2012-03-20

太陽系を探検しよう―9.地球の大気はどのようにしてできたか?

太陽系を探検しよう―5.地球の大気圏はどうなっている?(その1)では、大気圏の構造を主に温度変化から見ましたが、今日は大気の組成から、大気がどのようにしてできたのかの地球史を辿りたいと思います。
現在の地球の大気の組成は、体積百分率で窒素78%、酸素21%、アルゴン0.93%、二酸化炭素0.03%ですが、他の惑星の大気と比較すると著しい違いのあることが分かります。
(下図参照。MAGICBUS A GO GO !よりお借りしました。体積百分率と分子数比は同じ。)
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同じ岩石型惑星である金星および火星の大気は、二酸化炭素が大部分を占め(もう一つの岩石型惑星である水星には大気がほとんどない)、ガス型惑星である木星は水素が大部分を占めており、(後で見るように)金星および火星の大気は原始地球の大気に似ており、木星の大気は太陽に似ています。
(注)太陽の大気組成は(体積百分率)、水素92%、ヘリウム8%、以下0.1%未満で酸素、窒素、炭素、鉄、カルシウム。
これら惑星は46億年前に太陽のかけらからできたとされているので、木星は初期からほとんど変化せず、金星・火星は変化したが原始地球の大気の状態に止まり、地球はさらに変遷を重ねたと言えそうです。このことは、地球にだけ生命が誕生し、進化してきたことと大いに関係があります
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地球大気の歴史については、確証は得られていないものの、下図のように変遷したと考えられています。
地球が誕生した当初は、二酸化炭素が大部分を占めていたが(同じ岩石型惑星である金星および火星の大気とほぼ同)、次第に①二酸化炭素が減少し、②酸素が増加する、③窒素は安定しており、④アルゴンが少しずつ増加した、という変遷です。
image003.jpg

下図の地球史に沿って、まずは地球大気の最大の特徴である①二酸化炭素の減少と、②酸素の増加を中心に見ます。
(図はニューステージ地学図表の「地球史」を抜粋編集。クリックすると大きくなります。)
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原始地球の大気:水素やヘリウムが宇宙空間に散逸
地球が誕生した46億年前頃の原始大気は、主に現在の太陽の大気成分である水素ヘリウムからなり、高温高圧だった。水蒸気も含まれていて、その温室効果が原始地球を高温高圧に保っていたという説もある。
いずれにしろ、これらの軽い成分は、原始太陽の強力な太陽風よって数千万年のうちにほとんどが吹き飛ばされてしまったと考えられている。換言すれば、地球の引力が弱いため、この地に軽い元素を引き止めておくことができなかったともいえる。
地殻の形成と火山の噴火 ⇒ 二酸化炭素がほとんど:金星や火星の大気に近い
やがて、地表付近の温度が低下して地殻ができ、火山の噴火活動が盛んになった。この噴火にともなって、二酸化炭素アンモニアが大量に放出された。水蒸気と多少の窒素も含まれていたが、酸素は存在しなかった。
こうして生まれた二段階目の原始大気は二酸化炭素が大半を占め、微量成分として一酸化炭素窒素水蒸気などが含まれていたと推定されている。ちょうど現在の金星や火星の大気に近いといえるかもしれない。高濃度の二酸化炭素が温室効果により地球が冷えるのを防いでいた。
43~40億年前:海洋の誕生 ⇒ 二酸化炭素の海への溶解
古い変成岩に含まれる堆積岩の痕跡などから、43~40億年前頃に海洋が誕生したとみられる。海洋は、原始大気に含まれていた水蒸気が、火山からの過剰な噴出と温度低下によって凝結して、雨として降り注いで形成されたものであった。
海洋は、原始大気の半分とも推定される大量の二酸化炭素を溶解・吸収していった。
また、二酸化炭素の一部はカルシウムイオンと結合して、石灰岩(炭酸カルシウム)として海底に堆積することになった。(二酸化炭素減少の第一段階
40億年前:海水中に生命誕生(バクテリア)
海水中にも大気中にも酸素はなかったので、最初の生物は酸素呼吸で生活する生物ではなく、現在も深海底の熱水噴出孔周辺で生息している化学合成バクテリアのようなものが有力。
32億年前、太陽の光エネルギーを利用して光合成を行うラン藻(シアノバクテリア)が海中に誕生し、二酸化炭素と水から有機物と酸素が生成されるようになった。
27億年前:シアノバクテリアの大量発生 ⇒ 二酸化炭素の減少と酸素の急増
27億年前、シアノバクテリアが大量発生し、酸素の供給量が増加、大気中の二酸化炭素はさらに減少した。(二酸化炭素減少の第二段階
酸素の大量供給により、海水中の鉄イオンと結びついた酸化鉄の大規模な沈殿が繰り返し起きた。これが縞状鉄鉱層で、20億年より前の世界中の海の地層中に見られ、現在の私たちになくてはならない鉄鉱石を供給する鉄資源となっている。
また二酸化炭素は、生物の体内に炭素として蓄積されるようになり(炭素固定)、長い時間をかけて化石燃料や、生物の殻からできる石灰岩などの堆積岩といった形で固定された。
20億年前:海中で飽和状態に達した酸素が大気中に放出され始める
20億年前、酸素と結びつく鉄イオンがすべて使いきられると、酸素は大気中に放出され始める。空中の酸素O2は、紫外線に反応しオゾンO3に変化した。
酸素濃度が低かったころは地表付近にとどまっていたオゾン層は、濃度が上昇するにつれて高度を上げ、現在と同じ成層圏まで移動して落ち着いた。これにより地表では紫外線が減少し、生物が陸上にあがる環境が整えられた。
4億年前:オゾン層完成
4.2億年前頃、植物が地上に現れて以降は酸素が著しく増え、二酸化炭素は大きく減少する。そして、現在の大気組成に至る。
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以上、①二酸化炭素の減少と、②酸素の増加を中心に見ましたが、以下に③窒素の安定と、④アルゴンの増加について、簡単に触れておきます。
■窒素
酸素は反応性が極めて高く、鉱物とすぐに酸化物を作ってしまい、ほとんどが地殻中に存在するのに対し、窒素は反応性が弱いため、最初の図にあるように、地球誕生時に存在した窒素がそのまま大気中に残っていると考えられています。
地球を構成する元素を重量比で示すと、第1位は酸素で49.5%、窒素は16位で0.03%。
大気は地球の総重量の0.03%なので、窒素のほとんどが大気中に存在することになります。
因みに、生物の体は水分を除いた残りの約1~10%は窒素で、窒素なくしてタンパク質もつくれない、生体の必須元素です。反応性の弱い大気中の窒素を水に溶けやすい形に変えているのはバクテリアで、それを植物が吸収します。そして、植物を動物が食べることで窒素が供給され、死骸がバクテリアによって分解される際に、窒素は再び大気に戻ります。(『窒素循環』という。)
■アルゴン
アルゴンは、窒素、酸素に次いで3番目に多く大気中に存在する、(窒素と同様)反応が不活性なガスです。現在の大気中には、地球誕生直後から安定的に存在し続けているアルゴン36と、誕生直後にはなく、その後地球内部から少しずる継続的に放出され、アルゴン36の約300倍まで増加したアルゴン40(=カリウムの一部が変化したもの)の二つが存在しています。
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以上、大気の組成を地球史から見ましたが、生物の歴史と切り離せない関係にあることが分かったと思います。
次回以降のテーマは未定ですが、お楽しみに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(参考)
上出洋介著『太陽と地球のふしぎな関係』
杵島正洋・松本直記・左巻健男編著『新しい高校地学の教科書』
浜島書店編集部『ニューステージ地学図表』
地球大気の歴史,構造,循環
地球の大気
地球の成り立ちと気候変動
大気における酸素の誕生
マテリアルとしての窒素
窒素が多い理由
アルゴン

List    投稿者 okamoto | 2012-03-20 | Posted in ⑫宇宙を探求するNo Comments » 

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