シリーズ 免疫とアレルギー4~基礎知識(3)免疫機能の進化過程~
皆さん、こんにちは。
前回は『出産前後の免疫』を扱い、自然免疫や獲得免疫などをみてきました。
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「食の安全」より |
そもそも免疫とは、外界から体内に侵入する病原体である細菌やウィルス、カビなどの非自己物質を認識し、これを体外へ排除する生体防衛機構のことである、と定義されます。
しかし、『基礎知識(1)胎児期の免疫』でも述べたように、細菌やウイルスから守っているはずの免疫は、アレルギー症状を引き起こすメカニズムに関与しており、“免疫が暴走”しているようにもみえます。
人類にはアレルギー症状がありますが、人類と同じ環境の動物にもアレルギー症状はあるのでしょうか?
今回は少し前後してしまいますが、生物の進化過程に遡って免疫の進化過程を見てみたいと思います。
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脊椎動物の免疫系細胞は大きく分けて3つあります。一つ目は異物を取り込んで消化・分解してしまう大型の食細胞である『マクロファージ』、2つ目は自分の細胞の異変や発達未熟なものを見つけて破壊する『ナチュラルキラー細胞』、そして最後に、侵入物ごとに多彩な抗体をつくる『リンパ球(T細胞・B細胞)』です。
この中で免疫系細胞の出発点は、このマクロファージと考えるのが有力と考えられています。
(※マクロファージの起源は、旺盛な食機能を持ったアメーバ(単細胞真核生物)に求めることができるし、さらに遡れば、エネルギー効率を高めた好気性のバクテリア(真正細菌)がその前身と考えられます。)
◆多細胞化と共生化の進化段階
自然免疫の代表であるマクロファージが微生物を食べることで、この細胞を取り込んで微生物や異物から防衛する(マクロファージにとっては、えさが手に入る)共生戦略の成立があったと考えられます。この免疫系はその意味では、極めて単純な応答関係の免疫反応であったと言えます。
◆神経細胞(ホルモン細胞)が機能分化していく段階
この段階では、T細胞などのリンパ球の獲得免疫が登場します。ミミズ(環形動物)とヒトデ(棘皮動物)では皮膚移植で拒絶反応が起こりますので、この無脊椎動物あたりから、おそらく第二の免疫系が発達したのではないかと思います。いずれもホルモン系の機能分化が進み、神経系が発達し始めた生物です。
◆脊椎動物の段階
免疫系の著しい発達は、脊椎動物以降に顕著になったと言われます。獲得免疫系の2種類の免疫反応システム(B細胞による体液中の液性免疫と、T細胞による主に細胞内の免疫反応である細胞性免疫)の基本システムが出来上がったと考えられます。
脊椎動物は、体細胞の仕事能力向上と統合機能を司る脳や情報伝達の神経系の発達によって、多様な能力を獲得し新たな環境へと進出することができました。しかし、新たな生息環境への進出は同時に新たなウイルスや細菌などの抗原との戦いでもあります。例えば、多産から少産化戦略は種存続の為感染からの防御機構を高める必要性も出てきたことが想像できます。
これは、当然のことながら生物進化と免疫進化がパラレルに進んでいることを示します。様々な免疫物質(専門分化)を生み出す、と同時に免疫応答の仕組みを高度化(統合化)してきました。これが脊椎動物以降の獲得免疫であると考えられます。
◆多細胞生物の進化と免疫機能の獲得状況(クリックすると拡大します)
次回は、脊椎動物以降の獲得免疫、人類への進化過程で獲得した免疫機構について見たてみたいと思います。
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