2021-10-01

哺乳類の集団形態④~哺乳類のオスの役割=存在理由は何か?~

前回は『哺乳類はなぜ母系集団なのか?』を扱い、
メスは性闘争本能を上回る【親和本能】を強化することで母系集団を形成したことが分かりました。

th

では、オスは一体どうしているのでしょうか?
そもそもオスの役割とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、オスの役割について追求していきます。

 にほんブログ村 科学ブログへ

■種の保存~・種を存続するための闘い・~

「闘い」と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?
おそらく、相手(敵)と勇猛果敢に闘っている姿が浮かび上がってくると思います。その理由は、自らに照らし合わして一個体を見てイメージしているからだではないかと思われます。
しかし、生命原理から言えば「種の保全」ということになり、一個体が問題になることはありません。

弱者であった哺乳類は性闘争本能を強化していきます。

卵産動物が一般に大量の卵を産み、その大部分が成体になるまでに外敵に喰われることによって淘汰適応を実現しているのに対して、胎内保育と産後保護の哺乳類には、適者だけ生き残ることによって種としてより秀れた適応を実現してゆく淘汰適応の原理が働き難くなる。そこで、淘汰過程が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化していった。

引用:実現論 前史 ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能010304

繁殖期になるとオスはメスに引き寄せられ、メス集団の周りに集まってきますが、オスは性闘争に勝利するとメス集団の縄張りに入って子孫を残すことはできますが、敗れたオス(弱オス)は繁殖期の間、メスの縄張り周辺に止まることになります。(これが哺乳類の内雌外雄という構造)

外敵に襲われた場合、真っ先に外側の弱オスが襲われることになりますが、メスや子供たちの生存確率は高くなります。
性闘争の勝者がメスと子孫を残し、弱オスたちは外敵に喰われることで、その子孫、種を守っているのです。

オスは強い弱い関係なく、闘争に立ち向かうことで、勝とうが負けようがオスの役割は果たしているのです。

■オスの変異存在~・挑み続けることが変異可能性を拡げる・~

哺乳類の集団はメス主体の母系集団であり、メスが子育てという安定基盤を確保していました。

集団化のメリットは、
・集団で防衛できる(襲われた仲間を助ける)
・敵を見つけやすい
・離散して逃げれば的が絞れない
・獲物を見つける確率が上がる(餌を確保しやすい)
などで、敵からの防衛力と餌を獲得するうえで有利。集団を構成する成員全体で外圧を察知することにこそ、集団化のメリットがあります。中でも弱者である哺乳類にとって極めて重要なことは敵の察知。敵をいち早く察知するために哺乳類は集団を形成したのです。

一方、オスは『哺乳類はなぜ母系集団なのか?』で記載されているように、

オスは【変異】の存在であり、胎内保育によって淘汰圧力が弱まったので、互いに敵視し合う【性闘争本能】をより強化することになりました。
結果としてオスは、性闘争本能が強いために集団をつくることができないのです。
またオスには【巣立ち本能】が備わっており、ある一定の時期になると、集団から巣立っていきます。

オスの役割、存在理由はななのでしょうか?

生命原理は種の保全であり、そのために変異と安定の双方を確立する必要があったのです。

刻々と変化する外圧に適応するには、種として常に変異していく必要があります。生物は雌雄分化して以降、その変異を担っていたいのがオスです。『哺乳類はなぜ母系集団なのか?』で記載されているオスの『巣立ち本能』とは、生命原理に基づいた根源に近い本能に近いのではないでしょうか。

つまり、常に集団の外で新しい環境に挑戦し続けることこそがオスの役割であり、根源的な役割に近いものではないでしょうか。
種の変異を実現するためには、オスは成体になると母親のもと(集団)を離れ、未知への世界に挑み続けます。これこそがオスの役割であり、存在理由と言えます。

List    投稿者 m-yoriya | 2021-10-01 | Posted in ①進化・適応の原理, ③雌雄の役割分化No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2021/10/7330.html/trackback


Comment



Comment