2013-10-31

シリーズ 免疫とアレルギー2~基礎知識(1)胎児期の免疫~

皆さん、こんにちは 😀
前回は「母乳とアレルギー」を扱い、母乳に含まれる成分(母親の体質などの影響)が問題でアトピーを発症していることが見えてきました。

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一方で、アレルギー発症には免疫機構が関与しているとの見方が一般的となっています。
そこで、今回は「アレルギーに関する免疫機構の基礎知識」と赤ちゃんの側からの視点で「胎児から新生児の免疫の発達」の構造を見てみたいと思います。

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【アレルギーに関する免疫機構の基礎知識】
免疫系で抗体(イムノグロブリン)と称されるものには、IgA、IgD、IgE、IgM、IgGがあります。これらの抗体のうち、通説では外部刺激に対して、アレルギー症状を引き起こすメカニズムに関与している主な抗体がIgEとされています。また、ウイルスや細菌などから体を防御するためのメカニズムに関与する抗体は、主にIgGです。

IgE獲得の起源は哺乳類段階となっています。両生類のように粘膜に覆われているわけでもなく、爬虫類のように皮膚が硬くもない哺乳類の皮膚は吸血ダニの攻撃を受けやすくなっており、この吸血ダニには細菌型免疫では対抗できずにIgE型免疫システムを獲得したとされます。(最も先端的な機能のひとつです)。

外刺激を受けて抗体産生をする際、体に侵入をしてきたアレルゲンをマクロファージがとりこみ、分解をします。その分解産物がマクロファージの表面に出てきて、ヘルパーT細胞(免疫の司令塔の役割をする細胞のこと)に提示することにより、サイトカインという物質が出され、B細胞(リンパ球の一つ)が活性化されて抗体産生をします。このメカニズムはIgEでも、IgGでも同様です。しかし、ヘルパーT細胞には少なくとも2種類あり、IgEを産生するように命じるもの(Th2)と、IgGを産生するように命じる(Th1)があることがわかっています。

つまり、この2種類のどちらのヘルパーT細胞が活性化されるかで、アレルギーになるか、もしくは体の防御に関与するかが決まるようです。通常、この2種類のT細胞がバランスよく(とはいえ、Th1が優位に立つのですが)存在しています。このTh1が優位に働いてくれている限りは、花粉症や食物アレルギーなどの症状は起こりにくいのですが、体調が悪くなったり、食生活の乱れや環境の変化(ストレスなど)などからバランスが崩れると、Th2が優位になり、体には良くない症状がおきやすくなります。

【胎児期の免疫】

図.妊娠8週の胎盤
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             (メルクマニュアルより)

受精から着床、胎盤形成までの成長過程では、卵子も含めて母親に蓄えられている脂肪分から吸収し、胎盤形成以降は、胎盤を通して栄養と酸素を吸収します。
胎児のときは羊水の中でしっかりと保護され、いわゆる無菌状態にあります。そのため、外部(主に環境因子)からの異物が入ってこないと働かないTh1は胎児期では劣勢となり、Th2が優位となります。
但し、胎児期は外部(環境)刺激には直接影響を受けないものの、母親が口にした食品などは胎盤を通じて、直接胎内に入るため、その影響を大きく受けます。

胎児の免疫機能の発達

図.リンパ球がつくられる主な臓器
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B細胞は造血幹細胞のいる臓器でつくられ、
胎児期は肝臓で、生まれてからは骨髄でつ
くられます。
一方、T細胞だけは胎児期も、生まれてから
も胸腺という臓器でつくられます。

①胎児T細胞の分化は7週に始まり、その後分化と発達します。胎児期のT細胞は免疫系を制御する機能も果たしており、その一部は抗原刺激でアナルギーをいう抑制された状態にあります(※T細胞:自己・非自己を認識し、多種類のサイントカインを分泌し免疫系を制御しています)。

②B細胞は7~9週に肝臓で幹細胞がprw-B細胞として出現し、13週に表面IgMし、表面IgG発現B細胞はやや遅れて出現し、正期産児は出生時にほぼ末梢血B細胞レパートワ(それぞれの抗原に反応する抗体をつくるB細胞クローンの集団のこと)を完成します。
※B細胞:T細胞と協力し、抗体を産生します。

③組織マクロファージは3~4週で出現し、4~5週には肝臓血液細胞の70%がマクロファージで占めており、その後急速に減少し、30週以降、末梢血の3~7%を占めることになります。

④胎児の好中球プール(プールというのは、必要なときには備えて末梢血以外のところに蓄えてある細胞のこと)は14~24週は肝臓で、その後は骨髄に移行します。
※好中球:おもに細菌感染に対抗する主力兵隊です。

⑤NK細胞は16週までほとんどみられず、その後、NK細胞自体は増加し、正期産なら末梢血リンパ球の15%で成人並みの数になっています。
※NK細胞:おもにウイルス感染に対抗する主力兵隊です。

母体からのIgG移行
免疫グロブリンの胎盤移行は12週ごろからから始まり、その後徐々に増加し、正期産児の血中濃度は成人を超えるといわれています。移行したIgGは胎内で胎児を母体由来の抗原刺激からも守っています。移行したIgGの半減期は20日です。IgA、IgMは通常移行しません。


長くなりましたので、続きは『(2)出生前後の免疫』に回したいと思います。
長文にお付き合い頂きありがとうございます。m(_”_)m

List    投稿者 yoriya | 2013-10-31 | Posted in ⑤免疫機能の不思議No Comments » 

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