2022-09-18

分子系統学が分かる(2)~分子系統解析の特徴~

今回は、分子系統学をどのように行っているのか?その具体的中身を調べてみました。以下の3項目です。

(今回も下記の①、②で参考にしたのは、『生物を分けると世界が分かる』岡西政典さんです。有難う御座います。)

①『分子系統学=系統樹をどのように作っているのか?』

②『分子系統学の特徴は?』

③『分子系統解析の各方法について』

■■■PCR法を使って系統樹を作る■■■
系統樹は、新型コロナウィルス検査に活用されたPCR法を使っているのです。

DNAを人工的に取り出し、増幅させ、1本に解離し、配列を読み取る方法=PCR法で系統樹を作成する。DNA解析で得られた遺伝子の塩基の配列から系統樹を作成する方法は、基本的には、『配列の類似度』で検討することになります(固体A、B、Cの塩基配列の類似度より系統樹を作成する。塩基配列の違い数が少ない程、系統樹上の近い枝に配置される)。

■■■分子系統解析の5つのメリット■■■
では、何故これほどまでに、分子系統学が発展してきたのか?現在はDNA解析によって形態の進化を考察するという手法が主流となっているが、何故なのか?そのメリットを調べてみました。

①客観性が高い(形態にて系統樹を作成するより客観的)
②全生物で共通である(形態は、その生物の生き様に応じて、由来が異なっても形が似てしまう。これを収斂と呼ぶ。形態が似ていても、起源が同じ『相同』と起源が違う『相似』とで異なる。前者は系統的に遠い。このような場合にも分子系統学は適用可能)
③独立性が高い(一つの塩基の変化が他の塩基に影響を与えない)
④情報量が多い
⑤形質状態が決まっている(A、T、G、Cの4つの形質状態と決まっている。ただし、その状態の変化として、4つの塩基の変化率(塩基置換率)を考える必要がある。塩基は、細胞分裂によって生殖細胞(精子、卵子)が作られる際に、ごく稀に起こるDNAの複製ミスや化学的な損傷などが原因となり、その配列が変化する。このミスが起こる確率を『塩基置換率』と呼び、これと、細胞分裂の際の各遺伝子配列そのものの位置の入れ替え(『組み換え』と呼ぶ)が子孫に伝わることによって進化が起こると考えられている。したがって、系統解析において塩基置換率をどのように考慮するかは、DNA解析においては非常に重要)

■■■分子系統解析の各方法■■■
分子系統樹の作成法を大きく分類すると、遺伝距離を用いる方法(距離行列法;平均距離法、近隣接合法)と配列データそのものを用いる方法(形質状態法;最尤法、最節約法)に大別されます。ここでは、最節約法、最尤法について調べました。

1)最尤法
進化の過程で生じる塩基置換について、それを生じさせる仮説にもとづき、ある一つの共通先祖から実際に観察される現在の配列データが実現する確率(尤度)を求めて、この尤度が最大になる系統樹を選び出すという方法です。長所としては、進化における DNA の塩基置換は確率過程とみなすことができるが、最尤法ではそのことが明示的に取り入れられており、何を仮定して解析を行っているのかが明確である点です。すなわち、前提としている確率モデルがはっきりしているので、より良いモデルの選択、改良ができることです。

2)最節約法
塩基置換などの進化的変化数の合計を最小にする(最も節約する)という最大節約原理にもとづいて系統樹を作成する網羅的探索法の一つです。最節約法は、DNA塩基配列データばかりでなく、形態形質の形質状態などのデータにもとづいた分岐分析などでも利用されるアルゴリズムとしてよく知られています。最節約法は主に樹形を決定するために用いられる方法であり、一般的には枝長を求めることは困難です。また、ある特殊な場合を除いては、系統樹の根を無条件に与えることも不可能です。さらに、塩基置換数が非常に大きく、並行突然変異や復帰突然変異がかなりの頻度で起こっている場合には、置換速度が一定あるいはほとんど一定でない限り、最大節約法は重大な誤りを犯す傾向があります。
比較したアミノ酸や塩基数が少なく、並行突然変異や復帰突然変異が多いときには、置換速度が一定であっても最大節約法は誤った樹形を与える確率が高いことが知られています。

両方法とも長所短所があります。例えば、塩基サイトあたりの置換数が非常に小さく、しかも多数の塩基サイトが用いられたとき以外は、最節約法は真の系統樹を選ぶ効率が悪いことが指摘されています。また、最節約法はサイトあたりの置換数が大きくない限り、どの塩基またはどのアミノ酸がどの技でどう変化したのかについておおよその推定ができるという利点があります。いろいろな方法によって得られた系統樹のうち、どれが真の系統樹であるかを判断するための方法や基準は現在のところ知られていません。しかし、樹形全体の中のある特定の分岐について、その確からしさを検定したり推定するための方法は知られており、その一つとして広く用いられる方法は、ブートストラップ法とよばれる方法があります。

今回は以上です。次回は、~上手くいかない分子系統学!?~です。

List    投稿者 hirosige | 2022-09-18 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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