2014-07-26

『少食のしくみ-1』~人は「1日青汁一杯」でも元気に過ごすことが出来る!

ガン、脳卒中、心臓病の三大生活習慣病を始め、糖尿病、肥満、アレルギー、高血圧、便秘、冷え性等々の激増し、それらの原因は「食べ過ぎ」や「食の欧米化」にあると言われ、現在、「断食」「一日一食」など様々な『少食健康法』が注目されています。また、「糖質制限」「脂質制限(カロリー制限)」「マクロビオティック」など『何をどのように食べた良いいの?』という関心も高まってきています。

これらの現象は、以前からある「ダイエットブーム」の延長とも言えますが、最近では随分その様相がずいぶん変わりました。例えば、最近はやりの「糖質制限」のように、専門家である医師が提唱するものが増え、科学的な根拠も深く追求されるようになりました。(以前は根拠が乏しい怪しげなものが多かったものですが…)

この食に関する関心は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の影響により発生した東京電力の福島第一原子力発電所事故を発端とし、急激に高まりはじめ、かつての「ダイエットブーム」のような個人的な興味関心を超え、社会問題とも言える位相にまで急激に高まってきています。

食べること、やめましたそこで、今回のシリーズでは、「1日青汁一杯、50Kcal」という超小食を十数年実践しながら元気に過ごしている森美智代さんの事例を1つの切り口として、私たちは健康のために何をどのように食べたらいいのか?考えていきます。 この「1日青汁一杯」は、現代栄養学の三大栄養素「タンパク質・脂肪・炭水化物」のうち、脂肪・脂質はほぼゼロ、摂取するタンパク質もごく少量でそれも植物性のみ、という、いわば“究極”の食事法・健康法、ここのしくみを考えていくことで、様々なことが見えてくるのではないかと期待するところです。

もちろん、だれもが「1日青汁一杯」で生きることを最終目標とするわけではありませんが、森さんの事例を通じて、人の食のメカニズムについて理解を深め、これからの「食」のあるべき姿を考える上での、切り口の1つにしたいと考えています。

では、今回は、森美智代さんの著書『食べること、やめました』の第4章「科学が証明した私の身体。断食と少食でシステムが変わった!?」を中心に、専門的・科学的な視点での検査で分かったとされることから、追究のポイントや不明点・疑問点などを抽出してみます。

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まず、森さんが実践している「一日青汁一杯」がどんなものか紹介します。 森さんと青汁青汁の材料は、青い葉っぱの野菜を5種類、季節のもので、入手しやすいもの。分量は各30g、計150g。材料をミキサーで撹拌して、網で濾してたものを飲んでいるそうです。 青汁以外には3種類のサプリメント、それに、生水と柿茶を1日に約1~1.5リットル程度飲んでいるとのことです。

(青汁を手にする森さん)

人間離れした牛のような腸

・私の腸内細菌は、植物動物に近い細菌構成になっているとうのです。…「…まるで牛のなかのようだ」だそうです。(P.110) ・その代表…が「クロストリジウム」という菌です。これは、食物の繊維を分解して、たんぱく質の材料であるアミノ酸を作り出す菌だそうです。ほかにも「ユーバクテリウム」など…、それらを合わせると、普通の人の腸には30%くらいいるそうですが、私の場合は約60%でした。(P.111) ・牛は草だけ食べているのに、あれだけ大きな体を作り、メスならたんぱく質や脂肪の豊富な牛乳までたっぷり作ります。それは、体や牛乳の材料になるたんぱく質や脂肪を作り出しているからなのです。そのために働いているのが、牛の消化器官にすむ細菌たちです。そして、私の腸にも、そういった細菌が「人間離れして牛並み」に多くふくまれているというわけです。(P.112)

草食動物は「生きている植物を主な食物とする動物」ですが、そのなかでも牛は、もっとも効率的に植物から栄養を摂取するしくみを進化させた動物とも言われます。そのしくみのカギは、「反芻」する4つの胃に

追求ポイント1】

まず、草食動物の腸内細菌との共生関係について把握しておくことが必要そうです。 「草食」という適応戦略はいつごろどんな外圧状況のもとで登場したのか?という生物史的な視点を押さえ、もっとも効率的に植物から栄養を摂取するしくみを進化させた動物とも言われるウシの「反芻」する4つの胃、そこに住む腸内細菌の役割を把握していきます。 また、別の視点では、そもそもそのような“人間離れしたウシのような”腸内細菌が、ヒトの腸内に棲息するすることが可能なのだろうか?簡単に腸内細菌の構成が変わるものなのか?といった点も明らかにする必要がありそうです。

 

捨てるものをとことん利用する細菌

・クロストリジウムやユーバクテリウムなど、「食物繊維を分解してエサにしたんぱく質を作る細菌たち」の働き方…、食物繊維を分解してエサにしながら、腸内にある「アンモニア」からアミノ酸を作り出すのだそうです。(P.115) ・アンモニアとは、体内でたんぱく質が使われた後に出る代謝産物、つまり「カス」です。アンモニアのままでは有害なので、体内では…安全な「尿素」に変えて蓄えます。その多くは尿として、一部は腸から排出されます。…「カス」とはいえ、アンモニアの中には、たんぱく質の材料になる窒素がかなり含まれています。クロストリジウムやユーバクテリウムなどは、…、この窒素を利用してアミノ酸を作り出す…。 ・この細菌たちのおかげで、私の腸では、普通は消化できない繊維を消化したうえ、普通は捨てるアンモニアからたんぱく質の材料を作っているらしいのです。(P115)

ここでもカギを握っているのが腸内細菌のようです。

追求ポイント2】

普通は捨てているアンモニアを腸内細菌はどのように利用しているのか?また、アンモニアをどのようにタンパク質の材料となるアミノ酸に変換しているか?などを解明する必要がありそうです。

 

アンモニアから作られる尿素も再利用

・…「生菜食や少食実行者は、アンモニアから作られる尿素を再利用している」という研究結果があります。(P117) ・本来ならば、体は尿素を栄養源としては認識しません。ですから、ほとんどは吸収さず、したがって毛中に出てくることもありません。…ところが、玄米菜食の少食療法をしている人では、経口投与した尿素が次第に血中に現れ初め、投与後、80時間を過ぎても一定の濃度を保っていたのです。さらに、私を含む生菜食の少食療法実行者は、同様の傾向で、より高い濃度が続きました。つまり、普通なら捨ててしまう尿素を、生菜食や少食療法の実行者の場合は、再利用して栄養源として使っていることが、この研究結果によって裏付けられたのです。(P118)

尿素再利用の具体的なメカニズムについては本では触れられていません。民間療法の1つに、自身の尿を飲むことによって病気を防いだり、健康を促進させたりする「飲尿健康法」がありますが、何らかの関係があるのかも知れません。

【追求ポイント3】

普通なら捨ててしまう尿素を、栄養源として利用するしくみを明らかにする必要がありそうです。ここでも、やはり腸内細菌がカギを握っているのでしょうか?

 

基礎代謝量は同年代の女性のマイナス43%

・基礎代謝量は、…おおむね成人女性で1,200キロカロリー、…ところが、私の基礎代謝量を調べていただいた結果、同年代の女性の平均値より43%も少ないことがわかったのです。つまり、大変な省エネ体質…(P122) ・私の青汁一杯は60キロカロリーですから、…計算だけでいうなら、私の体は、日一日とエネルギー源として使われ、なくなっていくはずだというのです。それでも、こうして元気でいるのは、基礎代謝量が少ないのに加え、ここまであげたいくつかの体の適応(変化)が絡み合って、うまい具合に体が維持されているのでしょう。(P123)

基礎代謝量が516キロカロリー(1,200×34%)、それに対して摂取エネルギーは60キロカロリー、これでは全くカロリー計算が成立しません。どうもカロリー計算は、腸内細菌との共生を考慮されておらず、現実とは乖離しているようです。

【追求ポイント4】

まず、現代栄養学の基礎代謝量、カロリー計算の根拠は?どのように計算しているのか?などを把握しておく必要がありそうです。

 

三大栄養素・エネルギーの摂取量はほとんどゼロ

・私個人の栄養摂取量状況は、…日本人の食事摂取基準と、実際に私がとっている栄養素の量を比較し、基準に対してどれだけとれているかという充足度は… もっとも充足しているビタミンCで59%、次いでカリウムの44%、…。これら、青汁でとれるこれらの栄養素は、比較的、充足度が高くなっています。といても、…多くて4~6割に過ぎない…。(P128) ・少ない方の筆頭が、炭水化物(糖質)と脂質で検出不可、そしてエネルギーは1%、質は3%。つまり、いわゆる三大栄養素とエネルギーは、「ほとんどゼロ」という結果です。(P128)

カロリー計算と同様に、「三大栄養素」という考え方自体に限界がありそうです。エネルギー源は「三大栄養素」に限らないということだと思います。

【追求ポイント5】

現代栄養学でいう「三大栄養素」の根拠は?どういった背景から作られた理論なのか?などを把握しておく必要がありそうです。

 

「現代栄養学的には説明できません」

・握力や骨量、血中ヘモグロビン濃度、血中アルブミンについても計測しました。握力は、女性の中では強い方であり、骨量は同年代の女性よりやや多くなっています。ヘモグロビンは、…基準値におさまっていました。血中アルブミンも基準値内でした。 ・(調査した)奥田先生は、次のように述べられております。 「…なぜ食べなくても体重がへらず、十数年も元気で過ごしているのか、現代栄養学的には説明が付きません。エネルギー出納から見ても、とりわけたんぱく質出納でいうと。本来なら筋肉が衰えていくばずなのに…」(P134)

少食という現象に対して、カロリー計算も三大栄養素も適用できない。こうなると「現代栄養学的には説明できません」とは、現代栄養学の敗北宣言にほかなりません。

【追求ポイント6】

腸内細菌に関して、最近の研究方法のめざましい発達によって、解明が進んんでいますが、まだまだ不明点が多く、今後さらに発展していく分野です。当然これらの新しい研究成果は、現在主流の現代栄養学や近代科学には生かされてはいません。ここに現代栄養学の限界があり、逆に最近の研究を活かすことで次代の新しい栄養学の可能性が見えてくるはずです。

 

少食のしくみは、「腸内細菌」がカギを握る

ここまでを整理すると、追求課題は大きくは次の2つの方向に分けられます。

『追求課題①』 腸内細菌との共生関係を前提とした代謝システムの解明。(【追求ポイント1~3】)

『追求課題②』 その代謝システムを組み入れた“あたらしい栄養学の模索。(【追求ポイント4~6】)

次回より、今回抽出した6つの【追究ポイント】を取り上げ、もはや時代遅れの現代栄養学や近代科学の枠組みにとらわれること無く、科学的に掘り下げ『少食のしくみ』に迫っていきます。

List    投稿者 seibutusi | 2014-07-26 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

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