【番外編】皮膚と感覚器の両方で外圧を捉えている!
これまで、皮膚の機能と重要性を追求していく事で、皮膚は『第ゼロの脳』であり、細菌などの初期生物が持っている外圧把握機能そのものであることがわかってきました。そして、われわれ人類も、その皮膚による外圧把握機能を駆使して生き抜いてきたと言えます。
では、生物が進化の過程で得てきた視覚や聴覚、嗅覚と言った専門特化した感覚器と皮膚はどのような関係にあるのでしょうか。単に上書きされたわけではなさそうです。
今回は、両者の役割と、関係性を探っていきます☆
皮膚は、感覚機能だけでなく判断機能をもっています。
それも、目や耳などの専門特化した判断器官に比べ、はるかに広範囲な外圧を受信して判断しています。判断する機能部位は脳とほとんど同じ受容体で、それはケラチノサイトという皮膚層の中にあります。
これらは現在では、単純な刺激応答試験から、特定のレセプターを遺伝子操作で壊した個体との対照試験まで、様々な実験が実施され明らかになってきています。
例えば、ケラチノサイトはコルチゾールというストレスホルモンや、オキシトシンというリラックス作用のあるホルモンを生成出来ることがわかっています。また、いわゆるアレルギーや肌のかぶれなどを引き起こす物質も生成しています。
次に、皮膚が感取・判断できる外圧は、温度・圧力・気圧・可視光・広範囲の電磁波・味・匂い・磁気・・・と極めて多種の情報があり、その判断も含めた情報を脳に送ります。
他方、脳には耳や目などの専門感覚器官から、皮膚より詳細な情報が届くが、これらの情報域は、皮膚が受信・判断したそれよりはるかに狭くなります。この2種類の情報を突合せ最終判断を行い行動に繋げています。
その際の、皮膚の受信・判断情報と専門感覚器官から脳へ至る情報の違いはなんでしょうか?
まず、皮膚からの情報は極めて多種で、一種当たりの受信範囲も、専門感覚器官に比べはるかに広大です。しかし、解像度は専門感覚器官に比べ、低い。そして、顕在意識には上りにくくなっています。
他方、例えば目が受信できる電磁波の波長は、皮膚が受信できる波長のほんの一部でしかないことからわかるように、専門感覚器官の感受範囲は狭くなっています。しかし、その狭い範囲の中で皮膚より高密度で解像度の高い情報を感受し脳に送っていて、これは顕在意識と強く結びついています。
これは、単細胞時代からの感受・判断器官がまず基底にあり、その内、適応のためには何としても強化したい感受機能を担う専門感覚器官を、対象と受信領域を絞り精度をあげ作り上げたのだと思われます。
つまり、無意識に感じ取っている皮膚の感受・判断情報を脳の判断基盤として、その上に、目や耳などの、対象領域を絞った濃密な受信情報を塗り重ね、階層構造の中で判断しているのです。
また、人類の場合は、他の哺乳類に比べて、体毛が極めて少なく感覚・判断器官として皮膚が極めて広くなり、受信・判断できる情報量も大幅に増えています。
これは、先端機能を更に強化するために、根源である基盤機能の皮膚の受信・判断機能も更に強化しながら、全体として、より精度を上げて判断できるようにしたのではないでしょうか?このような、膨大な情報を処理するために人類の脳は大きくなったと考えることができます。
どうでしたか?
「5感」という言い方があるように、皮膚感覚と視覚や嗅覚が並列にあるかのように表現されがちですが、どうやら外圧認識の土台は皮膚感覚にありそうです。そして、それを更に詳細に、精度の高い情報に塗り重ねていくために、感覚器を駆使しているのが、私たちの体です。
「ぞっとして鳥肌が立つ」などの経験が皆さんあると思いますが、このように、外圧、特に危険に対して反応している体の感覚は、皮膚なんですね。一番外側にあって、常に外界に触れている皮膚。
まだまだ、解明されていない機能がたくさんありそうですね!
今日は以上です。
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