2014-08-10

【乳酸菌はどのようにしてヒトの免疫機能を正常化するのか?】~乳酸菌が免疫機能を改善した事例~

最近、乳酸菌(腸内細菌)と健康に関する研究が急速に進み、次々と新たな発見がされるようになってきました。そして、腸には、神経細胞と免疫細胞が集中して存在しており、免疫細胞に至っては約70%が存在していると言われています。

一般的に「免疫力を高める」という表現を私たちはよく用いますが、そもそも免疫機能は、ウイルスなどの異物が体内に侵入してきた時にも高まります。乳酸菌による免疫機能の高まりはそれとは異なると考え、今回の記事では、「正常化」という表現としています。

以下、乳酸菌が免疫機能を改善した事例を載せています。

IntestinalFlora

 

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◆乳酸菌による発ガン抑制効果

動物実験などにおいては、乳酸菌 シロタ株に発がん抑制効果が認められていたことから、表在性膀胱がんを切除した患者を対象に、乳酸菌 シロタ株の継続摂取による再発抑制効果を調べる試験を実施しました。試験対象者は、全国の医療機関において、内視鏡を使って表在性膀胱がん(移行上皮がん)を切除した125名で、被験者を①乳酸菌 シロタ株生菌製剤服用群(61名)、②プラセボ服用群(64名)の2グループに分け、1日3包ずつ、1年間またはがんが再発するまで服用してもらいました。なお、表在性膀胱がんとは、膀胱表面の粘膜に留まっていて筋層には至っていないがんで、膀胱がんの多くがこのタイプです。

その結果、1年後の再発率は、プラセボ服用群が45.1%であったのに対し、乳酸菌 シロタ株生菌製剤服用群は20.8%となり、乳酸菌 シロタ株には表在性膀胱がんの再発抑制効果があることが明らかになりました(図1)。またこの試験では、プラセボ服用群では、がん悪性度が試験前より改善した人が2名、悪化した人が7名であったのに対し、乳酸菌 シロタ株生菌製剤服用群では、改善した人が10名、悪化した人は1名だけとなり、乳酸菌 シロタ株には再発がんの悪性度の進展を抑える効果があることも確かめられています。

※プラセボ・・・偽薬

がん

(引用:「がん」や「感染症」の予防とプロバイオティクス)

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 ◆乳酸菌による抗アレルギー作用効果

今回は、L-55乳酸菌にアトピー性皮膚炎の症状を緩和する効果があるかどうかアトピー性皮膚炎モデルマウスを使った動物実験で調べました。その結果、L-55乳酸菌を投与したマウスでは、発赤や浮腫といったアトピー性皮膚炎の症状が緩和されることが分かりました。更に、皮膚炎によって引き起こされるかゆみの程度を自動掻痒測定装置を用いて評価した結果、L-55乳酸菌を投与したマウスではかゆみにより引き起こされる引っ掻き行動が抑えられていることも分かりました。なお、これまでにもある種の乳酸菌の投与によってアトピー性皮膚炎の症状が緩和されたという報告がありましたが、本実験のようにかゆみの程度を客観的に測定装置を用いて測定・評価し、乳酸菌の投与によってかゆみが抑えられたことが確認できたのは初めてのことです。

【実験方法】

本実験には、NC/Ngaマウスを用いました。このマウスは、ヒトのアトピー性皮膚炎に酷似した症状を起こすことから、アトピー性皮膚炎治療薬の評価実験に汎用されている実験動物です。皮膚炎を発症したこのマウスにプレドニゾロン(アトピー性皮膚炎治療に広く用いられているステロイド剤)を投与することで、皮膚炎の症状が緩和されることを予め確認しています。まず、NC/Ngaマウス24匹を3群に分けて、各々の群に蒸留水、L-55乳酸菌(1mg/匹)、L-55乳酸菌(10mg/匹)を毎日経口投与しました。投与2週間後から耳介および背部にピクリルクロライド《注1》を塗布することでマウスにアトピー性皮膚炎を誘発させ、その後、症状の経過とかゆみにより誘発される引っ掻き行動の変化を2ヶ月間観察しました。

【実験結果】

蒸留水投与群では、ピクリルクロライドを塗布した耳介および背部皮膚においてアトピー様症状の悪化が認められましたが、L-55乳酸菌投与群では、それら臨床症状の悪化が顕著に抑えられました。 さらに、かゆみにより誘発される引っ掻き行動を、自動掻痒測定装置《注2》を用いて測定・評価しました。その結果、蒸留水投与群とL-55乳酸菌投与群では、引っ掻き行動においても差が見られ、L-55乳酸菌を投与することによって、引っ掻き行動も抑えられていました。

アトピー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引用:抗アレルギー作用(アトピー性皮膚炎の症状緩和)オハヨー乳業 基礎研究室

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◆乳酸菌による花粉症改善効果

≪ 経緯 ≫

季節性アレルギー性鼻炎には、スギ・ヒノキ科、イネ科、キク科(ヨモギ、ブタクサ)などの花粉による花粉症があり、患者数は年々増加しています。近年、これら花粉症の食品による症状緩和効果についてヒトでの効果を検証する試験が多数行われ、乳酸菌などによる効果が報告されています。ところで、薬品および食品の効果を検証する方法としては、近年、花粉の曝露室を利用した試験も多く行われています。この方法では人工的に一定数の花粉を被験者に散布することが可能であり、天候、地域、時期などの環境条件により花粉飛散量にバラつきがある自然曝露の試験よりも再現性に優れる利点があります。そこで今回、スギ花粉の非飛散期に花粉曝露試験施設を使用し、フェカリス菌含有乳性飲料のスギ花粉症に対する有効性を評価しました。

≪ 研究内容 ≫

今回の試験は、NPO日本健康増進支援機構の花粉曝露試験施設にて、2011年10月から12月に行いました。スギ花粉症患者20名にフェカリス菌含有乳性飲料(1本200ml当たりフェカリス菌1,000億個含有)を、毎日1本、2ヵ月間飲用していただきました。そして、飲用開始前および飲用後の曝露室内でのスギ花粉に対する自覚症状、曝露試験後5日間の自覚症状を、「鼻かみ回数」、「鼻づまり」、「日常生活の支障度」、「眼のかゆみ」、「流涙」、「眠気」などの項目で評価しました。

≪ 結果 ≫

曝露室内での症状は「鼻かみ回数」、「眼のかゆみ」で、飲用開始前と比較して飲用後で有意な差が認められ、「鼻づまり」、「流涙」では、改善する傾向が認められました。曝露試験後5日間の症状は、「日常生活の支障度」、「眼のかゆみ」、「流涙」、「眠気」で、飲用開始前と比較して飲用後で有意な差が認められ、「くしゃみ回数」、「鼻づまり」では、改善する傾向が認められました。

花粉症

引用:花粉曝露試験施設にてEnterococcus faecalis(エンテロコッカス フェカリス)含有乳性飲料の花粉症症状緩和効果を確認)

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このような事例から、腸内細菌が何かしら、免疫機能に働きかけ、機能を正常化していることが言えます。逆に言えば、腸の悪玉菌が増え、腸内環境が悪くなると、消化吸収機能が落ちて、せっかく摂取した栄養素が十分吸収されずに、腸だけでなく、ガンやアトピーのように体全体に悪影響を及ぼすことになります。

ガンやアトピーは、薬に頼らずとも、免疫機能を正常化することで、改善させることは十分可能なのです。これからは、医者がいらず、自分の身は自分で守る時代になってきたと言えるでしょう。

List    投稿者 seibutusi | 2014-08-10 | Posted in ⑤免疫機能の不思議, ⑩微生物の世界No Comments » 

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