2021-03-04

微細藻類「スピルリナ」から電磁波吸収に期待の新素材を開発

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新素材の開発についても日本人の追求力は凄まじいものがあります。

今回は、微生物のらせん状の形態を利用し「ナノサイズのコイル」を量産して、電磁波を吸収する新素材を作るという研究について、研究者へのインタビュー記事より紹介します。

THINKYインタビュー記事(2019/04/24) より。

スピルリナから電磁波吸収に期待の新素材を 彌田教授に聞く

同志社大ハリス理化学研究所 彌田(いよだ)智一教授インタビュー

● 彌田先生のご研究内容について教えてください。

~前略~

実際に研究に使っている微生物の一つに、アフリカ・チャド湖原産の微細藻類「スピルリナ」があります。その名のとおり螺旋状(Spiral)に繋がった多細胞で、大きさは100ミクロン、直径が3、40ミクロン(髪の毛の2分の1から3分の1くらい)です。近頃ではスーパーフードとしてサプリメントもありますので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。JAXAも有人衛星の食糧として研究しているようですね。

スピルリナ自体は、炭酸ガスを与えておけば光合成によって簡単に増えます。成長する過程でランダムに折れて2個になるということを繰り返します。約1週間で同じ形のものが約250個に増えますので、研究室の環境でも簡単に生成できる“究極のテンプレート素材”ですね。
培養環境研究で、螺旋ピッチの制御も可能にし、天然の物は左巻きですが右巻きも培養しています。

私は、このスピルリナの螺旋構造をバイオテンプレートとして、無電解めっきで金属マイクロコイルを生成しました。無電解めっきは複雑な形状の金属以外のものにもめっきできる技術ですが、生き物そのものの形状を変えず、無電解めっきをするのは結構大変でした。2年程かかっています。

まず、スピルリナをグルタルアルデヒドという薬品でホルマリン漬けのようにします。スピルリナは死んでしまいますが、細胞を架橋する効果で細胞の形がそのまま保存できるのです。その上に無電解めっきをすると、何億という大量の金属マイクロコイルを生成します。(下写真 左)

彌田教授_01

 ※ 瓶に入った何億もあるスピルリナの金属マイクロコイル(左)と顕微鏡写真(右)

ここまで精密なコイルをピアノ線のような針金で1個1個作ったら大変なことですし、高くつきますよね。しかし私が作ったコイルの材料は、植物と回収率の高い金属なので、モノづくりとしてエコなのです。

● 金属マイクロコイルが簡単に量産できると可能性が広がりそうですね。その先のシナリオはどのようなものですか。

「このコイルを作りました」だけではまだまだで、次はどのように活用するかですよね。

コイルには自己共振周波数というのがありまして、コイルが小さくなるほど共振する周波数が高くなります。スピルリナの金属マイクロコイルはとても小さいので、とても高い周波数で共振します。もし、このコイルを分散したシートに、光や電波など電磁波を当てたら、中のコイルが共振動を起こして電波吸収すると考え、その研究を進めています。

tj54_01

 ※金属マイクロコイルが分散したシートと(左)と彌田先生のご研究の概要図(右)

実験の結果をお見せしましょう。

tj54_03_ 実験結果グラフ

縦軸がtransmittance(透過率)、横軸はfrequency(周波数)テラヘルツ波領域です。分散したシートの後ろから電波が来て、表に漏れてきた量の割合です。
次々世代の通信帯域である、ミリ波、テラヘルツ波においても高い電波吸収と遮蔽機能をもつことがわかります。

皆さんの使っている携帯電話の周波数は1GHz、2GHzです。高速道路に乗るときのETCは5.8GHz、Wi-Fiが2.5GHz、5.8GHz、自動車が自動運転するときの車載レーダーの周波数は世界標準で77 GHzです。

次々世代の中心周波数は、300GHzと考えられています。つまり今の携帯電話の300倍です。

周波数が高いということは、小刻みに震えて情報量が大きいのです。例えば4Kの2時間ものの映画が10秒程でダウンロードできるということです。全く世界が変わりますよね。

 電波の利用状況の図彌田教授_04

ただ、これからの高速大容量情報通信というと便利なことばかりではありません。電子機器は電波に弱いため、誤動作するなどの懸念があります。
例えば、病院で携帯電話を使用禁止という時代がありましたね。今はうまく電波をシールドできるようになったので、さほどきつくは言われないケースもありますが。飛行機では、一番大事な離着陸時に障害があったら困るので、今でも通信機器の電源を切るように言われますよね。

今後、社会インフラがワイヤレスになってくると、電波障害や機器に対する障害について、様々な課題が出てくるでしょう。まだ詳しくは分かっていませんが、健康への影響もゼロではないのです。

そこで、電波の利便性と人間をうまくなじませるような社会インフラをつくるために、電波を吸収する作用を持った素材の需要が高まってくると考えています。

電波吸収の塗料というとフェライトが有名ですが、フェライトはさほど高い周波数は吸収しません。ギガHzか、もう少し下ぐらいまでで、自動運転の車載レーダーのような高周波数には追いつかないのです。

次々世代の通信帯域である、ミリ波、テラヘルツ波においても高い電波吸収と遮蔽機能をもつ新素材が必要になるでしょう。

スピルリナの金属マイクロコイルを分散したシートは、マイクロコイル中の自由電子が動いて、フェライトの対応周波数より10倍100倍、1000倍高くても追随できます。
この分散シートは今後の電磁波の飛び交う社会を救う、新素材として期待がもてるのです。

 

~以下略~

 

List    投稿者 seibutusi | 2021-03-04 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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