2022-11-20

睡眠の進化(1) 睡眠の原点は「成長」と「生殖」にある

睡眠に対する世の中の注目度は高く、最近では、会社に昼寝を導入して社員の集中力アップを期待するなどの事例も見られます。しかし、上手く行っている事例もあればそうでない事例もあり、未知の多い生理現象でもあります。

そこで、私たちが一生の中でも多くの時間を費やす『睡眠』をテーマに、生物進化の観点で追求していきます。
今回は、そもそも睡眠は何のためにあるのか?を掘り下げて調べてみました。

 

1)どんな生物にも睡眠はある
どんな生物にも睡眠はある事が分かっており、その形態はとても多様です。
私たち人間が睡眠をとる時は普通、夜間に横になって7時間ほど眠ることがほとんどです。しかし、キリンやゾウの睡眠は夜間、立ったまま2時間ほどしか眠りません。また、イルカは泳ぎながら片目を閉じ、常に片方の脳は起きている状態で眠ります。
私たちは身の回りに危険が無い事がほとんどのため、安心して長時間眠ることができますが、いつ捕食者、獲物が現れるか分からない過酷な自然環境にいる動物たちも、工夫をこらしながら睡眠をしているという事ですね。

一般的には睡眠は脳を休ませるための行為だと認識される事が多いですが、脳を持たない無脊椎動物ではどうでしょうか?

実際に無脊椎動物のヒドラを対象にした睡眠の存在についての研究がおこなわれています。ヒドラは触手を動かして周りの状況を探索し続けているのですが、観察を続けていると、長時間にわたって活動を停止させることがある事が分かりました。
また、活動停止時間が20分以前では外部からの刺激に対してすぐに反応するのに対して
、20分以上の状態では外部からの刺激に対しての反応が鈍くなることが分かっています。研究では20分以上の静止を「睡眠」と定義しています。
別の研究では、同じく無脊椎動物のサカサクラゲが、最大で5分もの静止状態を取ることが分かっており、こちらもこの間は外部からの刺激に対しての反応が鈍くなります。

 

2)睡眠の原点について
さて、睡眠がどのような生物にも存在しそうだという事が分かりましたが、脳の無いヒドラやクラゲはなぜ眠る必要があるのでしょうか?
前述のヒドラの研究では、ヒドラに刺激を与え続けて断眠させるとどうなるのか?という実験も行っています。

実験の結果、断眠状態のヒドラは細胞分裂が抑制されていることが分かりました。また、刺激を与えるのをやめると、ヒドラはすぐに睡眠状態に入ります。
これらの結果から研究では、睡眠が「成長や繁殖を促進するための現象」である可能性を示しています。

睡眠の原点が「成長」「生殖(繁殖)」にあるという事からも、「寝る子は育つ」も事実である可能性が高そうです。
睡眠をする事で個体の成長を促し、繁殖能力を高めることで種としても生存能力を高めているということですね。

また、睡眠と生殖が関係しているとすると、睡眠不足が不妊の原因になるかもしれないという仮説も立てられます。

 

3)まとめ

・睡眠の形態は外圧状況により様々
・脳を持たない生物も睡眠を行う。
・睡眠の原点は「成長」と「生殖」にある。

今回は睡眠は何のためにあるのか?を無脊椎動物まで遡って調べてみました。
次回の睡眠追求のテーマでは、脳を持つ動物の睡眠と、睡眠の持つ新たな機能などについて触れていきます。

List    投稿者 t-gouki | 2022-11-20 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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