2021-10-08

哺乳類の知能進化① ~知能進化のカギは皮膚感覚にある~

最近のブログでは「哺乳類の集団形態」を①~④のシリーズでまとめました。

今回は、哺乳類追求の新しいシリーズとして「哺乳類の知能進化」について扱っていきます。

 

最初に追求するのは「知能を進化させた要因」です。

哺乳類の脳は、それ以前の魚類、両生類に比べて脳(とりわけ新皮質)が著しく発達しています。その要因は何か?を追求していきます。

 にほんブログ村 科学ブログへ

◆皮膚感覚が知能進化のカギ

哺乳類の進化過程から押さえなおすと、原始哺乳類は圧倒的な弱者であり、大型爬虫類から逃げ回っていた存在でした。敵から逃れるために試行錯誤したことは、知能進化の要因の一つになり得るかもしれません。しかし、それだけでは知能発達の説明になりません。なぜなら敵から逃げるという点では、魚類も両生類も同じだからです。従って、哺乳類の固有性に要因を求める必要があります。

原始哺乳類の原モグラは、外敵を避けて、土中に隠れ住み、視覚機能を後退させて、触覚⇒皮膚感覚を発達させる方向に進化しました。

加えて哺乳類は授乳や子どもを誉めるなど、スキンシップを通じて、皮膚感覚に快感機能を付与することで、皮膚感覚の回路を著しく発達させました(スキンシップの心地良さ、母は乳児の様子を感じ取り、乳児は母の状況を感じる等)。

哺乳類が他の生物に比べて知能が著しく発達している結果から考えてみると、この皮膚感覚の発達がカギをにぎっていそうなので、皮膚について深めてみましょう。

◆皮膚は第2の脳

まず皮膚は感覚機能として極めて優れています。例えば、日本の職人さん。大工さんは、手で触るだけで「良い木かどうか?」が分かると言います。

また板金職人は、一ミリ以下の凹凸も手で触るだけで感じ取ることでできるそうです。

つまり視覚などの他の感覚機能に比べて、極めて優れた識別能力を持っています

また、皮膚はそれ自体が駆動物質=情報伝達物質を分泌し、キャッチできるという脳と同様の機能を持っています。

鳥肌が立ったり、じんましんが出たりするのは皮膚の拒絶反応で、これらは脳が命令している訳ではなく、皮膚自体が判断している一つの具体的現れです

実際、目や耳ができるまでは生物は皮膚によって外部情報をキャッチし(それを集約し)判断していました。つまり、皮膚はそれ自体がもともと判断機能を持っていたのです。

例えば触覚が生み出す「心地よさ」「気持ちの悪さ」「怖さ」等は皮膚自身がが感じ生み出す感情です。

ここで感覚器官としての皮膚の特殊性に注目する必要があります。目や耳は情報を脳に伝えるだけで、自ら判断機能を持っているわけではありません。

哺乳類は、この皮膚と脳の判断=駆動物質のやり取りを強化することで、皮膚の持つこの機能を脳に転移させ、脳と皮膚を「共進化」させたのです。

◆集団行動が知能を発達させた

知能進化の土台となった皮膚感覚。そして、哺乳類の知能進化にはもう一つの要因があります。それが「集団化」です。

これまでのブログで、哺乳類の集団は「母系集団」であり、それは「親和機能の強化によって実現した」と扱ってきました。この親和機能の強化は、スキンシップ(皮膚感覚)の発達が土台になっています。

哺乳類は大人になっても、暇さえあれば、スキンシップを盛んに行います。そしてこの親和機能の強化を基礎にして、各個体の連携行動を生み出し、そのための相互の意思伝達(鳴き声など)を発達させました。

◆まとめ

今回のポイントを整理すると、

・哺乳類はスキンシップによって「皮膚感覚」を著しく発達させ、脳と皮膚を「共進化」させた。

・スキンシップ=親和機能の強化によって集団化を可能にし、集団行動=連携行動によってさらに知能を発達させた。

以上

List    投稿者 t-kenta | 2021-10-08 | Posted in ①進化・適応の原理, ④脳と適応No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2021/10/7367.html/trackback


Comment



Comment