2014-11-30

【放射性物質を無害化する微生物vol.4】~放射性物質による被害~

【放射性物質を無害化する微生物vol.1】~放射性物質を吸収する微生物編~
【放射性物質を無害化する微生物vol.2】~放射性物質を分解する微生物編~
【放射性物質を無害化する微生物vol.3】~原爆と原発の違いと放射能耐性微生物の効果~

このシリーズでは、地球の誕生から環境の変化に大きく微生物関わっている点、そして広島・長崎の原爆とチェルノブイリと福島の原発の違いと、その放射性物質を吸収・分解・除去し環境改善に活躍している微生物たちの特色を見てきました。今回は、人間にとって有害である放射性物質によって、どのような被害があるのか、改めて一度押さえなおそうと思います。

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日本列島の海岸沿いに原子力発電所は点在しています。戦後50年で癌による死亡率が急激に増えている日本の実態を、原発等による影響と考えておられる方も多いようです。原発の影響について警鐘を鳴らすスターングラス博士のお話を紹介します。彼は、原子力の本場アメリカで、60年代から、核実験や原子力発電による低レベル放射能の影響を訴えて続けて来た、数少ない科学者の一人です。

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■放射性物質による人体への影響

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アーネスト・スターングラス博士は、ピッツバーグ医科大学放射線科の放射線物理学名誉教授です。1967年から同大学の放射線物理・工学研究所を指揮し、X線と放射線医療診断における放射線量を低減させる新しい投影技術の開発をしました。さらに、放射性降下物と原子炉核廃棄物による人間の健康に対する広範囲な医学的影響調査研究を行い、その結果をアメリカ議会で発表しています。

日本では、戦後の50年で、がんの死亡がずっと増え続けている。1900年台の前半は、がんはそこまで存在しなかった。日本に原爆が落とされて、アメリカ製の原子力発電所が導入されてから、一気に増え始めたのだ。今でも日本にある原発の八割がアメリカ製だ。」

「そして、本場のアメリカで分かって来たことが、原子力発電所というのは、公に発表されているよりも、ずっと大量の放射性物質を放出しているということだ。大半は、細かい分子になった、核の分裂によって産まれる物質で、大気や海に放出されている。核分裂生成物というやつだ。」

ヨウ素131は、ほとんどが一週間の半減期だが、これは首にある甲状腺に集中する。甲状腺というのは、体全体の新陳代謝をコントロールしていて、 多くの器官が甲状腺のホルモンによって動いている。だから甲状腺が壊れると、大人だと、甲状腺に異常が生じたり、がんになることがある。また、ストロンチ ウム90は骨に集中する。これはカルシウムと似ているためで、カルシウムは、骨をつくったり、神経の伝達にも欠かせない。要するに、脳みその働き、考える 力に貢献している。よって、ストロンチウム90が引き起こす問題というのは、あまり知られていないのが、カルシウムと同じように骨だけじゃなく、脳にも入 り込んで、神経にダメージを与えるため、特に脳の発達に支障をきたすようになる。

「これは数年前にJournal of American Medical Associationで発表されたばかりなんだが、妊婦が歯科医でX線を数回受けただけでも、散ったX線が、ヨウ素131のように甲状腺に影響を与えて、それが早産につながる確率が数割高くなることが分かった。こうした未熟児は、現在の医学ではほとんどを救うことができるのだが、X線のせいですでに脳の発達に影響が出てしまっている。それが思考力や、集中力の欠如に表れる。脳の発達に支障をもった未熟児は、自閉症になる可能性も出てくるのだ。」

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「ヨウ素131の場合、ガンマ線というのは、X線と一緒で、とても強いエネルギーを持った光を出す。そして、ベータ線は電子なんだが、数ミリしか飛 ばなくても、臓器に埋め込まれると周りの細胞を破壊する訳だ。変異を起こしたり、遺伝子を傷つけてしまう。そして、フリーラジカルが産まれる。フリーラジ カルとは、マイナスの力を帯びた酸素分子で、寿命も一瞬なんだが、これがプラスを帯びた細胞の粘膜に引き寄せられて、穴を空けてしまうので、大変なことだ。これらのことは、60年代の後半から70年代にかけて分かったことで、原子力発電を始めたずっと後の話だよ。」「我々は、低レベルの内部被ばくによる影響を、少なくとも100倍から1000倍、過小評価して見積もっているのだ。」

「もう一つ言いたいのが、ストロンチウム90は骨に入って、強い電子を放出する。骨髄では赤血球と白血球もつくられているから、ここで異常が起きると、白血病を起こす。また、白血球というのは、体のありとあらゆる病源と戦っているから、白血球がちゃんとつくられないと、これは大都市で警察のストを起こすと犯罪率が一気に高くなるようなものだ。分かるね。ストロンチウム90が白血球を壊せば、体中にがんが起きても止めることができない。ストロンチウム 89の半減期は50日で、ストロンチウム90の半減期は28年だから、体に蓄積されていくものだ。」

「さきほどの低レベルの放射能の話に戻るが、人々が間違いを犯した原因のひとつに、放射線によるがんの治療による。これは動物実験で、一週間おきに 集中した放射線をあてれば、健全な細胞は元に戻るということから、放射量を細かく分ければ、体には影響が少ないと信じられていたのだ。ところが、内部被ば くの場合は、少ない量でも常に体の中にある訳だから、慢性被ばくと言っても良い。これが何十年間と蓄積されると、ストロンチウム90のように白血球が壊されていけば、肺炎やさまざまな感染が起き易く、免疫力が激しく低下することに繋がるのだよ。」

『原発の影響(スターングラス博士)1~1900年台の前半まで癌は少なかった』
『原発の影響(スターングラス博士)2~放射能の影響を少なく見積もりすぎている』より引用。

 

 ■健康診断のX線検査に伴う放射線被爆

上記の放射線被害は、健康診断においても起こっているという報告があります。

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胃バリウム検査で実際にどのくらいの放射線を被爆することになるのでしょうか。胃バリウムの直接撮影検査では一般に、平均して15から25ミリシーベルトの放射線を浴びるとされています。シーベルトとは、放射線の種類による違いを加味した生体への吸収線量の単位です。1年間に自然に浴びる放射線量は1から1.5ミリシーベルトとされていますので、胃バリウム検査ではその約10から25倍もの放射線を短時間に浴びてしまいます。短時間にこのような大量の放射線を浴びると、遺伝子の本体であるDNAの一部に傷をつける可能性があるかも知れません。さらに毎年バリウム検査を受け続けるとすると、この放射線による遺伝子の傷害が次第に蓄積されていくと考えられており、長年にわたるDNAへの影響により、最終的に発癌に至ってしまう可能性は否定できません。参考として、直接撮影による胸部X線写真による放射線被爆量は0.07から0.1ミリシーベルトですので、胃バリウム検査では、何と通常の胸部X線写真の約150から350倍の被爆があることになってしまいます。この被爆量がいかに大きいかを理解するには、被爆チャートが参考になります。現在のチェルノブイリ原発跡に1時間滞在した時の被爆量の2-4倍というのですから全く驚きです。

医療の先進国を自負する日本として、癌全体の3.2%が検査のための放射線被爆で発症したという誠に恥ずかしい状況を打開していくためにも、過剰なX線検査をできる限り減らしていなくてはなりません。健康のために胃バリウム検査を受けて胃癌になることほど、馬鹿げたことはありません。

『癌になる人の3.2%は健康診断などX線検査に伴う放射線被曝。胃バリウム検査は胸部X線写真の約150から350倍の被爆。』より引用

 

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放射線被害は目に見えない形でやってきます。たとえば、福島において放射能を帯びたハエが大発生し、それをエサにした動物は内部被曝していきます。今後はそうした食物連鎖の危険性も考えなければなりません。チェルノブイリ原発事故の際は、ツバメの白血球の減少や脳の容積の縮小も確認され、論文にも発表されています。内部被曝した昆虫、小動物を捕食した鳥類や肉食獣も内部被曝し、様々な悪影響を受け、連鎖していくと考えなければなりません。次第に原発事故の問題が薄れる風潮にありますが、むしろ生物界への悪の連鎖はまだ始まったばかりなのです。放射性物質を無害化する微生物の追求が急がれます。

次回は、放射線によって癌になるメカニズムを詳しく見ていきたいと思います。

 

 

List    投稿者 yidaki | 2014-11-30 | Posted in ⑩微生物の世界, ⑪福島原発問題No Comments » 

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