2013-08-06

シリーズ 免疫とアレルギー1~母乳とアレルギー

皆さん、こんにちは
今回より、チーム「免疫とアレルギー」を発足しました
近年、アトピーや花粉症や食物アレルギーが、どんどん増えてきています。
いろんな原因が取り上げられることは多いのですが、なんで?という明確な答えは出ていません。
特に食物アレルギーなどで、死にいたるケースが出ているなど、人類は新たな危機にさらされているかのようにも感じてしまいます
このシリーズでは、花粉症・アトピー・食物アレルギーの3つを中心に、あらゆる角度から、アレルギーの本質に迫ってみたいと思います
どうぞよろしくお願いします
では、早速第1回ですが、よくアレルギーに関連して語られることが多い母乳について調べてみました

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1.母乳の成分
母乳は、成分によって、初乳・移行乳・成乳に分けられるのだそうです。
初乳・・・妊娠後半期から産後3~4日後に分泌される
移行乳・・初乳と成乳が混合したもので、産後1週間くらいまで分泌される
成乳・・・産後1週間~10日移行に分泌される

初乳は、成乳と比較すると高たんぱく質・低脂肪分で、赤ちゃんの喉や消化器官を病気から守ってくれる免疫抗体(IgA)やラクトフェリンなどが多く含まれているのが特徴です。
生まれてすぐの赤ちゃんには、病気への抵抗力・免疫力は十分ではありません。そこで赤ちゃんは、おなかの中にいるときに胎盤を通してお母さんから免疫をもらいます。お母さんからもらった免疫は、赤ちゃんの体に侵入してきた病原体にペタペタとくっついてやっつける力があります。
これに力を貸して赤ちゃんを守ってくれるのがIgAとラクトフェリンです。
初乳には、IgAの場合、成乳の10~20倍、ラクトフェリンは5倍ほど多く含まれています。
また赤ちゃんの始めてのウンチである胎便(黒っぽい海苔の佃煮のような色)の排出をよくしてくれる作用もあります
2.IgA・ラクトフェリンとは
IgA・・・ウィルスや細菌の侵入のほか、赤ちゃんの胃や腸の粘膜に広がり、粘膜を覆うことで、アレルギーの原因となる異種たんぱく分子などの侵入も防ぎます。
ラクトフェリン・・腸にとって必要なビフィズス菌には作用せずに、細菌の生育を抑制したり、細胞を活性化させる働きをしています。
3.母乳がアレルギーの原因になる?!
ここまで見てきたように、母乳で育てることで、免疫力を獲得し、病気にかかりにくい、強い子が育っていくハズということが見えてきます
実際、母乳で育てられた赤ちゃんは、突然死の発生率や、小児糖尿病、小児がん、中耳炎などのリスクが低いというデータが、あります。
しかし、何と!母乳育児がアレルギーの原因になっていると思わせるかのようなデータがあるそうなんです
一体、どういうことなんでしょうか

母乳がアトピーに関係するのはほぼ確かなようです。
正確に言うと、「IgE陽性アトピー」つまり「皮膚湿疹を伴う、何らかのアレルギーを持つ子」に関しては、母乳が関係してそうだ、ということです。
正確な疫学調査研究の論文はまだそれほど数がありません。
「母乳」で検索すると何千と論文が出てきます。
それでも結論がなかなかでません。「母乳育児はアトピーの発症を抑制する」「いや、そのような効果はない」「母乳育児が喘息を予防する」「予防しない」と、相反する結果の論文が乱立しています。
でも、最近ほぼ確からしい、と
研究者の間で共通認識になってきたのは
「アレルギー疾患を持つ母親の母乳で育った子は、アレルギー疾患を発症しやすい」
ということです。
アレルギー疾患というのは、食物その他のアレルギー(花粉症も含む)の他、アトピー性皮膚炎、喘息をさします。
これを指し示す論文がここ10年くらいのうちに結構出たのです。
(気になる人は続きも読んでくださいリンク

これ以降に書いてあることも含めて、ここに書かれていることをまとめると、

・母乳がアトピーに関係するのは間違いなさそう
・アレルギーを持つ母親の母乳で育った子は、アレルギー疾患を発症しやすい
・母親にアレルギーが見つかってなくても、子供が2人ともアトピーということもある
・完全母乳だと4人に一人が湿疹が出る。これが完全ミルクだとたった20人に一人というデータがある。
・母親のアレルギー素因が子のアレルギー疾患に及ぼす影響力は、父親と比べて1.5倍。つまり0.5が「母乳中の何か」のせい。

以上より、この論文から見る限り、母乳とアトピーが関係してそうだということが見えてきます
しかし、赤ちゃんがいつどんな状態(早産児や低出生体重児であるか否かなど)で産まれたかによっても違ってくるという、本来赤ちゃんにとって一番適した状態である母乳、自然の摂理からも一番適しているはずの母乳。
そんな母乳が原因なのか?むしろ、お腹にいる間に、アレルギーになる原因が作られているのか?
そもそも、アレルギーが出るのはダメなのか?という視点もあるかと思います。例えば、生まれて6ヶ月でアトピーが出たとして、それ以降治るんだったらいいんじゃないか?ということですね。
また、もし母乳に問題があるとすると、それは母親自身が粉ミルクで育ってきたからではないかという視点もありそうです。実際、一昔前の方が、ミルクがいいという考え方があり、粉ミルクの販売量も多かったと思われます。
このあたりは、引き続き探っていきたいと思いますので、よろしくお願いします

List    投稿者 tateko | 2013-08-06 | Posted in ⑤免疫機能の不思議No Comments » 

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