に入って来てはいけないのです。つまり、免疫機能は昔も今も「正常」である、ということです。

 

原因は人工物質

アレルギーも花粉症も、異物が腸管や鼻の粘膜(細胞を含む)を通過して侵入してきてしまうことが原因であり、そこが「異常」なのです。その直接原因は、粘膜が破壊圧力にさらされ、機能衰弱している(つまり薄い)こと、更には、破壊の進行が再生スピードを超えてしまっているということです。そして、乳酸菌の摂取によってそれが改善されていると考えられます。

粘膜及び表皮細胞の破壊の原因は、食物アレルギーの場合は食品に含まれる農薬や食品添加物です。また、花粉症の場合は、排ガスです。つまり、いずれも人工物質です。それらが食物や花粉をくっつけてやってくるため、人工物質が粘膜や細胞を破壊しつつ、くっついている様々な異物が侵入してくると考えられます。そう考えると、田舎にいくと改善することや江戸時代には無かったことの説明がつきます。

(詳しくは「アレルギーの原因は人工物質」 「なぜ人工物質がアレルギーを引き起こすのか?」 参照)
 
以上の認識を前提に、腸内細菌と免疫力の関係を解明してきます。
 

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●前記事「乳酸菌が免疫機能を改善した事例」のポイント

①アトピー性皮膚炎症状(発赤・浮腫・引掻)マウスにL-55乳酸菌を投与したら19~26日後以降症状が緩和した。

②スギ花粉症患者20名が、フェカリス菌含有乳飲料を毎日1本、2ヶ月間飲用。花粉の曝露室内での症状は経過時間が長いほど飲用者で緩和が見られた。

いずれの現象も、即効性はありません。20日から3ヶ月後に症状の緩和が表れます。もし、乳酸菌が腸壁から取り込まれ、免疫を活性化させるのであれば、摂取後すぐに症状が緩和してもいいはずです。そうなっていないのは、菌(体)が直接免疫に働きかけるわけではない、ということです。

 

※なお、一説には小腸にあるパイエル板が異物(とくに細菌)の侵入口であるとの説があります。しかし、わざわざ異物が入る穴をつくっているわけがありません。パイエル板は、小腸の下流部に控えていて、既製の抗体をかいくぐって来た細菌を捕捉して、新たな抗体をつくり、細菌が腸管に着床したり、侵入するのを防止しているのです。

※また、一説には菌体は侵入してくるが、一定量蓄積するとアレルギー反応を起こす、といわれています。その場合は、一定の日数経過後、急激に効果が表れることになります。しかし、そうなっていません。また、摂取をやめても次からは抗体ができているので、即効性があるはずですが、そうもなっていません。したがって、そのような説は成立しません。

 

では、どういう仕組みが考えられるのか

前述の通り、アレルギーは、粘膜の衰弱と破壊があり、そのスピードと範囲が広いため、粘膜の再生が追いつかないためと考えられます。乳酸菌によって、症状が緩和されるのは、衰弱している粘膜を分厚くしていることと、破壊されつつある粘膜の再生スピードを上げているためです。

乳酸菌がそれを実現している仕組みとして有力なのは、摂取菌又はその産生物が直接、あるいは腸内細菌を通じて、ある種の物質の産生を促し、現代人に不足する栄養素を補っているという見方です。そして、その栄養素が、腸管及び鼻の粘膜をつくっているということです。

 

不足している栄養素とはなにか

腸内細菌が産生している物質で、ヒトの粘膜の生成に寄与しているのは、短鎖脂肪酸と呼ばれるものです。中でも重要なのが「酪酸」です。これは主要に、大腸にいる「酪酸菌」が食物繊維をエサにして産生しています。

これが大腸の蠕動運動のエネルギー源となったり、小腸、大腸の粘膜の再生・修復に寄与しています。また、酪酸菌は乳酸菌といっしょに培養すると、通常の10倍増えることがわかっています。

(参照:東亜薬品工業株式会社

 

まとめ

我々の粘膜は日々人工物質に晒され、衰弱し、破壊され続けています。そこで、異物が侵入しやすくなり、アレルギーや花粉症が増え続けています。乳酸菌を摂取し続けると、酪酸菌が増え、食物繊維などからより多くの酪酸を産生するようになります。酪酸が増えると粘膜の再生・修復が促進され、異物が侵入しにくくなり、アレルギーや花粉症が緩和するのです。

 

List    投稿者 kumana | 2014-09-28 | Posted in ⑤免疫機能の不思議, ⑩微生物の世界2 Comments » 

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コメント2件

 あの… | 2014.10.13 19:39

2013.6.2の記事にある秋田県の病院ですが「秋田県立脳血管研究センター」が「秋田県立脳欠陥研究センター」になっています。

 seibutusi | 2014.11.11 21:08

↑ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。また、応援よろしくお願いいたします。

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