2019-12-05

オランウータンも人間と同じように過去の出来事を伝えることができるのか

>人間が同じ意味を伝えるために、いろいろな音の組み合わせを使う(たとえば「車」「自動車」「乗り物」というように)のと、似ているのではないかと研究チームは推察。「オランウータンは、自分の伝えたいことが相手に確かに伝わったか確認しているようだった。そのために、同じことを違う音の組み合わせで繰り返しているように聞こえた」という。<(オランウータンの鳴き声、言語進化の様子表す=研究

オランウータンは、彼ら独特の鳴き声(≒言語)で、仲間に情報を伝えて共有しているようです。

また、オランウータンが人間と同じように「過去の出来事を他の個体に伝達する」ことができるかもしれない と主張する研究チームもあります。

Gigazine https://gigazine.net/news/20181219-orangutans-can-communicate-about-past/ より。

オランウータンも人間と同じように過去の出来事を伝えることができるかもしれない

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オランウータンが「過去の出来事を他の個体に伝達する」ことができるかもしれないと、イギリスのセント・アンドルーズ大学の研究チームが主張しています。「現在のことではない、過去や未来の出来事についての伝達」はヒトの繁栄に大きな役割を果たしており、オランウータンが過去や未来の出来事を伝えることができるとすれば、オランウータンを調査することで「ヒトの言語がどのように進化してきたのか」を解明する手がかりが得られる可能性があるとのことです。

Time-space–displaced responses in the orangutan vocal system | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/4/11/eaau3401

 Orangutans can communicate about the past just like humans, new research finds
https://theconversation.com/orangutans-can-communicate-about-the-past-just-like-humans-new-research-finds-108288

ヒトは言葉によって情報を伝達することを可能にした結果、ヒト同士での情報や知識の共有において大きな進歩を遂げました。言葉によってヒトは「今、目の前にあるもの」だけではなく、「過去に起こったできごと」「将来起こること」について話すことができるようになったのです。この「displaced reference(置換された言及)」として知られている言語の特徴はヒトの日常に浸透しており、現在のようにヒトが地球を支配する過程で大きな役割を果たしました。

情報伝達の際にdisplaced referenceを使うことで、現在話し相手と自分の目の前にある事物以外について話すことが可能になり、伝達可能な情報量が飛躍的に増加します。目の前にない事物に関する情報を共有するヒト以外の動物として、社会的集団を形成する昆虫の一部が確認されているとのこと。たとえばミツバチは、「ミツバチのダンス」と呼ばれる特定のパターンのダンスをすることでミツや花粉、水源や新しい巣の予定地を知らせることができます。ミツバチのダンスの意味を初めて解読したカール・フォン・フリッシュ氏は、動物行動学という学問分野に大きな寄与を果たしたとして1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

しかし、生物学的にはミツバチのような昆虫と人間は大きくかけ離れた存在であり、ミツバチのダンスに関する研究を進めても「ヒトの言語がどのように進化してきたのか」を解き明かす手がかりは得にくいとのこと。そんな中、セント・アンドルーズ大学の研究員であるAdriano R. Lameira氏はオランウータンについての研究を行い、オランウータンが「今ここにないもの」についての情報を伝達する可能性があることを突き止めたそうです。

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Lameira氏の研究チームは、インドネシアのスマトラ島の熱帯雨林で野生のオランウータンのメス7頭を相手に「捕食者であるスマトラトラとの出会い」をシミュレーションしたとのこと。実験ではスマトラトラに変装した研究者がオランウータンの目の前の地面を歩き回り、その際にオランウータンがどのような声を発するのかを調査したそうです。

その結果、オランウータンのメスはストレスによって行動が抑制されていたというわけではなかったにも関わらず、捕食者に対して音声的な反応を見せませんでした。その代わり、ベンガルトラがその場を立ち去った後もしばらく待ってから、ようやくオランウータンは警告の声を出したとのこと。オランウータンはベンガルトラの変装をした研究者と接触してから声を出すまで、平均して7分ほどの間隔を開けており、最大で接触から20分も声を発するのを控える個体もいました。

当然ながらベンガルトラがすぐ近くにいる時、声や物音を立ててしまうことは大きな危険を伴います。もしもオランウータンがベンガルトラと接触してすぐに声を出した場合、その声自体が命取りになりかねません。そのため、オランウータンのメスが声を出さなかったことについては十分に理解できる反応です。その一方で、 「いったいなぜベンガルトラが去って時間が経過してから、オランウータンは警告を発したのか?」という疑問が浮かびます。

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「この時、もしも母親がベンガルトラが去った後も警告を発さなければ、オランウータンの子どもはベンガルトラの脅威に気づかなかったでしょう」と述べるLameira氏は、時間差で発された警告は母親が子どもにベンガルトラの危険について伝えていたのだ と考えています。この仮説を前提とすれば、オランウータンは目の前にいる脅威についてだけではなく、「さっき通過していった脅威」についても情報を共有できるということになります。

1970年代、一度人間によって保護されたオランウータンを野生に帰そうという試みが行われましたが、その多くは失敗に終わりました。人間によって育てられたオランウータンは、ベンガルトラをはじめとするジャングルの危険についての知識がなく、難なく捕食者の餌食になってしまったのです。

一方でオランウータンの子どもは数年間にわたって母親と行動を共にするため、この期間中に母親からさまざまな知識や技能を受け継ぐことができます。今回Lameira氏の研究チームが発見した「母オランウータンの警告音声の遅延」に関する事実は、母オランウータンが子どもにベンガルトラの脅威を「今、目の前にあるのではなく、さっき目の前を通ったもの」として教えていることを示唆しています

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今回の仮説はオランウータンが言葉を話したというわけではありませんが、ヒト以外の類人猿が現在だけでなく過去、あるいは未来についての情報を伝達できる可能性を示している とのこと。ヒトに近い存在における情報伝達を調査することで、どのようにヒトが現在のような言語能力を獲得し、他の類人猿と違う存在になっていたのかの手がかりを得ることができるとLameira氏は述べました。

 

(以上)

 

List    投稿者 seibutusi | 2019-12-05 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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