睡眠と進化(2) 睡眠が脳の循環を生み出している
『哺乳類は、睡眠を高度化し脳を休息させることで、種としての成長を促進してきた』では、脳を進化させることを勝ち筋としてきた人類が、脳の休息のために睡眠を高度化してきたことを明らかにしました。
そもそも、「睡眠で脳が休まる・疲れが取れる」とは、どういうことなのでしょうか?
人間の体は、約60%が水分です。細胞内外・血液等、この水分が体内を循環することでバランスが保てています。これは、脳内も同じです。
首より下は、筋肉によるポンプ機能が働いています(この低下が“むくみ”状態)。では筋肉のない脳は、どのように循環しているのでしょうか?
その秘密が、睡眠にあります。
脳を休息させる役割のノンレム睡眠時、脳内では、脳内を埋め尽くすグリア細胞が縮みます。これにより、脳細胞間に隙間が生まれ、日中、脳細胞から排出され細胞間を満たしていた水分が、流れていくのです。
大脳新皮質が大きくなればなるほど、脳内の細胞間に多くの水分が存在します。また、ポンプによって押し流す身体と違い、隙間が広がることで流れていく脳内の水分の流れは時間がかかると思われます。
これも、人類が長い睡眠を必要とする理由の1つと言えます。
この循環が滞ると、様々な不調が引き起こされます。
2000年以降急激に患者数が増加しているアルツハイマー。その原因が、「脳内に、老廃物であるアミロイドβが長年かけて蓄積し、脳が萎縮することで引き起こされる」というのが近年の定説です。そのため、アミロイドβを蓄積させなくさせる薬も開発されています。
このアミロイドβが蓄積した状態が、脳のシミのように見えることから、老人斑と呼ばれています。
しかし、この老人斑や脳の萎縮は、高齢者であれば誰でも見られる、言わば脳の老化現象です。そして、アミロイドβの蓄積に効果があるとされている薬が処方されるようになって以降も、患者数が増加の一歩を辿っています。
高齢になれば、物忘れや思考力が落ちることは誰でもありますが、徘徊やせん妄のように、人間としての日常生活もままならなくなるようなアルツハイマーに誰でもなるわけではありません。
本当に、アミロイドβの蓄積がアルツハイマーの原因と言えるのでしょうか。
次回は、アルツハイマーのメカニズムに迫ってみたいと思います
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