2014-09-25

微生物との共生を組み込んだ新しい代謝理論・・・異種微生物の共生により安定した環境を作り出す、バイオフィルムという戦略

無題前回は、『クオラムセンシングを利用した細菌集団の統合という適応戦略』のお話をしました。

今回は、クオラムセンシングを利用した、異種微生物の共生により安定した環境を作り出す、バイオフィルムという戦略についてお話します。

バイオフィルムの拡大写真

画像は、こちらからお借りしました

 

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1.異種微生物の共生により安定した生息環境を作り出す、バイオフィルムという戦略

Polymicrobic biofilm grown on a stainless steel surface in a laboratory 多くの微生物は粘り気のある多糖類の物質を放出して、バイオフィルムと呼ばれる膜を作り、その中で繁殖します。

バイオフィルムに中には、数百という異なった種が生息していますが、これらもクオラムセンシングによって交信し、互いの密度を感知してそのバランスを調整しています。

マトリックス

また、バイオフィルムを拡大してみると、単なる粘性体の塊ではなく、中はマトリックスと細胞外多糖類からできたジャングルジムのような構造をしており、その空隙には水が流れるようになっています。

この水路は、微生物がバイオフィルム内で生存・増殖する上で必要な酸素やイオン類の供給や代謝産物を排出する役割を担っていて、異種微生物が共生するためのインフラとなっているのです。

2.バイオフィルムを利用した、付着という微生物の適応戦略

微生物が繁殖していくためには、なにかに付着して安定した生息環境を作る必要がありますが、細菌単体ではなかなか困難です。

それは、付着する相手である固体の表面は、清浄な水中ではマイナスに帯電していり、他方、微生物の細胞表面もリン酸やカルボキシル基などが解離し、マイナスに帯電しているため、静電的な反発が起こり、細胞は固体表面に付着しにくい状況にあるからです。

一方、タンパク質や塩類はプラスに帯電しているため、静電気的吸着により固体表面に微生物のえさが集まります。そしてそのプラスに帯電したえさを求めて、マイナスに帯電した微生物が固体表面近くの餌を食べに行きます。

しかし、餌を食べるためには、安定した固体表面のくっつく必要がありますが、自分の体はマイナスに帯電しているためなかなか上手くいきません。そこで、微生物は細胞外に多糖類のポリマーを生成し固体に付着しようとします。

こうすることで、固体表面からの脱離が抑えられ、安定した生息環境が確保できるようになり、そこにくっついている餌も食べられるようになります。ただし、付着に成功するのは、ほんの一部で大半は液体中を浮遊しているままです。

このバイオフィルムは最初のうちは小さなものですが、微生物にとって固体表面よりずっと付着しやすい環境なので、次々に別の浮遊していた細胞がバイオフィルム内に入って増殖を始め、バイオフィルムは成長していきます。

つまり、「付着」は微生物の重要な適応戦略の一つであり、固体表面への付着のためのバイオフィルムの形成は微生物の生き残りにとって重要な戦略なのです。

3.外部環境に対する緩衝帯としてのバイオフィルム

バイオフィルムは、変化する外部環境に変化にたいする緩衝帯の働きもしています。この働きにより、病原菌の薬に対する耐性も上がります。このため、最近の微生物向けの薬品には、バイオフィルムを破壊する効果を盛り込んだものがあります。

また、バイオフィルムは細菌の食糧危機に対する栄養備蓄にもなります。バイオフィルムは多糖類でできていますから、細菌の栄養源でもあります。食料不足に陥ったときは、バイオフィルムを分解して細胞内に取り込み、生き延びています。

これも環境変化に対する緩衝帯といえるでしょう。

 

このように、異種微生物の共生により安定した環境を作り出す、バイオフィルムという戦略により、まるでバイオフィルム全体が1つの生命体のような働き、微生物は苛酷な環境に適応してきたのです。

List    投稿者 sinsin | 2014-09-25 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

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