2022-08-06

デルス・ウザーラから学ぶ万物との一体化とは?

これまで観念回路の形成過程に迫ってきました。

主体凍結から、同類との一体化回路から万物への一体化回路を形成する中で、本能・共認回路との矛盾が発生。
それらを行動できるまで再統合するために包含思考(現象的には異なるものを大きく括る思考)を獲得し、それら現象の本質を抽出。
本質やそれらに関わることを構造化していくことで再統合し、「包含思考⇒本質の抽出⇒精霊の措定⇒構造化」を何度も組みかえることで矛盾を突破しました。

観念回路の形成過程の構造は解明されつつも、その過程で人類が突破口としてきた、「万物との一体化」や「精霊」などは“分かりそうで分からない”“掴めそうで掴めない”感覚になります。
始原人類にとって、これらは一体どういうものだったのでしょうか?
そこで一つの映画から、上記について迫っていきたいと思います。

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黒澤明監督の『デルスウザーラ』という映画をご存知でしょうか?

こちらよりお借りしました。
20世紀初頭(明治末期)のロシア沿海州への探検記(アレクセーニエフ氏記)の実話をもとに映画化されたものです。
主人公のデルスは狩猟少数民族のゴリド人で、近代化が徐々に進展する渦中ながらも、色濃く原始の風習や思考を色濃く残す人物でした。

主人公デルスのその有り様から、同類や万物と一体化するとはどういうことか、彼(原始人類)にとって精霊とはどういう存在か等を感じとっていきたいと思います。

映画の中でも印象的だったのは、デルスの凄まじい観察眼や洞察力、何があってもあきらめない不屈の精神!
これらは何によってもたらされているのでしょうか?

●全てのものを“人”と捉えている。
デルスは、動物だけでなく、火や水、太陽など全てをと表現していました。
全てを人=同類と捉え、活力源を得ていたのだと考えられます。

そして太陽と月は“偉い人”と表現されるのに対し、火や水、風等は“怖い人”と表現されています。そして焚火や人、時には自分を“悪い人”とも表現しています。
デルスにとって“偉い人”“怖い人”“悪い人”の違いは何なのでしょうか?

●偉い人とは?(太陽や月)
太陽が無くなれば、全ての生き物が生きていけない。
月は潮の満ち引き、女性の月経、生物の産卵、植物の育成に関わっている。
上記は一例だが、ここで分かるのは宇宙や生物全体を包含し、秩序を司る秩序の核となるものを“偉い人”と表現している。

●怖い人とは?(火・風・水)
抗うことができないものと捉えている。偉い人の捉え方とは異なり、個々の強さを感じる。

●悪い人とは?
バチバチと音を鳴らす焚火や余っている肉を火に入れた人、ロシア人に銃弾が欲しいといった自分に対して、“悪い人”と表現しています。
これらは秩序を乱すもの、つまり必要のない余分なエネルギーを浪費することに対して悪いと表現しているように思われます。

これら人の表現を適切に使い分けられるのは、全てのつながりの中で生きていて一体化の世界の中で生きているからではないでしょうか?

デルスは1人(=同類欠損)であるのに、主体が凍結することなく生きているのも“万物”と一体化しており、全てを“人”と表現している。
だから万物と共認充足を得ることができたから、生き延びて来れたのだと思います。

List    投稿者 takayama | 2022-08-06 | Posted in 4)サルから人類へ…No Comments » 

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